2024/07/19 のログ
ルルマリー > 「……っ、綺麗、だなんてそんな…」

綺麗、なんてこっちの台詞。すべすべな白く細い繊手に包まれて、思わず身が強張った。
手汗がじんわりと湧いてしまうのも酷く恥ずかしくて、ますますに恐縮し。

「 はい、ふつうのお花屋さん、です……」

更に恐縮。何らかを期待されてたのか、可愛い少女をがっかりさせてしまった事に罪悪感。
しかもきっと相手は高貴な身分の少女なのだろうし。
自分なんかがしょんぼりさせてはいけないような気すらして―…
そこで、はっとして顔をあげて。

「ぁ、 アリエッタ、さま!
アリエッタさまにお似合いになるお花を、わたし、プレゼントいたしますっ…!
 お金なんていただけませんッ…。ぁ、の!出会った記念に、贈らせてくださいませ!」

お代なんていただけないとばかり、またふるふると頭を横に振ったなら、
花籠に残った花をいそいそと束ねはじめて。

アリエッタ > 「ううん、とっても綺麗よ……働き者の綺麗な手、あなたはお顔も綺麗なんだから自信を持ちなさい」

握った手は正反対だが本心から綺麗な手だと思って。
こんな可愛い子が自分の可愛さに無自覚であってはいけない。
必要以上に恐縮してしまっている少女を見つめるが突如顔を上げた少女の姿を見て。

「ダメよ、取引は公正でなくてはいけないの」

少女の顔をきりっとした目で見つめる。
息がかかりそうなほどに顔を近づけて。

「貴族が金銭を払うと言ったら払います、貴族が平民に金を払わないのは権力によく横暴よ、私を物乞いにする気?」

貴族として平民に何も与えないというのは貴族のプライドに関わる。
我ながらいいことを言ったと思いつつ懐から財布を出そうとするが。

(財布無いわ、どうしよう)

今日は財布を持ち歩いていなかった。
悟られないように表情は変えずにどうにか収める方法を探ろうと。

ルルマリー > 「自信なんてそんな…。アリエッタさまの手の方が、まるで陶器の置物みたいにすべすべで色白で…っ…」

もごもごと口籠もり、それでも小声で「ありがとうございます」と告げようか。
やっぱり恐縮に縮こまりはしていたけれど。そしてそんな少女が、ますます縮こまるのは―…

「ひぅッ!? ご、ご尤も、でございます…!!!」

凜々しい剣幕に、そして突如として近付いた距離に…ビクついた。
少女の高貴にして甘やかな馨しさが、漂ってくるような距離。
思わず緊張でまばたきが、しぱしぱと増え。

「アリエッタさまを物乞いだなんて滅相もない!!!!~~~ッかしこまりました!
 それでは、ぁの…っ…お好きな花をお買い上げくださいまし!

 どのお花がよろしいでしょう?
 ぁ、ご、ご無礼じゃあなかったら、わたしが見繕ってもよろしい、でしょうか…っ…?」

どぎまぎと胸高鳴らせわたわたと言葉を紡ぎ、花籠の花を束ねる娘に、
少女の内面の葛藤など気付きようもなく。

アリエッタ > 「うふふ、褒めてくれるのね」

自分お手を褒められてニコリとほほ笑む、小さなお礼の言葉も聞き逃さず少女の頭を優しく撫でて。
強く言ったのが功を奏したのか自分の動揺は伝わっていないようで。
どうしようかと改めて懐を調べ。

「あーえっと、けどあなたの気持ちも尊重するのも貴族の務め」

懐にあった小瓶を取り出す。
最近買った流行りの香水、それを2,3滴自分の手に出して少女の首筋に付けようと。

「この香水と今残ってるお花全部でいいかな?あなたは可愛いんだからオシャレしなさい、これならお金じゃないから構わないよね?」

ルルマリー > 「ふ、わ… っ…」

同い年くらいであろうのに、貴い身分というものはこんなにも優雅で堂々として。
まるで歳上の淑女に接しているようであればこそ、頭を撫でられても、掌の置き場になることすら勿体無いと畏まるばかり。
向けられる微笑みすら教会の肖像画のよう、慈悲深さすら感じてキュンとしてしまう。
どぎまぎとしていれば、相手の内面の動揺なんて全く気付かず。

だから、てっきり懐から硬貨が出てくると思った娘は、何やら御洒落な小瓶が出てきた事に
双眸を瞬かせる。ふぅわりと漂う、華やかな香り。
それを纏った美しい手が、自身の細首に触れたなら…

「っ !? ……っ…お花を、ぎゅぅっと集めて閉じ込めたみたいな、いいにおい…」

それは、夢にまでみた、高貴な貴婦人の纏う繊細にして華やかな香り。
ふわふわくらくらと鼻腔を酔わす匂いに、うっとりとしつつも…

「もちろん! 構いませんけれど…っ…ぁの! これ、こんなッ…素敵なもの…」

いただけません!!!とばかり
本当にいいのか、どうか仕舞ってくださいと言いたげな懇願めいた視線で相手を見つめつつ。
籠の中の花を束ねたブーケを差し出し倦ねて。

アリエッタ > 「あーもう、ホントにかわいいなあ」

平民の花売りにしておくのは勿体ない。
今すぐ愛してあげたいが無理やりは好きじゃない。
桃灰の綺麗な髪を撫でて、少女の首筋に香水を付ければ花のいい匂いがして。

「いいのよ、これがあなたの匂いになれば私はもうあなたの事忘れないもの」

ブーケを受け取れば強引にでも香水の瓶を渡し。

「じゃあ……サービス代わりにあなたのお名前教えてくれる?」

ルルマリー > 「ふわ…ぁわわ……っ。
 ~~~~どぅ、しよう。っ…まるで高貴な御方が通り過ぎたときみたいな匂いがして…っ…」

ふわんふわんとその場で、身を揺らしては漂う芳香に…興奮するように頬を桜色に染め。
一頻りうっとりと甘やかな花馨を堪能した後に、はっとしたように頭をぺっこりと下げた。
もしかしたら、目の前の少女と同じ馨りを纏ってるのかも、なんて思ったら
全身がまるで熱病に浮かされたかのように熱くなってくる。

「ぁ、~~~~~ッ ぁ、ありがとうございます、アリエッタさま!
 わたし、る…っ…ルルマリーともうします…ッ…!
 ぁの!これ、 とても大事にしますっ…!!」

受けとった香水瓶を両手で握り抱いて。
代わりに渡すのは、白を基調として大小様々な花々が束ねられた
素朴だけれど愛らしい、白いリボンで束ねられた花束で。

アリエッタ > 「ルルマリーちゃんね、このお花も大事にするわ」

綺麗な花束を受け取りニコリとほほ笑んで。
近づいて不意打ち気味にルルマリーの頬にキスをしようと。

「じゃあねルルマリーちゃん、また会おうね」

ニコニコ顔で手を振ってその場を去っていった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からアリエッタさんが去りました。
ルルマリー > 「は、はいっ! またお花のご用命があれば―――… ~~~~~~~~~ッ!?!?」

頬にふれた柔らかな、ふにりとした感触に目を丸くしたまま、固まった。
笑顔で颯爽と去っていくアリエッタを見守りながら…
相手の唇が触れた、熱く火照った頬を片掌で包み抱いて…暫し放心。


その後、まるで夢見心地で少女はふわふわとした足取りで帰路につく。
香水瓶は自室の一角に、まるで大事な大事な宝物のように飾られて…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からルルマリーさんが去りました。