2023/11/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリセルシアさんが現れました。
■リセルシア > 平民地区にある市場通り
様々な露店がひしめき合う一画は、いつもながらに賑やかな様子を見せている。
それでも朝の喧騒に比べれば、幾分か落ち着きを見せ始めた頃合い。
道行く人からは少しばかり浮いた白い法衣姿の少女が顔を見せ。
とはいえ、浮いているのは純白の法衣ばかりで、店の主人たちからは気安く声を掛けられて。
「こんにちは、腰のお加減はいかがですか?
また悪くなったら、無理せずに言ってくださいね。」
大きな包丁を手にした肉屋の主人に、そう声を掛け。
その向こうからは、八百屋の女将が「これ持って行きなよ。」とやや歪な形をした野菜を持たせてくれる。
曰く売れ残りだというけれど、萎びていないどころか、瑞々しいもの。
このあと治療院に寄るつもりだから、丁寧に頭を下げて、ありがたくいただくことにして。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイノさんが現れました。
■イノ > 本来は、いつもの気紛れの散歩。
そんな感じで、この平民地区を巡っていたのだが。
ふらりと訪れた市場通り、ふと、見覚えのある姿。
…が、それが学院であった、と思い出せば。
その姿を学院で活動している、そんな少女の姿へと変化させる。
もっとも、耳と尻尾を隠し、服装を変えただけなので、見る者が見ると…な感じではあるが。
まぁ、多分、問題ないだろう。
「あれ?こんな場所に見た事のある人が。
あー…ここに居るんだし、買い物か何か?」
とか、そんな声を掛けながら。
その見覚えのある、少女の元へと軽く駆け寄る。
相手も見覚えがあるのなら、まさに運動が得意、学業が苦手、よく講師に怒られている少女、とか、そんな感じに思い浮かべられるだろう。
■リセルシア > 店の人々に声を掛け、奥へと進もうとしたところで、また別の声が掛けられる。
どちらかと言えば年配が多かったこれまでとは違って、その声はまだ年若いもので。
「えーっと、こんにちは。
はい、ちょっと買い出しで。」
治癒院のお手伝い。
本来ならばそこまでしなくともよいのだろうけれど。
治癒の魔法で治せるとは言っても、基本は本人の体力が一番重要。
そのためにも美味しいものを食べるのが一番だということで。
そんなこともあって、半ば炊き出しのような夕飯づくりは、毎回、量も半端いもので。
貰ったものも含めて、大量の食材を抱えた格好で、学園で見知った少女に頭を下げ。
■イノ > 「うんうん、そっかそっか。
…って、よく見たら、結構な量だねぇ。
小食な私からしたら、この量はとんでもないものだーって感じだよ」
少女の言葉に、返す言葉に合わせうんうんと頷きながら。
とりあえず、と少女の近くまで寄ったところで、足を一旦止めて歩み寄る。
大荷物、しかも、それが食材だと近付いて分かれば。
さも驚いた反応をしているように、おどけてみせる。
いや、まぁ、保存が出来るならともかく、そうでない場合、この量をすぐ食べるって訳だから、そう思ったりするのは仕方無い、と思う。
少女の隣にまで来れば、頭を下げる少女へと、にっこりと笑みを浮かべ。
暇潰しの散歩中だし、手伝おうか?と、そう聞いてみよう。
■リセルシア > 「えぇ、人数が人数だから。
さすがにこれ全部ひとりで食べちゃったら、大変ですよ?」
正面も、重ね持った荷物に、顔を横から覗き込ませ。
食べるのは複数人だけれど、それを作るのは、ひとりきりで。
「貧民地区にある教会併設の治癒院で、配る予定なの。」
どうも、これだけの量を食べると思われている。
その誤解は解いておこうと、「よいしょ」と掛け声をかけて、
持ち帰った素材によっては、売ったほうがお金になるものも含まれていて。
■イノ > 「………あぁ、なるほど!
いやー、ごめんごめん、てっきり?」
その言葉から、一人で食べる訳ではない、とはさすがに分かる。
ぽんっ、と手を打ち納得顔を浮かべてみせた。
普通に考えて、むしろ、そっちの方が浮かぶだろう、と思えるのは気のせいだ。
「教会の、治癒院?
へぇ、そんなものがあるんだねぇ」
うん、実際に、その名前は聞き覚えがない。
素直に、そんな答えを返しておいた。
「それで、お手伝いはおっけー?
何か、聞いたらどんな場所なのかって気になるし、見学ついでにさ?」
まぁ、後は、少女自身にも興味が湧いた、と言うのもあるのだが。
それで少女の了承を得られれば、その荷物の半分でも持ってあげようか。
■リセルシア > 「どれだけ食いしん坊なんですか…」
軽い調子で謝ってくる相手に、僅かな苦笑を浮かべ。
重たい荷物を「よいしょ」と持ち変える。
それなりに古くからある治癒院だとは聞いているけれど、
王都に住んででもいなければ、知る由もないのだろう。
知名度の低さは、仕方なく。
「お手伝いしてもらえるのは嬉しい限りですけど……
良いんですか? 面白いことなんて何もないですよ?」
今からすることと言えば、ひたすら野菜の皮を剥いて、煮込むくらい。
手はいくらでもあって困ることはないから、こちらとしては願ったり叶ったりで。
大荷物の半分を軽々と持って行かれると、「助かります」と漏らし。
そのまま二人並んで、貧民地区の教会まで向かうことになり―――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリセルシアさんが去りました。
■イノ > 「うん、いや、本当に一人で食べるなら、凄いよねぇ」
その意見は正しい、と頷き答えながらも。
その体格で、その荷物は本当に大変そうだ、と思う。
まぁ、自分の場合、道を覚える気もないので、なかなか覚えない、知らない、と言うのがあるのだが。
そこは、あえて黙っておこう。
「良いよ良いよ、暇潰しにはなるってものだし?」
大丈夫大丈夫、と手を振って答えれば。
荷物半分を手に持ってみせる…うん、地味に重い。
とは言っても、少女からして、よりも感覚的には軽いものだろう。
そうして、今回は素直に、荷物運びを手伝って。
興が乗れば、料理とかも手伝ったりしておこう。
少女との出会いと、少女の通う教会を知れた事の対価、とでもして。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイノさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 公園」にヴィヴィアンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 公園」に”徒花”ジョーさんが現れました。
■ヴィヴィアン > 魔力で作った円盤の上には、布を被った大量の物品。
まるで紐でも付いているかのようにそれを引っ張りながら、
公園を歩く。
たどり着いたのは公園の中でも風通しが良い日陰だった。
普段なら皆日向で活動するのだろうが、ここを訪れた理由は
日光を浴びることではないので、場所は正しい。
「うん、ここならいいだろう」
天を仰いで日光の一を確認してからつぶやくと、布を地面に広げる。
その上に立てて開いた本を何冊も並べ広げていった。
何十回、何百回と行っている、虫干しである。
ひとしきり並べ終えると、残っていた本を手にとって
その辺の地面にぺたりと座り本を開く。
こうしてゆっくりと虫干しをしている間も、大事な知識研究の時間だ。
■”徒花”ジョー >
かつん、かつん。石畳を叩く杖の音。
朗らかな日差しを浴びながら人混みに紛れて歩く不死者。
珍しく今日は予定もなく、なんとなく街を散策している所だった。
暖かな日差しが頬を撫でる穏やかな空気は、一時の平穏を感じさせる。
「……悪くはないな」
例え、腐敗の蔓延する国といえども人の織りなす国だ。
こういう時間が失われていないのは、まだ希望の象徴を言えるのか。
或いは時間の問題なのか。余りネガティブな事を考えるときりが無い。
軽く首を振り、思考を切り替えることしよう。さて、今日はどうするか。
久しぶりに趣味の食べ巡りでもするべきかと、杖を鳴らして進む最中。
「……ん」
開けた公園。何気ない穏やかな昼の光景。
その中で目についたのは、本を並べる少女の姿。
昔ほどではないが探求気質であり、"そういうもの"には自然と興味が出る。
かつん、かつん。杖の音は自然と彼女の方へと向いていた。
「虫干しか。精が出るな。……此れは、何の本だ?」
ぺたりと座る少女の正面。虫干し本を挟んだ向こう側で声をかけた。
■ヴィヴィアン > 虫干しをしながら、黙々と日陰で本を読む少女…。
傍目から見れば、勤勉な学生かなにかだと思われたのだろう。
声をかけられてから少し顔をあげると、本をくるりと回して背表紙を見せた。
「こんにちは。 この本は基礎的なの魔術書で…最新改訂版のやつだよ。
古い知識のままでは良くないから、改訂版が出たら都度読み込むようにしているんだ。 前と覚えていたことが違うというケースもあるしね。」
虫干しのことがわかるぐらいだから、それなりに相手も話がわかるはず。
そう踏んで答えると、近くの床に敷いてある布を指さした。
「わざわざ日陰に来るということは、きっと本に興味がある人だと思ってね。
手に取って見てくれても構わないよ。 持って行くのだけは勘弁してほしいけど。
…あなたもなにか魔術について学んでいる人なのかな?」
少しだけ期待を込めた問いかけ。 ただの興味で声をかけた人かもしれないし、そうでない人かもしれないし。
何れにせよ、魔術の徒であれば気も合うはずだ。
そんな楽観的な気持ちで相手に尋ねた。
■”徒花”ジョー >
からん、と杖を地面に置きその場に膝をついた。
視線を合わせるのは、コミュニケーションにおいて基礎的であり大事なことだ。
「成る程、最新の基礎魔術師か。……俺の知っているものではないな。何時出た?」
ほう、と感心の声が思わず漏れた。
基礎を疎かにするものは、魔術でもなんでも成長は難しい。
自分が見たのは数年前か、数十年前か。不死者の感覚は矯正してるつもりだが、まだ人よりも長いようだ。
そういう意味では彼女は見どころはある術者と見る。
両の翠は、背表紙を一瞥すると興味深そうに彼女を見やる。
「ああ、こう見えて昔はそれなり学ぶべき事を趣味としていた。
学術、武術のみならず、当然魔術も多くを学んだ」
不死者に成ったその時から約束された悠久。
"学ぶ"という行為はどれだけ時間を有意義に過ごさせてくれたことか。
おかげで、人よりは色々身についているつもりだ。
普段は冷淡ささえ感じさせる男だが、同じ好を感じているのか表情も穏やかだ。
「俺は他人の物を盗むほど、卑しくはない。
……見た所……、……?……学生……か?」
不死者の瞳は、人より多くの物を識る。
眼の前にいる彼女は、あの学院の生徒かと尋ねる声はぎこちない。
……なんだ、この言い知れぬ違和感は。普通の少女だと思うが、なんとも言えないもやっと。
一つ言えるのは、ただの術者ではなさそうだということだ。
■ヴィヴィアン > 「これはねえ…2年前かな。
大きく改訂があったから、少し騒ぎになったんだよ。
例えば…術の取り扱いについて、より詳細にメカニズムを記載するようになった。
今までは『使えればいい』みたいな感じだったけど、より丁寧に掘り下げるようになったんだ。
感覚的に使うのではなく、論理的に使えなければ…ということなんだろうね。」
問いに朗々と答えたところで、相手の来歴を聞いて興味深げに瞳を輝かせた。
「おお、あなたも学者か…それとも研究者か。
しかも、その口ぶりからすると相当な碩学の人であるようだ。
よろしければ少しお話してはくれないだろうか?
まあ、盗むような人でないことはわかってはいるがね。」
のんびりとした調子で応じながら、問いかけにはしれっと首を横に振ってみせた。
「わたしはヴィヴィアンという。 教師をしているんだ。
この姿はトラブルによるものだよ。 服は…。生徒たちに選んでもらっている。」
断言した。 生活能力のなさはあるが、それを全く歯牙にもかけていないレベルの回答だった。
「ちなみに、このあたりの魔術書の中でなにか詳しいものはあるかい?」
自己紹介は十分だといわんばかりのテンションで、目の前に広がる本を指し示す。
様々なジャンルの魔術書が並んでおり、それらについての…
彼の見解を聞きたいと言わんばかりに、喜色満面な調子だった。
■”徒花”ジョー >
「二年前、か。…、…思ったよりも真新しいな。
まぁ、ただ使うだけなら必要ではないことではある」
「だが、魔術も物も同じ。理屈と安全性を理解して事意味がある。
……魔術も知識の産物。識るものに味方し、識らぬものに牙を剥く」
「元より、人が扱えるように作られた物だ。俺からすれば、初めからそうすべきだ」
魔術も流派も十人十色。
ただ日常に華を添える程度ならば、使えればいいというのも間違いではない。
だが、扱いを知らぬ刃物に対して危険性の疑問は持たないのか?という話になる。
不死者の扱う魔術も、論理に基づいて構成された術式だからこそそれに共感した。
ある意味、時代が追いついてきているようで何処となく満足気に頷いている。
「……ただの趣味人だ。時間ばかりは余っていたからな」
趣味が転じてのめり込んだだけに過ぎない。
それを生業とするには、些か我流が強い。
「話すくらいなら改まる事もない。時間ばかりはあるからな。
……しかし、なんだ。ヴィヴィアンと言ったか。なんだか気を使わせたのはすまないが……」
「……"トラブル"とは」
少しジロジロ見すぎたらしい。相手の違和感に察せられたのは少し申し訳ない。
人を見かけで判断することはないが、元の姿は違うらしい。同じく人をやめているのか、或いは若返りか。
気まずさついでに言われれば広がる本に視線を落とした。
……成る程、ジャンルは多岐に渡っている。見かけ以上に彼女は博識なようだ。
「そういうお前は"賢人"と見受けるが……そうだな。
大凡の事は修めた。得手不得手も感じたことはないが……」
白い人差し指が、一冊の本を指差す。
それは一般的には後ろ暗い魔術、所謂反魂や死霊魔術の類の一冊だ。
「詳しい、とは違うが、一時期必死になって覚えたものはコレだ」
■ヴィヴィアン > 「うん、実に素晴らしい。
そう言ってくれるひとたちばかりなら、どれほど教育が楽なものか…。
教育というのは技術だけの話じゃなくて、使う上でのことも
教えてあげないといけないしね。 趣味人にしては随分詳しそうだけど。」
相手の言葉に何度もうなずく。 まさしく、きちんと安全に使えてこそ
皆に広められるというものだ。 不安定なものを広めることなどできない。
「時間に余裕があるなら嬉しいね。 魔術の実験でちょっとやらかしてね。
本来はもっとこう…。おじいちゃんだったんが。ひげを蓄えていて、しわしわの。
それがこんな姿だからね。 賢者だなんて…達観した子供か神童と言ってくれたほうが、
まだ納得がいったかもしれない。 この年になってもわからないことが多いよ…。」
穏やかに微笑む姿は、自分でいうように年齢不相応であろう。
楽しげに話をしながら、示された本を見て少しだけ眉を上げた。
「…珍しい術を研究していたんだね。
といっても、邪悪な用途に使う感じでもなさそうだ…。」
示されたのは、おそらく一般の人が見れば眉をひそめる邪術…。
死の定めを捻じ曲げる術だ。
相手の落ち着いた様子からすれば、”大事なこと”のために
学んだのだろう。 事実、そういった人は多い。
とはいえ、この書は簡単に読めるようなものではない。
相手の知識の深さは並々ならぬものだと理解すると、無意識のうちに背筋が伸びた。
■”徒花”ジョー >
「……時間ばかりはあったからな……趣味が転じて、という事だ」
恒久の時間を生きるのだ。人が修めるに足らない時間の術さえ修める事ができた。
恐らく、学問含む"学び"という文化がなければ、とうの昔に精神は擦り切れていただろう。
長い時間を生きるものほど、退屈がどれほど怖いものか。
「…………ん。そ、そうか…………」
「……いや、若返りや性別を変える魔術は知っているが、何が起きたらそれで事故を起こすんだ……」
一瞬流しそうに成ったが思わず突っ込んでしまった。
確かに魔術、探求の道に不慮の事故はつきものだ。
若返りどころかその逆、老化や死亡することだってありえる。
その中で若返りどころか性別変化までしてしまうとは…しかも、思ったより慣れているし。
思ったより神経が図太いようだ。眉間を手で抑え、やれやれと首を振った。
「……探求の道に終わりはない。行き詰まればまた別の知識を学び、それが時として鍵となる。
賢人も凡人も、神童でさえ行く道は変わらない。また時間を得たのであれば、それを学ぶ機会もあるだろう」
明かりの見えぬ霧がそこにはある。
尽きぬ欲望のように道に終わりはない。
この探求の道が終わる時は、求道者として終わってしまう時だ。
そういう意味で、知識を持ったままの若返りは…性別はともかく、セカンドチャンスなのかもしれない。
「…………ある意味、徒労には終わった。もう俺には必要のない知識だ」
深く語ることもない。
語るべきものでもない。
ただの一人の男の、情けない話に過ぎないのだ。
ふ、と緩めた自嘲の笑みは何かを物語る。
少なくとも、お察しの通り邪悪な事は置きなかった。
「生者と死者は交わるべきではない。それを学んだ後に教えられた位だ。
……まぁ、それはそれとして、お前も探求者ならば手助けできる事はあるだろう」
「……コクマー・ラジエルを知っているなら、また会うこともあるだろう。
時たま、臨時講師として雇われる。その時は、手助けくらいは出来る」
臨時講師として顔を出している。
もしかしたら、今度はそこで会うこともあるだろう。
もののついで、だ。そう思うと真っ直ぐと翠の目は彼女を見下ろす。
「そんなに畏まる必要もない。俺は世捨て人のようなものだ。……それよりも、お前は教師としての立場と見受けるが、あの学院の教師か?」
■ヴィヴィアン > 「趣味、ねえ…。 これを修めるのは趣味レベルじゃない研鑽が必要だと思うよ。
うーん…。 いや、マジックアイテムに魔力を込めようとしたんだけどね。
器が不安定だったのか、術式に不備でもあったのか…。
まあでもこの姿になっても知識が失われたわけではないから、気にしなかったけれど。」
とんとんと指で自分の頭を叩いて、知識が健在であることを示す。
頭を抱える相手を楽しげに見やるも、静かにうなずいた。
「全くその通りだよ。 神童なんてのはいるんだろうけど、
今まで積み上げられた知識のうちのほとんどは、平凡な人の研鑽によるものだ。
この事故も素晴らしい機会だよ。 人間でいえば…もう一生分、研究ができるわけだからね。」
死霊術に関する口少ない相手の言葉を聞いてわからないほど、
人を理解できない人間ではない。 件の本を手に取り、そっと手元に戻した。
「そうだね。 あなたのことは良く知らないけれど…。
死人とどうしても交わりたかった人を待っているのは、概ねつらい結末だ。
それくらい”生きている”ことと、”そうでない”ことは違うんだろう。
うん、研究は常に推し進めているからね。うん、そうだよ。
コクマー・ラジエル学院の魔術教師をしている。 名前は…。
さっき言ったね。 困ったときは相談に乗ってほしい。
あいにく、人間一人でできる研究はたかが知れているから。」
教本の改版だって楽じゃないんだよ、と相手に笑いかけてから、
まっすぐに相手の瞳を見つめ返す。 立場や考え方は違えども、
同じもの…知識を得んとするものの、炎のきらめきを見た気がした。
■”徒花”ジョー >
「……修めるに十年必要な学問があるとしよう。二十年生きることが出来れば半生をかける」
「俺にはただ、それを繰り返すだけの時間があっただけの話だ」
転じてそれが趣味のレベルを越えているとしても、不死者にとっては趣味の粋を出ない。
言葉にすれば簡単だが、やっていることは人の域を越えている。
求道の末に"アクシデント"や"道を外れる"事は珍しくもない。
特に、二度目の人生を得たような彼女ならわかるはずだ。
さて、その過程で一重に悠久の時を生きると言った。
そこに佇む不死者の探求者は、その目にどう映るだろうか。
昼風に靡くマントと白髪。人の姿をした男は静かに彼女を見据えていた。
「まぁ、お前が満足しているならそれでいいが……」
不便とかしなかったんだろうか。
自分も性別を変える事は出来るが、女の体は色々と大変だ。
案外、自分の体や性別に頓着がないのは探求を志すものとしてわかることだが。
「"天才"と呼ばえる人種は確かにいる。積み上げる時間も、研鑽の速さも確かなものだ。
……そういう意味では、若返りが出来たのは確かにラッキーなのかもしれないな……」
天才も凡人も結局は積み重ねるだけだが、そのスピードには確かに差が存在する。
技術介入が起きないものほど、それは如実に現れるものだ。
定命の者には、長いようで一瞬の時間だ。かと言って、簡単に超えるべきラインでもない。
往々にして、探求者のジレンマとなろう。それを"越えた者"がどうなるかは、身を持って知っている。
「……すまないな、初対面に語るべき事ではない」
「それよりも、名乗りおくれたな。俺は……ジョー」
「"徒花"ジョー」
最早誰も知ることのない旧い二つ名。
不死者は静かに名乗れば、ゆるりと腰を下ろした。
傍においた杖を大切そうに撫でれば、言葉を続ける。
「生憎、困り事を解決する側だがな。
……"アナタ"も教師であるならば、一つ聞きたい」
「求道の話とは外れるが、あの学院の現状をどう思う?」
国の腐敗を受けて、今やあの学院でさえその影響を受けている。
自らが辿った道を進む者だ。好として、"そちら側"とは思いたくはない。
燻る炎。横目で見やる視線は、少しばかり鋭かった。