2023/10/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にキールさんが現れました。
キール > 貧民地区の酒場、今日はそこの用心棒。
ヤンチャが過ぎる客を畳んで金品を抜いて店の裏手に放りこみ、貧民地区の中の住人に任せるのが今日の男の仕事。

店の奥で退屈そうに酒をちびりと煽る巨躯の男、着崩したYシャツから覗くのは傷一つない分厚く絞られた体に、丸太のような腕や足。

大きな手の中では普通のグラスも、ショットグラスに見えてしまう。
手酌でウィスキーを煽りつつ退屈さにため息。
既に何人かの行儀の悪い客は畳んで、片付けており今はみな落ち着いて酒や安娼婦を口説いていたりと、垂水緩んだ雰囲気。

いっそ、男狙いのカチコミやら厄介ごとを持ち込むいい女か、何の背景も無いいい女が来ない物かと、小さくため息を漏らしながら店の扉へと視線を向けた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にロロさんが現れました。
ロロ > 「 ――……んだよ、珍しい。普段ならもうちょい…騒がしいと思うんだ けど」

店に入り開口一番。違和感が声に出た。
…実際には、決して閑散としている訳でもないし、客達が大人しくしている訳でもない。
酒気の入った者達が上機嫌の声を上げているし、初対面の客同士が意気投合しグラスを合わせるだの。
ウェイトレスを口説き落とそうとしては、すげなくあしらわれる者が居るだの。良く有る光景が広がっている。

…その上で犬が小首を傾げてみせたのは。
酒場の中があくまで、「酒場らしい」で留まっており。この地区らしく遠慮も行儀も知らない者が居ない、という事だ。
ちょくちょく訪れるこの酒場に、一体如何なる要因で。こんな変化が起きたやら。
違和感の源を探して見回す獣の瞳は、やがて――片隅の一画。大きな影を見出した。

にぃ。それはそれで、面白そうな気がする。酒瓶をひっ掴んで其方へと向かってみよう。

キール > 店の奥、見通しのいいテーブル席で寛ぐ巨躯の男。
目の前には摘みのソーセージが並んだプレート。

この店が普段よりも上品にあるのはその男の精であろうと気付いた様子の相手が近づいてくる。
その小さな影に気づいたのかちらりと向けられる男の瞳。
向けられる男の瞳は血を思わせるような真紅の瞳。
目は細められ、小さな影の頭の先から足先へと視線を滑らせてから持っているグラスの中の褐色の液体、一口で飲み干し、コンと音を立て丈夫な樫のテーブルの上に戻し、相手を見定める様に真っすぐに見つめる。

ロロ > 「 ……いよぅ」

改めて近付いてみれば。此方とは比較にならない程に大きな肉身の持ち主だ。
ともすれば彼方は座り、此方は立っているというのに。差程視線の高さが変わらないのでは…とすら思えてしまう。
そんな相手に如何に声を掛けるべきか。数瞬考えたものの、結局。捻りのない挨拶めいた物しか出て来なかった。

これはもう…言葉よりも雄弁に語ってくれる便利グッズに、早速出番となって貰おう。
グラスを干した相手の前、卓上で軽く。手にした瓶、強めの酒が入ったそれを揺すってみせ。

「普段ケチ臭い店なのに、アンタみたいなの傭うなんて、珍しい な。
お陰で発散目当てで喧嘩を売れる相手が見つからなくて…参った ぜ」

こういう手合いが出入りするからこそ、こちとら無理して無い袖を振ったのではないか。
と、ツッコみめいた視線が店の奥、店主辺りから飛んでくるが、何処吹く風。
瓶を手にするその侭、前ではなく傍らへと歩を進めつつ。

「…だからさ。それなら代わりに付き合ってくれ、なんて頼んだら。
それも――アンタの仕事に入るのか な」

キール > 店の奥のテーブルどっかりと深く腰を下ろす大男。
着崩した服から覗く胸元も、深い谷を刻むのは柔らかさとは真逆の鍛えられた胸筋が作る谷間。
何の捻りも無い声にはくつりと小さく笑い。
そして続く言葉とお誘いに男は小さな笑いからどこか凶暴な形相で楽し気に笑う。

そんな男の凶暴な笑い声に幸薄そうな店主はため息が自然と漏れて、手元のグラスを磨く事に集中し始めての現実逃避。
客は客で、巨躯の男に絡みに行く小さな狂犬の会話にびくびくとしながらもワクワクとした目線をぶしつけに向けつつ、慣れたように酒とつまみを持って軽く退避を始めるあたり慣れている様子。

「なに、前任が頼りなさそうなケツモチだったからな、ちょっとばかり代わってやっただけだが、俺が必要かといわれたらその必要はないな。
あぁ、嬢ちゃんが暴れようっていうんなら、取り押さえて行儀を仕込むのが俺の仕事だ…なぁ…」

退屈していた男、にぃっと笑い、相手の目を見ながら空になったグラスの中に自分のボトルから無造作に酒を注いでいく。それはあからさまな挑発。 やれるものならやってみろとばかり─。
沈黙で満たされる店内、押し殺しながら二人に向けられる幾つもの視線と、とぽとぽとぽと継がれる酒の音。

ロロ > 「ぁー…あのおっちゃんか。……悪ぃ事したな ――――色々」

店主が半ば自棄で磨いては並べていくグラス、その一つを勝手に拝借しては。此方も自前のボトルから注いでいく。
同じ卓で二杯分、強い酒精の馨が店内に流れる中。何処かしみじみ呟いてみせた、前任とやらについて。
男から見れば頼りなかったらしいその人物が、仕事の上でストレスに倒れたというのなら。原因であろう無茶な客達の中に、この犬も含まれていたらしい。
心当たりが一つ、二つと言わず。色々だのと宣う辺り確信犯。
幸か不幸か、貧民地区の外に仕事を持ち、オンとオフとをきっぱり分ける身の上である為に。
日がな一日管を巻く破落戸共とはタイミングがずれた事で、後任の男には叩きのめされず済んだようではある――が。

この会話次第では、暫し前まで店の中で繰り広げられていたゴタゴタが、改めて再開されるのかもしれない。と。
めいめい自分の注文した料理だの、グラスだの、叩き落とされないよう手に手に距離を置く他の客達も。荒事になれた常連達らしく。
腫れ物めいて遠巻きにされている、その辺自覚しているのだろう。つい、肩を竦めてしまいつつ。

「けどまぁ冗談…って訳じゃなく。結構アンタみたいなのは…楽しそうなんだよ ね。
殺り合うっていうのも――ヤり合うのも さ。アンタは――」

ぐぃ。掛け付け一杯景気付け。此方もグラスを一気に干し、熱を籠もらせる息を吐いてから。
…じろりと睨める眼差しは。お行儀良く仕事中のソレではない。この地区に来る時は、得てして――犬が、獣に戻る時だから。
そんな肉食の獣めいた瞳を細め、とっぷりと。盛り上がった肉の硬さ、大きさ。触れれば弾かれんばかりの腕に、胸板に目を剥けて囁くのだ。

 どちらの意味が好き? なんて。

キール > 残念ながら相手が思い浮かべる前任者のおっさんは目の前の男のせいで昼のまったりとした仕事について今は幸せになっているとか。

それはさておき、大人と子供ともいえるぐらいの体格差でも噛みつく相手の様子に慣れた客たちはあちこちで開いた皿の上にチップを積み始める。

そんな客たちをよそに目の前で男の体に視線を向ける女の様子に男は相手がグラスを空にした後に男もグラスを煽り空にして応えてから、相手の体に視線を滑らせる。

「ちと、細いが、よく鍛えられた体だ。 あぁ、俺を満足させなられない時は、その分その後が激しくなってもいいのならな…。欲しいのは何でもありの喧嘩か? お行儀の良い喧嘩か? 選ばせてやるよ。」

くつくつと笑いながら空になったグラス樫のテーブルに置いてから足でテーブルの足を押し、僅かに脇に避けてから、男はゆっくりと立ち上がり、相手をギラギラとし始める獰猛な瞳で真っすぐに見つめる。

構えもせずに自然と立つだけでも威圧的な男の身体。
肩幅よりやや狭く開いた大きな足が床を踏みしめ、スーツの生地を盛り上げる男の下肢の筋肉に締まった体。
闘争の時間に血が巡り、スーツの前を止める釦や生地は盛り上がった筋肉によって引っ張られ小さく悲鳴を上げる。

ロロ > まぁ件の人物が幸せな職にありつけたのなら、それはそれで良いのではなかろうか。代わって新たな用心棒とのあれこれで苦労するのは、あくまでも店主なのだし。
と、そんな店主だけが現実逃避に没頭する中。一波乱起きる事を確信した客達は、調子良く賭けなど始める始末。
気が付けば二階から此方を見下ろし歓声を上げつつ、やれ彼方に幾ら、大穴で幾ら、だのという声が飛び交う辺り。あっという間にちょっとした賭け仕合の場が出来上がっていく。

そんな中で男が立ち上がれば、犬の方は軽く、腕を回して相対し。

「そいつぁ褒め言葉として受け取っとく よ。
お行儀良く?そういうのがどれだけ此処に似合わないかは――初出勤でも解るだろ?
って事でさ、どうせなら遠慮なくやってこう ぜ。その方が今も愉しいし、済んだ後のお楽しみも盛り上がる――ってなもんだろう よ!」

言葉が終わるのと、さて、どちらが早かっただろうか。
回した腕を振り下ろし――と共に、男の顔面目掛け。中身の残っていないグラスが投げ付けられていた。
一瞬後には犬自身も低い体勢で前へと滑り出し――其処からもう数瞬遅れて、やっと。備品の手荒な扱いに気が付いた店主の、情けない声が響いたか。

キール > 今は兎にも角にも目の前の獣を相手にする方が愉しい。
自然と持ちあがる男の唇の端。
男の耳には賑やかな歓声も、不幸な店主の悲鳴も既に遠くの事。

「よかった。 愉しませてくれよ。」

いうや否や相手の手元から投げつけられるグラス。
低い体勢で滑り出してくる相手。
男は目を開けたまま額で勢いよく飛んできたグラスを受け止めれば質の悪いグラスは厚く歪ながらもあっさりと砕け乾いた音を響かせる。
パリン─。

滑り出す女の頭上をかすめるように男が額で割ったガラスのかけらがキラキラと光を帯びて飛散していく。
迎え撃つ男、そのわずかな動作、頭が前に行く力の向きを流すかのように左脚を軽く引き、右足を前へ僅かに滑らせながら腰と膝を落とし、相手の身長よりも長い男の腕ををゆるく開きながら上半身を軽く傾ける。

低い体勢で飛び出してきた相手の視界には上からは壁のような上半身、左右には捕らえようと狭められる男の腕、僅かに離れたように錯覚させる男の下半身。
頭を上げれば飛散ってきたガラスを浴びる事になるがどのように処理するのか。

ロロ > ひゅぅ、と。下手な口笛を吹いた。例え安物とはいえ、当たり前のように額で受け止めてくるとは思わなかったし…まして、それで平気の平左であるらしい事は。想像以上で期待以上。
粉々になったガラス片が飛び散り、階上では即席の掛札が舞い、幾つもの歓声が降ってくる――が。
今の瞬間だけはその辺り、意識から外せ。縦に細く収縮した獣眼に映るのは、男の一挙手一投足のみだ。

「 っはっ。 そうだね、やっぱ運動してから喰う方が、何でも美味いっていうもん な――!」

勿論、食べる、というそれはきっと。性的なあれこれという奴だ。きしりと犬歯を剥いて笑ったかと思えば、四足歩行じみた低姿勢の犬は、延びてくる男の腕に対し―― ば、んっ!
強く両手が床を叩いた。間合い手前でイキオイを付けて大きく、逆しまに飛び上がり男の頭上を取らんとし――

必然。降り来るガラスは避けられないが、知った事か。頬や肩、薄く血の痕を幾つか引いて。それでも構わず飛び上がる。
…最中。がり、と。大きな破片はその牙で文字通りに喰い止めなどもしつつ。

男の方が速ければ、跳躍途中で掴まれるかもしれない。
そうならなければ直ぐに。グラスよりも硬い額目掛けて、犬の踵が降ってくる事だろう。

キール > 「くく。 あぁ、全く同意だ。 楽しい喧嘩の時間だ─。」
下手な口笛の応答も、投げられたコップが割られた事による悲鳴も、男にとっては些事とばかりに、叩き割ったガラス片が飛び散るその中に絵凶暴な笑みを浮かべながらも飛び上がる相手。
床を叩く豪快な音と、飛び上がる女が男の頭上を取ろうとする。
その気合の入り肩に男も楽しくなる。
避ける事もできる。
が、選ぶさまはむしろ前に出る事。
ぎろりと上空の相手を見やれば額を目掛けて振り下ろされる犬の踝。

鍛え抜かれた自身の身体に対する圧倒的なまでの信頼感。
素早い相手を捉えるのであればそういった時を活かすしかない。
スリ足で進めていた大きな足で床をしっかりとつかみ、下肢の筋肉に力を籠め、膝を上げ、背筋から首を意識し、迎え撃つ。

真紅の瞳は相手を捉え乍ら振り下ろされる踝に向け頭突きを放つ。

響く鈍い音と衝撃が男の体を貫くも鍛えぬかれた男の全身がその衝撃を全て受け止めてしまえばその反動は相手の踝に、
軽く構えていた腕を男は上げ、額で受けた細い足首を雑につかもうとその手を振り上げる。
その手に捕まれれば万力のように太い指で締め上げ骨を軋ませながら女の体で床を叩こうとするだろう。

ロロ > ぎしり。声に出さず笑って同意。牙の如くに犬歯を剥いて。
グラス程度では揺らぎもしないらしい額だが、さて、踵ならどうか。
勿論単に足をぶっつけるという物ではなく――一軽いとはいえ人一人の体重。回転しての遠心力。それ等全て加味した一撃だ。
序でに靴底の方も、こういう使い方をする事前提の、金属が仕込まれた硬い物。
思う様振り下ろす途上、回転する視界に映る男の行動は。足元を確りと、輿を入れ背筋を伸ばし、真っ向から受け止めてくる形。
成る程つくづく、頑健さに自信が有るらしい。図体だけでなく、肝のサイズもそれに相応しい相手である…というのが。いっそ気持ち良い相手。
だったら何の遠慮も要らないだろう。先の二つに犬自身の振り下ろす脚力も加えてありったけ、鎚の如くに振り下ろした一撃が。
硬く鈍く、盛り上がる観客達すら思わず、一瞬息を飲むような音をさせてぶつかり合い――

「   っ。 っくそ、幾ら何でも硬すぎだ ろ、どんなニンゲンだ ――っ!?」

高い背丈に芯の入れられた体勢も有り。完全に振り下ろしのイキオイを載せきれなかったかもしれないが…それでも。
靴底から足首へ、脹ら脛へ。びりびりと伝わる震動に、痛みに。悪態の一つも漏れようというものだ。
…巨躯ではあるが、きっと、ニンゲンでしかないのだ、と。其処を見誤っている失態は露知らず。

頭蓋の向こうにどれだけ衝撃が伝わったか判らないが。構わず伸ばされた男の手は、その侭、犬の足首を掴み締めてくる。
寧ろ掴まれているなら其処を支点に、もう一方の足先が跳ね上がり、男の太い上腕を蹴りつけようとして――

「  、っ、 つ゛――!? っが、 ――……!!」

その成否に関わらず振り落とされた。グラスより額よりずっと大きな音をさせ、犬の背中が強かに、床へと叩き付けられる。
…くらりと一瞬意識が飛びそうになるのだが。口端のグラス片を噛み、唇に血を滲ませ――辛うじて。犬は意識を保ち、男を睨めて。