2023/11/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にマーシュさんが現れました。
マーシュ > 晩秋というにはいささか冷たい風が吹く。
それでも晴れた空模様から注ぐ陽光は眩しく、深い色合いの双眸をやや細めた。

冷え込みに、けれど行き交う人の熱は途絶えることもない。
───喧騒の種類が昼と夜とでは違いはするものの、にぎやかな喧騒が続く中。
訪れているのは商工ギルドなどが存在する区画。

常の勤めの合間の余暇を利用しての訪れ。
連なる看板に視線をさまよわせ、以前も利用したことのある場所を見定めてから歩を進め。
静かな歩みは目的があるせいか迷うそぶりは特になく、とある看板の下まで止まることもない。

マーシュ > 「───………」

風に揺れる看板をちら、と見上げて確認してからその扉を潜る。
店、というよりは何かの事務所といった風情の内装。
けれどカウンターがあり、受け付けらしい数人の姿。
待合のための席やテーブルセットがいくつか設えられ、幾人かの姿も見て取れる。

壁には基本的な料金の刻まれた木版が掲示されているのを一瞥しつつ、受付に声をかけ。

「………ええ、送るのは手紙を二通。別々の場所にお願いしたいのですが」

用件を伝え、それに応じた料金と、届ける先などについて必要な言葉を返す。

己の立場であれば、所属組織専属のポーターが存在するだろうに、と訝しむような言葉には、少し眉尻を下げた笑みで私事で公文書を運ぶような方に依頼するわけにもいかないでしょう?と返せば納得はしてくれた様だ。

実際に近況を綴ったそれは、シンプルな封書の形にまとめられ。
多少難避けの加護はかけてあるから、オプションとしての提示には軽く首を横に振って辞することになる。

マーシュ > 書類、というよりは、運搬時における注意事項、あるいは不測の事態における紛失や破損に対する補償、あるいは連絡についての念書めいたものへの署名。

別々の宛先だからそれぞれ二つ。
一通はいつもの宛先だが、もう一通は知己の親族あてのもの。
己の近況ではなく知己のそれを送ることを約束したためのそれだが、ふと懸念事項に思い至るとわずかに思案。

加護に重ねて、少しだけ目くらまし程度の術を一つ重ねることにして。

「……ではお願いいたします。」

所定の料金とともに、署名した紙片を差し戻し。
手紙を受け付けに託して、それで用向きを終えると少しだけ眦を緩め、礼を伝えると静かにその場を後にすることに。

扉を抜けると、頬を撫でる風の冷たさに一瞬身じろいでから。
もと来た道をたどるように静かに歩きだす。

冬の支度や、祭事に意識を傾ける。
禊は少しつらい時期になりましたね、と言葉にならない呟きを溶かして。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にサウロさんが現れました。
サウロ > (王都に流れるいくつかの水路にかかる石造りのアーチ状の橋の上。
 右手に行けば夜も煌びやかな繁華街への通りに出る。
 左手に行けば連れ込み宿もある宿場通り。
 冷たい夜風が吹く中月明かりを反射して流れる水路の水面を眺めるように石橋の手すりに凭れかかって肘をついている。
 特に何をしているわけでもなく、金糸の髪を揺らしながら石橋を行き交う人を眺めている。)

「…………」

(こうして無為に時間を潰すのはいつぶりか。
 だいたい朝から晩までやることをやって、美味しいご飯を食べて、シャワーを浴びて寝る。
 そんな規則正しい生活をしていたころが少しだけ懐かしい。
 最近はお酒も飲めないし健康的とは言い難い爛れた性活に染まりつつある。
 冷たい夜風は火照りも冷まして頭も冷静にさせてくれるから良い。ずっと秋冬であればいい。
 そんなことを考えるにまで至っていた。無益な時間だが、こういう時間が今の自分には必要らしい。
 傍から見れば待ち合わせに来ない相手を待ち惚けしているような、そんな様子にも見えようか。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルマースさんが現れました。
アルマース > 繁華街側の路上で馬車が止まった。
扉が開くと女たちの高い笑い声、別れを告げる声が重なって夜に響き渡る。
『絶対私じゃないから!』『え――帰るの――?』『例の客の手紙がさ――』
かぶせ合うようなお喋りの声が五、六人分。

「最近寝不足だから――またねえ」

そのうちの一人を下ろして車輪が再び回り出し、喧噪は遠くなる。
ローブの中で身震いすると、ヒールの音が橋へと向かった。

水の上を渡る風はことさら冷たいけれど、連れと別れた一人の帰り道には不思議な心地良さがある。
ふう楽しかった、と独り言が落ちるくらいには機嫌よく、急ぐでもない足取りで橋の半ばへ差し掛かり。

「……あれ――……」

橋の欄干に凭れる見覚えのある背格好。
反射的に名を呼んで背中を叩こうとしたのをやめた理由は判然としない。

ヒールの音が変わらぬ速度のまま青年の横で止まり、いつからそうしていたのやら冷たくなっている髪に手を伸ばした。
懐かしさ、のようなものが滲む声とともに、避けなければくしゃくしゃ頭をかき回しただろう。

「――――なあに景気の悪い顔してるの」

サウロ > (冷静に思考するには冷気のある場所がいいとは誰が言い出したか。
 真冬とはまだ言い難いが夜の気温はぐっと下がるようになってきた。
 ツンと鼻の奥まで冷えそうな風の匂いに、冴え冴えとした月を見上げて。
 水路を流れる水の音にヒールの音が聞こえる。
 それが隣で止まればそこまで近づく人の気配には流石に気づいて、視線を向けた。
 褐色肌に黒髪の美人な女性、麗しい見目をしたローブ姿の女性の手は、月明かりを弾く金色の髪を混ぜ返しただろう。)

「アルマ。……景気の悪い顔なんてしてたかい?」

(考え事をしていただけだが、ぼーっとしていただけとも言える。
 なんにせよ何をするでもなくただ立っていたのだから、景気が悪いと言えばそうなのか。
 ちょっと判別はつかないが、彼女の手には冷たい髪の感触を伝えてしまうだろう。
 微笑を浮かべ、最後にカフェで会ってから、数週間ぶりの再会だ。)

「久しぶり。こんな時間に一人で歩いていては危険だよ」

(そう挨拶をしてから、この時間の一人歩きは危ないことを伝えて、欄干から体を離して彼女の方へと向き直る。)

アルマース > 視線を受けて、紅いラインを引いた目元が笑う。
煌く粉をはたいて月明かりを照り返す華やかな化粧顔は、娼婦か踊り子かというところだが、今夜は勘違いされる相手ではない。

「や。山賊退治は終わったんだ?」

懐かしく思うほど時間が経ったわけではないけれど、王都を離れて治安の悪いあたりへ行くということは聞いていたから。
頭の隅で気になっていたことが、無事に戻っていたのだという安心に代わる。
危険だよ、ともはやしみついた癖なのだろう人の心配をする台詞に、軽く首を竦めた。

「はいはあい、こんな時間だから寝に帰るところよ。
 一人なのはそっちもでしょ――お家の場所が分からなくなった?
 家出少年かと思ったわ」

迷子扱いをしながら、自分で乱した金の髪を直し、つめた、と言って手をローブのポケットにしまう。
暗がりで表情が詳細に見えていたわけではない。
夜に一人、寒い場所にいるのでそんな風に見えただけかもしれない。

サウロ > 「山賊退治がメインではなかったけれど、山賊退治もしたよ」

(セレネルの海を挟んで北東、九頭龍山脈が広がる中タナール砦の増援にも行ってきたと。
 魔族との本格的な戦いはなく小競り合いがあったぐらいか。
 それでも無事に戻ってきたのだというように、安心させるように笑みを浮かべて頷く。
 通りかかった彼女が向かう先は宿場通りだろうか。
 視線を一度流してから、宿まで送るよ、と促そう。
 ここで遭遇したのも縁、寒空の下で長話よりは、のんびり護衛がてら歩いてのおしゃべりの方がいいだろうと、隣に並んで歩き出す。)

「そんな子供ではないんだけどな……?
 いつか帰る場所、というのも俺にはないし……いや、王都がそうと言えば、そうなのかな」

(今は国のあちこちを旅しているが、帰るべき"家"と呼べる場所はないのでどうなのだろうと首を傾げたりして。
 ただ考え事をしてただけだよと、何でもないように言う横顔はいつも通り。
 整った青年の顔立ちが、柔和な微笑を浮かべているだけで。)