2024/07/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアイシャさんが現れました。
アイシャ > 昼下がりの【富裕地区の大通り】。
胸に小さな紙袋を抱えて街でも屈指の茶商の店から出てきたのは、ただ茶を買いに来ただけにしてはあまりに悲壮すぎる顔をした少女。
細く細く息を吐くと、顔をあげ、気合を入れて歩き出す。

歩き出したはいいが、その足は大通りの右側を進んだかと思えば今度は左のほう、それから通りのど真ん中を進み、また右側へ。
よくよく見ていれば理由はわかるだろう。
少女の足は明確に、前方から歩いてくる人影を避けている。

(…やっぱり、誰かと一緒に来たら良かったのだわ)

例えば両親や兄姉、下の妹。
弟と上の妹は少女同様に外にあまり外には出たがらない質だから余程のことがない限りは同行を頼みづらい。

(でも、少しは独りでできるようになると、決めたもの)

だから、今日は供もつけずに独りでわざわざ小さな買い物のためにやってきたのだ。
少女が買い求めたのは気に入りの茶。
普段は自邸に茶商が出向いてくれるが、今日は自分で、しかも独りでやってきたことに老商人は声が裏返るほど驚いたあと、すぐに求めたものを用意してくれた。

そして今、緊張はいまだ拭えないが、少女の足は一先ずの目的を達成したことにより僅かに浮付いて大通りを遊泳するように進んでいる。

アイシャ > あちらへふらふら、こちらへふらふら。
細心の注意を払いながら尚も足は大通りを少しずつ進んでゆく。
神経をとがらせたまま進むうちに、自邸が見えてくれば足取りも軽くなる。
ふんわりとした花の残り香が、尾ひれのように少女の紺色の裾の後をついてゆく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアイシャさんが去りました。