2023/09/09 のログ
■モルガナ > 離れた山岳地帯にあって不埒な者達、音に聞こえし英傑の名を利用する賊軍達が暗躍していると聞く。
我こそはと勲功を望む者。久々の大規模な戦いの予感に血を滾らせる者。
王都でも、王城でも、それぞれの思惑が巡り、色めき立っている。
だが、この国にあって大事なのは民である。
たとえ堅牢な砦であろうと逃げ遅れ囚われた国民を憂う者は少ない。
王都は平和であると民のことを案ずる者も多くない。
であれば、目を向けている者こそがたとえどのような身分であろうと警邏に回るべきである。
勲功。不要。
闘争。不要。
安寧。必須。
堅牢な守り、堅実な用兵を旨とする騎士がたとえ貧民であろうと同じ国民であると、
治安の為にゆったりとした歩みで巡回していく。
「……平和、ですね。治安の程を懸念していましたが……。」
少なくとも、己の視界には不穏な犯罪も、挑む者もいない。
ゆったりと、長い髪に指を漉いて、掃きだめの中を歩いていく。
……貧民地区にあって、必要なのは、生き残れるのは才能である。
静かに、穏やかに笑みを浮かべる女騎士から生じる”圧”
捕食される獣が狩る側に抱く感情と同様のそれを、その日ならず者達は
大半が意識の外、視界の外に感じて安酒を共に身を顰める。
正しくもそれは治安維持であろう。
だが、同時になにより貧民地区の安寧を脅かす存在であるという自覚なく、
貴族の、高貴なる者の務めを果たす。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にカミールさんが現れました。
■カミール > 「生憎、あんたんとこが出張るほどのことは起きてないよ。ここは」
そう歩いている女騎士のすぐ隣。気配を感じられなかった場所から低い女の声がかかる。
影に佇んで、積まれている木箱に背中を預けていたのは長身の女性。
背丈的には、この女騎士も長身だがそれを僅かに上回るほどであり。
娼婦かと見まがう程の露出をした女性だが、その声と瞳にはそんなものではないと確信するほどの意志の強さがある。
「ここは賊も潜んでいるが。賊なりに考えて秩序だって動いてる。
特にあんたみたいなのは目立ちすぎて動く事なんてしねぇよ。
それで動く馬鹿はそもそも、あんたほどの貴族サマが狙うような相手じゃあない」
ぼさぼさの青い髪。紫色の瞳は真っすぐと女騎士へと向かっている。
組んでいる両腕はかなり鍛えこまれており、筋肉が目立つ。
それでも女性らしい柔らかさを残しているような褐色の肌は非常に強さを感じる。
「こんなところに何の用だい貴族サマ。まさか検挙なんてことはないだろう?
治安は良くないかもしれないが、それでも今はこれでも平和そのものだぜ?」
どこか挑発するような物言いでそう告げて。じっと女騎士の動きを見つめていた。
女の仕事は単純、ここらの用心棒のようなもの。
ようなもの、というのは正確に言うと彼女の背後にある、安酒を売っている酒場のマスターからの依頼である。
故にこそ、こうしてただ突っ立っているだけだったのが。
思ったよりもいい、思わずこうして声をかけたくなるような気配を感じて。
だからこそつい、見たくなった。この女騎士がどんな存在なのか。
■モルガナ > 気配が、鳴りを潜める。
心なしか、少し間をおいて、様子を伺うように喧騒が、人の気配が動き始めるだろうか。
その代わり、騎士が放っていた圧は気配を現し、言葉を投げかけたその一か所に集約される。
幸か不幸か、貴女が受けた依頼は一部果たされるだろう。
少なくとも、ただの貴族、血統と才能にあぐらを掻いた部類ではないことを示して。
「ええ。それは理解しています。
ですが、その悪漢の間に挟まる”異物”は別。
動乱の気配が近づく中、混乱に乗じて下賤の更に下が
この国を脅かすのは無粋、無作法というものでしょう。」
その露出に眉を顰めるでもなく投げかけられた言葉に凛とした声で返す。
疎むことも、軽んじることもない。ひとまずは様子見と言った体。
「私がならず者、区画の不文律を乱す者を捕えては部下の仕事が、
勲功が潰えてしまいますから。
……国を守る仕事、その清廉さは無論のことですが、明日の食事をよりよくする為の給金、昇給を
悪しきとすることもありませんから」
ひとまずの平穏は認める。だがそれ以上のことは断罪する。
であれば何故、と聞かれるまでもなく、鞘に手をかけ、護拳部を押し上げて、
サーベルの刃が鈍い光を讃える。
「……まして、貧民に紛れて獅子の類が潜んでいるなど、ただ今は牙を剝かぬだけの者を放置するなど、
あるまじき行為だと思いませんか?」
挑発に応じる、というよりは、間合いを測りながら、挑発し返す。
「……それとも、牙の類は持ち合わせていない、プライドから放逐された類ですかしら」
緩やかに笑う。穏やかに笑みを湛えるその身から、より強い圧が放たれて。
■カミール > その発される気配。容易くサーベルをその場で抜くと言う判断。
どうやら、貴族の皮を被っているようだがその手は貴族とは思えない程赤いらしい。
これでただのこけおどし。あるいは強がりの縁起だとしたら大したものである。
「言うじゃないか。ただの見栄っ張りじゃないとは思っていたが。
やはり、貴族だけあって口も回るねぇ。その剣の腕も回るかは別として」
背中を預けていた木箱から離れて、ゆっくりと歩き出す。
その歩みには一切のブレはなく、そして澱みもなく一歩一歩が重い圧を発して。
彼女が発する圧に、全く引くことなく目前に両の足で立つ。
「こう見えても私は冒険者なんだがね。……そんな弁明ならその刃を下ろすかい?」
ニィィ、と浮かべる笑みはまさしく獰猛。
頬が裂けているようにも見えるほど大きく口角が上がり、非常に威圧的な笑みを見せつけて。
並の兵士ならこの圧と、この凶悪な笑みを見るだけで失禁して気絶してしまうだろう。
穏やかに笑みを見せながら圧を放つ女騎士。獰猛な笑みを見せながら圧を放つ女魔族。
武装も、種族も、装備も、何もかもが違うと言うのに。立場はお互いに良い血筋でありながら戦場に立つ者同士。
また、互いに多数の部下を持つ身ながら今は一人でしかない。
「名を聞いておこうか、貴族サマ。私はカミールだ、家名はない」
■モルガナ > 貴族の責務は座するに非ず。
民を守ること。領地を繫栄させること。
臆する者、凡庸な者の背に誰がついてくるだろうか。
「そういう貴女は口が回らないようで。
冒険者、というあってないような身分をこの場で弁明の材料とするので?」
否、互いが互いに笑い合う。静と動。しかし両者ともに躍動。
もはやここまでくれば切り結ぶ理由が必要なだけ。
これでは相手がこちらを立ててくれたようなものだと、その”礼儀”に
応えるように向かい合い、更に一歩肉薄して。
「モルガナ。モルガナ=ミナスジェイラス。
貴女が見上げ仰ぐ者の名―」
肘が跳ね上がり、
「ですわっ!」
貴女の頬目掛けて打ち据えにかかる。礼儀には礼儀を。
貧民地区の酒場の目の前で騎士の初手は乱闘めいた”作法”だった。
■カミール > 目前で火花が散っているのかと思うほど、互いの眼光がぶつかり合う。
肉薄しあい、その距離は相手のサーベルよりも近く、振るうにはいささか不利。
にもかかわらずこちらに”礼儀”を見せた彼女に、モルガナという女に興味を持つ。
「シィッ!!」
強かに彼女の肘が頬を打つ。打った肘は、確かに頬の肌を捉えた、だが、予想以上の硬さを感じる。
例えるなら、トカゲのような爬虫類を殴ったような不思議な凹凸ある感触であり。
その”作法”に応じるように、カミールはその右腕をモルガナの顎へと振るう。
互いにほぼほぼ振りかぶることのない一撃。威力は互いにほぼ同程度。
こちらの右腕によるアッパーが、貴女の肌を打つ。
「ははっ。最初は素手たぁ中々キモが据わってんね。いいぞ。
だが違うな。私がお前を見上げるんじゃない」
そう告げると頬についている肘を、顔で払いのけて。
「お前が私の上で、踊る未来を見せてやるよ!」
非常に素早い、下手したら今貴女が放った肘よりも速い回し蹴りが胴体へと向かう。
■モルガナ > 「ふふっ……」
トカゲというには生ぬるい硬さ。有効打にはなりえぬその感触に
浮かべる表情は驚愕ではなく高揚。
振りぬいた拳を引くより早く、相手の打ち上げ気味の拳が己を肌を打ち据える。
だが、そちらが硬いのであれば、こちらは重い。
確かに肌を、人の肌を殴っている。だが拳に伝わる感触は振りかぶっていないとはいえ、
体を打ち抜いた手ごたえは薄い。
「己の有利な舞台で戦うのは平民の権利でしょう。
貴族とは、相手の舞台でもなお輝くもの―」
拳を打ち込まれた瞬間に、詠唱も魔力の集中もなく発動した肉体強化。
宝石を、ティアラの宝石に蓄積された魔力を開放しての即時発動。
触媒の特性を最大限に活かした戦法。
それを迷いもなく使用したのは相手を強者と認めての敬意。
義務を果たした者には権利が与えられる。
強者の権利。それは戦いを謳歌すること。
「そして―」
回し蹴りを、受け止める。わき腹で、両足を踏みしめて。
斬撃防御の為の、打撃に対して効果が薄いチェインメイルでそれを果たす様は不動そのもの。
そのまま、貴女の足に腕を回すその身が軋む。
「舞い踊るのは貴女のほうでしてよ!」
強引に、力任せに抱え込んだ足ごと貴女の体を振り回して投げ飛ばす。
貴女に劣る体躯ながら、人の枠を越えた膂力、それは魔族を、
更にその上を見据えた闘法。
悠然と、貴女へと歩み寄り、振り上げた足で貴女を踏み抜きにかかる
■カミール > 高揚に浮かべる笑みに、どうやら思っていた以上に自分と同類であると感じてしまう。
種族は違う、しかし、相手はそんなことすら織り込み済みで戦っているのだろう。
重い、それは重心ゆえか、その実際の体重、いや、体重はないな。
やはり重心か、なにか仕掛けがあるのだろうと思う。それでも拳を砕くような様子もなく。
「言うじゃない。だが、戦場では有利不利なんてその場で決まるものじゃない。
常在戦場は戦士なら当たり前に持っているべきもの。貴族じゃなくても、戦う者ならどこだって強い奴は目立つもんだ!」
脚を掴まれて振り回され、周囲の木箱へと辺り飛び散る。
モルガナと比べたら、単純に筋肉のせいもあってカミールは非常に重い。
普通に成人男性と同じだけの体重を、この見た目でありながら筋肉で作っている。
そもそも、肉体の構造が人間とは違うというのもある、が。
「ちっ、思ったよりパワープレイしやがるっ」
投げ飛ばされた時に、一切その肌は傷ついてなどいない。
むしろ彼女が擦った床の方がずっと傷ついているほどで。
踏み抜こうとする彼女の脚を横に転がって避ける。
その行為と同時に起き上がり壁へと駆け上がる。まるで重力など無視したその壁を走る動き。
そのまま彼女の真上へと三角飛びに飛び上がり、脳天に向けてかかと落としをキメにかかる。
■モルガナ > 「であれば、私達は出会うべくして出会い、戦うべくして戦っているということ!」
常在戦場。故にこうして殴り合える。強い奴は目立つ。だからこうして殴り合う。
似た者同士、親近感が闘争の中で芽生え、この戦いは必然であったと吼えて
近づき、しかし相対する者に傷一つなく、それどころか転がった跡に夥しい傷がついてることに目を細める。
「人間だからと力負けしていい理由にはなりませんわ」
もはや携えた宝剣を一切抜くつもりもない。それは殺意がない証でもあり。
だが足が空振り、地面を強く踏みしめると相手の方角を見据えて構えを取る。
壁を駆け、己との間合いを詰めてくる様を見ても笑みを絶やさず。
その挙動を見据え、天高く舞い上がるその様から目を離さない。
「……ここ!」
正確無比な鷹爪が如き強襲。それを読んでいた、否、期待していた。
そして相手はこの人ならざる挙動の中で己の頭部を正確に狙うが故に、
首を背けて肩で受け、
相手の強襲の威力をそのまま殺さず、足に組み付いたままその身を大きく仰け反らせる。
「せいやぁああああああああ!」
肩にめり込む蹴撃による激痛、鎖骨がへし折れながら、その痛みを裂帛の気合で圧し潰す。
己ごと床へ身投げするかのような投げ技、相手の加速に己の膂力を重ねたカウンター。
重厚な鉄槌を打ち据えたかのような轟音と二人して地に沈み、粉塵が舞い上がる中、
貴女が起き上がる前に背後から組み付いて首に腕を回す。
「……面白い方ですわね。場所を変えてお話しませんか?」
嗤う。高揚に折れた肩さえ気にならぬほどに滾って、そう声をかける。
その声に艶が乗り、何を意図するかは伝わるだろう。
■カミール > こちらも、本気で殴れば人体など簡単に挽肉にするなど容易い。
あるいは、手刀一つで首を胴体と泣き別れすることすら出来る。
だが、そうしないのは力のセーブもそうだが、彼女をもっと知りたいと思ったから。
肉体の頑強さに胡坐を掻かない強さを持つからこそ、手加減の仕方もわかっている。
……必要がある相手だったかというと、少し疑問ではあるが。
「なにっ!?」
まさか、このかかと落としを自らの肩で受けるとは思わなかった。
何らかの防ぐ手段、あるいは避けると思っていた。
手加減していても十分、クリーンヒットすれば肩の骨を砕くなど容易い。
何らかの仕掛けがあるとはいえ、多少なりともダメージが期待できる足技。
「だが、気に入ったっ!!」
そのまま、鎖骨に踵がめり込む感触を関しながら。
彼女に組みつかれて、地面へと叩き伏せられる。
カウンターと言えど、何らかの対抗手段は持っているだろうと期待していたがゆえに。
その痛みも、衝撃も予想の範囲内。それでも僅かに肌に汚れなどがつく。
……それでも、傷や内部に大したダメージはない。痛みは……結構あるが。
「っ!」
首に回された彼女の腕、鎖骨をへし折ったのに、その腕をまさか使うとは。
だが、痛みを無視して動く狂戦士など魔族の国では珍しくもない。
故にすぐに対応に移ろうと思ったが……艶めかしいその声に、動きが止まる。
「へぇ……面白いと言ってくれるなら、名前の一つでも呼んでくれないかい?モルガナ」
そう、声をかけて、彼女の腕を掴んでいた手を、撫でるように触れるように変わって。
■モルガナ > ミナスジェイラスの宝石触媒は基本七つ一組。
使用したのは二つ、残り五つを行使すれば首でその手刀を受けることも、
肩への強襲も受けきることは出来ただろう。
だが弊害はある。強力な相手に応じた時、お互いが強すぎると言う事実。
それが貧民地区で激突すればどうなるか、高揚し、周囲が見えなくなればどうなるか。
護国の為に魔族に対抗しうる力を得る。しかしそれを無心に奮うは人に非ず。
お互い手加減しての戦い、その中で折れた肩を厭わず組み付いた理由、それは。
「名前を呼ぶより”こちらの腕で抱きしめる”ほうが情熱的と言うものでしょう、カミール?」
形の上では己が勝ちかもしれない。だが負傷した腕を相手に差し出すことで敬意とする。
そして、己に応えてくれた相手から離れ、今度は無事なほうの腕を差し伸べて。
「富裕地区のホテルに参りましょう。強者を労うには相応しい場所を用意しなくては」
■カミール > 「ふぅん、嫌いじゃないけど。私はもっとちゃんとした腕の方が嬉しいね」
そう言いつつも顔は笑みを浮かべたまま、悪い気などはするはずもない。
離れた彼女の無事な腕を手に取りながら立ち上がる。
パンパンと足の土煙を払いながら、改めて彼女の瞳を見つめて。
「ま、情熱的なのは嬉しいよ。……ホテルね、あんたの家でもいいんだよ?」
などと冗談めかして言いながら、彼女と共に歩み出して。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からモルガナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカミールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴェルソートさんが現れました。
■ヴェルソート > 薄暗い貧民区の通りに、緩やかに響く甘いテノール。
血痕、千切れた衣服らしき布切れ、片方だけの靴…犯罪の痕跡がそこかしこに残る貧民地区では少し場違いにも思える甘やかな響きを引き連れ、すたすたと歩く隻腕の小柄な影。
柔い肉付きの肢体をコートで覆ったそれは、散歩のような足取りでゆらゆらと、甘い香りを引き連れて通りを歩く。
ハミングだけの歌声には、少しばかりの魅了と、旋律には癒しの力がこもっていた。
『…La LaLa~♪』
ソプラノ程高くないが、アルトに近いテノールの歌声が…じんわりと、周囲に染み込む感覚に、隻腕の歌唄いは愉しげに貧民地区を練り歩く。