2023/11/18 のログ
ヴィヴィアン > 「…あなたは随分長生きみたいだね。 魔族のようにも思えるけど、
 それにしてはどこか…厭世的な感じが見受けられるな。
 でも、そこはわたしはあんまり気にしていないよ。
 だれであろうと、学問に挑もうとするものは等しく研究者だ。
 自分がそれを証明してるしね。」
可愛く自分を指さしてちょっとおどけて見せる。
とはいうものの、相手は特殊なレベルで長命な存在なのだろう。
満足している、と納得してくれた相手に、少しだけ唸った。

「満足しているかというと少し困ることもあるよ。
 生徒たちが世話を焼いてくれすぎるんだ。
、幼い生徒を先輩がお世話してくれたりするみたいに、
 着替えとか、服の調達とか、お風呂とか。
 まあ、その分研究に使えるから嫌がることではないんだけれど…。」

「そうだね、わたしはとても幸運だ。
 天才だって得ることができない”時間”を手に入れたんだからね。」
天才だろうがなんだろうが、人間の寿命には限界があり、等しく死ぬ。
それを覆すことができた自分は、この上ない幸運を掴んだのだろう。
そう考えれば、姿の問題など些事以外の何物でもない。

「いや、話をしてほしいと言ったのはわたしだよ。
 ありがとう、ジョー。 名前を覚えたよ。」
どこにでもある名前かもしれないし、そうでないかもしれない。
ゆっくりと腰を降ろした相手の問いかけに、数秒間瞑目してから、
口を開いた。

「個人的には、学園は学ぶための場所だと思っているけど…。
 今の学園には、学問に集中するには邪魔が多すぎる気がするよ。
 とはいえ、わたしが長年教鞭を取ってきたのも事実だ。
 もし今の学園についてあなたが思うことがあるのなら…。
 それは教師であるわたしにも咎があると思う。」
腐敗や淫靡な出来事等で生徒たちの勉強を邪魔してはいけない。
そう考えているものの、今までそこに手を入れようとしていなかったのだ。
傍観していたことだって、きっと罪なのだろう。
悲しげに目を伏せてから告げると、手元の本をそっと撫でた。

”徒花”ジョー >  
「生憎、魔族ではない。元々人間だ。……そうだな。この国には、うんざりすることが多すぎる」

人間の探求者が結果としてそうなってしまった。
人を逸脱した結果、行くところまで行ってしまった結果だ。
厭世的になるのも、その長い時間が見せた国の変わりよう。
この腐敗のありようや、ままならないことばかりならそうもなる。
指摘された当人の顔も、さもありなんとうんざりした表情をしていた。

「……………愛されているんだな?」

それ自体は良いことだと思うが、なんだろうか。
なんだか熱狂的な雰囲気を感じる。余り触れないでおこう。
別に悪いことではないしうん、人に好かれること自体は間違いではない。

「…………」

静かに目を閉じると、ノイズがかった記憶に映る学院の映像。
腐敗した光景の中にいる一部の善性を重んじる生徒や教師。
そして、その結果虐げられる者。……うんざりするような光景だ。
彼女の言葉を静かに反芻するように、ただ暫く沈黙が続いている。

「…………いや」

そして、沈黙を静かな声音が割る。

「俺は革命者でもないし、部外者だ。今更あの在り方をどうこうするつもりもない。
 アナタがそれを憂い、善性を重んじるのであれば俺から言うことは何もない」

「……だが、教壇に立つものであれば、何が出来るかは考えてほしい。
 その結果涙を流す生徒もいた。自らが教師を名乗るなら、そうするべきだ」

飽くまで自分は部外者である、時代の追放者だ。
現代(いま)を生きる彼等に必要以上に介入してはいけない。
それが悪性だとしても、自らの介入は良い結果をもたらさないだろう。
静かに目を開き、両の翠が彼女を見ると静かに頭を下げた。

「……偉そうな事を申し立てたことについては、謝罪させてもらう」

ヴィヴィアン > 「元人間…。 特異的な存在なんだね。」
ジョーのような人間は見たことがない。
特別すぎる存在で、厭世感はその長寿故に育まれたものだろう。

概ね相手の由来がわかってきたのは、果たして良いことなのか悪いことなのか、
あんまり分からなかった。 相手の長い…長すぎる人生を、
どこまで想像できるかといえば、文字通り想像を絶するのだから。

「老人の介護も子供の介護も同じようなもんだろうし、
 彼らにはとても良くしてもらっているよ。」
のんびりした調子で答えてから、相手の言葉に耳を傾ける。
言葉を選んでいるのだろう、しばらくの沈黙のあとに告げられた言葉に、
重々しくうなずいた。

「あなたも教鞭を取っているのだから、部外者ではあるまい。
 わたしもできることはしているよ。
 少なくても、自分の眼の前では起きないようにしている。
 わたし自身が魔術の研究以外に時間を使いたくないからね。
 とはいえ、だ…。 数十年かけてああなった学園の中を
 きれいにするには、せめて経営に口出しできる人間がいないと
 現状の改善は難しいだろうね。
 謝る必要だってないよ。 憂慮しているのはわたしも同じだからね。」

”徒花”ジョー >  
「どうかな……堕落を知り、愉悦を嗜み、文明を築く種族だ。
 この世で最も正しく種族の道を踏み外しやすい者だと思うがね」

欲望のタガだけで言えばきっと魔族と相違無い。
それでいて人間はあらゆるものに対応力を持ってきた。
たった一歩、その一線。越えてしまえば案外あっという間だ。
人の道を踏み外し堕ちるのは、さも珍しい事とは思わなかった。

「……いいや、部外者だ。必要以上に関わる事はない」

飽くまで現代(いま)を生きる彼等の手助けはしても、それ以上の事はしない。
教鞭をとると行っても、臨時講師だ。悪法も法だ。彼等の作った基盤を揺るがすのは役目ではない。
既にこの地は、神に見放されている。或いは、そこに介入すればなにか変わるかも知れない。
だが、時代の傍観者の介入は"神の御業"。程度の問題ではない、行為自体が問題だ。
ジョーは誰かの神になる気など、毛頭ない。あってはならない。
憂いを帯びた表情のまま、静かに杖を取って立ち上がる。

「少なくとも、口煩く小言を言うことしか俺には出来ない。
 うんざりはするが、この結果を作ったのが人間(かれら)なら俺がやるべき事は無い」

「……精々時代を生きる若人に教えを時、アナタの介護をしてやれるくらいだな」

飽くまで個人の生きる手助けをすること。
不死者としてすることは、それだけだ。

「俺はもう行く。何かあれば、何時でも呼びつけると良い」

それだけ告げるとマントを翻し、男は静かに去っていくだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 公園」から”徒花”ジョーさんが去りました。
ヴィヴィアン > 「知識と理性があれば、そういったものも克服できる…と思うよ。
 多分、おそらく、できないわけじゃないと思うんだけど…。
 部外者、ねえ。」
立ち上がる相手を見あげて、小さく息を吐く。
彼の厭世感はかなりのものであって、きっと一朝一夕になんとか…
つまり、彼が動くということはないのだろう。

去っていく相手を見てから自分も立ち上がる。

「口うるさくなるのはお互い同じようなもんだね。
 学園でみたら挨拶をするようにしよう。」
虫干ししていた本を丁寧にたたみ、再び魔力の円盤に乗せる。
謎めいた相手は傍観者を気取りたいようだが、そうさせるつもりはなかった。
頭を働かせ、手を動かさねば…良いも悪いも結果は得られないのだから。

このあとどうしようかを考えながら、円盤を引き連れて学園に戻るのでありました。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 公園」からヴィヴィアンさんが去りました。