2025/02/12 のログ
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エリザベート >  
「お主も全ての王族や貴族がそうではないとわかっているからこそ、
 居心地が悪いと知りつつもこのような場での仕事を受けたのであろう?
 ま、妾が優しいかどうかはまた別の話であるな♪」

再び扇を開き、口元を隠したままに笑う。
しかし男が続けた言葉には、僅か眉を顰め口を尖らせる。

「当たり前じゃろうが。
 褥に誘う相手に最高の女でないなどと嘯こうというのか?
 その日誘う女はその日の最高の女以外ありえんじゃろうが。
 格好や所作は兎も角、いまいちデリカシーには欠けるのう、お主…」

出自を知るならば、それも已む無しではあろう。
最低限殿のえられたように見せる程度は教育され、知っているのだろうが。

「こうした会話でボロが出るようではまだまだじゃのう…。
 妾を靡かせようと言うならば、それ相応の男でなければな?
 …犬のモノマネ?やめよやめよ、お主がミレー族といえどそのような悪趣味、妾にはないわ」

夜会においてのもてなし。エスコート。
その当たり前で良いのだということを伝えてみよう。
知らぬのであれば教えよう、解らぬのであれば伝えるべく。

──途中、ミレー族と話す女へと軽蔑するかのような視線が注がれる。
貴族に従事する奴隷としても扱われるミレーの男と会話を弾ませているようにも見えるのだ、無理もない。
しかしそんな視線を、女は一つ睨みに黙らせる。

「居心地の悪い場には、違いなかろうがな」

しかしそれも青年がミレーである以上、仕事を請けた以上は耐えねばならぬこと。

クロス > 「まぁな。別に困っているわけではないが、報酬が高けりゃその分楽に過ごせるからこういう場所でも働いているってわけだ。
本音を漏らせば、めんどくせぇがな…。」

(叶うのならば貴族や王族と共に行動するなんて真っ平であるが金が良ければ受ける、そのぐらい適当なのである。
だが、行う仕事は丁寧だ。)

「おっと?気を悪くしちまったか?そりゃ失礼…。
ま、あんたの言っていることは当然ではあるな。」

(所々ボロが出るのは仕方がないことだろう、なんせ適当なのだから。
だが、言われたことに関しては受け止めている。)

「…フッ、やっぱりあんたは他の貴族と比べていい人そうだな?

エスコート?それぐらいならば他の依頼でもいくつもやっていたがな。」

(貴族に接客することは経験として何度もあり、その度に様々な様子を見てきた。
だからこそ、上級階級の人間を気に食わなかった理由もそこにあったのだ。
一度その場で足並みを揃え、軽く服の表面を掃うと隣へ並ぼうとする。)

「…では、御婦人。何なりと…
ご無礼がございましたらお伝えください、善処致します。」

(並んだ後に再度喋り出す。
その口調は初対面の時に見せたよく躾けられた執事そのものの雰囲気を出し、丁寧な言葉遣いを使い始めた。
軽く手を差し出し、いつでもエスコートできる様に相手の手が来るのを待つのである。)

「…お気になさらず、慣れておりますので…」

(彼女が睨みつける前に感じた周りの視線はクロスはとっくに知っていた。
痛い程体に突き刺さるのを感じていたがどうでも良く、全て無視していたのである。)

エリザベート >  
「お主くらいの体格ならば力仕事がいくらもあろうものじゃがな。
 …くふふ、そうそう…こういう場ではそういった言葉遣いのほうが良い男に見えるぞ♪」

言葉遣いを直した男の差し出された手をすっと白指がとり、並び歩く。
長テーブルには趣向の凝らされた料理やデザートが並び、王族や貴族達は各々歓談に興じている。
その中にミレーの男と共に、というのは些か目を引く行為だろうが、最初に一瞥をくれてやった以降、女はそれを気にすることもない。
そんな中で。

「慣れることなどあるまい」

はむ、と切り揃えられたみずみずしい果実を口にしながら、そう小さく呟く。

「愛のない痛みが突き刺さることに慣れる者などおらぬ。
 それはただ、お主が我慢強く、強靭に耐えているだけのこと」

「王族や貴族に使い潰されるミレーの扱いなど、腐る程見てきたからのう。
 ──お主も、今宵は良いがあまり王城の仕事には関わらぬほうが良いぞ。オスであってもロクな扱いは受けぬ」

それから、ミレーの男といくらか夜会の時間を過ごしただろうか。
夜会の会場の椅子に腰を落ち着け、宴も闌、王族達の姿も少しずつ、疎らとなってきた頃合い。

「──うむ。そこらのボンボンや腹でっぷりのスケベ男よりはよーっぽど良いエスコートであった♪
 お主の雇い主には目をかけてやらねばならぬかな。」

言葉に嘘はないのだろう、久々にまともに夜会を満喫した女は上機嫌そのものだった。

クロス > 「ありがたきお言葉、感謝致します。」

(褒められた様子の言葉を受け取れば優し気ににこっと笑い感謝の礼を返す。
自身の手に相手の手が重なれば優しく包むように指を曲げ、長い脚も歩幅を合わせながら歩く。)

「…忠告の言葉、恐縮です。
今後の依頼につきましては、後程検討させていただきます。」

(手を取りエスコートする貴族の婦人。
その言葉を聞くも男にとってはあまり馴染みのない言葉ばかりであった。
一瞬、驚いて戸惑う様な心情になるもすぐに平常心となり、テンプレの様な返答を返すがその言葉は男にとってありがたいものとなっていた。)

「ご満足いただけた様子で私も嬉しく思います…依頼主にもこのことはお伝えさせていただきます。」

(最も依頼主はこの夜会の主催者であるため、ここを去るごろには嫌でも顔を合わすこととなるだろう。
だが、今の男の心の持ち様としてはかなり楽な心情であった。)

「…失礼ながらご婦人、褒美の方はいただけるのでしょうか…?」

(少しだけ沈黙を作り胸元に手を添えて質問を投げかける。
男の本来の目的は今目の前に居る婦人と夜を過ごすことであったが、これまでの経緯のせいか少々口に出しずらかった。
そのせいか、自身が放つ質問も少々戸惑いの様子があった。)

エリザベート >  
「褒美か。この夜会の主催者であるお主の雇い主に今後妾が懇意とする。…では不服か?」

言いたいことはわかっている、と言いたげに笑みを含ませて、女は言葉を続ける。

「不服であろうな。そもそもが褥の誘いを持ちかけてきたお主である故。
 ──ああ、もうそのような言葉遣いは良いぞ。エスコートの間だけで良い。
 そうであるなあ…。妾も色を好むほうである、というのは自覚してはおるがのう」

ばさり、と扇を開き、笑みを覆う様、口元へ。

「其れでも、誰にでも股を開くような安い女ではないぞ。
 出会うたばかりの、名も知らぬミレーに身を任せるというわけにはいかぬな。
 ──そのような褒美を期待して仕事をしてくれたのであれば、些か欲が強い。チップであれば、弾んでやるがの」

クロス > 「…そうかい。
ハァァァ…やっぱし、この喋りはちょいと疲れるな」

(言葉遣いはもう良いと言われればすぐに気を抜いて大きなため息を漏らす。
首を左右に振り、またしても執事らしい清楚な空気は消えるのであった。)

「…ああ、確かにあんたを見た時にはいい女だ、抱きてぇと思ってあんな嘘はついたさ。」

(白状するように口を開く。
出会った時に飼われていた事、主人が部屋で休んでいる事、その全てはこの女を部屋に招き入れて犯そうとしていた男の浅ましい欲望であった。)

「だがな、正直できるなら嬉しいと思うぐらいだ。
あんたが「嫌だ」と言えば俺はこのまま身を引いて、報酬も貰ってこの場から去るだけだ。

あそこまで真正面から素直に説教してくれたんだ、それなのに俺の単純で卑しい欲望を叶えろなんざ…あんたが俺にしてきたこと、恩を仇で返す事だ。」

(ミレーであり、貧民地区出身であり、そして礼儀も本性を露わにすれば無いに等しい自分を認め、庇った。
そんな姿を見れば自身の持つ性欲を素直にぶつけることなんかできなくなり、相手に対して敬意の気持ちが沸き上がると言うものだ。
今もできるならラッキー程度であり、相手が断るならば男もすんなりと受け入れる心持ちである。)

エリザベート >  
「ふっふふ、お疲れ様じゃったな。良いエスコートであったぞ?」

それお主も飲め、と。
本来であれば侍従たるミレーには与えられないような高価な酒のグラスを差し向ける。
ミレーである、ということで区別をしないというスタンスは本物なのだ。

「くっく、しっかりと筋も通っておる。
 嘘をついたことを称賛はできぬが、魔が刺すことなど男であればいくらもあることよの」

あくまで女は愉しげに言葉を続ける。
まるでその心底を見透かす様な銀の瞳が、ミレーの男を見つめ。

「それでいて、褒美が欲しいと宣うのであるから可愛らしいものではないか。
 しかし先も言ったが妾は決して安い女ではない。一度のエスコートの代金としては、少々高いな?」

ゆらゆらと、口元の扇を揺らしながら、何かを思案するようにすれば。

「今宵のところはこの夜会を存分に愉しむが良い♡
 飯も酒も喰らい放題じゃぞ。文句を言うものがいたら妾が一睨みしてやるわ」

気に入った女がいたならば、口説いて持ち帰っても良いだろう、と。
この夜会を存分に愉しむ権利、を。褒美として保証しようというのだった。

クロス > 「そいつはどうも、何度も貴族の手を取って歩いていたからな。
その経験が今に生きたんだろうさね…」

(差し向けられた酒を一度見る。
明らかに高価な酒であるせいか、少しの間受け取らずに眺めてようやく受け取る。
高すぎて恐ろしいと言うのではなく、高いせいで口に合わないのではと言うことを考えていたのだった。
受け取り飲めば予想通り、上品すぎて旨いのか不味いのかもわからないが、今回の酒はアタリの様に思えた。)

「…どこまでも勘が鋭いな、そこまで見透かされるとは…。
流石の俺でもできない芸当だぜ。」

(これまでの行動、これまでも発言全てを読み取って心の奥底まで見透かす観察力。
男も似たようなことが出来るが、その先から色々と思考するまでに脳を使うことはあまりなかった。
そのせいか、今目の前の存在を羨ましく思う。)

「…いや、結構。
今回はあんたの説教と今貰った酒、そいつを今回の追加報酬にさせてもらうさ。
どうにもここの空間は落ち着かなくてな。」

(貴族も王族も少なくなり、人目も気にする必要がなくなった頃合い。
振り向けば旨そうな料理に高級品の酒が並ぶがそれを軽く見ては目線を外し遠慮すると言う。)

「…あんた、あんな扱いをされるならこの王城やら貴族の居る場所やらは避けた方が良いと言ったかもしれないが…ちょいとそれはできなくなったな。
俺は変な所で一途でな…あんたを抱くと決めたなら、いつかそれを叶えようと行動させてもらうかもしれないな。
ま、またどっかであったらその時はまたしっかりとエスコートするさ…それじゃ、楽しんでくれ。」

(そういったその場を去ろうとする。
男の本来の計画とは大きく離れてしまったがそれでも別の意味で満足し、満たされた気分であった。
何時しか夜を共にする野望は残したまま、再度彼女と出会うことも考えながら今回の依頼を終えようとするのであった。)

エリザベート >  
夜会の場、背を向け去っていくミレーの男を見送って。
ふむ、と扇を畳み。

矢張り、ミレーという身分であるが故、
素直にこのような場を愉しむことはできないものかと。

「もう少しマシな褒美を考えてやっても良かったかのう。…しかし」

その姿が夜会の客に紛れ、見えなくなれば。女は一つ嘆息して。

「女を褥に誘うのであればまず互いの名前ぐらい知らねばならんということも教えてやるべきだったかのう」

結局名も知らぬまま、ひとときを終えた白魔女は面白いモノも見納めたと、その夜会から姿を消すのだった。

ご案内:「王都マグメール 王城・夜会」からエリザベートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城・夜会」からクロスさんが去りました。