2025/02/22 のログ
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ルーベル > 夜会に参加する貴族には色々な思惑がある。
きらびやかなパーティーはその開催そのものも、参加すること自体も、ある意味では貴種の嗜みでもあるだろう。
そこでのやり取りは参加者の内容にもよるところ。王侯貴族らが多ければ政治的な遣り取りまで含めた場。
年若い新鋭の貴族たちが多ければ顔つなぎ、縁を広げていく意味合いも強くなり。

そして今日は明月と名を関した夜会で…その意図はこちらも様々。

初老の魔導士貴族は、今宵はどうやら夜すら明るく照らすもの…そういうものを散りばめた、いわば貴族の先見を披露するような夜会かと目星をつける。
参加者がそういうものを好むパトロン気質強いものと、そういった者たちがアピールしたい影響力を持つ者が多く。それらとの縁深い貴族以外の参加者も、散見され、縁を繋いでいるからで。

己はアピールされる側なのだろう。魔導師貴族の好むような技術をといくつか紹介され、後日の伝手を約束もして。

それなりに実入りのある中。明るい月の中でもその夜色を際立たせるような衣装の女に、視線を惹かれる。
宴もたけなわ。ここからはそれぞれの好きに動くものが出る時間。

男もそれに合わせ、一番興味深いもの。相手にと、足を向けて。

「今宵はいっそう美しく見えるのぅ、ドリィ。その衣装はよくよくそなたを知って仕立てられておるの」

かつては高級な娼婦として王侯貴族の噂に上っていた相手の名を呼び、その装いを褒める。
己もかつての客として縁があるから、その豊満な肢体と、それを余すところなく見せつけ飾るドレスをと、足元から彼女の夕暮色の瞳まで眺めあげて。
己がわざわざ指摘せずとも参加者たちはその仕立屋のことは、とうに探り聞き及んでいるかもしれないが。
それを着るからこそ今宵の彼女は普段以上に美しいのだろうと、宣伝に一役買う形にはなるか。

もっとも、男は世辞のつもり以上にその暗金を満足そうに細めているから、美しく在れと望む仕立屋と、好みが一致しただけ、ともいえるかもしれないが。

ドリィ > 女は随分と若い時分から雇用され、ハイブラゼールの高級娼婦になった。
ただ、酷く幸運であったのが── その娼館の女主人の奇特さであったろう。
房中術より先、その女主人は自らの館の“娘”に徹底的に躾を施し、教養を施した。
王侯貴族と渡り合えるだけの品格を、社交術を。肉体よりも内奥に宿す美しきを。

だから、女はこの場に奔放に咲くことができる。
色を見せつけ肉を売る、鬻ぎ女として、だけでは無く。───夜会を彩る徒花として。

「あら。 何方かと思ったら、──…アルカヌム卿。」

玻璃の薄い縁に寄せた厚ぼったい唇を離し。女は口角を綻びにもちあげる。
夜天色の艶生地に、星々を思わせる微細な綺羅星を鏤めたドレスを纏い、
惜しげも無く曲線美を晒す女は、それでいて下品と上品の境界線を弁えていた。
軽く驚きを模し、まぁるくした双眸の愛嬌と共に、男へと微笑み。
かつん、とヒールを男に相対するよに傾け鳴らす。

「こんなところでお逢いできるとは思いませんでしたわ。
 ──────…卿こそ、相変わらずに魅力的な満月を携えていらっしゃる。」

女は双眸細めて、男の眼差しを覗き込むかに囁いた。それは男の双眼の彩のこと。
かつて女はよく、“客”として接したその男の眸を──そうやって褒めたから。

ルーベル > 馴染みの娼館の主。その自慢の"娘"をと勧められたのはそれなりに記憶の向こうにあるころ。
甘く絡みつくような女の色香を乗せた声を発する、見るからに柔らかそうな唇。
妖艶さと僅かな稚気。悪戯な気配を乗せる愛嬌満点の瞳に…熟れに熟れた肢体と。
己のような貴種を前にしても劣らぬ気高さ、相対するに十分の品を見せる、まるで狂い咲いた花のような女。

かつても今のように、種など関係ないのだと言いたげに咲き誇っていた。
だから、男もまた。知識だけでなく、実際に貴族と相対するすべを、客として彼女に教えた。
魔術狂いと言われることもある男が連れ歩くことで紡いだ縁も、今も彼女の糧となっているかもしれず。

相変わらず堂々と。男の言葉を当然とばかりにその魅惑の曲線を浮き立たせる夜天を纏い、相対する。
だから、降参だとばかりに、相好崩し。彼女が褒める濃ゆい金で、覗き込んでくる夕暮を見つめ返しながら。

「最近は噂くらいしか聞こえてこんでのぅ。たしかに、ここで逢えたは僥倖か。
 今宵は、すぐにその夜色に紛れてしまうのかの?
 それとも…夜の間くらいは、満月に照らされてやっても良い気分ではないか?」

女の、牝としての魅力あふれる肢体を主張しながらに上品に隠す。娼館にでもいれば、それは下品が勝つのかもしれないが。
仕立てたものは夜会という場を良く分かっているのだろう。王侯貴族の集まる場所だからこそ、彼女の装いは絶妙な気品を保っている。

それはこの夜会でしか逢えない、一期一会の彼女でもあるだろう。
だから、そぅっと、彼女のそのドレスの腰元にと腕を伸ばし触れようとしながら。
彼女の言葉を引き継ぐ形で、二人だけの夜会にと誘うようにと囁いた。

ドリィ > 時折立ち寄るその男に、女は随分可愛がって貰った。
閨の話のみでは無い。知識、見識、そして、貴族としての遊興を、男は毎度携えてきてくれた。
魔術狂いと称されるその些か危うい研究欲も、女は興味深く傾聴したものだ。

女の装いは王侯貴族の淑女には些か刺激的、眉を顰め乍らに、されど魅惑と映る匙加減。
とびきりに上等な艶めく夜天色の布に、隠し味のよに星と鏤めた宝石粒は、肉体の流線の織り成す陰翳に燦き。
女の肉体の豊満と雪膚を、これ以上も無く対比にて引き立てる、美しい仕立てだった。

笑うと途端に威厳が和らぐ初老の紳士の相好の変化を、女は好意的に受け取る。
双眸細め、──男が好んだ悪戯な視線を含ませて。

「噂を聴き及んでくださっていたとは──…光栄ですこと。
 
 っ…ふ、ふ。 どぉしよう、かしら───…。」 

場に揃えた口調が僅かに解け、その語調に少々甘い独特が雑じる。
可笑しみを含んだ蜜雑じりの、女本来の口振りにて。
男の洒脱味ある誘い文句は、随分気に入ったから、
その夕暮色をくるりと煌めかせては、男の燻月を覗きこみ。

「黄昏は、月夜に空を譲るが定石ですけれど……
 満月を眺めて、暁紅なんて呼ばれるのも、素敵かしら、なぁんて。
 
 ───…どう思います? 卿。」

夕暮色を月に隠して、朝焼色を名乗るも乙だろうか。
その柳腰に巡る男の手を、女は拒まない。その代わり──疑問符を重ね、言葉を待とうか。
誘いを是、とするべくの、もう一声を貰うべく。 

ルーベル > 女の態度を見れば、己の事を好意的にと捉えてくれているのは良く分かる。
"そのように"仕込まれているのだから当然。
たとえ隔意あってもそれを己の中で上手く捌いてこそと、かの女主人に、あるいは男や他の貴族にと教えられ。
彼女は高級な娼婦でなくなってからも、正しく彼女であったのだろう。
それが噂だけでなく、己の目でも確認できただけでも今夜の夜会は価値があったとも思いながら。

あとは、先進的とも言えるし。挑戦的とも、好戦的、ともいえようか…仕立屋の性格が滲むようなその衣装。
素直に。あるいは歯噛みしながら会場の視線を色々な意味で集める衣装と、それをそう仕上げる要因たる彼女と。
もっと価値ある時間を過ごせたなら、それこそ僥倖だろうとも思いながらに、懐かしくも見える楽し気な視線受けて。

「噂話は聞かずとも聞こえてくるものばかりでの。色々と届いてはおる。
 …どうかのぅ。夜の空を彩るのはそれこそ満月の嗜みだろうがの、月も老いては隠れるも早ぅての。
 とはいえ…そなたが奮わせてくれるなら、暁紅も容易く臨めようて」

飾った口ぶりから、彼女本来の物言いへ。
そんな女へと、己の年を引き合いに出しながら、明けの空が紅く染まるまでは普通なら、付き合い切れないと。
けれども、彼女次第で…それも簡単に叶うのではないか、と、まるで娼婦としての腕は落ちていないのだろう?と、煽るような。

男のそんな貴族仕草も彼女には懐かしいものかもしれず。

黒が浮き立たせる蠱惑的な曲線、そのくびれる部分へと指を添え、そっと夜会場から攫ってしまおうと、促す。

あとは、男の言葉を彼女が気に入るかどうか、というところだろうか。

ドリィ > 男の可愛らしくもしおらしい物言いに、女は鈴音をころりと鳴らして笑う。
眼差しは男の言い草を茶化すよに向けられた。ほんの少しの嗜めと、たっぷりの愛嬌を含ませて。
口調をふたたびに、丁寧に淑女然と象ってみせては、囁いた。

「あら、御謙遜。 私、知っておりますのよ?
 卿の携えていらっしゃる満月の翳りを払うのは、閨での吐息が覿面であらせられること。
 
 このドリィが雲を晴らして─…皓々と、暁紅の時刻まで月を輝かせてさしあげる。」
 
男の双月が、殊に枕辺で爛然と輝くことを──女は知っている。
しおらしさに僅かばかりの挑戦的な機微を敏く感じ取れば、女は一度、
腰元に添えられた男の掌を指先で辿り撫でては、赦しとしようか。

女は、夜会を一瞥し、此方に視線を向ける幾人かに微笑んで返し。
最後に――巡らせた視線の終着点を、傍らの男の顎の輪郭の稜線に添えた。
今宵、女が選んだのは此の男である、と場に周知するかのように。

そして、男には──その誘いの先を促すように。

ルーベル > 彼女が息災と知り、その在り方を変えていないのに喜色を覚えても顰め。
少しばかり意地悪く向けてやった言葉は…どうやら、彼女の矜持もが変わらぬものであるかと、確認する意図もあった。

魔導師貴族が気分を昂らせ、魔力を張ることで鈍い金が燦然と輝くことは、彼女も良く良く覚えていたらしい。
かつての姿とよりその魅惑的な色をより複雑にしたかのような瞳が男の煽りを、正面から受け止め。
己だからこそ、老魔導師の瞳を煌々と灯せるのだとばかりの口上を聞かせる。

相対する魔導士貴族は、それを見て面白そう―…というよりも、どこか満足そうに暗金を細めて。

「では、あとは余人に晒せぬ夜のことかの」

添えた指を撫でる白指。周囲にと、己と纏う衣装の価値を知らしめるかのような。
そして、そんな己が選ぶのもまた、価値ある男なのだと示すような仕草に相応しく。当然とばかりに、夜天を侍らせて。

顔見知りに挨拶するようにと視線を交えつつも、目的は達したとばかり、惜しむ様子なく夜会場を後にしてゆき…。

ご案内:「富裕地区 明月の夜会」からルーベルさんが去りました。
ご案内:「富裕地区 明月の夜会」からドリィさんが去りました。