2025/02/07 のログ
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ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店街」にリュシアンさんが現れました。
リュシアン > 古書店街には余り似合わない若輩者の姿は独り。
時折後ろを振り返るのは、己の身の安全を助けてくれるだろう人が居るかの確認。
…とはいっても、少年からその姿をきちんと認識できたことはないので、実際問題は誰に助けを求めたらよいのかは不明だ。
ただ、通学経路上にはいる、ということだけを聞いているだけ。
目立つことが苦手でなければ傍らについてもらうこともできるだろうに、目立つのは嫌だという少年の一言でこのスタイルに落ち着いている。

「…えっと」

古書店街は路面店もあれば、少し余裕がある路地に平置きで店を構えるものある。
少年が態々偏屈ものが多そう通りに足を踏み入れたのは何てことはない、レポートを作るための資料探しのため。
図書館に行っても良かったが、図書館の治安に不安を覚えている身としては何らかの護衛の目が届く…と思い割れるこちらの方が安全に思えたというだけの話だ。

リュシアン > 少年の今のところの専攻は魔導機械である。
自家門の特権を駆使すれば何らかの現物は手に入れることもできるのだろうけれど、それを両親に強請ったことはない。
現物を見ようと思えば実際に使用されているところに見に行けばいいし、理論的なものは書物をみれば概ねわかる。

けれど、それが少年の目的ではない。
何故先史文明においてそんなものが製造されたのか。
その技術はどこからやってきたのか。
技術は先史文明の中でどうやって利用されてきたのか。

知りたいことは、山ほどある。
けれど知るには資料が限られている。

「んんー…」

路面商を一つ当たっては該当するような文献があるかを口頭で確認する。
こどもだからとあしらってきたり吹っ掛けてくるようなところは流石にすぐに退散したが、きちんと対応してくれる店では店主の許可を得てからざっと荒く立ち読みをする。
収穫があればその本を購入し、なければ自分が探している内容についての本を探してほしいリクエストをかける。
手元に5冊目の本がやってくる頃には、すっかり後ろを振り向くことも忘れていた。

リュシアン > (やっぱり、独りで来るんじゃなかったかな)

欲しい本は手に入っているが、一番欲しい本はこどもだからと侮られて大いに吹っ掛けられた。
情報の価値は確かにあるが、それをいまいち理解していなさそうな店主に法外な値段で吹っ掛けらるのはさすがに内気かつ小心極まりない少年でも間違っているとわかる。

大体全て一冊200万ゴルドってなんだ。
その金額で、一般家庭が何年余裕をもって過ごせる金額なのかわかっているのか。
隣で別の本を買ったおねえさんには5ゴルドで売ったくせに。
どうなっているのだろう、あの店の価格帯。

「ん、んん」

…いけない、いけない。
今は違う古書商の店にいるのだ。
違う店の事なのだから、今は忘れてしまおう。

古く黄ばんだ、茶色い染みのあるページをめくりながら上手くはない咳払い。

ぺら、ぺらり、とまた頁をめくるも新しい収穫はない。
やはり、先程の一冊200万ゴルドの店で頑張って値切るしかないのだろうか。
だが、少年にはそれが自分でできる気がしない。

リュシアン > 「……やっぱり、そういうのよくない」

突然、毅然と顔をあげて呟いた少年の事を店主はどう思ったのだろう。
声に出した瞬間、店主と目が合ってしまった少年は少し恥ずかしくて手にしていた本をそのまま購入して別の店へと向かうことにした。
20ゴルドだったので、まあ小遣いの範囲だけれど安くはない本だ。
けれど、これはこれで正当だと思える。

やっぱり、不当な高額転売はよくない。
だから、あの理不尽な露天商では買わないことにした。
運が良ければ同じ本をもっと安く買えるはず。
200万ゴルドとは言わないけれど、もっと、そう、正当な金額で───。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店街」からリュシアンさんが去りました。