2025/03/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルカさんが現れました。
■アルカ > 空が橙から黒へと変わる頃。
大きな広場の一角、数人規模の小さな人混みがひとつ。
中心から響くは蒼の髪の持ち主から放たれる透明な声による歌。
即興の歌詞と旋律で奏でられる歌を終えて、観客達からの控えめの拍手が彼に送られる。
「 ーー ありがと、ございましたっ! 」
聴いてくれた一人一人に深々と頭を下げ、足元に置いていた小銭入りの木箱を拾い上げる。
広場を離れて、目に入った路地裏へと入り込み。
観客の皆様がお気持ちとして渡してくれた小銭の数を確認すれば。
「 ……今日はちょっとだけ、贅沢していいかも。 」
口の端を吊り上げて嬉しそうに微笑み、薄暗い路地裏の中でも目立つ蒼髪を揺らす。
昨晩の食事はパンの耳だけ。今日は甘いものでも食べようか。
隙だらけで無防備な少年は、口に溜まる涎を飲み込んだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 市場」にナランさんが現れました。
■ナラン > 雨上がりの午後。
平民地区の広場で定期的に開かれる市は、午前中の閑散さを取り戻そうというように人が流れ込んできている。
急ごしらえの雨避けに溜まった水を降ろす音が方々で聞こえ、それに負けじと客寄せの声。店同士の間の広くもない路を、競争でもしているのか石畳のところどころにできた水たまりを跳ね上げて走って行く子供たちがいて、それを追いかける様子の母親がいる。はたまた仕入れに急ぐのか、従者を連れた商人体の一団がいて、彼らの気を引こうとする呼び込みの姿がある。
曇天の雲間から零れる陽光がカーテンのように地上に降り注いで、雨のあとがきらきらと光を弾き返す。
「…あ、すみません」
虹でも見えるのではないかと、足を止めて空に視線を彷徨わせていた女は
背後の人の気配に気付くと軽く会釈をして慌てて再び足取りを進める。
今日街へ降りた目的は市場ではなかったけれど、賑やかさに人の流れに興味を引かれてついつい足を踏み入れてしまった。
いかにも流れ者と言った格好の女に呼びかける声は少ない。商われているものは住居を持っているような、ごく普通の市民向けが多い―――すくなくとも、この辺りは。
それでも女は、自分にとって物珍しいものを商っている光景が楽しく
商人に迷惑がかからなそうな程度に店を覗き込んでは、好奇心を満たしていた。
■ナラン > 綺麗なガラス瓶に詰められた香水に、レースの付いたテーブルクロス、刺繍の入ったクッションカバー、白磁の繊細そうな皿とカップ。たまに、愛らしい動物の姿のぬいぐるみや木のおもちゃ。
奥様と思しき相手に喋る商人の口上は、その調子が音楽のようでもある。
ガヤガヤと人々の話す声の中であっても妙に聞き取りやすく、またどこかおかしみがある。
女は我知らず口元に笑みを浮かべて足をすすめる。
特に探し物があるわけではないから、出口が見えてきたらそのまま街を出ようと思っている。
明るい時間は大分長くなったけれども、雨上がりの路の事を考えると早めに発つに越したことは無い。
そうして女があちらこちら、店を巡る間にも人出は増えて来る。
その流れに任せて進んでいた女が実際広場を出たのは、果たして大分日が傾いてしまったあと。
夕陽にかがやく濡れた石畳の路を急ぎ足て、街から出ていく姿があった―――
ご案内:「王都マグメール 平民地区 市場」からナランさんが去りました。