2023/09/19 のログ
コルボ > 一方こちらの男は路地裏から足を踏み出す最中、聞き覚えのある音を耳に留める。

(こいつぁ。なんか前話した時と比べてらしくないっつぅか……)

路地の端に置いてある朽ちた箱を一瞥すると頷いて、

「ん? ほぐぁ!?」

足音に合わせて路地裏から身を乗り出してぶつかり、盛大に木箱にぶち当たって砕いてその場に倒れてみようか。

リュエール > 「!?」

突然の異音にびっくりして振り向く。
何事かと思えば路地裏から何かが乗り出してきて、そのまま木箱にぶち当たって、盛大な音を立てて倒れた。
黄色い目をぱちぱちと数度瞬かせて。

「……ちょ、ちょっと、大丈夫?」

一応、声を掛けてみた。
覗き込めば見覚えのある男。

「コルボ? 何してるのよ?」

平民地区で会った男と記憶が一致すれば、手を差し伸べて立ち上がるのに手を貸そうと。

コルボ > 「いってぇ……。……は? リュエールお前、そっちこそなにやってんだ」

 こちらが顔を上げるより早く相手が気づけば、破片を払いつつ身を起こして差し伸べられた手を掴みながら立ち上がる。
 ひとまず焦っている様子は心配に切り替わって話は出来そうで。

 ……心配に切り替わったのが、少し申し訳ないけど。

「あーまあ心配すんな。何してるって、買い物だよ。
 奥の方に夜中だけ開いてるマーケットとかあるから。

 つかリュエールこそ何してんだこんな時間に。
 腕に、足に? どっちでもいいや。とにかく覚えがあるからっつって
 王都に来たばっかがこんな時間に貧民地区歩いてんなよ。」

 媚薬とか吹き矢でいかれるぞとかジェスチャーを交えつつ。

リュエール > 立ち上がるのを手伝いつつ、大した傷はない様子を見れば怪訝そうに首を傾げる。
焦っていたというよりは憤っていた、という方が近いかもしれない。

「そう? 怪我がないならいいけど。
いきなり木箱に突っ込むなんて酔っぱらってる? わけではないわね」

すんすん、と男に顔を近づけて匂いをかぐ仕草。
アルコールの気配はないので、なおさら不思議そうな表情で。
買い物だと言うなら、別に追及するつもりはなく。

「それは面白そうね。そういうのもあるんだ。
こっちは……所用よ。ちょっと借りを返したい相手がいるの」

空の果てまで蹴飛ばしてやる、と言わんばかりに鼻息荒くしている。
男からすれば当然の忠告だろう。女としても十分理解できるが。
ふい、と顔を背ける。お説教なら聞きたくない、という顔だ。

コルボ > 「リュエールは自分の勢いもうちょっと意識した方がいい。
 脚力。足の力。」

 などと責任転嫁で話題をすり替えつつ。
 様子は落ち着いてはいるが、まだ溜飲は下がっていない雰囲気に目を細めて。
 なお男のにおいを嗅げば雄らしい体臭交じりに柑橘系の香りがする。
 この時期汗を搔くので体臭への対処に余念がないナンパ野郎。

「まあ夜に売ってるようなもんだから察してくれ。
 借りを返したい、ってどんな奴なんだ?」

 一応話だけは聞いておこうかと思いつつ、忠告をしてこの反応であれば望み薄ではあろうかと。

「手伝えるなら手伝うからオニイサンに話してみなさい?」

リュエール > 「何? あんたに何がわかるの?」

忠告のつもりなのだろうが、虫の居所が悪い女にとっては悪し様に言われたように感じられたらしい。
勢いと言ってもそこらの路地のものを蹴飛ばしながら歩いたわけではない。
ぶつかったのは悪かったけれど、不注意はお互い様だと言うように、眦を吊り上げている。
夜のマーケットで売ってるものを察しろと言われても、なんて言いつつ。

「知らないわ、名前も住処も。だから探してるの。
別にいいわよ、そこまでお節介しなくても」

これはあたしの問題だから、と返す。
意気投合して酒を酌み交わした仲だとしても、それはそれ、これはこれ。
恥辱的行為を受けた話などしたくないし、弱いと思われるのも癪だし、お説教も聞きたくない。
こんなことに男の手を煩わせるつもりはないと言うように首を振った。

コルボ > 「冷静になれってんだよ。」

 危ういというには相手への不敬でもあろうが。相手の目を見て静かに告げて。

「どういう理由か知らねえしこれ以上は詮索しねえが、
 ここはよそ者どころか平民でも本来寄り付かねえ場所だ。

 リュエールがつええのは分かるよ。お前の足鎧が飾りじゃねえのも足さばきで分かる。
 でもな、地の利も何もねえ奴が考えなしに突っ込んで、不特定多数にどこまでやれるんだ?

 ……少なくとも、俺が前に話した時は、昼でも油断なく歩いてたぞ。
 ここにいるような奴に住所なんてほぼねえよ。

 探すなら昼に出直せ。」

 目を見る。向かい合う。よそ者であろうと、共に酒を酌み交わして騒いだイイ女だから。

リュエール > 「冷静にさせたいの? それとも煽ってるの?
あんたに言われなくたってわかってるのよ、それぐらい!」

冷静になれという説得は、時には有効だが、時には逆効果にもなる。
男にとっては忠告や説得にきちんと意味はある。
何が言いたいかも女にちゃんと伝わっている。
それでもその言葉を聞いて殊勝に頷けるなら、最初から昼に来ている。
とっくに冷静になって諦めてまた出直すと仕切り直せるだろう。

わかっている。
わかっていても、腹の虫は治まらないのだ。
黄色の目はまっすぐ男を見据えている。

「今、あたしは、あたしのことを知った風に言われて落ち着ける気分じゃないの」

女の身を案じて忠告すればするほど、今の女には逆効果になるとわかるだろう。
往来の気の強さのせいか、単純に気分の問題か。
それでも苛立ちに任せて蹴りを繰り出さない辺りは、まだ理性がある方だ。

ふぅぅぅぅ、と深く息を吐く。
苛立ちを吐き捨てるように息に乗せてから、腰に手を当てる。

「あんたに当たるつもりはなかったのよ、悪かったわ。
でもそれ以上言わないで。聞きたくないのよ、今は」

それだけを告げれば、踵を返す。

コルボ > 矛先がこちらに向けばそれでいい。そうなれば後は”自分がここにいれば引き返す”
アンタに何が分かるなんて言い草をされた時点でこれ以上奥にやるわけにはいかない。

そうでなくても、見立てでは最低でもミスリルなんて”売り物”を足につけてる奴、狙ってくれと言ってるようなもんだ。

(イイ女、だからなぁ……)

この間ナンパをして、話をして、流れで飯を奢って、面白おかしく話して。
それで、口説き損ねた。それぐらいのイイ女。

ここで自分が悪感情を抱かれてでも引き返させるように促すのは悪手だろうかと思う。
それでもこの貧民地区は拙い。
ただのゴロツキや物乞いがいる程度に思っているのだろうが、魔族やそれ以上のナニカもいる。

そんな奴等に今のこの激昂した状態を見せればどうなるか。

……それでも、勢い余ってその自慢の足が動かない様子は伺えて、
自分が思った以上に冷静なことに安堵して。

「俺だってお前に嫌われたくねえからな。」

今は、ここに立って睨まれるのが己の役目と。
それ以上は何も言わず。

「今日の詫びに次会ったら酒奢るよ」

 帰るならば、その背中に言葉を投げかけて

リュエール > それ以上奥へ行かせる気がない男を蹴飛ばしてまで進むつもりはない。
狙い得と言ってもいい女が一人、手を出してくる者必ずいるはずだ。
すでに何人かは壁にめり込ませてきたわけだが、それはそれとして。
男が女を止めるなら、そこから先は魔境なのだろうと思う事にした。

「酒だけじゃ足りないわ。この前行ったとこより美味しいご飯もよ」

なんて要求を暈増しして告げる声は、平民地区であった時のような気軽さだっただろう。
くるりと肩越しに振り返り、長い髪を舞わせてから、黄色い目がじっと男を見据えた。

「あたしだって嫌いたくないわ」

そんな風に告げて、それ以上言わずにいる男に背を向け、手を振る。
そうして路地を引き返して夜の闇に、女の姿は消えていく────。

コルボ > 「ああ、とびきり旨いの食わせてやるから肉か魚かぐらい決めとけ」

 圧がなくなれば、軽口めいて肩を竦めて。
 ……内心、肝が冷える。最悪挑発してこちらが勝ったら諦めろ、まで言ってから、
 動いた瞬間に武器を捨てて全力で両腕で受け止める、までは考えて。

 ……そこまでやれば、両腕ぐらい折れれば、流石に冷静になってくれるだろうが、
情に訴えるのは男として情けない。

「おま、そういうこと言うと次マジで口説いて押し切るからな!?

 ……ったく」

 その背中を見送って、頭を掻いて。

「……さて。何があったか、探るぐらいはしておくか」

 などと、男は一人、魔境へと姿を消して―

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリュエールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からコルボさんが去りました。