2025/03/30 のログ
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アイシャ > 冗談かと確認した言葉の内容が示されたことにより混乱した思考は一時の平穏を得る。

けれどそれも束の間のこと。
気づいた時には、王女の思考を奪っているのは視線だけではなくなっていた。
頬の上をすべるその掌も、眦を撫で、髪に絡む指先も、問いかける言葉も。
まるで、ゆっくり獲物を絡め取っていく張り巡らされた糸に囚われたかのような錯覚。

「わたし、わたし……っ」

ぐるぐると思考が再び混乱し始める。
医師の体を突っ張ねて逃げなくては。
このまま、こうしていたらいけないのだから。

そう思うのに、体が動かない。
金の瞳に、絡めとられて、動けない。

名前を呼ばわる声に、霞めるように重ねられる熱に、だめ、と小さく唇を戦慄せたのに声もならない。

「っん」

唇を喰まれる感触に、せめて男を押しやろうとしていたはずの指先が縋る形に変わってしまう。
自分には、既に全てをささげたひとが居るのに。
解っているのに。

密やかな情事は、現実ではないから物語の中だけで都合よく終わるのだ。
決して現実に起こしていいことではない。
性にひどく寛容な血筋に生まれた娘ではあるけれど、倫理ぐらいは持ち合わせている。
なのに、それなのに、現実と閨物語の合間を行き交うような現状に踊らされて、絡めとられるまま。

「カミュさま、わたし───」

断らなくては。
頭でははっきりと理解しながら、男の掌に逆らうことが、もう───叶わない。

カミュ > <<移動します>>
ご案内:「王都マグメール 王城 宴席のバルコニー」からカミュさんが去りました。
アイシャ > 【お部屋移動します】
ご案内:「王都マグメール 王城 宴席のバルコニー」からアイシャさんが去りました。