2023/09/06 のログ
■フィニス > そっと――伸ばした指が神像に触れかけて、辞める。
細めた眼差しは、朽ちた神を見詰めて、そして柔らかく笑んだ。
「………―――だね。」
その場に誰もいなければ
言葉など誰かに届ける必要はないだろう。
たった六文字、ささやかに告げれば、少年は踵を返す。
来た時と逆の、小さな足跡。
行って、帰るそれ。
それだけが、神錆びた教会に残って――きっと数日も経てば消えるのだろう。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフィニスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > 王都マグメールの貧民地区。しかし貧民地区と一言に言っても様々な場所があるかも知れない。その内の一か所にスポットを当てるものとして、此処に立ち入る者はこの場所を地区内にある公園であると想像して欲しい。
だだ広いだけが取柄で公共の遊具はろくになく、慈善によって何か設置されたとしても次の日には心無い誰かの手によって取り壊されるか売りはらわれてしまうのが関の山。そんな公園をだ。
痩せた土壌の上に廃墟然と建て増しされてきた建造物に遮光されてほぼ日差しの入らない日陰の土地の中ではたいした植物も根付き育たず、昼間なのに薄暗い陰の差した園内には昨日まで存在していなかったものが我が物顔で置かれている。
それは公園の中心に放置された台形の石の台座であった。廃材の放棄ぐらいなら幾らでもあるかも知れない。だがその台座に禍々しい漆黒を湛えた大剣が突き刺さっているとなるとこれは中々物珍しいものとなる。
柄の部分は黒い竜の顎をモチーフにしたデザインに仕立て上げられ、開口したその口腔から長く伸びる刃渡りが鋸のような凹凸の刃の段々を作りながら分厚い刀身を形作り。そしてその刃の半ばから刃までは綺麗に台座の中に立てられるようになっていた。
あたかも御伽噺に出て来る名のある剣、選ばれた勇者や王君たちが引き抜く剣のように振る舞って。胡散臭さ、怪しさを勝り日々酒場の吟遊詩人のこぼれ話を拝聴し、数々の絵物語を見聞きしている未来にちょっとした希望を抱く子供達によってはきらきら輝くものに見えている者も居たのかも知れない。
好奇心とロマンを満たす為の玩具扱いにざわつきながら今も順番に列を成して並んでいるのが見えるだろう。
■ドラゴン・ジーン > 『俺こそが勇者!』『僕の!』『私の!!』
わちゃくちゃと所有権を競い合って男女種族を問わぬ幼い喧噪の有様。だが誰が引き抜こうと試みても結果は同じであり、どれだけ時間を費やし数多の抜き方を試行しても(既に挑戦者の数だけ剣には名前をつけられ、尾鰭背鰭のついた伝説が付随された)剣は台座より微動だにする事は無い。
台座自身の破壊を目指して木槌で叩き、土を掘って諸ともに発掘して持ち帰ろうとする強者も見受けられたがどの手段でも自分の私物にすることは適ってはいない。
次は誰が挑むかを仲間内のジャンケンに勤しんでいる子供らには恐らく見えてはいないだろう。剥き身の刃の根本の柄頭より、時折盗み見るかのように淡く輝く触角がまろび出ては周囲を見回しているのを。詰まる所は変形した生きた剣自身が自分の使い手、引き抜き手を選んでいる真っ只中なのであった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からドラゴン・ジーンさんが去りました。