2025/03/01 のログ
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ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にグスタフさんが現れました。
グスタフ > 夜の路地裏で、男の影。
それだけでいえば怪しい姿を思い浮かべるが、
男はトレーニングウェアで、ボール一つ。
無人の石壁相手に、蹴り玉遊びに興じていた。

遊び、というには汗だくの本気度の高い運動で。
何度も壁への蹴り玉でのラリーを繰り返していた。

グスタフ > 「あっち……」

大量に汗をかいて、上着を脱ぐ。
それどころか上半身を裸に。背中から湯気が出ている。

「汗かきすぎたか……風呂でも行くか?」

誰に聞いてるでもない自問を口に出しながら。
ボールを足で器用に操りながら。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からグスタフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にTDさんが現れました。
TD > 「とても簡単なゲームをしよう」

その一言から対話は端を発する。然程に賑やかとは言えない昼頃の小さな酒場の片隅の空間を利用して、遊興に励んでいた。採光窓から薄っすら入り込んで来る日照に照らし出されてシミの付いた卓上の輪郭が浮かび上がる。
そこに五つ、六つと清潔な白いハンケチーフを敷いた上で並べられているカップケーキも。全て掌の上に乗る程度の大きさで柔らかい狐色に焼き上がっている。湯気は出ていないがほんのり暖かく、生地に加えられたブランデーの香が微かに漂っていた。

「此処にカップケーキが在る。しかしながらにその内の多くの中には、あっという間に強い酩酊に至る毒が盛り込まれている。君はこの中の一つだけある、毒の入っていないカップケーキを見つけ出さなければならない。それだけでは五里霧中だね。だから私は君の質問に一つ応じる。但しながら私は『毒の入っていないカップケーキ』はどれか?という質問には回答しない」

席に腰掛けているのはローブを身に纏う年経た人と同じ基礎骨格に変じた黒竜であり。対するは何気なくこの酒場に居合わせた誰かとなる。鋭利な爪を備えた指先で一つ一つのカップケーキを指差して回った。

「では、この中のどれが正しいカップケーキだろうか?」

TD > これを何度か繰り返しているが、正答率は然程に悪くはない。此処が平民地区だからだろうか。学や機転を得ているものが見受けられる。何人かの賢く振る舞った人々は、この店での食事代を得する結果になった。勿論そうではない者達も居ないというわけではない。
その証拠に昼間から飲んだくれているかのように席の近くで倒れて寝こけている者達もいる。そしてまた一人その累々たる現場に費やされた。

「残念だが…今回は君の敗けだ」

酩酊して千鳥足になったゲームの対戦相手は席から立って間もなくして倒れ込む。それを見届けながら手持ちのバスケットの中からまた一つカップケーキを卓上にへと増やして置き直す。
紅茶に満たされているカップを長く伸びている顎端に手で持ち上げ寄せて、香り高さを味わう。

「さて、次は……?」

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にサウロさんが現れました。
サウロ > (よく晴れた晴天の昼頃。
 巡回の最中呼びかけられ、昼間から酒場で酩酊者を増やしている者がいるという通報を聞きつけて件の酒場へと足を運んだ。
 そこでは死屍累々、とまではいかないが、平民地区の小さな酒場で酩酊し倒れ込んでいる者たちと、
 彼らの近くでテーブルにつき優雅にカップを持ち上げて啜る巨体を見る。
 座っていても圧倒するような威圧感のある体に、ローブを纏った存在は一瞥しただけで人ではないと分かる種族。
 黒いジャケットに腰には帯剣をした騎士の風体をした青年が、彼の方へと近づいていく。)

「貴方が彼らを酩酊させた者か?
 これ以上増やされると業務妨害になる。遊興であれば、手段か場所を変えて貰えないだろうか」

(食事をし終えて、ごちそうさん、と笑顔で彼に声をかけて出ていく者もいる。
 碧い視線を向けて、ただ詐欺のような手口で悪辣な条件を仕掛けているわけではなさそうだ。
 本来なら介入すべきではないとも思えるが、よほど強い酒精なのか、寝ている者たちからのアルコール臭もすごい。
 店主が邪魔だと外に追い出しても、治安がけしていいとは言えないこの国では、
 地面に落ちてた人間は身ぐるみを剥がされて奴隷商に売り払われる、なんてことも時折起こる。
 つまるところそろそろ切り上げてくれという要請だが、楽しみにただ水を差すのも気が引けるといった表情で、ローブの内の彼を見据える。
 こちらが提示する要求を、どのように受け止め、どのように判断するのかは彼次第。)

TD > 足音が聞こえた。恐らく店員の導きの声も聞こえて来る。近づいて来る気配を事前に察知しているが故に視線は既にその来る方角を見据えて仰ぎ見る姿勢となっている。
手に持っている紅茶の白磁のカップを静かに卓上にへと置き直す。静かに席に姿勢を正しながら語り始める相手の物言いに耳を傾けたその後にゆっくりと顎を開いた。

「そうだな。君の言う通りだ。長くこの場に腰を落ち着けてしまい、そしてこの店にも聊か迷惑を掛け過ぎてしまったかも知れない。店は私の風体を恐れるが故に君を此処に呼んだのだろうな。まずは非礼を詫びよう。とくとこの場所は去る事にするよ」

ぎょろ、と、視線を向けた先で多分に通報した店員か店の客人が委縮するように首を竦めているのが見えた。しかし此処まで口にしたところでまだ其の場より腰を持ち上げる挙動は一切の兆しも見せる事は無い。その代わりにその手が並んでいるカップケーキたちを指し示した。

「だが、その前に最後のワンゲームをお付き合いお願い出来ないかな?騎士殿。もしも君が勝った場合は大人しくこの場を去る…のは至極当然の前提条件ではあるが、店の被った被害に対する償いもしよう。如何だろうか?」

サウロ > (微塵も動じることもなく座した鱗の肌を持つ彼から向けられる目線と理知的な口調。
 長くを生きた異種、竜種らしい知性と慇懃な姿勢にはこちらも高圧的な態度に出ることもない。
 無意識にか自然にか、後方にいる店員を彼の視線から遮るように一歩前へ出るのも、職業柄。
 ローブの袖から覗く独特な指先が示す先に並ぶカップケーキを一瞥してから、顎に手を当てて。)

「……承知した。店に関しての条件は店主と話し合って欲しい。
 おそらくは彼らを安全な宿か教会にでも送ることになるとは思うが。
 ──因みに、僕が負けてしまった場合の代価は?」

(ブランデーの高い香りがするカップケーキに、床で寝こける者たちを見ればそれに何が含まれているかは想像がつく。
 酒に強いかと言われれば、人並みにの酒精耐性しかない己にとってはこの後の任務に支障が出かねないが、勝てないゲームではないはずだ。
 振り返って店員に2、3言伝を頼み、頷いた店員が踵を返したのを見届けてから彼の向かいの席へと腰を下ろす。
 眼前にあるカップケーキと、向かいに座す竜人の彼の赤い瞳を見つめる。
 こちらが負けた時の条件を聞いてから、改めてルール説明を促すつもりで。)

TD > 相手の応答と振る舞いに応じ、粛々と頭を垂れる。

「老竜の駄々に耳を傾けて頂き、痛み入る。無論において店とも良く話し合おう、この場を今も提供してくれているのだからね。君にとっては不本意な縁だろうが、こうした出会いは私にとっては大変喜ばしい限りだ。そこで、もしも良ければ名前を聞いておきたい。これよりほんの束の間で別れを迎えるとしても」

そして当たり前のような所作はこれまでも迷惑をかけている筈の店員の一人を手を掲げて呼び止めた。相手が店員とのやり取りを見た後のついでのように。チップを支払って新しい茶器を相席となって居合わせている卓上にへと運ばせる。自分ではなく、席にかけた相手の側の方に。そして熱を維持している白いポットを手に取り、自分も口にしている紅茶をカップの中にへと注いだ。
相手にもまた茶を勧めるかのように。

「安心して欲しい。例え敗けたとしても簡単なゲームで人生の岐路に立つような大きなリスクは求めない。今この場に倒れている者達の仲間入りをしてもらうという程度かな。つまり君は、君の言う安全な教会で目覚めを迎える事になるだろう。ただそれだけの事だ。二日酔いで頭痛に悩まされるかも知れないし、君の所属する機関からは多少の𠮟咤を受ける事になるかも知れないが」

指先を突き付ける。そして返す手首でそのまま倒れている人々にへと指を向け直した。
皆々前後不覚でろくに動けそうもない有様の醜態をさらしている様相にへと。

サウロ > (相手の前に座してから、ほどなくして持ってこられたのは新しい茶器。
 そこ注がれるまだ温かく湯気をくゆらせる紅茶を見てから、本来ならば職業的に警戒すべきなのだが。
 相手の対応と続く言葉に緩く首を振ってから、端正な顔には苦笑を浮かべて頷き、カップを手に取った。)

「承知した。負けた時の叱責は甘んじて受けることとしよう。
 改めて、僕はサウロ。サウロ・ツェデックと言う。貴殿の名も、お伺いしても?」

(改めて己の名を名乗る。束の間の邂逅だとしても、こうして知り合ったのも何かの縁だ。
 彼の伝える条件を飲むことを示すように、勧められた紅茶に口をつける。
 独特の香りが鼻腔を抜けて、舌の上で味わう名残に息を吐く。
 そうして呼吸を整えて集中力を研ぎ澄ませれば、改めて彼が他の人にも述べていた条件を聞くだろう。
 皿の上に乗せられたカップケーキの数。質問できる回数。
 それ以外にもゲームマスターである彼の視線を辿るように、眼差しが彼をまっすぐ見据え。)

TD > 「サウロ・ツェデック。ふむ、君は私のような者を相手でも礼儀正しい青年だね。記憶に憶え留めておこう。私の名前は長く呼び難く、人間の口では発音もし難い。礼を失するかも知れないが仮の呼称としてTDと呼んで貰えるならば、応じるとしよう」

滴るような赤い目を鱗の瞼に縁どられた中で細め、長く張っている顎の下を人と同じ基礎骨格の五本指で軽くさする。ちろちろと二股に分かれた蛇のような竜の舌が軽く出入りした。
既に卓上の準備は十分以上に整っているのを見渡した後に自らのついた席に寛ぎ直す。

「とはいえ。君も既に此処に来るまでに話を聞いているだろうからな…繰り返す言葉をまた聞かせるようで申し訳も無いが。このカップケーキの中から毒入りではない、普通のカップケーキを当てるだけで君の勝ちだ。それだけではただの運否天賦。私に一つだけ質問を出来る。しかしその質問の中で『毒の入っていないカップケーキ』はどれか?という質問は受け付けない。さて。どれが正解か解るかな?もしも決まったらそれを手に取り、口一杯にほおばってもらい、答え合わせをしよう」

制限時間も特にない。相手がカップケーキに接触するならばその全ても自由に許容する。簡潔なルール説明を行ったその後は紅茶に口をつけながらその動向を窺っているのみだ、差し当たってのところは。

サウロ > (竜種の会話は咆哮や古からの独特な言語と聞いたことがある。
 古代の知識に詳しい学者や長命種族、或いは魔族であれば発音も可能かもしれないが、ただのヒトである己には難しいだろうと納得した。
 テーブルマスタードラゴン、という名称の省略を教われば、略名として頷く。)

「なるほど……わかりました、TD殿。
 では、改めて────、このカップケーキのうち一つだけ普通のものがあり、それを一度の質問で当てること。
 その際の質問に毒入りではないものはどれかという質問のみ受け付けない、と」

(ルールを説明する彼の出した条件を口頭でまとめる。
 それ以外は時間制限もなくカップケーキに触れてはならないという条件もないと判断して、皿の上のカップケーキを見下ろす。
 皿の上のカップケーキがいくつあるのかを改めて見直し、優雅に紅茶を飲む彼の様子を見る。
 こちらを見て動向を伺っている彼と目線が何度か合っただろう。視線だけでは正解を導くことはできないか。
 同じように顎に手を当て、熟考し、手を伸ばす。
 質問もせずいきなり答えを得に────というわけではない。
 皿の上に並べられているカップケーキを少し動かして、3つのグループへと分けた。
 内訳は222となるか、221となるかは総数次第だが。
 そこまでしてから、一度彼へ視線を向け、反応を伺う。)

TD > 「その通りだ、サウロ」

簡潔に相槌を打って確認の正しさを裏打ちする。軽く指先を組み合わせて其の場に泰然と身構えて相手の所作の一つ一つを吟味するかのように視線を寄せながら。

「……しかしながら。思った以上に警備の動きが迅速だった。いや、君はただの警備兵では無さそうだが。もっと粗野に振る舞われるものと思っていたものだから驚いたよ。身嗜みや立ち振る舞いからも見て、それなりに教育を受けた名の在る家なのではないかな?ああ、済まないね、選別に邪魔であるのならば遠慮なく言って欲しい。紅茶に砂糖は入れるかい?」

世間話のように話題を振る。卓上に長い腕を折り曲げて頬杖。というよりも顎を握った拳の上に置いて支えるような体勢で思慮深く考え込む相手の全体像を改めて観察している。
合間にミルクや砂糖の入った壺を相手の元にへと軽く押し出した。湯気の立つ紅茶のカップにへと一瞥を配りつつ。

サウロ > 「ええ、ご推察の通り僕は"自由騎士"で、国ではない民間の自警組織に属してます。
 騎士団、衛兵団、軍団、冒険者ギルドとはまた異なり、どちらかと言えば傭兵に近い組織ですが。
 はは、育ちに関しては孤児なので、名家とは縁遠い身ですが、今は貴き方に御目見えする機会もありますので」

(話をすること自体を忌避することはなく、問いかけられれば返答をする。
 自由騎士団という組織に属していること。着衣している黒いジャケットには左胸と左腕に自由騎士団の意匠がある。
 端正な顔立ちに金髪碧眼という貴族にも多い容姿を持つことから貴族とまみえる機会もある。
 その所作が、彼から見れば遜色ないと思えるのであれば努力の甲斐があったと目元を和らげることもしよう。
 紅茶に砂糖を勧められれば、元より甘党であるため「では、お言葉に甘えて」と押し出されたミルクをひと回しと、角砂糖をひとつ追加する。
 彼の所作や言動がどことなく上司や貴族と言った目上の身分に通じるものを感じるせいか、敬語を使うのも無意識のことで。)

「────では、質問します」

(軽くカップをティースプーンでかき混ぜてから、甘さの増した紅茶を一口飲み。
 静かに置いた後に彼を見ながら、ゲームのかなめである"質問"をする。
 2つずつ3グループに分けたカップケーキを掌で示しながら、彼を見つめたまま。)

「この3グループの中で、"全て毒入りのカップケーキである"グループはどれとどれですか?」

(必ず一つは毒入りではないカップケーキがどこかのグループに存在する。
 単純に毒入りではないカップケーキはどれですか、という質問では絞り切れないと考えた末に、
 少しでも選択肢を減らそうと辿り着いた質問。
 過去にいた正解者はどういう質問をして正解を得たのか、それをするのはテーブルマスターである彼だけだろう。
 彼の指先を見ながら、残るだろう一つのグループにカップケーキは最大で二つ、50%まで絞り込めるはず、と。)

TD > 「自由騎士…ふむ、そのようなものも在るのか。何であれも礼節に適った立ち振る舞いだ、余程に秩序立った組織なのだろうね。例え路傍の石ころであろうとも磨けば輝く原石であるという事だ。ああ、いやいや失礼、石呼ばわりをしてしまったな、立派なものだ」

興味深く関心を寄せて相手の衣装回りにへと一瞥を配る、特徴的な意匠を記憶に留めておくが為に。傍目から見れば茶会を催して和やかに対談をしているようにしか見えぬ風景にも、やがて一石が投じられる事になる。相手から発された質問だ。

「……おっと」

受け取った一言に交わしていた会話の言葉が一時的に引っ込んだ。目を一瞬丸くしたその後に。直ぐににやりと爬虫類そのものである縦長の瞳孔の目元が皺を複雑に寄せて笑う。そして長く鋭利な黒い爪の先を伸ばして、カップケーキを指し示した。

「ではその質問に応じよう。これと、このグループだ。サウロ。此処にあるものを口にすれば君は忽ちブランデーをボトル一杯に呷ったような有様となって其の場に引っ繰り返る。闇雲に手出しをせず慎重に振る舞った御蔭で君の名誉が穢される恐れは少しばかり遠のいたかも知れない」

グループの一つ、また一つのカップケーキの群体をつついて回し。最早相手はそれを口にすまい。此処から撤収するときの前準備も兼ねて完全に毒物であるということを判明したケーキたちをバスケットの中にへと拾い移して行く。
そうしている口もとが綻んだ。残り僅かになっている手元の紅茶を全て口と喉の中にへと流し込むように放る。

「…思った以上に論理立てて来るね。君は真面目だな。イカサマを弄しようと頭を捻って来る御仁も少なくはなかったのだがね。事前に解毒の魔法を己自身にかけておく、とかね。こうして話をしているだけでも君の人となりが少しずつ見えて来るな、それもまた面白い」

サウロ > 「公な組織ではないので、活動は細々としていますがそう言って頂けると気が引き締まります。
 はは、いえ。石は所詮石だと蹴飛ばす者も少なくはありませんから」

(石呼ばわりを詫びて訂正するだけでも相手の人柄がわかって眉尻を下げて笑う。
 少なからず報酬を得て活動するために単純な慈善団体とも言い切れない。
 立派だと賞賛するその言葉がリップサービスだとしても有難いもので、本心からであるならより誇らしい。
 そんな様子を表情で示しながら、此方がかけた質問に対して返された答え。
 毒入りのカップケーキたちはバスケットの中へと戻されていくのを見届ける。
 残るは毒入りではないカップケーキと、毒入りのカップケーキが一つずつだろうか。
 どちらにしても質問はもうできず、二分の一を当てるしかない。)

「はい、真面目で融通が利かないとよく言われます。
 一度の質問で毒入りではないカップケーキを選ぶ手段もあったのかもしれませんが…。
 あとのことは天命に任せるとして、先に一つだけ。
 TD殿。正答者の中には、一度で正解を選べる質問をした者はいましたか?」
 
(答え合わせはカップケーキを手に取って頬張り、判明する。
 そうなればこの楽しい会話も終わりの頃だ。
 正解して、彼の償いの手伝いとしてそこらで寝こけている者たちの介抱をしながら交流の延長が出来るか、
 外して彼らの仲間入りをし、介抱される側となるかは神のみぞ知る。
 ────と言いつつも、最後まで相手の目線を追い、カップケーキを手に取って、香りを嗅ぐことくらいはするだろう。
 ブランデー入りとそうではないカップケーキなら、明確な差もあるかもしれない。)

TD > 「そこにある当たり前を享受し、慣れてしまえば、感謝や敬意の心も減衰するものだね、悲しき事に。もしも良ければ、君が無事勝利した暁には憎まれ役を買って出ても私は構わないよ、街中で暴れる悪しき竜を討伐せしめ放逐する、ヒロイックサーガならば良くある構図だ。と、たった今悪さをしている竜を知恵を用いて戒めようとしているのだったか」

眉は無いがけしからんとばかりに赤い眦が僅かに下がる。昂る物言いもしかしながら帰結するのは今という現状を顧みる自分と相手の関係性だ。相手に仕事をさせる事になっている面目なさを自覚したかのようにざりざりと堅い鱗の頭を手で軽く掻く。
そしてその後に相手の質問に応じるかのように其の場に腕を組んで首を傾げ思い返すような仕草をし。

「居た。有体に言ってしまえば君の先程の質問が限りなく正解の一つに近しいな。グループ分けをせずに『毒入りのカップケーキを全て教えて欲しい』と掲示する者が多かったかな…後は君の運次第だ。君の普段の心がけで徳、という奴を積んでいるならば信仰する神が助け船を出してくれるのではないだろうか。ああ、君が無宗教主義ならば済まないな」

嗅ぎ取ったケーキの区別は基本的にはつかず全て香も味も似たようなものばかりだ。何等かの特殊な技能、もしくは魔術を用いるならば別かも知れないが、一般的な五感だけではそれと見分ける事は出来ないものと考えるべきだろう。
それが故に何も他に出すべきカードが無いならば、最終的に頼るべきは運となる筈だ。もしも『運』が良ければ当たらぬ筈なのだから。
興味深そうに観察の目線はその結論に至るまでの推移を眺めている。

サウロ > 「あはは、そう言われてしまうとお願いします、とは言えない性分なので。お気持ちだけ有難くいただきます。
 知恵を振り絞っても結局運勝負になってしまいましたが」

(彼の言葉に裏で協力を取り付けて信頼を得るための売名行為は、この国で知恵が回る者なら誰でもしているかもしれない。
 だが、出会ったばかりの礼儀正しい彼を悪役に仕立てて行う行為が正しいものだとは思えない。
 その愚直な真面目さを滲ませながら、彼もまた冗談を言うのだなと外見の印象とのギャップがまたおかしくて、
 肩を揺らして年相応の素の表情で笑みを零す。
 最後に彼から答えを聞けば、納得した。シンプルな答えの導き方だ。
 毒の入っていないカップケーキはどれか、という質問は受け付けない。ならば毒入りはどれか、という問いならば出来る。
 そのことに気付いて選択肢を減らすためにグループに分けたが、そもそも「どれか」というワードに意識を取られて「教えてくれ」という文言を頭から除外してしまっていた。
 これは己の思考の甘さだと痛感する。
 色や匂いでわかれば良かったが、その判別も難しいとわかればカップケーキをそれぞれ皿へと戻した。)

「そうか……色々と考えたけれど、全部教えてくれ、というのは浮かばなかったな。
 偉大なる父ヤルダバオートが我が身を案じて救ってくださることをあとは祈る事にします。
 ────糧に感謝を」

(孤児故の教会育ち、信仰と共に育ち食前の祈りは今もまだ染み付いている。
 食前の祈りを簡略して告げ、カップに残る温くなった紅茶を飲み干してから、カップケーキへと手を伸ばす。
 選択は二つに一つが毒なし。果たしてそれを引けるかどうかは運次第。その運も、あまり良いとは言えないのがこの男だが。
 一つを手に取り、思い切り齧りついた。)

TD > 「…………」

口にされたカップケーキから香るのはブランデーの芳香のみ。飲み込んだ飲食物が消化器に到達した途端に急激に吸収される毒素は瞬く間に脳にまで及び機能を麻痺させ酩酊状態にへと相手を陥らせる。
だが、それはハズレであった場合だ。口にしてから暫しが経過しても主症状が発生する兆しも無い、即ちにおいては。

「どうも神は君に救いを授けたようだ。敬虔な信者なのだろうな。君の勝ちだ。おめでとう」

ぱち、ぱち、と、その鱗の張った手指を軽くうちあわせて恙無くゲームを勝利者として終えた相手の達成に賞賛の拍手を送る。そしてそれを見届けた上でゆっくりと其の場より腰を浮かせた。

「ゲームは出来る限りは公正であるべきだ。君は最後の難関を乗り越えた。ならば私もそれに対して相応の報いを受けなければならない。此処から直ぐに立ち去ると言ったが…その前にまずは店と相談をする事にしようかな。此処に倒れている者達を介抱しなければ……ゲームに付き合って貰い、有難う。サウロ。またいずれ何処かで出会いがあれば嬉しい事だな」

店の者達も君に対して礼を告げる筈だ。竜という概念に対して畏れを抱いていた者達も黒竜との対話にはもう然程遠慮を感じてはいない。この後においてはじっくりと償いに関する相談を執り行う事になる。一つの事件はこれをもって解決への道筋を辿るのだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からTDさんが去りました。
サウロ > (ブランデーの香りが漂うカップケーキの甘味をしっかり味わうことが出来ている。
 視界がぶれることもなければ意識が飛んでいくこともなく、明瞭なまま。
 そのままカップケーキを食べ終えるまで異変は訪れず、結果として祈りは通じたらしい。
 目の前の彼から拍手を受ければ、安堵して「ご馳走様でした」と伝え同じように立ち上がる。)

「こちらこそ、ひと時の休憩に甘い物までいただいて感謝します。
 これで叱られずに済みましたし、あとは職務の一環として、彼らの介抱を手伝います」

(これもまた何かの縁。それもまた自由騎士である己の役割。
 とくに何もなければ、彼と店主の仲介をして一つの出会いと交流は一旦ここで終いとして。
 またいずれ彼と会う機会もあるかもしれないが、今日の出会いを忘れないだろう──。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からサウロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――繁華街から離れた平民地区の片隅にあるとある聖堂教会。
 日中は信者が集い、あるいは祈りを捧げ、あるいは罪を告白するが、夕刻を過ぎ夜の帳が降りた頃合いとなればその姿もなく。
 静寂(しじま)の礼拝堂。寒風の流れる宵を渡り、そこまで辿り着いて来た者は少ない。見回しても人の気配はなく己の影のみそこにあった。
 厳かな雰囲気の中ゆっくりと進んで行けばその直線上には祭壇が。アホ毛を軽く揺らしながら、祭壇前に立ては感心の眼差しで細かな装飾を眺め壁画を鑑賞し、それから一抱えはありそうな金装飾が施された壷の前に差し掛かれば、

             ――かた、

「………?」

 小さく聞きとめた物音。訝しげに傾げた首。ゆるりと瞬けば立ち止まり、じ、と壷を凝視。さすればまた、

        かた、かたかた…

微かな揺らめき。左右に小さく振動する壷。

「……やだこの壷生きてる」

ティアフェル > 「――訳ないか」

 バカなこと呟けば、すぐに肩を揺らして、中に何かいるのだろう。と伸ばした首。台座に置かれた壷の中をひょいと覗き込むと――

 フーッ、バリッッ

「きゃ…っ?!」

 紅い閃きが見えたかと思った刹那、突然中からいきり立ったような唸り声とともに額を引っ掻かれた。後ろへ引き、呻いて顔を抑えていればぽーん、と壷から飛び出した黒猫。どこかから忍び込んだそいつはあまつさえ先程まで潜んでいた壷を蹴倒し―――

「ちょっ…!!」

 ぐら、と大きく揺れて床に叩きつけられようとする壷・受け止めようと腕を伸ばすも――
 ガンッ がらがらがら……

「あー…っ」

 結局間に合わず、床にぶち当たって砕け散った壷……施されていた金の装飾がきらきらと眩く儚く蝋燭の灯りに閃いていた。
 割れた壷の前、呆然とする女。駆け抜けていった黒猫。一連の物音が鳴りやんで、しーんと静寂が再度支配した、そのあとに残されたのは有り触れた無残な光景。

 しばし茫然と立ち尽くしてしまっていたが……やがて、はっと我に返って、さーっと蒼褪める。

 こ、この場に誰か来たら……ま、まずい……。

 猫の姿はいずこへか消えてしまったのだから、ここにあるのは割れた壺と己の姿のみ。――ということは、

「わたしが壺割り犯と見做される…!」

ティアフェル >  やばいまずいやばいまずいやばいまずいそれはいや!

「やってもいない罪を被るのは御免よ……よりによって教会で……
 神様わたしは冤罪です! だから無事にズラかれるようお導きください!」

 普段ちーっとも信仰なんてしたためしもないが、今ばかりはまるで信心深い信徒のごとく。
 一度聖堂へ跪いて両手を組み合わせ熱心に祈りを捧げ。

「――っしゃ、これでOK
 きっとご加護があるはず……ていうか今だけでいいからほんと加護ってくださいお願いします」

 平身低頭全身全霊祈り奉りたい所存……普段はさっぱり不敬なのであるから都合よく祈った所で聞く耳持っていただける訳ないだろうが。
 とにもかくにも、正直祈るしかないのだから五体投地の勢いで祈るだけ祈ったら後はGO

 右見て左見て、なんとなく足音を殺し。抜き足差し足、そーっと静かに。そして存分にこそこそと怪しさ満載で割れ砕けた壺の前から逃げるのだ。
 誰もいないよね? いないよね? むしろいないで来ないで! 見ないで!!

 誰かに目撃されたら絶対…捕まる。でも神様断じてわたしではありません……。

 慎重に慎重にそして挙動不審に礼拝堂の外へ――誰もいない今のうち。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にホーセーアさんが現れました。
ホーセーア > 「・・・一応尋ねさせて貰うが、どこへ行くのかな?
まさか、そのまま逃げようというのではなかろうね?」

呆れたような声出しながら入口から歩いてきたのは、
どこかで見かけたような子供。
しかし、身に纏った衣服は明らかに教会っぽい上下で
一見すると関係者のようにも見えるだろう。

・・・実際の所は調べものしていて教会の蔵書見せてもらった序でに
軽く見回りなどしてから帰ろうかとしていたのだが、その最後にと
入口から中見渡すつもりで通りかかっただけ。
序でに言うと一連の場面割と最初から見ていたので、壷割った原因が
目の前の不運なヒ-ラーではない事は百も承知だ。
しかし、教会の人間に詫びる事無くこっそり逃げ出そうとするのには
流石に声かけるしかなく。
もっとも少年モドキの目つきの悪さも相まって、
咎め立てしているようにしか見えないだろうが。

ティアフェル > 「――ぎゃ!」

 不意にかかった声に思わず乙女らしさとはかけ離れた悲鳴が短く迸った。
 びくう!と大きく肩を跳ねさせて。
 そして、タイムリーに今出ようとしていた礼拝堂の扉からやってくる小柄な姿に、うわあん、神様あれだけお願いしたじゃーん!と胸中で八つ当たりしながら。
 あわあわと焦って冷や汗を飛ばし。

「い、いや! ちちち、ちが、違うの!これは!わたし、わたしじゃなくって……っても全然信用ならないとは思うけど……って……あれ……? 君……」

 首をぶんぶん振って大いに云い訳を開始しかけたところで、大人にしては随分ちみっこいその姿を改めて認識すれば軽く瞳を丸め。

「ぇ、っと……以前お見掛けしましたな?
 てゆうか、探し物手伝ってもらった……その節はどうもお世話になりまして……」

 と、一旦相手を認識するとご挨拶を始めるマイペース。
 軽くお辞儀をして。

「こんなところでこんな時間に偶然ね。あまり遅い時間に出歩いてると身体に悪いわよね。
 それではわたしはこれで――」

 と、適当に事態を有耶無耶に誤魔化してそれとなぁく立ち去ろうと努めてにこやかに笑みを向けてごきげんよう、なんて気取って手を振って――再度ズラかる構え。
 猫に額を引っ掻かれた上壺割りの容疑までかけられかねない非常に理不尽な事態。
 詫び? 誰になんで? なにも悪いこともしていないのに謝る筋合いもない。

ホーセーア > 「おおうっ!?何だ何だ?

・・・どうやら脅かしてしまったようだね。
それは僕が悪かった、すまない。
しかしね、君がこのまま立ち去ろうというのなら
見過ごすわけにはいかなくてね、声をかけさせてもらった」

思ったより大きな反応があったなら、然程肝座っている訳ではない此方も、
びくっと見竦めながら大声出してしまう。
ややあって落ち着いた様で、そのまま立ち去ろうとする彼女の服の裾
軽く掴んで引き留めようと。
もし抵抗するのなら、外見に似合わず意外と力強い少年モドキだが、
服破ったりするのは嫌なので必要以上には引っ張らない。

「あ、いやいや。あの時は僕が悪かったのだからいいんだが・・・

・・・逃げたくなる気持ちは何となく判らないでもないが、
仮にも神の目の前で、偶然とはいえ教会の資産が失われた事を
何の報告もせずに行く気かね?
この場はいいかもしれないが、後々君自身の良心の呵責とやらが
ちくちく痛んだりしないとも限らないぞ。

安心したまえ、実は割と最初から見ていたから
君には何の落ち度がないのは知っている。
僕も一緒に行くから、ちゃんと神父殿に話をしに行こう。
万が一弁償という事になったら・・・まあ、乗り掛かった舟だし、
僕も半額は負担させてもらおう」

詫びるとは少し言葉が強かったかと反省しつつ、せめてきちんと
責任者に話をしに行こうと、比較的優しい目で説得しようとして見たり。