2024/12/31 のログ
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ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 一日はいつ始まるのだろう。
零時……主教でいう賛課と終課の間という者もいれば、賛課(三時ごろ)という修道士もいる。
夜明けを一日の始まりと捉える者も多いが、夜に働く者にとっては日没がそれにあたる。

男は陽も暮れようかという頃に、十歳くらいの黒髪の少女を伴って自室からこの酒場へと下りてきた。
客はいない。来店客はこの場での飲食ではなく、新年を祝うための買い物で訪れた者が大半で、用が済むと自宅へと戻っていった。
銭ゲバの女店主が商機を見逃す訳もなく、数日前からこさえて酒場の一部を圧迫していた在庫はきれいに消えていた。
男がスン、と鼻を鳴らすとパンの香ばしさが厨房から漂ってくる。人間だけでなくパン窯もフル回転していたようだ。

女店主は男に気付くと顎でカウンター内を示す。サンドイッチの材料がトレーの上に並べられている。
果実水をコップ二つに注ぎ、トレーの上に載せると客席へと運んだ。

ヴァン > 二人はパンに思い思いの具を挟んでは黙々と食べる。どこか張り詰めた雰囲気さえ感じる。
数分後、男は王都の地図――といっても地区を記した程度の概略図だ――を広げた。

「補給地点は王城含めて五か所。エナジーバーと魔力回復用のポーションがある」

主教異端派が王城でのテロを計画している、という怪情報を掴んだのは月初のこと。
各派閥のトップの多くは聖都にいる。裏を返すと、次席のほぼ全てが王都にいる。
この時期はとかく集まる機会が多い。既存の体制をぶち壊すにはおあつらえ向きの時期だ。
異端審問庁も動いているので、後は好き勝手にやってくれ――というのが男のスタンスなのだが、今回はそうもいかなかった。
どうやら、異端派の矛先は一般信徒にも向けられているらしい。

ヴァン > 実働部隊を発見、殲滅しテロを未然に防ぐ。男が出した結論は安直なものだった。
ただの夜警のように思えるが、異端審問庁からは奇妙な情報を得ている。
いわく、男自身もターゲットになっている、と。

異端審問庁が対象を守る盾となる間、男は縦横無尽の矛となり獲物の喉を穿てばよい。男に狙いを変える者もでるだろう。
久しぶりに無茶をする。自然と浮かんだ鮫のような笑みを消して果実水を飲み終えると、晩課の鐘が鳴った。
食事を食べ終わった少女へと手を差し伸べる。

「狩りの時間だ。行こう、相棒(バディ)

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からヴァンさんが去りました。