2024/12/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」に菖蒲さんが現れました。
■菖蒲 > マグメールの地下深く、そこには城塞都市攻略のための闇があるという。
アサシンギルドに舞い込んだ依頼の一つを差し向けられ、どうだ?と誘いを受けたのが始まり。
そこに捕らえられているはずの私の娘を助け出して欲しい、大っぴらに表向きなギルドで依頼をしたら王族に目をつけられて自分が捕まってしまう。
だからこそこの後ろ暗いギルドを通したということなのだが、如何せん相手は国だ。
大体のギルドメンバーが嫌煙する中、無鉄砲で考えなし……否、依頼をえり好みしない彼女ならと回されたのだ。
そうして城の裏側に回り込んだ小さな影は、きょろきょろと左右確認をしてから城壁を見上げる。
「ふっふーん、こんなの朝飯前だよっ」
でこぼこの凹凸が多い壁面、岩のブロックを積んで築き上げたそれは外敵の侵入を拒むはずだった。
しかし、僅かな出っ張りや窪みに目をつけて目を眇めるあやめは、得意げな顔で音なく飛び上がる。
数メートル頭上の数センチの突起を踏みつけると、左へ飛び上がり、今度は手を伸ばして僅かな穴に指を引っ掛けていく。
片手でブランコをしながら壁を蹴って宙返りで跳ね上がると、ブロックの継ぎ目に指先を引っ掛けて掴まっては反対側へ手を伸ばして、その先の出っ張りに乗りあげた。
その繰り返しで壁上の反復横跳びを決め込みながら数分もせずに壁の向こう側。
植木の裏へ、風に揺れる木々の音に紛れて飛び込むと、緩慢な動きで頭を上げ、鼻から上だけを覗かせる。
くりくりと灰色の大丸が右へ左へ傾くと、裏口の扉を見つけ出す。
吹き抜ける風、ざわめく木々、流れる夜空の雲に生まれる影と共にあやめは壁へ張り付いて扉に一直線だ。
「鍵は……うん、掛かってるよねー。まぁ、これぐらい簡単簡単」
ドアと枠の隙間を覗き込み、飛び出しているロックを確かめつつ腰のポーチを探る。
針金を複雑に曲げたようなモノがいくつも垂れ下がる鍵束を取り出すと、一つ一つ差し込みながらその形を噛み合わせるようにして鍵を外していく。
カコンと音を立てて解錠されると得意げな笑みで唇の端を釣り上げて、道具をしまい込む。
耳を澄まし、ドアの向こうに足音も気配もないのを確かめてからドアの向こうへ。
後手で扉を音なく締めながら、薄暗い城内を見渡していった。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にジュリアスさんが現れました。
■ジュリアス > 地下深くへと近づいていくくノ一。当然そうなれば光などなく、ろくな明かりもない。
だとしても、その奥に進めるだけの技量、そして目と訓練の成果がこの幼子にはあるのだろう。
そして近づけば近づくほど、異様な熱のある空気が醸し出されていく。
甘い香りと青臭い香り、そして機械油の香り。
そこにある魔導機械が製造、そして改造される過程で発する独特の匂い。
「………………ふむ」
書類を片手に、何かを書いている。それは今し方完成したばかりの魔導機械の記録。
薄暗い城内の奥。なにかを記録した書物が多数収められている空間。
そこに腰を曲げて椅子に座る老人の姿。ロウソクを灯して、本を読み、そして書いていく。
様々な書物が納められるそこ。円状の部屋は壁際に本棚が収められて、真ん中にある机に座る老人。
このような場所にいるのだ。非常に怪しいのは当然として、ロウソクに照らされた顔は褐色と白の半々というのがさらに雰囲気を作っている。
最も、見た目はただの老人。瘦せ気味であり、そうそう後れを取りそうにはないだろう。
「…………やはりミレーではないとあまり魔力の確保は出来んか」
そう、呟いてビリリと書類の1枚を破く。
■菖蒲 > 薄暗い廊下に差し込むのは月明かりと隣り合う部屋のランプの明かりのみ、夜目にはっきりと見える道筋を辿りながら地下へ続く階段へとたどり着く。
ここのはずと脳内地図と照らし合わせると、影となって地下の暗闇へ沈んでいく。
石段を下るにつれて鼻に届くのは、幼い体には来る時のために教え込まれた時にしか感じなかった性の匂いに似ている。
精液が発する独特な匂い、それと絡み合う媚香と相反する鉄に塗りたくられるような黒の香り。
機械があるとは聞いていたものの、そもそもが機械に疎いのもあって、変な匂いときょとんとした顔をしている。
けれど、この変な匂いが悪の根源といった直感……というより思い込みに近いそれで意気揚々と階段を下り続けた。
地下に下るほど普通は冷たくなるのに熱を感じる違和感、やっぱりここがそうなのか?と思ったところで階段が終わる。
「……!」
気配も消したまま静かに壁越しに覗き込む先は、魔術師の隠し部屋といったところか。
ろうそくの明かりだけでは天井まで照らせるか定かではないが、それでも照らされる範囲の円形壁は本棚で埋まっている。
その中央に鎮座する老人は、童話で見るような置いた魔術師やら賢者やらという印象が一瞬浮かぶ。
けれど、あやめの目が瞠目していったのはその顔の色合い。
(「あのおじいちゃん、白と茶色ではんぶんこだ」)
怪しい、とても怪しいとジト目になりながら様子をうかがっていく。
しかし機械の油臭さや熱、性の香りがしたはずなのにその正体が全く見当たらない。
さらにこの奥に隠し部屋があるのかも?だとしたら、その入り方を知っているのはあの老人のみ。
そしてミレーと魔力というワードが聞こえれば、関わりがあるのは最早確定したといえようか。
にまっと唇の端を釣り上げながら重ね衿に掌を突っ込んでいくと、取り出したのは一枚の卍手裏剣。
手裏剣馬鹿と里で揶揄されるほど手裏剣をぶん投げることに関しては、負け知らずと自負するあやめがもつ、半ばコレクション化した一枚だ。
(「このお注射手裏剣でシビシビしてもらおっと」)
深く突き刺さらない様に刃が浅くも鋭く付けられたものだが、刃の部分に細かい溝が彫り込まれている一品。
これによって傷つけたところから溝に仕込んだ薬を染み込ませ、言葉通り注射のように薬を回り込ませるものだ。
当たれば大の大人でもろくに身動きできなくなるような代物だが、手刀一線よりまし。
そんなことしたらぽっくりいくかもしれない。
ごめんねなんて身勝手な謝罪を心中独白すると、ニヤケ面が引き締まった。
油断もドジもするが、戦う時のスイッチぐらいはある。
それでも顔に迫力はないまま手首から先を壁の外へ出して、スナップだけで素早く投擲する。
ひゅんっ!! と風切音が鳴り響き、風車の様に回る手裏剣がまっすぐ彼へ放たれた。
狙いは肩、そこなら少し薬が回るのは遅くても出血で死ぬこともないだろうという考えである。
問題は、目の前にいる彼がただ見た目通りの老人であると完全に信じ切っていることだろうか。