2023/11/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 戦場ではない 王都
 鼻腔から吸い込む匂いは富裕地区の清潔な空気
 馬車馬奔る道端に転がる馬糞の匂いすらない。
 森々の樹々と土 鉄と血の匂い
 湿り気を帯びたあの空気や、襤褸になっていく命の匂いがここにはない。

 人員や補給物資
 その他もろもろ 王都の石を踏むのは久しぶりだったメイラ。
 腰には久方ぶりに下げる大小二刀 半袖から覗く刺青と黒の一張羅
 未だ暖冬気味なせいか、厚着の衣や毛皮を身に付ける貴婦人すら少ない。
 もう少ししたら、白い息が作りやすくなる気配がある
 それまではと、やや身軽な姿で夜の富裕地区を出歩いていた。

 ―――そんな富裕地区の中で、矛盾めいた機会に恵まれているのは
 メイラの普段の在り方からくるせいなのだろうか?

 響く剣撃 剣花が互いの 剣身 刀身 が重なり合うことで生まれながら、当たるところで引き斬ると
 愛刀の斬れ味は西洋剣の一本 切り落とし気味にその首を袈裟掛けに斬りつけ、筋も腱もまるで関係ないかのよう
 全ては腕前ではなく剣任せというかのように、 す く り と通った刃先。
 血が小さく噴き、大小の腹綿が零れ落ちていくのを眺める。

 ほかの面子にも同じこと 斬りつける音 突き貫く音
 頭から両断に割り、地面に切断面が張り付いた音などがした後
 戦場帰りの新しい打撲痕や切り傷が少し見受けられているメイラの貌
 ギザ歯をうっすらを見せながら、ひゅらりと刀を振り抜き、血糊を掃う三日月跡。


   「どこの誰かなど知る気も無いけれど、随分嫌われたものですわね。」


 刀をゆっくりと納め、最後の指先の幅ほどになって振り気味に納めきる
 そうすると、 チィ―――ン と耳に心地よく伝わる鍔の音。


   「あら、やっと機嫌が直りましたの?」


 嬉しそうに鍔を鳴らして、と愛刀に語り掛ける仕草
 戦場に今、長々といるせいで愛刀を腰に下げる機会が少ないせいか
 愛刀の機嫌がややよろしくないと察していたらしい。
 血を掃い、収めた時の鍔鳴りは名残惜し気で、けれど長い満足感のある溜息のように聞こえた。

  

メイラ・ダンタリオ >  
 無差別に斬りつけるよりも、斬りつけられる理由を持つ者のほうが、(この子)も悦ぶのかと思いながら
 最も、無差別殺人など趣味嗜好目的全てが無いメイラの在り方からしたら、当然か。
 嫌で殺すなど メイラにはない。

 その場を報告もせずに後にする。
 頼まれて 恨み辛み 王都に久方ぶりに来たことで邪魔に感じられる何彼
 共食いも、メイラからしたら喰い飽きたと笑みも浮かべない。
 一人で歩き、こういった状況を作り出して何人か斬った感触が手の内側に残る内
 まるで何事も無かったかのように酒場の一つを開き、入店。

 カウンター側で肉厚なステーキ肉
 白い陶器皿の上に載せられソースのみ 彩や付け合わせを一切いれていない皿の上
 ナイフで切り分け、突き刺したフォークで大振りのそれを がもっ と押し込む事数度
 また空の皿を作り出し、久しぶりに王都で純粋な柔身肉を堪能しつづけるまで間などなかったかのよう。
 新しい皿の上に乗せられたステーキ肉の手前 グラスの甘ったるいロゼを飲み干しながら口元を拭うナプキン。


   「―――。」


 戦場食 干し肉 水 葡萄酒 煮込み
 ありふれた戦場メニューの後の削り得た芯肉の味は臓腑に染みているらしい。
 人心地ついたように、まだ内側が濡れている空のグラスを置き、再び切れ目を入れて頬張りながら。


   「王都味も久しぶりですこと。」


 訪れては肉と酒のみ 単純で明快な摂取をし続けることはいつものこと
 カウンター越しに注ぐ紳士はなにも言葉をかけず、ただロゼを注ぎ足すのみ。 
 

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。