2023/10/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にグリモアさんが現れました。
■グリモア > 一人フラフラと散歩をするのなら、何か起きるのかもしれないと考えた方が良い。
そんな小言を聞かされたのは、何時の頃か、誰からだっただろうか。
ふと、そんな事を考える少女は今、平民地区の路地をさ迷っていた。
目的もなく歩いているのだから、そうなってしまうのは仕方がなかったのかもしれないが…
進む路地、前から後ろから感じる人の気配。
その流れから、明らかに何か目的を持った動きをしている様子。
それがただの勘違いなのか、実際にそうであるのかは分からない。
「引っ張り出しちゃうのも良いんだけど、間違ってたら嫌だし…
もう少しだけ、様子見?」
そんな呟きを洩らしながら、進んできた道をもう少し先に行ってみよう、と。
ゆっくりとした足取りで歩き続ける。
そう、今、彼女は地面に足を踏み締めて歩いていた。
人の多い場所で、何時もの様に浮いてしまったら目立ってしまうのは流石に分かってる。
■グリモア > 「あぁ、そうね、それなら…こうしちゃおうかしら?」
何を考えているのか分からないならば、分かるようにすれば良い。
路地のど真ん中、不意に足を止め、胸元に両手で抱えていた分厚い書物を持ち直す。
目の前で広げ易い様にすれば、その書物は独りでにパラパラと捲れ始め、ある頁でそれは止まる。
止まった頁に目を通し、小さな声で読み上げて。
その声が止まったタイミングでフワリと周囲に広がる魔力。
その広がって行った魔力を追う様に少女は視線を周囲に向けた。
少女の瞳に映るのは、広がった魔力に反応した生命反応と、自分に向けられている感情を示す色。
もし、誰かが彼女に何らかの意思を持ってそこに居るなら、その誰かの生命反応と共に抱く感情が色となって表れる。
そうでないならば、無色の反応を示すのだ。
■グリモア > 「えーっと…無色、と…無色。
後は……あら残念、あの辺りがヒットしたみたいね」
左に右にと目を向けて、周囲の気配と感情を読み取ってゆく。
建物等の障害物を通し見ているのもあって、周囲に普通に生活を送っている人達の反応も示されてしまう。
だが、そうした人達の反応は無色、ここに居る自分を知る由もないのだから当然だ。
つまりは、これで無色以外の反応を示した生命反応で、現される色次第で判別が出来る。
好奇であれば黄、情熱であれば赤、例えるならばそんな感じに。
そして、今感じた色は…黒と紫の混じり合い、害する事を抱いた悪意。
それに気付いた後にすべき事は簡単だ。
再び彼女の前で書物は頁を捲っていき、それを読み上げた。
周囲に点々と感じていた、感情を抱く気配が無色へと変化する。
もし他の誰かがそこに居たのなら、いきなり失神して倒れる数人の男性が確認出来た事だろう。
■グリモア > それを確かめる事もせず、パタンと本を閉じて胸元へと抱え直す。
「はい、お終い。
問答無用で襲ってくれないから、助かるわね。
まぁ、それはそれで、結果は変わらないんだけど」
どこか自慢気に誰も居ない路地でドヤ顔を浮かべながらそう呟き。
もう一度だけ周囲を見渡す、念の為にとの確認を行い。
それで何も無さそうならば、改めて歩みを再開しよう。
もし誰かが見ていたりして、何かが見えてしまったのなら、確かめられた色次第で対応を考えるのだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からグリモアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にサウロさんが現れました。
■サウロ > (快晴の青空の下、今日も王都の平民地区は穏やかに過ぎていく。
街の憲兵に捕らえたひったくり犯を引き渡したところ。
自由騎士としての活動もしながら、次の目的地に向けて準備を進めている期間だ。
旅をするとは言え拠点は変わらず王都にある。王都に戻る理由が多い。
次の目的地は街道経由で様々な都市を経由しつつ、最終的には奴隷市場都市になる。
そのことで相棒とは意見の食い違いもありつつ、中々思うように準備は進んでいない。)
「……どうしたものかな」
(こればかりは相棒の意思も無視できない。
納得のいく妥協点を二人で探るしかないだろう。
旅の準備のための買い出しをする為に大きな通りを歩いていれば腹の虫が鳴き、少し遅めの昼食をとるかと、目的を少し変更した。)
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルマースさんが現れました。
■アルマース > 運河沿い。穏やかな秋風が吹けば、川に舞い落ちる街路樹の葉。
水の音、葉擦れの音の心地良いパン屋のテラス席。
透かし模様の鉄製の丸テーブルを一人で占領していた女は、甘いパンを口に運ぼうとして見覚えのある姿を見つけた。
フォークに刺したパンをそのまま、よく通る声が街路に響く。
「おにーいさん。お茶しなあい?」
■サウロ > (通りの先には運河が流れ、橋が架かっている。
その橋を渡り、街路樹が並ぶ通りにはお洒落な外装などの軽食店などが並んでいるようで。
焼きたてのパンのいい香りが鼻孔を擽り、視線を向けた先、同時にテラス席からよく通る声には聞き覚えがあった。
ちょうど通りかかっている"おにいさん"と呼べる年代の男はサウロぐらいだっただろうか。
視線の先のテラス席にその姿を見つければ、見知った相手がいる。
軽く手を挙げた後、天内に入ってから店員と軽く話して、注文をしてからテラス席へと向かう。)
「こんにちは、ええと……アルマースだったね」
(宿屋の食堂で相席をした女性。その時と変わらぬ恰好。
けれど褐色の肌や、髪の色にその声は、別の場所で会って事故とも言えるような一夜を過ごした記憶もある。
あの時とは化粧の差で大分印象も変わって見えるのだが、耳の形だとか力強い黒い双眸だとか、しなやかな体つきだとか。
そういう部分からは、完全に同じ人だとサウロの観察眼も告げている。
彼女の向かい側に同席させてもらう形で腰を下ろして、顔を見合わせた。)
■アルマース > 思ったより声が響いたせいで、おじさんからおじいちゃんまで他にも何人か振り向かせてしまって、適当にひらひら笑顔で手を振る。
『お、知り合いだ』から『声掛けよ』まで脊髄反射でやった後、サウロが注文を済ませてやってくるまで、バターと砂糖とアーモンドスライスたっぷりのパンを口にして――
ぱちんと記憶が蘇る。
――あれ……勢いで声掛けたけどそういえば、別人のフリしてる時に寝ちゃって……
バレたかバレてないか微妙なアレがソレだったんじゃなかったっけ――
ごくんとパンを飲み込むときには、のどかな景色が目に入らなくなっている。
日が経つうちにあられもないあれこれは夢の中の出来事のように思えていて。
普通に一緒にご飯を楽しんだ記憶の方が先に出て来ただけだ。恰好も大体その時と同じ雰囲気だったせいもある。
一人緊迫した面持ちで、向かいに座るサウロを見ることができたのも数秒。
「……、……サウロ……お元気……だった……?」
まともに視線を受け止められず、自分の顔を覆い隠して呻く。
コーヒーの香りばかりがのどかである。
■サウロ > (注文したのはハムとレタス、それからミートソースとチーズのホットサンドと珈琲。
出来上がってから運んでくれるということなので先に珈琲だけ貰ってトレイに乗せて、席へとついた。
元気よく声をかけてきた相手が席についた時には緊迫した面持ちになって顔を手で軽く隠しているような様子に、軽く首を傾げた。)
「まぁ、恙なくというところだけれど。どうかしたのかい?」
(彼女の変化を怪訝そうにしつつ、これだけの反応を見ればまるで気付いていないかのようだが。
実際に合わせる顔がない、というような雰囲気でもなく、コーヒーにシュガーを入れて混ぜている。
────色事に関しては色々ありすぎて、日常生活にすら影響が出るほどになっている。
故に、それらを引きずらない為に精神統一をして、きっちりと分別をつけるよう理性が強く働いているという状況。
彼女から見れば、あまり気にしていないような、気づいていないような、と見えても不思議ではないだろう。
カップを口につけて一口飲んだ後、穏やかに微笑みを向けた。)
「君の方は、あれから何事もないようで安心したよ」
■アルマース > 「どうかしたのかい、て――ううーん……?」
王子様スマイル――と女の中で分類されている翳りのない微笑みを向けられて、別人格ではないかと訝しむ。
ばれていないのでは、とも考えたが、何事も無い――と言われれば、危ない橋を渡っていたのはやっぱりあの夜のことだ。
少しばかりの思案の後。
――ま、ベッドで人格変わっちゃう人は割といるし切り替え大事だよね。
赤面された日にはあたしの方もぎくしゃくしちゃうし。
くらいに思っておくことにした。
改めて緊迫に満ちた時間が終わると、組んだ脚の爪先に引っかけている布靴をぷらぷらさせながら首を傾げる。
富裕地区の店なら眉を顰められそうな行儀である。
「おかげ様でねー。サウロは今日はお仕事中じゃないの? ナンパされてて大丈夫なの」
■サウロ > (彼女曰く王子様スマイルを浮かべながら、何事もなかったようにコーヒーを飲んでいるが、しっかりと記憶も残っている。
指摘されれば咽せて赤面ぐらいはするだろうが、彼女にそんな意地悪な嗜好がなければこのまま普通に過ごす穏やかな昼下がりになるだろうか。
店員が運んできたホットサンドの乗せられた木皿を受け取り、礼を告げて。
食事を前に指を組み、食前の祈りを紡ぐ。)
「大丈夫だよ。僕の今の立場は少し特殊でね。次の旅の目的地に向けて、準備をしているんだ」
(組織内で実務部隊に所属する者とは異なる、個人で国内を巡りながら単身から少人数で活動する者。
流浪、とはよく言ったもので、ある程度は個人の裁量に任されている。
一緒に行動している相棒もいるということも説明しながら、ホットサンドを口に運んだ。)
「君の方は、この国には慣れてきたかい?」
(まだまだ来たばかり、とも言える旅人にそう訊ねながら、こうしてリラックスしながら昼食を楽しんでいる様子を見れば、
安定はしているというか、特に悲惨な目に合っている、という様子も見受けられないので、安堵しているが。)
■アルマース > 育ちが良いなあとサウロの食前の祈りの仕草を見ているが、育ちも行儀も大雑把な女はすぐにホットサンドの方に目が行く。
「次はどこ行くの?」
せっかく知り合ったのになあ、とは思うけれど、出会いと別れは旅の醍醐味。
食べかけのパンをナイフとフォークで切り分ける。
「慣れ……てはいないかなあ。ぼおっと歩いてるとすぐ迷子になるし。
ああでもねえ、踊り子の仕事は夜が多いから、昼は最近鍛冶屋さんで働かせてもらっててさ。
地元に根付いてるところで働くと、地元情報が色々入ってきて良いね。みんないい人だし……」
幸運と野生の勘に恵まれた人生。
気の強さもあってか、悲惨な目を見聞きすることはあっても、自分が標的にされることはほとんどない。
持ち前の好奇心と後先を顧みないせいで、思いもよらない目、に自分から飛び込むことになることの方が多いかもしれない。
目の前の王子様――ではなく騎士様と過ごした夜だって義侠心やら自棄のような強気が招き寄せた結果である。
――明るい陽射しの下だというのに、夜の匂いと濃厚な記憶がぶわぶわと蘇ってきて。
褐色の肌色のせいで赤面こそしないが、お腹を押さえて呻く。
「……んあぁ……」
一人でいたり、暇にしていたり、踊っていると疼きに苛まれてしまう。
人と話していたり、忙しくしていれば気が紛れるのだけれど。
■サウロ > 「次は、街道を経由して、北回りに。タナール砦までは行かないが、山賊街道の方かな」
(奴隷市場都市、はまだ最終的な決定ではないので、一先ずその街道沿いにいくつかの都市を経由するつもりだと。
とは言え、目的を果たせばまた王都へ戻ってくる予定ではある。
九頭龍山脈の方にも、今度は長く滞在するかもしれない。
そんなことを話しながら、視線が向けられるホットサンドを軽く切り分けて、どうぞ、と差し出して。)
「ふふ、王都は広いからね。
そうなんだ、鍛冶屋か……昼も夜も、は大変ではないかい? 無理をしないようにね。
いい環境で過ごせているのであれば、良かった」
(彼女はとても魅力的だ。踊り子、と言えば娼婦に近しいと見る者も多く、薄着ということもあって被害に遭いやすい。
まだ数度会っただけではあるが、こうして言葉を交わし、名を知り合って、肌も重ねた相手。
彼女がそういう被害にあっていないのであれば、良かったと思う。
そんな風に話していれば不意に上がった艶めくようなうめき声にぎょっとした。)
「!? ……アルマース? 大丈夫かい?」
■アルマース > お腹をさすりながら自分を落ち着かせるためにコーヒーを飲む。
パンが甘いのでコーヒーはブラック。苦さくらいで追い払えない記憶に小難しい顔になってしまう。
「山賊街道? え、あぶな。あ、危ないから行くのか……?」
旅の危険は回避するものの旅人にとって、なるべく避けたい道程に一瞬首を傾げてしまう。
わあい、と声を上げてホットサンドのお裾分けをいただく。
食べたことのないメニューは何でも食べてみたい女にとって、食事の連れがいるということはシェアができるということで、大変幸福なこと。
あたし暇な方が疲れちゃうタイプだからな~、などと言って、あらぬ欲を食欲――ホットサンド――に向かせようとしていたが。
大丈夫か、と聞かれれば、ここ数日全く大丈夫ではなかったので瞬間的に爆発してしまう。
「大丈夫じゃないよ……ッ! サウロと言いさあ……濃ゆいんだよ……!
なんかもうぺらっぺらのうっすい紙みたいなセックスで記憶を薄めたい……
……はい、あーん?」
ホットサンドのお返し、兼、意趣返しに、パリパリのアーモンドスライスのキャラメリゼが張り付いたパンをフォークに刺してサウロの前に。
誘ったのは自分なので完全に逆恨みと八つ当たりである。
■サウロ > 「あそこは確かに危ないから、アルマースは一人歩きしては駄目だよ」
(護衛をして欲しい商人たちが出す報酬金も多く冒険者たちもよく向かう場所。
ハイブラゼールで身ぐるみを剥がされた者が野盗化するケースも少なくない。
そして見目のいい者を攫って奴隷市場で売りさばき、また娯楽都市で金を落とし──。
腐敗と悪意の悪循環だと苦笑しか浮かばない。
自由騎士としても、何度も派遣されている場所でもある。
ホットサンドをシェアはしたが、爆発するように抗議? 八つ当たり? をする彼女に碧い目を瞬かせ。
それから、なるべく考えないようにしていた夜の記憶を連鎖的に思いだして、じわりと眦が熱くなる。)
「えっ、いや……。……それは、すまない……?」
(濃ゆい、というのが続く言葉から性交渉のことだとは分かったが、濃かったかどうかのレベルが分からない。
いや、確かにとんでもないことを口走った記憶はあるが。
そうしてずい、と差し出された一口分の彼女が食べていた美味しそうなパン。
甘く香ばしい匂いがするが、手ずから食べさせるような仕草に手が彷徨う。
それから少し迷って、はやく、と言うように更に突き出されたとすれば、観念して口を開いただろう。
少し伏し目がちに、色白の頬や眦に朱を乗せて、咀嚼する。
スライスアーモンドの香ばしさに、キャラメリゼのぱり、とした甘さが咀嚼する度に広がって。
恥ずかしさを誤魔化すように、珈琲を飲んでは、落ち着かなさそうに視線が彷徨う。)
「……美味しい、ですね」
(と、一応ごまかしはするが、果たして誤魔化せているかどうか。
彼女の劣情を煽る結果になっていないかどうかが不安である。)
■アルマース > 「用事が無ければしなあい」
真面目な先生に不真面目な返事をする生徒のよう。
娯楽施設の多いハイブラゼールには踊り子の仕事も多くて、実際行くことを考えてはいたから、絶対にしない、という約束をしないのが女にとっての誠実である。
タイミングよく相乗り馬車や一団が見つかればそれに越したことは無い。
サウロの表情をじいっと見つめて満足そうににっこりすると、自分の口にも甘いパンを一口放り込む。
「サウロって嘘つけないし可愛いよねえ。
あたしより自分の心配した方が良いんじゃない……?
あたし淡白なんだろうなーって自覚はあったけど、濃ゆいのに溺れちゃうと戻れなくなっちゃいそう」
彼にとっては実際よくある経験なのかもしれない。
無茶させたのかなあどこも痛めてないといいなあ、と事が済んだ直後は心配したりしたけれど、後々サウロの反応を思い返せば、逆に物足りないくらいのものだったろうとは薄々感じ取れる。
「んふふ、素直。
髪、こっちの方が良いなー。撫でやすいもん。ねえ、あのお道具セット要る?
貰ったんだけど使わないからさあ」
サウロの目が良く見えるように、ぴょいぴょいと金髪の前髪に手を伸ばして搔き分ける。
■サウロ > 「用事があっても安全な道を選びなさい」
(旅慣れしている彼女であれば危険な道は避けるだろうが、不真面目な感じの返事には困ったように眉を下げながら笑みを零す。
行くなとも護衛をつけろとも口うるさくは言えないが、心配して忠告くらいは許して欲しい。
港湾都市であれば王都から出る船で、海路で行くと言う手もある。
そんな風に道筋を提案することも出来るだろうが──。)
「んんっ、……嘘は、つくものじゃないだろう。
これでも気を付けてはいるんだが……。
……淡泊?」
(あの夜を思えば淡泊、とは思い難い。
むしろそっちの趣味があるのだと思っていたので、意外そうな怪訝そうな表情を向けたりもして。
前髪に触れる指先を払いのけるなんてことはしないが、恥ずかしそうに目を伏せて誤魔化したりはして。
しかしお道具セットと言われれば噴き出しそうになる。
頬を赤らめたままでじとりと半眼で見据えるような視線を向けて。)
「……欲しい、なんて言えるわけないだろう。
この話題はやめないか、お互いに良くない」
(彼女のおなかが疼くように、こちらも下半身に熱が募りやすくなる。
こんな昼下がりの場所で、と。一応は倫理観的に、理性が働いてはいる様子で。)
■アルマース > 「はあい。山賊に取っ捕まっちゃったらよろしくねえ」
出来るだけのことをして、それでもすべての危険は排除しきれない。
生きることが危険そのものだと受け入れているだけで、予防や対策をしないわけではないのだが、どうも軽くしか聞こえないのは、痛い目に遭ってでも足取り軽く生きていきたい、という方向性によるのかもしれない。
赤くなる男を見ていると、どうも自分の中の性質のよろしくないものが擽られてしまって、抑えるのが難しくて視線を逸らす。
「…………えっと……あなたに触発されて新しい自分を発見してしまったけど……
……あたし別にそういう趣味無いからね……たぶん」
何か言いたげな視線に言い訳をするものの、満たされた気持ちを思い出して、それも振り払うのが難しい。
彼の言う通り、このままではよろしくない。
せっかく再会できて、胸の中のわだかまりが解消されたというのに。
サウロを見ると揶揄いたくなるのは自分の趣味なのか――いや、何かしら彼の発するものに誘発されているのだ、と思いたい。
一度引っ込めた手で皿やカトラリーを整えた。
「ええ、じゃあとっておくかあ……。結構場所とるんだよなあ……。
あはは、ごめんごめん。帰って来たらまた遊ぼうね。
あたしそろそろ、仕事行ってくる~。
――気を付けてね、サウロ」
重たく感じる腰を上げて立ち上がる。
サウロのそばを通りすがりざま、仰向かせて前髪を押さえると、額に口づけた。
おでこ見えてるの可愛いよ――と笑いながら運河沿いを歩いていく。
何だかんだ色々あったりはしたけれど、無事を祈る気持ちに嘘はない。
■サウロ > 「その時は、助けに行くよ」
(山賊に捕まったら酷い目に合うのは想像に難くないが、彼女の様子だと危機感があるのかとやや心配になってしまうが。
きっとそうしてこれまで無事に生きてきたのだろう。実際にそんな場面にならないことを祈りつつ、笑みを浮かべながら真摯にそう返して。
自分に触発されたと聞けば驚いたような顔をした。
そんな風に人に新たな性癖を開花させていたとは知らなかったという顔。)
「それは……なんというか。すまない……?」
(これは謝ることなのかと迷う表情。
少なくとも慣れた様子で楽しんでいたような記憶もあるのだけどと向ける視線の先でカトラリーを纏める彼女が立ち上がるのを見つめる。
道具に関しては聞いた話だがと前置きして「娼館とかで買い取ってくれるところもあるらしい」ということも伝えておいて。
横を通り過ぎる際に掻き上げられた前髪、その額に触れる唇。
蠱惑的な笑みを浮かべる彼女のいい匂いと、柔らかな感触に僅かに双眸を見開いてぽかんと。)
「……あ、ああ。
行ってらっしゃい。また、」
(彼女の雰囲気や言葉に翻弄されるかのようにまともな反応も出来ないまま、可愛いという言葉には返す言葉も言語化できず。
そうして去っていく後姿を見送った後、じわじわと恥ずかしさのようなものが込み上げて、金の髪をくしゃくしゃと掻き回した。
浮かんでくる記憶と共に蘇る熱と疼きを押さえ込むのに、しばらく時間がかかっていただろうか──。)
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からサウロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 商店街」にショコラータさんが現れました。
■ショコラータ > 「いやあの、ディアンドル。 でぃ あん どる。
コレもそうなのかしら… 私の言い方が違うのかもしれないのよね… コルセットの感じとかは合ってるし…
あー… えーと… おーけー、長い、スカート。 ココがこう、長い。ながい、わかる?」
平民地区某所、アパレル店にて。
身振り手振りで求める衣服のイメージを説明する。
たまたま声をかけた店員さんは、コレってエルフか何かだろうか。
国籍不明、年齢不詳の高身長な推定女性。やけに線が細くて人間離れした印象を受けるが、怜悧な雰囲気が賢そうではある。
しかし話がかなり通じ難い。
共通語の中でも系統違いなのか、単語レベルの意味は理解してくれていそうなのに、
コレデスカ?と紹介してくれるものは要望のどこかを絶妙に外していて。
オーダーメイドじゃあるまいし全ての要望が叶えられるわけではないのは当たり前としても、
求めるものがありそうな雰囲気のお店であるのと、通じなさ加減がなんか面白くて粘ってしまっていた。
外国人同士の親近感なんかも、ちょっとあったのかもしれない。
「――は? え、ナニコレ靴下? ストッキング? う、うんなるほど脚は隠れるわけね、違うそうじゃない。
んん… けど… もーこれでいいかしら。おかしくは、ないのよね?」
ふむ?と見下ろすハンガーのディアンドルもどき(?)。
ミニスカートが気になるが、コルセットのような袖のデザインはよく分からないけどなんか好き。
丈の長いソックスでカバーすれば露出は関係あるまいと、絶対領域とか理解しない思考でキープした。
店員さんはそれでありがとうと解放し。 購入前に自分でもう一回りしていく姿勢。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 商店街」にレイン・レジネスさんが現れました。
■レイン・レジネス > ──国籍不明の長身女性店員という逸材がいる。それだけで、その店は大きなアドバンテージを得ている。
たとえ品揃えや価格、立地などさまざまな条件を鑑みて、条件が不利であったとしても。
店員目当てで訪れる客というのは必ず出る。例えばこの貴族女性もその類いであった。
「……なんだ、応接中か………………あら、かわいい」
パンツスタイルに踵の高いブーツ、痩躯。シルエットだけならば少年か、華奢な青年のような女は、商品の間から目当ての店員の応接風景を眺めていた。
何やら言語の関係で、コミュニケーションにいささか難儀しているようである。
手助けでもして恩を売ろうかとも考えたが──そこで目に入ったのは、店員よりむしろ、見慣れぬ客の少女。
遠目に眺めて、なるほど、と頷いて。そして口の中で、声に出さずに呟く。
あっちにしよう。
応接が終わり、ひとりでまた店内を見て回り始めた少女へ、ゆっくりと近づいていく。
射程に入れば、驚かせない程度の声量で、まるで親切な通りすがりを装って、
「君。……なにか探してたようだったけど……良ければ手伝おうか?」
平時なら決して見せないような、爽やかな笑顔を取り繕う。
■ショコラータ > 第一印象最悪だった痴漢となんでかデートする事になり。
実家から持って来た私服はイマイチ都会派ではない気がして、一着したためているところ。
妙なご縁で男娼に相談した「逆張りコーデ」から揃えやすそうな組み合わせを選んでみたけれど、
この提案を貰ったのはまだ暑い盛りではなかったか。
暑さよりは寒さに強い方とはいえ、お洒落に気を遣う女子は季節にも合わせて衣服をとっかえひっかえすると聞く。
…あれこれ大丈夫?と先ほどの店員さんを振り返るが、あまりしつこくするのもなんか。
思っていたのとは違ったが、これはこれで嫌ではないので、まあいいかと肩を竦める。
デートは感謝祭の催しになりそうだ。
何に感謝する祭りなのかも知らないので、ドレスコードが仮装の可能性など異次元。
なんとなく牧歌的な響きを感じるお祭りであれば、ディアンドル風は似合う気がしている。
「――あ? はい? ああ… ううん良いの。
もっとこう、よく見るディアンドルを置いてないかと思ったんだけど、
考えてみればあのスタイルにまず持つイメージって田舎臭いだし、お洒落に着こなすのが難しかったらコレくらい外れてる方が。
私も紹介してもらうまでディアンドルって名前を知らなかったし、あの人も悪く無いわ。」
声をかけてくれた少年―― 青年? は、私達のやりとりを見かねたのだろうなと可笑しく思う。
楽しかったのよ、と思考を整理する風につらつらと、いいのいいのと努めて和やかな調子に返して、
こんな心配は杞憂なのに、あの我慢強い店員さんを悪く思ってくれるなと。
あなたもディアンドルって言われてどんなのか分かるお洒落さんかと相手をうかがいながら。
「――あなたはこの街の人? 今度感謝祭ってのがあるって、どんなのか知ってます?」
色んな感謝祭がありそうなのだ。あなたが知っているのはどんなかなと、聞いてみた。
■レイン・レジネス > 会話に程よい、手を伸ばしてまだ少し届かない程度の距離。そこで立ち止まり、目を細めて少女を眺めた。
服装や雰囲気だけを見るならば、世間知らずのお嬢様というところだろうか。
褒めて誑かして、なし崩しに────などと、企ててもいたが。
「ディアンドル……あぁ、あの。確かに街中で普通に着る分には、浮くかもしれないけど……。
ここは結構、今風にアレンジした服が多いお店さんだからねぇ。
何かイメージを持って来ると、ちょっと違う……が多いかも。けど、ここから探し始めるにはいいところだよ」
幾分か気を引き締めた。なるほどこの少女、話し方が大人びている。
子供だましのような手口で、簡単にたらしこめる相手でもあるまい──と、心なしか背筋を伸ばして。
そうなるとようやく、ブラウスの前面に身体の起伏が──性別がどちらか判別できる曲線が浮く。
言葉の中に、自分はこの店の常連だという主張を織り交ぜながら、問いに腕組み。
「……まぁ、そうだねえ。この街の、ちょっと違う地区ではあるけど。
しかし感謝祭。感謝祭か────」
むぅ、と軽く呻く。地域によって、地区によって、祭りというものは中々、細かな差異が出るものだ。
自分自身、さほど宗教行事に詳しい訳でもなく。
故にその説明は一般教養的なもの。
主神ヤルダバオートと、それがもたらす大地の実りへの感謝……という名目で浮かれ騒ぐ祭りだ、と。それから。
「普段は滅多にしない格好なんかをして、別人になった気分で夜の街を歩く……なんて、最近の流行りだねぇ。
……ちなみに君、コクマー・ラジエルの学生さん? だったら、魔法薬で遊ぶ子も結構見るかなぁ……?」
■ショコラータ > 「ああ、やっぱり知ってる人は知っている…
というか普段話題にならないだけで、割と一般常識の部類なのかしらね服の… デザインの?名前。
…へぇ、そういうお店だったんだ。なんとなくありそうくらいの雰囲気で入ったんだけど… よく来る人なのね。」
そうなるとあの店員さんへの見方も変わる。
トンチンカンなのは自分であったかと思い直して、そう言うあなたもお洒落さんなのねとその服装を見るでもなく見ていたら、お胸?
その膨らみに気が付くと、男装してたのねと口走りそうになったが、センシティブな話題であるか?
口元もにょつかせて反応を保留した。
なんとなくそっちの方がお洒落さんである事に納得がいく気がしたが、思えば私にアドバイスをくれたのも男娼である。
「おーけーアリガト。どの感謝祭かって話ね。今月末辺りにあるヤツに、遊びに行こうかってあの、トモダチと。」
そんな話をしてたのよと頷き、その中に奇抜な?服装で練り歩くというのがあると、それではあるまいなと顎に指添え眉根を寄せた。
「おん…? ああま、いつもしない髪型にはするつもりだし、着た事ない感じの服で行くならセーフかな…?
けどそれって周りから見たら、祭りに合わせてるかどうか分からないのよね… ああいやでもそのお祭りじゃないかもしれないし。」
誘ってくれた人に確認しましょうと、気に留めておく。
ラジエル生かと問われれば、紛らわしくて申し訳ないけども現在は制服姿。
そーよ魔術科よと袖をつまんで制服広げ。
「魔術科の実技系。こんな制服だけど一種じゃないからね。
魔法薬ってあの動物とかに化けるやつ? 楽しそうだけど、ちょっとそういう感じじゃないかな。」
デートなのでとは言わないが、遊びに行く人との関係性がそういう雰囲気ではないと。
言うが、魔法薬のイメージこれで当ってる?と首傾げ。
■レイン・レジネス > 「今月末、友達と。ふーむ。……遊ぶ場所にもよりけり、というところはあるけれど。
君の場合、もっと大人っぽい方向にコーディネートしてもいいのかもねぇ……?
今のスタイルもかわいらしいけど。待ち合わせ場所に来たら普段より美人だった、なんてシチュエーション──」
決して伊達者、お洒落上級者という程でもないが──現実問題、服に頓着した方が、初対面の相手からの信頼度は上がるのだ。
その為に怠惰な性であれ、精一杯に知識だけは仕入れたが故の、それなりに見られる姿と成っている現状。
今まで仕入れた知識を動員し、頭の中に思い描く。
目の前の少女に、先程のディアンドルもどきを着せて、さて後はどのように飾れば、一層魅力的になるか。
「──羨ましいというか、妬ましいというか」
つい、本音が零れつつ。
「おっといけない。えーと、そうそう、魔法薬。動物とかに……もあるけどさ。
全身動物になっちゃうと、お買い物に困るでしょう。買い食いとか、よからぬ遊びとかも。だから──」
彼女が傾げたのと同じ方向に首を傾け、ついでに膝を曲げて視線の高さを合わせ。
に、と微笑むと同時──ブラウスの、余裕を持たせた広い袖口から、しゅるりと。
触手が一本、這いだした。人の指ほどの太さで、試験管を一本、巻き付くようにして保持している。
「例えばこれ。ミレー族の子みたいに、耳や尻尾──尾てい骨だけ動物的に化けるお薬、とか。それから……」
しゅるり。しゅるり。逆の袖口から。袖と触手の狭い隙間から更に割り込むように。二本目、三本目、試験管を掴み這い出す触手達。
「軽めの治療薬の応用──疲労の回復が早くなる、健康ドリンクみたいなもの、とか。
……人によっては、大きな声で言うものでもないけれど……避妊薬なんか調合してる子もいるねぇ。
実技系の子だったら、こういうのもあるよ。身体の感覚が研ぎ澄まされて、すごく敏感になるような薬。
魔術的な領域に触れるなら、感覚が鋭敏であるに越したことはない──濃度にはもちろん気をつけるべき、だけど」