2023/11/11 のログ
■レイ・L・アイリス >
『だから言ったろジャックス!あの娼婦は絶対やばいって!』
『でもよぉ、団長並みにデカかったんだぜ!?男ならちょっと気になるだろ!』
指で抑えたこめかみがなんだか痛くなってくる。
此処を抑えている間は魔力回路を通じて団員達と会話ができる通信魔術だ。
思考による会話。特に連携をするには一際重要なのだが……。
「……お前たち、ちゃんと仕事をしているか?あんまり騒ぐと、近所迷惑だぞ」
思っていることが口に出た。傍から見れば見事な独り言である。
危なかった。今歩いてるのが、寝静まった住居区画で。
こんな所人にでも見られたら、とてもじゃないが恥ずかしくて顔から火が出るところだった。
んん、思わず咳払い。
『団長がお怒りだよ、ジャックス。ショーン。真面目に夜警しようね』
『ウッス』 『りょーかい~』
「やれやれ……」
明るいのは良いことだし、彼等が仕事に真摯なのは知っているが心配になってくる。
こめかみから指を離せば思わず苦笑いだ。寒い季節風に、首に巻いたマフラーで口元を覆う。
夜も更けた住居区。平民達は明日に備えて今は夢の中。
悪い大人や腐った役人、或いは盗賊やらが動き出す夜の世界。
そんな連中から彼等を守るために、黎明騎士団は自ら夜警を買って出る。
「……今日は平和そうだな」
今のところは異常なし。
一時かもしれないが、何事も平穏が一番だ。
マフラーの奥で口元が自然と緩んだ。それでも、足取りはきっちり固く
浮かれないように石畳の通りをゆるりと歩いていく。視線も気配も、従前に闇夜に対する警戒は万全だ。
■レイ・L・アイリス >
「しかし、今日は冷えるな。雨上がりだったからだろうか?」
特に冷気が強まっている気もする。
とうの昔に雨は止み、石畳はすっかり乾いて良い足音を立ててくれる。
それを期に随分と冷え込んでいる気がする。感覚だが、まだまだ寒くなりそうだ。
心なしか、吐き出す息はほんのり白い。寒い季節は、心配事も増える。
『ショーン。貧民地区の様子はどうだ?』
こめかみに手を当て、思考する。
『相変わらず夜もやかましい場所さ、団長。
わかってるよ。酔っ払いや浮浪者が凍死すんのは寝覚め悪いし、なんとかするよ』
『ああ、任せたぞ』
軽めの男の声が脳内に響く。
寒い季節は、ちょっとしたことで多くの生命が奪われる。
特に、持たざるものは自然と冷酷さに奪われるだけでしかない。
それが摂理といえばそうなのだが、見過ごすのは黎明騎士として、人として出来ない。
「(……余計なお世話かもしれないが、今の我々に出来る事をしないとな)」
それこそ今の斜陽の政治にとって、我々こそが異物なのかもしれない。
だからといって、それこそ善性を捨て見て見ぬふりなど出来はしない。
今更、と僅かな葛藤をゆるく首を振り、払った。
「気を改めねばな」
任務の最中邪念は不要。
すぅ、と冷たい空気を一呼吸。────よし。
再び力強く、石畳を踏みしめる。
■レイ・L・アイリス >
静寂の夜に響くのは今の所自らの足音のみ。
たまに住宅に侵入しようとするこそ泥を見つけるが、今日はそんな気配もない。
「……陽が昇るまでこのままでいてくれればいいがな」
民草が眠る静寂、安寧は何者にも犯し難いものだ。
例え暗雲が立ち込め、秩序が崩壊しているような世界でも
この一時の静寂だけは守られるべきだとは思う。
真っ直ぐと正面を見据える黄色の双眸が、次に見つけたものは……。
闇に光る、二つの目。
「……?」
仕事上、夜目は利く。
じ、と目を凝らせばその正体は宵闇に溶ける綺麗な闇色。
くるんと巻いた尻尾で佇む可愛い可愛い黒猫だ。
「…!」
思わず目を見開いて足を止める。
「か、かわいい……」
もっふりと多めの毛並み。
くりくりの猫目にぺろりと出すぷりてぃーな小悪魔舌。
はわわわ、団長だって女の子。可愛い動物が好きである。
その場でふわふわ、おろおろ。不用意に近づくと驚かせちゃうし、嫌がられちゃうかもしれない。
でも仕事中だし、触っちゃダメか?ダメだろうか???教えてくれよ猫ちゃん。
その場で右往左往する姿はむしろコイツが不審者である。
そんな熱烈な団長の目線も受け流す。
当のにゃんこは『なんだコイツ』と思っているだろう。南無。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にレヴィアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からレヴィアさんが去りました。
■レイ・L・アイリス >
にゃん。流石に不審者お断り。
ゆるりと闇色の毛は宵闇に消えてしまった。
「あ……」
不審者ムーブしている間に猫は消えてしまった。
がっくし、肩を落としたが落ち込んでいる暇はない。
んん、と咳払いとともに半身を起こせばきりり、と意識を整え再び歩み始めた。
夜明けが訪れるまで、この静寂は守れたのだろう────。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からレイ・L・アイリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にビーンさんが現れました。
■ビーン > 休日の昼下がり、賑わう平民地区の端をとことことお散歩する小さな姿。
体躯が小さい為、人通りのお居場所の真ん中を歩いてしまえばあっという間に人波に埋もれてしまうために端を歩いているだけだが、見るものが見れば小動物感や絡みやすそう等という印象を与えてしまうだろう。
肌寒い秋の空気もローブのお陰で遮断され、長袖長ズボンに隙は無い。
賑やかな喧騒に時折耳を傾ければ出店の呼子や、食料を買い込む主婦。
薬草をギルドを通さずに店に直接売り込む冒険者の声や、消耗品を求める冒険者達のやり取り。
今日も世はなべて事も無し─。
そんな普通の日常がどこか楽しく穏やかな笑みを浮かべている。
「んぅ…今日は何処に行こうかな…?」
等と、目的もない散歩、行先につい悩んでしまう。
■ビーン > ふらりと足を踏み入れるのは路地。
ちょっとした冒険感覚で路地をゆっくりと歩き始める。
貧民地区程ではないが、治安がいいとは言えないが…。
何とかなるかなと軽く考える少年。
曲がり角をいくつか曲がり広場を通り抜け、奥へ奥へと進んでいく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からビーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にセカンドさんが現れました。
■セカンド > ランチタイムが終わった酒場。
遅い昼食をとっている数人の客と昼間からいる飲んだくれを背景に、バーテンダー服の女は合い挽き肉を前にしていた。
手には一枚の紙きれ。どうやら何かのレシピのようだ。
「『この合い挽き肉を奇声をあげながらよく捏ね、混ぜ合わせること』……なんでやねん」
よく捏ねるのはわかる。粘りが足りないと焼いている最中に表面が割れてしまい、肉がぱさつくのが容易に想像できる。
だが奇声をあげる必要はあるまい。著名な料理人のレシピなのだが、どうでも良い部分まで詳細に記してあるようだ。
作っているのは2人分。1つは自分に、もう1つは店にきた犠牲者、もとい客に試食してもらうことにしよう。
■セカンド > 順調に作り終わった後、1つの上にナプキンを載せておいた。客がきたら再加熱の魔道具に入れて出せばよい。
調味料は何にしようかと思案。
「塩と胡椒……は、ありきたりやなぁ。ショーユは……うーん。ミソも悪ないか。あー、デミグラス。よさそうやな」
レシピには鉄板のものが書かれていたが、アレンジを恐れてはいけない。
何口かはレシピ通りに味わうとして、残りは色々試すことこそが新たな発見に繋がるのだ。
今知られているものは「最適」である。しかし、「最高」ではない。だから錬金術師がその道を拓く。
■セカンド > デミグラスソースをかけたハンバーグを口にして、女の目が丸くなる。
「……えぇやん! これは――これは――」
銭になる。手間がかかるがその分上乗せすればいい話だ。
瞳に金貨を浮かべつつ、口許は妙齢の女性が浮かべてはいけない歪み方をしている。
「ふひ、ふひひ…………!」
レシピ通りに奇声をあげることになった女を、客と酔いどれが『まーた始まったよ』という面で眺めていた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からセカンドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店」にラリーさんが現れました。
■ラリー > 平民地区内のその小さな古書店は、わりと地区の中心の近くにありながらほとんど目立たず、立ち寄る者もそう多くない。
また古書店という性質上、商品の劣化を避けるため出入り口の向きなど日差しが殆ど入らない設計になっていて、店内は薄暗い。
そんな店の奥、接客カウンターの向こうで椅子に座って文庫本を読んでいる店番らしき少年の姿があった。
この店は少年の実家が経営しているもので、書類上は別の人間を立てているが実質的な店長は少年が務めている。
それ故、この店は少年にとって学院の図書館以上に自由のきくテリトリーである。
獲物となる対象が訪れれば、ほぼ確実に術中に囚われる羽目になるだろう。
もっとも、客足の少なさから獲物の出現は図書館以上に運任せではあるが…その時はその時、が少年のスタイル。
ただ静かに、読書に没頭しながら客の訪れを待ち続ける。
なお主な客層は通常の書店では見つからないような商品を求めるマニアックな本好きか、
遠方の客との本のやり取りの依頼を受けた冒険者あたりとなる。
「…ん」
そうしていれば来客を告げるドアベルの音が響いて、少年はゆっくり本から顔を上げ
珍しく現れた客の姿を視界に入れた。
さてその客は少年の獲物になりうるような者なのか、それともなんでもない一般客か…。