2024/02/11 のログ
ご案内:「王城/礼拝堂地下書庫」にマーシュさんが現れました。
マーシュ > 静謐。
それをかすかに揺らすのは、頼りない明かりを手にページを手繰る音。
文字を追うのは常習慣にしていることでもあるけれど、今は取り留めのない思考をまとめるための時間としてそうしているようだとどこかで理解しつつ。

読書のために用意された机につくでもない。
林立する書架の合間に佇み、手にしているのは過去の事務報告を綴りまとめたものだ。

べつに事務処理で必要としているわけではない、ただ、そこに何らかの端緒が────あるはずもないことを理解はしている。

己の来歴が刻まれているとしたら、それは本来所属している聖都の修道院だろう。
数字と、無機質につづられた文字を手繰ったとて、そこに宿る真実をくみ上げることは難しい。

「────」

うつむきがちの視線。やや黄ばんだ紙片をなぞる指先は平素のまま。
何を期待しているわけでもなかったが。

マーシュ > ────小さなため息が落ちる。
揺れる明かりに、影が長く伸び、その灯影の揺らぎに合わせるように躍る中。

無為に字面を追う眼差しが緩く瞬く。
挙措に合わせるように静かな衣擦れの音が響き、頭巾布の端が肩から滑り落ちた。

───己自身としては、過去にさほど目を向けたいわけではない、のが本音だ。
己自身のことだといわれても、現状に不満を覚えているわけでもない。
何より己の存在の不都合な事実や、理由を隠すためだとして──果たしてそれを暴くことは、良い事なのだろうか。

己の立場を詳らかにしたいと願う人の気持ちを汲みはするものの。
……もっと簡単な解決方法があるのも分かっている。

それを口にして、それを是とされるかはわからない…というよりは───きっと詰られる程度で済まないことも。

マーシュ > 「聞かないと、わからないこともあるんでしょうけれど───」

果たしてうまく聞き出せるかどうかは、彼次第といったところではあるが。
面白い事実が明らかになるわけでもないだろうな、というのは予想ずみだ。
あるいは彼の思惑通りに事が運ぶ目算のほうが低いのではないかと思ってもいる。

さり、と指がページをめくり、視線が文字の上を滑ってゆく。
数字と文字の羅列。
見るともなしに眺めているその情報はすでに知っているものだから。

───知りたくないわけではない、己知らない己の過去を詳らかにすることを否定するわけでもない。
けれど、けれど、だ。

己は現状以上を求めているわけでもないことを、自覚もしている。

────ぱた、と書を閉じる音。
元の場所に書籍を戻すと、明かりを手に静かに地下書庫を後にする。
あと数刻もすれば、朝の祈りの時間になるだろう。
短い微睡に浴すくらいの時間はまだ残っている。

石の階段をのぼり、扉が閉ざされるとそこは闇に閉ざされ。
かすかな足音もまた遠ざかっていった。

ご案内:「王城/礼拝堂地下書庫」からマーシュさんが去りました。