2025/02/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエウフェミアさんが現れました。
■エウフェミア > 大寒波で凍てつくような王都。
女は久しぶりに冒険者ギルドに顔を出していた。
ダイラスではひどい目に遭った。
闘技場で負けた後記憶がぶっつりと消えていて、気がついたら最小限の装備だけ持たされて木賃宿に放り込まれていた。
しかもその最小限の装備というのが男衆に見られることだけを意識した見栄えだけの軽装鎧だった。
そのままダイラスにいたらまたひどい目に遭いそうな気がして慌てて王都に戻ってきた。
そこでこの大寒波である。
「はぁ……本当についてないわね」
なけなしの金をはたいて注文したきついお酒をちびちびと飲みながら溜息をついた。
このままだと資金が底をつくのは時間の問題だ。
またお色気優先の闘技場に行かざるをえなくなる事態だけは避けなければならない。
防御効果があるのかないのかいまいちはっきりしない指で弾いた。
■エウフェミア > 「切羽詰まっていてもお酒って美味しいのね……」
指先でテーブルの上をなんとなくなぞりながらギルドの中にいる冒険者たちの顔をチラチラと見ている。
なんとなく目を合わせるのを避けられている気がした。
「こんな鎧着たくて着てるんじゃないわよ…」
軽装鎧の上から羽織ったボロいマントをぎゅっと引き寄せる。
心底情けない。
小さなグラスに入ったきつい蒸留酒を喉の奥に流し込む。
一瞬の灼熱感と軽い酩酊。
こんなところで酔いつぶれてしまっては冒険者として失格も良いところだ。
とはいえこの寒さを凌ぐためには強い酒の力を借りる他はない。
「いっそのこと一人で受けられるのをサクッと受けてちまちまと稼ぐという手もあるかしらね…」
ちまちま稼ぎではそれなりの装備を整える頃には引退の年頃になってしまいそうな気もする。
■エウフェミア > 「ま、仕方ないか」
心を決めて席を立つと一人で受けられる依頼の掲示を見に向かう。
積雪で連絡がつかなくなった集落への小荷物の輸送などが手頃なところだろうか。
軽く酔ってはいるが依頼を検討することができないほどではない。
一枚一枚丁寧に読み込んだ軽く唸りながら比較検討をする。
「これか……これ…かしらね」
道中の脅威度が高い方が報酬も高いがそれだけリスクも高い。
このリスクをどう見積もるのかが冒険者としての技量となる。
これまでと違って装備はあまり良いものが使えないとするなら少しは余裕があったほうが良いだろう。
腕を組んで熟考する。
■エウフェミア > 「これでいきますか……」
このまま選り好みを続けていては資金が干上がるほうが速い。
ひとしきり考えてから一枚の依頼書を選ぶとギルドの係員の方へと向かうのだった…
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエウフェミアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店」にラリーさんが現れました。
■ラリー > 平民地区内のその小さな古書店は、わりと地区の中心の近くにありながらほとんど目立たず、立ち寄る者もそう多くない。
また古書店という性質上、商品の劣化を避けるために出入り口の向きなど日差しが殆ど入らない設計になっていて、店内は薄暗い。
そんな店の奥、接客カウンターの向こうで椅子に座って文庫本を読んでいる店番らしき少年の姿があった。
この店は少年の実家が経営しているもので、書類上は別の人間を立てているが実質的な店長は少年が務めている。
それ故、この店は少年にとって学院の図書館以上に自由のきくテリトリーである。
獲物となる対象が訪れれば、ほぼ確実に術中に囚われる羽目になるだろう。
もっとも、客足の少なさから獲物の出現は図書館以上に運任せではあるが…その時はその時、が少年のスタイル。
ただ静かに、読書に没頭しながら客の訪れを待ち続ける。
なお主な客層は通常の書店では見つからないような商品を求めるマニアックな本好きか、
遠方の客との本のやり取りの依頼を受けた冒険者あたりとなる。
少年の修理の腕はそれなりに定評があるため、そうした依頼もぼちぼちやってくる。
「…」
ふと思い出したように顔を上げ、ちらりと出入り口を見やる。
少年は思う。いつも客足はほとんど無いが、今日は殊更にないだろうな…と。
何しろ最近王都を覆っている寒波の影響で、現在の外の天候は猛吹雪だ。
ドアに付けられた小窓から見える景色は真っ白。こんな時に外出する物好きはそうそういまい。
やむを得ず外出している者もいるにはいるだろうが…吹雪を凌ぐための屋根のある場所など他にいくらでもある。
そんな中でこの店に誰かがやってくるとすれば、本当にたまたま目に留まったのが
この店だった、という偶然ぐらいでしかないだろう。
その誰かが少年の眼鏡にかなう獲物である確率…となるとますます低くなる。
まあ、獲物でないからとすぐに追い返すほど少年は冷血ではない。
よほどのことをしなければ、暫くの間立ち読みで時間を潰すぐらいは大目に見よう。
…それも飽くまで誰かが来れば、の話。
なんの感情か、ふ…と小さく息を吐き出しながら、少年はまた本のページへ目を落とした。