2023/08/29 のログ
ティアフェル > 「わたし!19歳っ! どうだ、大人だぞ。そーだなー。ティカちゃんなら、姉ちゃんとかお姉って呼んでくれてもよき……。激しくよき……。
 ……そっか。ごめん。無神経だったね」

 まさか、これまで明るいやり取りを交わしてきた、まだ幼さの残る少女のそんなに凄惨な過去があるとは予測していなかったのでついつい無神経な聞き方をしてしまった。
 けど申し訳ないことをしてしまったと察するとすまなそうに謝罪を口にして。

 けれど、次の話題では切り替わるというか原状回復し始めるように笑いながら、ばっさり切り捨てていくような無情かつ当然なご返答。

「でしょうよ! 人は見た目に左右される生き物よっ。人という生き物として正しい判断だよ!」

 見た目の善し悪しに関しては見た者の価値観や美意識に完全依存するものであるから、この場では何も保証の限りではない。
 即興の婚姻話は泡と消えたところで。

「えっ…?! え!? なに?! なになになに!? ちょ、ティカ、ティカちゃん!? どうしたの? ねえっ……!?
 え?……い、ない……? ねえ、いないの?! ちょっとー!?」

 悲鳴とがたがた響く不穏な物音が唐突に響き渡った後は急に静まり返る扉の向こう。
 しかも、気配そのものが消え失せている……まるで最初から扉の向こうには誰もいなかったかのようだ。
 さーと蒼褪め。異常事態に背筋を震わせ。どんどんと扉を叩いてしばし呼びかけるが。
 応答がなければずるずるとその場で頽れて。

「…………」

 さすがに言葉を失った。

ティカ > 「おう。見た目なんて気にしないさ!とか綺麗事ばっか言うやつの方が信用ならねぇよ」

パステルカラーの笑い声を響かせて、俗物丸出しの持論でロマンチックなプロポーズを締めくくるチビ。
ティカだってどうせ一緒に旅するのなら美少女の方がいいので、ナマモノヒーラーの外見がどんななのかは非常に気になる。
そんな少女との心暖まるやり取り(?)からの急転直下。

―――――………しぃぃぃぃぃんん。
物音一つしない。

必死で扉を叩こうと、扉の分厚さが無情にもそれを吸引し、暗がりの中を完全なる静謐が包み込む。
死とはこういうものか……なんて不穏な思考さえ浮かぶだろう真闇。

…………ん、だん、だん、だんだんだんどかぁっ!
そんな静寂を破ったのはけたたましく近付く足音と扉に対する体当たり。
続いて響くはがちゃがちゃと慌ただしく響く金属音――――ガチャリ。
重々しい音を立て、デッドボルトが引っ込んだ。

「―――――おぉッ!? やった、開いたっ! あははっ、おいティア! 開けてやったぞ! あははははっ!!」

ついでばぁんっと蹴飛ばされるかの勢いで開かれた扉の向こう、真っ暗闇の中で長らく過ごしたナマモノ的には十分に明るく見える豪雨の貧民街を逆光めいて背負うちっちゃな人影。
雨濡れてへたっていてもところどころぴょこぴょこ跳ねる朱色の癖毛。
小さな頭部にすらりと細い四肢――――かと思えば、デニムの食い込む太腿はむっちむち。
きゅっと括れた腰に反して見事に実った双丘は薄っすら濡れ透けたタンクトップにお椀型の半球を貼り付ける。
俗に言うところのトランジスタグラマな肢体を有するのは、ちょっと生意気そうな紅色猫眼の輝かんばかりの笑顔。

「おら、呆けてねぇでさっさと出てこいって! ティアねぇ」

ドアの端を持ち上げたつま先で抑えて固定したまま、どさくさに紛れての愛称呼びを伴い手招くチビ。
ノーブラと思しき一対のお椀型がぷるんぷるんっと柔らかく弾んだ。

ティアフェル > 「あーね……でも、美人は3日で飽きる、ブスは3日で慣れる、なんていうある種非人道的な格言もあるけどねえ」

 善し悪しはともかく生涯見続けてられるかどうかがネックになるこったろう。
 だけど十代なんて顔だけで恋愛できるほどのものである。個人的には例えどんな見た目の女の子が現れようと、『かわいい!』と反応しそうな気はしている。中身がかわいいと外見もかわいく見えるもんだ。
 しかも実際――健康美溢れる元気な美少女なのだから実際目の当たりにしたら本心でのかわいいを発するに違いない。

 そしてその初対面の時は近づいていた。
 その前に胸がはらはらどきどきな展開を先に横たえて。

「……何が……起こってるの……、分かんないの恐い……さすがに恐い……勘弁してぇ~……」

 ゴリラの剛毛の生えた心臓も悲鳴からのしーんと過る静寂に縮み上がる。どうしたらいいのか。扉の内側に閉じ込められた身では建設的な考えも浮かばない。
 茫然と悄然とへたり込むばかりであったが。

「――っ…?! っひ……きゃああーっ!?」

 だんだん!といきなり激しく轟く足音、続いて扉に派手にぶつかる衝撃音。
 引き続く金属音、と連発する音に咄嗟に悲鳴を上げ頭を抱えて身体をくの字に曲げた。
 今度は一体何事なのだ!?と現状を認識するより前に、扉が勢いよく開かれながらの、少女の声。扉越しでないその声は直接耳に響くとやはり清涼感のある響きのいい声だったけれど。

「……………っへ……?」

 零れそうに大きく見開いたまなこで硬直したまま開け放した扉の向こうにいる小柄な少女に間の抜けきった声と表情で一時停止している女。
 細身なのに必要なところにはむっちりとバランスよい曲線での肉付きで。活動的な衣服の良く似合う鮮やかな朱い髪をした快活な美少女を眼に映し。
 特にそのきらきらとした猫のように光る紅玉のような眸に目が奪われて、しばし動きを止めたままであった。

「ぅ……ああぁぁぁぁぁあ~! もー! もー! もぉぉぉ~!! ちょーびっくりしたあぁあぁ! いきなり、いきなり悲鳴上げて静かになるんだから、え?ひょっとして死んだ!?ってこっちが死ぬかと思ったわあぁぁー!
 ティーカーっ! ちくしょうこのーちゃんとくそかわいいじゃねえかハグさせろー!」

 なんだろうか。安心はした。助かって嬉しい。あと思った以上にかわいい女の子きた。
 感情がぐっちゃぐちゃである。
 涙目になりつつ、うああーと奇声を上げながら立ち上がってドアの外へ、彼女の方へと迫っていく両腕。逃げなければそのままぎゅーっとそのむちむちした柔らかい身体を全身で堪能するかのように抱擁の魔手が迫るのである。
 華やかではないが清潔なエプロンスタイルのヒーラー白衣と結い上げた茶髪、メリハリは利いているが彼女ほどは扇情的ではない細身の女。激しく、意思を持ったように揺れるアホ毛が異彩を放っていた。

ティカ > ことさら露悪的にルッキズムを標榜してみせたティカではあるが、実際の所は相手の内面をこそ見ている節もある。好ましく思う男の尽くがごりごりのマッチョであり、その肉体美にぐいぐい引かれてきゅんきゅんしてしまうチビではあるが、そこに中身が伴わなければ彼らとの関係性はまるで違った物になっていただろうから。
そんな今更ながらの自己弁護はともかくとして、暗がりに一人取り残されたナマモノの不安げな姿をティカが目にしていたのなら、ちっちゃな身体に溢れんばかりの庇護欲を漲らせていた事だろう。
多少の夜目は効いても透視能力を持たぬ猫目に見えたのは無骨な扉ばかりであったけど。

ともあれ、感動の対面である。

「―――――お…っ、ぉぉお………。えっと、お前がティ……にゃぁぁあぁああッ!!?」

真っ暗闇の小部屋から、『あ、こいつがティアだ』と確信出来る面白可愛いセリフを伴い出てきたのは、埃に塗れていてさえ美しさを損なわぬ乙女だった。
王国娘としては平均的か、それよりも少し低いくらいの背丈。
緑を基調したワンピースで覆われた身体は女性的な膨らみと、中身がちゃんと詰まっているのか心配になるほどの細腰で魅力的なプロポーションを形作っている。抜いだらすごそうな身体だ。
そして何よりその瞳。
先日のバカンスで目にした南国リゾートの澄んだ海の如きエメラルドグリーンは、じっと見ていると吸い込まれそうになる。
犬の尻尾めいてぴょこぴょこ揺れるアホ毛までもがチャーミング。
ティカが想像していた姿を二周りくらいパワーアップさせた紛れもない美少女。それがナマモノヒーラー事ティアフェルの姿であった。

そんな綺麗なお姉さんが、がばぁっと嫋やかな細腕(実際のところはゴリラ的膂力を秘めた恐るべき凶器だったりするのかも知れないけれども)を広げて飛びついて来たならば、ぽかんと唇開いたアホ面で呆然と彼女の美姿を見上げるばかりであったチビはぼふんっと豊かな胸内にコンパクトボディを捕らえられるに決まっていた。

「むーっ♥ むぅぅーっ♥♥ ……む…ッ? むぅ、ふ……ッ、むぅぅぅうう~~~ッッ!?」

じたばたじたばたぺちぺちぺちぺち。
濡れ鼠の少女戦士ほどでは無いにせよ、しっとり濡れた柔肉に小さな頭部を包み込まれたチビは、鼻腔に入り込んでくる乙女のフレグランスに陶然としたひとときを過ごす物の、塞がれた呼吸器系の警告はすぐに無視できないレベルとなって必死のタップで立位乳固めからの解放を願う事となった。

ティアフェル >  初対面が適えば――まあ、これだけ自分がかわいければ他者への顔面スペックも自然と要求が高い物になるのはさもありなんとご納得。
 けれど、彼女は確かに健康美豊かで綺麗な少女だけれど、それは内側からの長所が作用しているからかも知れない、と落ち着いたあとでそんなことを思ったりもするのであった。
 
 無情に鍵のかかった扉の向こうから現れる少女は後光が差して見える程で。
 声の感じから思い描いていたよりも小柄でスタイル抜群で女の子らしい顔立ちをしていてもう眼福な娘っ子もいたもんである。
 だから抱き着かれるのは諦めて欲しい。その見た目が悪い。

「ティア姉だよおぉぉっ、マイエンジェルティカちゃーんっ! この救いの天使め! うっかりこのまま持って帰りたくなるじゃないのよそんなわたしを責任もって止めるがいい!」

 一体何の責任だと云うのか。ティアねえ、と呼んでくれたことにも相当気をよくして。唖然としている彼女を隙あり!と首尾よくハグすると。

「うやあぁ~ん、ちっちゃくって柔らか~い! かわいい~かーわーうぃーうぃー、嫁ぎたくなったらいつでもおいでぇえ~? もう24時間体制で待機しとくぅ~ぅ」

 相変わらず全力の世迷言をほざきながらどちらかといえば小柄な部類の己の腕の中にもすっぽり納まってしまうが、その中でも一部はみでそうなほどむっちむちのトランジスタなグラマーをとくと堪能し。胸の中にむぎゅむぎゅと苦しいくらい埋めて超御満悦。
 雨で濡れた肌の感触が妙に艶めかしい。なんだこの生き物は魅惑の権化かよとしばし彼女の呼吸と迷惑顧みず抱擁カマしまくっていたが。

「わっ。ごめんっ! 大丈夫?! ごめんね、あんまりかわいかったもんでついついつい……マジすいません……」

 気づけばめっちゃ苦し気に腕の中でもがきながらタップしてくる小さなお手々に、ぱぱぱっと慌てて両腕を離して介抱し、申し訳なや、とその小さな背中をさすっていきます……。

「ごめんね、でも助かったよ……本当にありがとうっ!」

ティカ > 喜色満面のヒーラーが紡ぐセリフは、やはり間違えようも無いナマモノのソレ。マイエンジェルティカちゃんとかやめろ本気で照れる!
冗談抜きで死からの生還を果たしたという事もあるのだろう。
元々テンション高めな気質も相まって、ティカフェスティバル開催中の彼女には必死のタッピングも届かない。ぎぶぎぶぎぶgbbbbbb………。
解放された時には陸揚げされてたっぷり時間のたったお魚みたいな顔でぐでぇ…っとなっていた少女戦士だったが、本職ヒーラーの甲斐甲斐しい介抱によって復活を果たした。

「ぶはぁぁああぁああ~~~……ッ。は―――っ、は―――っ、ま、まじで死ぬかと思った………恩返しのハグで死ぬとこだった………」

カビ臭い廃屋の空気は先程ティカを包み込んでいたお花畑の芳香とは到底比べられる様な物では無かったが、それでも瀕死の脳細胞をしっかりと賦活させてくれた。
そうして改め見上げる美貌のお姉さん。
思わず溜息が漏れるすらっとした美人。
…………本当にこれが先に言葉を交わしたナマモノなのかと疑問に思う程の美人っぷりではあるが、間違いなかろう。
へたり込んでいた格好からすっくと立ち上がり

「――――へへっ、まぁ、何にしても出られてよかったよな、ティア姉。あたしに感謝しろよぉ。あたしが居なかったら本気でヤバかったかも知んねぇんだかんな」

両手を腰に当て、すけすけタンクの豊乳をぷるんと張って恩着せがましいドヤ顔で年上のヒーラーを見上げるチビ。
まぁ、ただ単に雨宿り先で偶然閉じ込められていたドジと出会って、会話の途中でいきなり近くに落ちた雷の稲光で偶然鍵を見つけ、それを使ってみたら偶然扉が開いたという何ら誇るべき所のない出来事だったので、ティカ的にも今度冒険者仕事に付いて来てくれると嬉しいな程度の気持ちなのだが。

「――――おし、それじゃあ帰…………」

どざぁぁぁああぁぁあぁあああ――――ッ。
差し出した小さな手指で解放されたお姫様の手を取り、大団円の幕引きの中で帰路に付くはずだったのだけれども、穴だらけの壁向こうでは今なお旺盛な、というよりいよいよもって本格化した気配のある集中豪雨。
真顔でそれを見つめ、そのまま傍らのヒーラーを見上げる。

そろそろ日もくれるだろう頃合い。
無理矢理帰るならもう今しかあるまい。
隣のナマモノが帰るというなら共に突撃する覚悟を決める。
彼女がこの廃屋で一晩過ごすというのなら、ティカもまたソレに付き合うつもりだ。
どしゃぶりのお陰で今は周りに人気も無いが、ここは悪名高き貧民街。
ティカとて何度もここで襲われぐっちょんぐっちょんにタダマンされた魔境なのだ。こんな美人なお姉さんを一人残して行くわけにも行くまい。

――――引くも征くも大変そうな豪雨を二人の少女がどの様に乗り越えたのかは、吟遊詩人にも語られる事のない二人だけの冒険譚だ。

ティアフェル >  照れない方がいい、嬉しがってもっとやるからこのゴリラは。と彼女に忠告してあげる第三者は不在だったので、ティカ様降誕祭晩夏の巻をゴリゴリ強引に開催中ではあったものの。
 ご神体(ティカ様)がお苦しみ遊ばしておられる。これはしたり。
 ただちに天使を救命せねば、とは云っても解放すれば自発呼吸に問題がないのだから呼吸困難に陥っていた彼女のお背中を擦るくらいしかヒーラーもやることなし。

「いや、正直すまんかった……天使を窒息させるとこだったよ、悪の歴史に名を刻みかけたわ……危ない危ない」

 埃交じりの空気は良いとは云えなかっただろうが、それでも持ち直してくれた様子にほっと胸を撫で下ろして。
 拘束具というか拷問具になりかけていた腕から解放した朱髪の少女を改めてじーっくり眺め。まるで少年みたいな言葉遣いが裏切ってくるような可憐な見た目。
 女の子ってみんなとってもかわいいがこの娘はまたぴか一である。
 ナマモノは今日天使のご降臨を目の当たりにしました。
 立ち上がる彼女を視線で追いながら、よいしょ、と裾を払って膝を屈して背を擦っていた体勢から立位に戻し。

「感謝とともにいっそ信仰すら湧き上がりそうな勢いだよわたしは。ヒくならヒきたまえ。
 でも、ほんっっっと~に! 良かったあぁぁ……もう、一時はティカちゃん死ぬ、わたしも死ぬ。バッドエンド…って一瞬本気で思ったよ。もう……今年イチのはらはら。
 無論この恩は忘れえぬよ! ……とりま、肩凝り治す?」

 お礼の一環として、とそのワガママバディの影響で。目線釘付け状態にするバストのせいで凝ってそうな肩の状態を改善させようかと、遠回しなセクハラ発言。
 落ちていた鍵を見つけてくれたとは、詳細を尋ねてみると返る返答に。この子は本当に探索のスキルが高く冒険者向きなのだとつくづく実感し。
 冒険に出る、回復役が欲しいなんてことになれば。即都合つけて駆けつける。

「いや帰――――れないっしょ、コレ……。
 ま、遅くはなるけど雨宿りしてからのがいーわ。冒険者とは云え無用な危険は避けるべし。豪雨甘くみたら行かんのよ……その内やむっしょ。それまでティアねえが温めてやろうじゃないの……なお。暑いという苦情は聞き入れません」

 差し出されたかわいい手を握り返して、果敢にも帰宅を選択しかける彼女を引き留めるようにくいとこちらへ一度引っ張り。
 ごうごうと激しく街中を降りしきり、不浄の一切合切を洗い流しなんならそのまま降りしきり世界をウォーターワールドに変貌させてしまいそうな夏の豪雨だったが。
 やまない雨は存在しないということで、気長に雨脚が弱まるのを待つのである。
 もう、鍵のかかった部屋には立ち入ることはなく。暇にあかせて無暗に中を探索する必要も、今日知り合った美少女戦士なティカ様がいてくれればないのである。
 廃屋をうろつく代わりに、雨漏りを避けて廃屋でおしゃべりに興じて過ごす夏のひと時。

 今度は一緒にどんな冒険に出れるだろう、とそんな計画を立てようともしたかも知れない。
 廃屋には雨音に交じって楽し気な声がしばし響くのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。