2023/09/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――何かと厄介事が続く。

昨今、内憂外患を地で行くような有様が続いていれば、少なからず気が滅入る。
やれ周辺諸国の動静が怪しいと思えば、王国内で今も続く内戦に奇妙な動きが生じ出している。
どれに兵力を割り当て、何処の駐屯地や砦より兵力を回し、如何に対処を図るか。
出資を渋る有力貴族たちに声をかけ、軍議を続ける騎士や識者からの意見を募り続け、気づけば。

「……もうこんな時間、かぁ」

王城の一角、中庭を見下ろせるバルコニーの一つに夜風に当たろうと立つ姿が一人ある。
長い金髪を揺らし、黒い騎士服に剣を吊るした姿は如何にも女騎士然としたもの。
だが、襟元の徽章や纏うマントに描かれた紋章が、どのような身分であるかを示している。
一つの軍団を纏め、束ねるもの。師団長。
有力者、力あるものに違いない姿がバルコニーの手すりに身を預け、――だらりと垂れる。

「ひとまず、勝手にさせてもらう許可はとりつけたつもりだけど、ん。どうしようかなー……どうしようか」

現状として部隊編成を整え、大きく行軍、進撃できると思える時期、タイミングではない。
しかしながら、主に城塞都市アスピダ方面で幾つか気になる動きが生じつつあるように思える。
それらにさながら大鉈を振るうように、軍団を差し向けるのが最良――という判断が出来なかった。
それこそ、かつての自分のように冒険者のパーティか、そのレベルの小隊を出した方がより効率的でないか?と思う程に。
嗚呼、それになにより。デスクワークは飽きた。出かけたい。そんな個人的な欲もある。

そんな思いに息を吐いていれば、遠く遠く、押し殺した嬌声が聞こえてきた気がした。

アマーリエ > この手の事は、いつもの事だ。女官を誰かが手籠めにしてるのか、或いはその逆か。
誰かお手付きにしておけばよかったかしら、と。ぼそと零す。
こうも色々と時勢が動き出して忙しさが増していれば、欲求不満も溜まるもの。
せめて前線に出張っていれば修羅場に気が紛れもするが、最近は部下たちが止めてくるのだから困る。

「……やっぱり、前に出なきゃね。じっとしてられる性分じゃないわ。ねぇ?」

だが無理だ。最後の詰めの一手、二手前三手前の段階で兵力を然るべき場所に集め、打破する。
今のタイミングはまだ、その頃合いではない。そのように思えない。
数は力であり、騎馬などで速度を得た数は槍に例えることもできるだろう。
そのような兵力は歩兵と比べて数を多く揃えることができないかわりに、正しく使えば強い効力を持つだろう。
だらーとうなだれた顔を起こし、ぽつと呟けば、遠く遠く――応えるものがある。

 ――応えるものは言葉を使わず、咆哮を以て応える。

そのものが居る場所は城内ではなく、王都郊外に設けられた住処だ。
其れでもなお、力ある生き物が放つ咆哮は遠く離れた場所に届くらしい。
故にか、先程聞こえた声の主が慌てふためく声や気配に、ちろりと舌を出して身を起こす。

「ちょっと悪いコトをしたかしら? ま、気にもしないけど」

興を削がれたのか、足音強く去っていくような様子を察しつつ、ひらりと身を回す。
長い髪の先やマントを揺らし、手摺に背を預ければ、少しずつ秋めいた風を横顔に受ける。