2024/02/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 カフェ併設書店」にアリスさんが現れました。
■アリス > 富裕地区内、とは言え商売のことも考えてか平民地区にもやや近い、そんな立地。
アンティーク調のお洒落さと、どこか質素な暖かさを伴うようなカフェの佇まい、建物自体はわりと大きいのだけれど、外からの見かけよりずっとその中が狭く感じるのは、所狭しと並べられた書棚の所為。
座って休めそうな席は、小規模なカフェのそれと同じようなもので、ここの目的の主になるのは本の方、と言うのは初めて訪れた者にでも、すぐにわかるだろう内装になっていた。
「……うん、やっぱりここの本の方が、読みやすそうなのが多くて嬉しいよね」
学生服、のような黒い格好に淡い金色の髪が揺れる少女は、富裕地区と言う場所を考えればなんだか場違いめいたようでもあるけれど、魔法使い達が着るような長いマントで覆われた後ろ姿は、書棚と言う空間の中には上手く溶け込んでいるようにもまた見える。
――じっと見てまわっている棚は、お硬い本の方ではなく、むしろ児童書などの棚のようであったけれど。
■アリス > じっとしているのは得意じゃないし、学院の授業に出れば体を動かす内容の方が得意だし、でも静かに何かに集中するのが苦手と言うわけではなく。単に、興味のある方向へ向いていられればいくらでも時間が潰せるタイプ。
図書館が学院内にあるのは知っているし、何度か足を運んでもみたのだけれど。学生向けの図書館としては驚くぐらい色んな本がある、のはわかったけれど、遊ぶ目的で本を探すのには向かない気もして。勉強の為の本を探す時ならいいのだけれど、単に暇つぶしとか、趣味の範囲ならこういう所の方が向いていると思う。
児童書の棚をずっと眺めて歩くのも、流石に絵本とまでは行かないけれど、子供が読むことも考えてあるような、空想的な分かり易い王道物語の本などが何も考えずただ楽しむのにはいい、なんて思いがあるからで。
丁度良く貸出用の棚の中に目についた空想小説の本は、以前読んだことのあるものだったけれど。細かい所まではもうあやふやなぐらい前に読んだものだったし、内容を知っているぶん安心感はあったし、今日はこれにしようかな、と思えるのには足りるほどには好きなものだった。
その一冊を手にとって、このまま読んでいくことを告げるついでに温かいミルクティーをお願いし。
席は基本的に自由なようで、ある程度空いていたし、対面二人用の席でも一人座っているような人たちも多いから、向かい合って並ぶ小さなソファーの席を自分も選ぶことにして。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 カフェ併設書店」にシャーニィさんが現れました。
■シャーニィ >
世に放たれてから久しい邪神は、それでもまだ世間知らずであった。
それゆえ、あいも変わらず人の世を散策していたのだったが……ふと、ある考えがよぎった。
「そういえばヒトは、書物、とやらで知識を紡いでいたのだったな」
ならば、と色々と聞き回ってたどり着いたのがこの書店。
彼女を”少女”と見たみなさんが、優しく導いてくれたわけである。
「……ふむ」
確かに、本が色々あった。
……のだが、どれを読めばいいか、などはさっぱりわからなかった。
「……む?」
ちょっと一瞬だけ所在なげになりかけたところで、ちょっと向こうで一人の少女が本を選んでいくのが見えた。
よし、とばかりに彼女が本を選んだ辺りから適当に一冊引き抜いて……
次はテーブル探しだったが……
すでにお一人様の群れで小さなカフェスペースは一杯であった。
店員は、申し訳ないけれど相席で……などと案内する。
さて、どうしたものか、と思えば……さきほどの少女が見える。
……よし。
「……あー……その、なんだ。そこの席だが、座ってもよいか?」
そこのテーブルまで近づいて、声をかけた。
■アリス > 既に読んだことはあった本、熟読と言うよりは記憶とすり合わせながら、好きな登場人物や好きなシーンを思い返しているような読み方。
それゆえ、没頭すると言うほどでもなく、なんとなく店内の雰囲気とか周りの人達の仕草とか、そんなものも暇つぶしのひとつとして楽しみながらそこに座っていたから、自分が呼び水になったと言うわけではないだろうけれど多少混み始めたかな、とも考えていた。
そんなタイミングだったし、もとから延々と一人で居座るつもりでもなかったから、相席を求めるだろう声がふと聞こえたのも、聞き逃さずに済んで。
手元の本に落としていた視線を上げれば、少しの間、声をかけられたこととは何か別のことで考えるような間があったけれど。
「あ、はい。勿論です……二人用の席ですし、その方が気兼ねなく座っていられますし」
どうぞ、と対面の席をそっと指し示して。
その間、目の前の人物――たぶん、人物、をあまりじろじろと見て失礼にならないように気をつけながらも、確かめるような目でそっと伺っていた。
なにしろ、たぶん、少女、と思うのだけれどどうにも靄がかかっているような、例えるなら実体化しきれていない幽体のような、そんな印象を受けたから。
偶然にもそういう存在を人並み以上には見慣れていたせいで、驚きすぎるようなこともなかったし、挙動不審になりはしなかったけれど。
■シャーニィ > 「ん、そうか。すまぬな。」
少女……と思しきように見えるが、何処かはっきりしないその存在は古風というか大人じみた口調で礼を述べる。
しかし、仕草は少女じみてちょこん、と目の前の席に座るのだった。
「……む?」
そして座って落ち着いてみれば……シャーニィの目の前の少女は、どこか奇妙な”匂い”がした。どちらかといえば、自分の側に近いような……それでいて、しっかりとヒトのような。まあ、それはそれで構わないか、とも思う。まあ、何はともあれ本である。
「……」
開く。読む。これは……叙事詩の類だろうか?空想小説を前に、なんだか難しい顔をする。
思わず、目の前の少女を見れば……迷うことなく読めるらしい。そういえば、着ているのは……ガクセイフク、とかいうやつだったか。やはり学びとやらがいるのだろうか。
「む、ぐ」
思わず小さく唸って考え込んでしまう。
■アリス > たぶん、自分が選んで来るまでの途中で、棚にあった気がする本だと思うそれが目前で開かれて、読もうとしている……のだけど、上手く読めていないようなのか。
小さく唸る声が二回、はじめの方は自分に向けられたものだったことには気づかず、本の方なのだろうと思ったようで。
「あら、本は苦手でしたか?……読み慣れていないと案外難しく感じるものだ、とも言うものですけど」
一応は子供向けを想定されているはずだろう本でも、なんだか難しい顔をしている気がして。それが少し可愛らしいように思えてほんのり笑いそうになったけれど、うっかり吹き出してしまっても馬鹿にしているように見えてしまうかもしれないし、それは我慢する。
思ったより子供っぽく感じたせいか、目の前のどこかはっきりしない姿が今は、金色の髪と赤い瞳が綺麗な、自分よりもう少し幼い少女の姿に見えて。
ああ――見ている方の印象で違ってくるのかも、と漠然と感じつつ、だからと言うわけではないだろうけれど、幼く見えたからと幼い子扱いするでもなく。
「もし普段あまり本を手に取る機会がないのなら……もっと、絵が多い本の方が目で楽しみ易いかも、ですね」
自分の手元の本は、既に知っているものでもあったし、一旦そっと閉じて膝の上。
話し相手はたぶん、人、ではないのだろうなぁ、なんて事は思いつつも、人と接するのと変わらない態度でそっとその様子を見ている。
■シャーニィ >
「……むぐ。う、むむ……」
唸ってしまった声が聞こえたのか、問いかけられたことに恥じ入ってしまう。そこはそれ、プライドというものがある。とはいったものの、今の自分はどちらかといえばヒトに教えを請う側であるのだ。
「いや、取り繕っても仕方あるまいな。苦手、というわけではない……ない、と思いたいが。そもそもあまり読んだことがない、というのが正しい。」
素直な状況を説明する。そう。文字を理解するにまでは至ったものの、本を手に取る、というのは初めてだったりする。文字を追うことはできても、たまに読解が不明瞭になったりする。
「絵が多い本、か。なるほどな……ふむ。見たところ、ガクセイ、だろうと思うが。汝は、やはり本を読み慣れているのか?」
なるほど、絵が多い本、というのもあるのか、と思わず感心する。
それとともに、やはりガクセイなるものは知識をより深く持つものなのだろうか、とそちらも感心に至る。
■アリス > 見た目の方は、なんだか幼く見えるようになったけれど。聞こえる声の方は、見た目よりずっと大人びて感じる。
たぶん、人の真似をしてみたいような何かがあって、でもまだ不慣れなだけで。人じゃない方の部分はずっと大人なのだろう、と思う。
左の袖に隠れた腕輪――を使ったらもっと色々わかるのだろうな、と少し考えたけれど、害意があるわけでもない相手にそれは失礼なだけに思えるし、ありのままお話をすれば良いのだとも思う。
「文字って、教わっていないと読めないものですから。話すのは自然と覚えるものですけど――文字を扱うお仕事の家に生まれるとか、貴族の子だったりとか……
私みたいに学生、だとやっぱり読めた方がいいのだけれど、私も難しい大人用の本はまだまだ苦手です。家が、いわゆる商家だったせいで読めるようになったのが早かっただけで。
あまり読んだことがない、って言うだけなら、時々でも読むようにするとだんだん楽しくなってきますよ?」
ふふ、と今度は自然と優しい笑みを浮かべて。
学生でも皆当然のように本を読み慣れているわけではないのだと思う、そんなことを思っては、そのまま伝えてみたりしながら。