2023/10/14 のログ
■アルティリス > 黒衣の美少女は思っていた以上に強敵だった。
というよりも最初から今まで気圧されっぱなしだった。
神々に舞を奉納するときよりも追い詰められていたかもしれない。
あのときは舞が始まりさえすればすぐにトランス状態になって周囲のことなんか気にならなくなったから……。
そんな思考が頭の中を行ったり来たりしている。
「そ、そんなことは!
人前で舞うのは普通ですっ!」
それでも一応の理解を示してもらえたようだ。
あちら側なりの譲歩を見せてきた。
これで派手なことをして騒ぎになれば通りの人たちがこちらに注目してしまう。
そうならない前に最小限の被害で済ませよう。
女はそもそも人材募集に応えるかどうかについて考える段階をすっ飛ばしてしまっていることを完全に忘れている。
肩を落として降参の姿勢になった。
「……分かりました。
あまり長い時間は……見せませんからね?」
座っている美少女に可能な限り近づいていき他の通行人に見られないようにする。
邪魔なアクセサリを外すと赤いテーブルの上に置いた。
それから白い装束の留め具を外すと、そっと上半身だけ装束を脱いだ。
褐色のすべすべした肌が露出する。
しっかりとした張りのあるバストがふるふると震えてうっすら桃色に染まった蕾がピンと上の方を向いて勃っている。
両腕は後ろ側に回して素肌が見えやすいようにした。
「こ、このとおり……です」
恥ずかしそうに顔を赤らめてそっと左の方へと視線をそらした。
■レヴィア > 素直……素直だろう、素直に?言葉に従う応募者に吸血鬼の少女はご満悦で、浮かべたのは何処か絡みつくようにねっとりとした微笑であった。
舞を舞う、だから踊り子と酷く単純明快な答えをだし、まさか応募者が巫女のような形で舞うニンゲンだとは思っていない、挨拶の際には気品のような物は感じていたが。
さて応募者の踊り子に衣装を脱いで肌を見せて欲しいという言葉の意図は通じてくれたようで、唇にのせた微笑は消えず、見るからに機嫌よさそうな表情になり、ニコニコで応募者がアクセサリを外し、褐色の肌に映える白い衣装のジョイ半身だけを脱ぐと、想像以上に美味しそうな、張りのある美しい乳房と桃色の蕾、それに滑らかな腹部が紅色の瞳に映った。
「ん、いいわ。
流石踊り子ね…貴女の肌、凄く綺麗。」
頬杖を付くのをやめて、お尻をすりっと椅子の上で動かして、身体の向きをちゃんと応募者の方に向きなおし、ニコニコ笑顔でひらひらと手招きを、こっちにおいで?こちらに来て?さあ?さあ?と当然のように誘う。
「じゃあ最後に味見だけさせて?
大丈夫、痕は残さないようにするし、不採用になってもちゃんと味見した分は報酬を払うわ?
首筋を私の首筋に寄せて頂戴?」
真紅の瞳を細めて微笑む。
少しだけ本当に少しだけ口をあけて、鋭い牙を生えた真っ赤な口内を応募者の踊り子だけには見せる。
つぅ、と思わず口端から唾液が一筋垂れたを隠さずに。
恥ずかしながら、美味しそうな応募者の身体を見て、我慢できなくなったのだった。
だって、とてもとても美味しそうだもの。
張りと存在感を感じさせる程よいサイズのバストのふくらみ。
上向きに立つ桃色の蕾、とてもとても美味しそう。
■アルティリス > 褐色の肌が涼しくなってきた夜気に晒されている。
人を好意的にさせる微笑を浮かべる美少女に上半身を検分される。
赤い瞳から発せられる視線がまるで肌を舐め回すようで少しくすぐったい。
「……ありがとう…ございます。
…手入れは欠かしていませんから…」
視線をそらしたままでできるだけ彼女にしか聞こえない程度の声で囁いた。
こっちにおいで、と手招きされてさらに近づく。
そこで『味見』というワードが出てきたところでぴきっと身体が固まった。
つい勢いに呑まれてツッコむことができなかったが彼女は血を吸わせてと言っていたのだった。
「……っ……?!」
真紅の瞳が細められて形の良い唇が小さく開いた。
そこに小さく覗いた鋭い牙に思わず息を呑む。
口の端から唾液が垂れるのを見て自分が危機に陥っていることを改めて意識させられた。
「や……やめ……っ!?」
石畳にヒールが当たってかつんっと硬い音が響く。
しかし、逃げることはできない。
いま自分は上半身をはだけているのだ。アクセサリもテーブルの上。
そんな格好でこの王都を走ったら、それはもう犯してくださいと宣伝して回っているようなものだ。
ここは美少女を穏便に抑えるしかない。
でもどうやって抑えればいいのか。
答えが出ずにぐるぐると頭の中で思考がまとまらない。
女は赤い瞳の美少女を前にして腕だけは胸に当てて固まっている。
■レヴィア > ――…言葉に従わなかった。
私がお願いをしたのに、応募者は踊り子は従わなかった。
まだ手折れていないから優しく招いたのに、穏やかにお願いしたのに、何故?何故??
許さない、でも、今はまだ許してあげよう。
応募者には慈悲をまだ雇用主でも主人でもないのだから。
「……来なさい。
私の前に来て首を差し出しなさい。
代わりにその両腕で私を抱くのを許しましょう。
早くなさい。」
――…出来なかった。
だってこんなに美味しそうなものを目の前にして、味見をせずに我慢して、我慢してさようならは出来ない。
石畳を踵で蹴る音、それは逃避を試みたと考えれば吸血鬼は薄紅色の小さな唇の隅をツィと持ち上げて、妖しく笑み言葉を紡ぎ出した口を大きく開けて、鋭い牙を、長く伸びた舌を見せつけて、夜食が捧げられるのを待つ。
妖しい笑み浮かべる紅色の瞳に宿る魅了の力を抑えるのを止めた、刹那にぼんやりと紅色の瞳が薄く赤い光を宿し、吸血鬼の力の一つを惜しげもなく踊り子だけに披露する。
我慢できない、食べたい、吸い尽くしたい。
病的なまでに白い肌を細い腕を広げて伸ばす。
食虫植物、食人花、捕食者の貌をして。
■アルティリス > 眼の前の美少女の雰囲気が変わったように感じた。
人を惹き寄せる微笑の奥にどことなく怒気を感じる。
来なさいと命令の言葉が耳を貫いて脳髄に突き刺さった。
びくんっ。身体が緊張した。
胸の双丘がぷるるんっと震えて先端に屹立する桃色の蕾が不安げに揺れる。
妖しく言葉を紡ぎ出した口が大きく開いた。
美しい唇の奥にははっきりと鋭い牙が見える。
そして見てしまった。
妖しく光る赤い瞳を。
その生まれながらの吸血鬼の魅了の力がこもった視線を。
「……ぁ……ぁぁ…………」
緑色の瞳をいっぱいに見開いて見つめることしかできない。
赤い視線に貫かれた。
恐怖にひきつりかけていた表情から力が抜けた。
胸を押さえていた腕がだらりと力なく下がる。
緑色の瞳からすぅっと光が消えて、女は媚びるような微笑を浮かべた。
このお方に従いたい。
このお方に抱きしめられたい。
このお方にすべてを捧げたい。
「……はい……あるてぃりすはくびをさしだします……」
半歩だけ下がった。こつっ。ヒールの音が石畳を叩く。
とすんと音を立てて石畳の上に跪く。
銀髪が邪魔にならないように片手で押さえると、うっとりと目を閉じてすらりとした曲線を描く首を差し出した。
もう片方の腕を美少女の背中に回すと身体を密着させようとさらに膝で前に進む。
褐色の肌には傷ひとつなく、うっすらと甘い香水の匂いがした。
女は血を吸っていただく歓びに打ち震えながら首筋に牙が突き立つのを……乳房まで吸われるのを待っている。
■レヴィア > 平民地区の大通り、気がつけば熱気は静まり、少しひやりとした夜気を含んだ風が吹き、疎らとなった行き交う人達を包む。
その片隅で少女?らしき吸血鬼が獲物を――…手折った。
妖しく仄かに光る紅色の瞳は見たモノを服従させる魅了の眼。
恋焦がれさせる魅了とは力は非にならぬくらいに強い魔力を宿した瞳。
その双眸に映る美味しそうな恐怖の表情が消えて、媚びるような愛らしい微笑を浮かべる踊り子に吸血鬼は喉を鳴らす。
砂漠でオアシスを見つけたよう、甘露な蜂蜜をみつけたよう、少女?は吸血鬼は悦びに満ちた微笑を浮かべた。
嘲笑ではなく恍惚である。
目元を薄紅に染め、差し出された褐色の健康そのものにしか見えぬ首にむけて牙をつきたてる前に、くす、と小さく声にして笑ってから、慈悲を思い出す。
「……いい子。
いい子だから味見で我慢してあげる。
私の味見が終わったら、この事は忘れなさい。
貴女は血を吸われていない、魅了されていない。」
忘れよと。
今宵の味見は一時の夢。
まだ疎らではあるが存在する喧騒の中で告げてから。
「……いただきます。」
と、ニンゲンの食事の作法を真似た後に踊り子の首筋にはまず柔らかくしっとりした唇を被せて、真っ赤な色をして人間よりも長い舌肉を伸ばし、首筋をちろり、ちろりと舐って唾液を擦り付けて痛覚を少しだけ麻痺させてから、我慢できずに牙を突き立てて、その褐色の皮膚を穿ち破き、その穴から鮮血を吸い上げていく、ちう、ちう、ちう、と……。
その代わりに触れることを許す。
背中に腕が回るのを許す、抱きしめるのを許す、体温を寄せるのを許して、味見の最中だけは許可なく触れることを許す。
――…その代わり、喰らって欲しそうに震える乳房という双丘の片側に、病的な程に白い腕を長く器用に動く指を伸ばし、側面に指を添えて、掌で乳肉を支え、親指だけを使って桃色の蕾をやんわりと擦り弄ぶ、くに、くに、くに、と、両手を使い左右のふくらみ逃す事無く捕らえて弄る。
■アルティリス > 赤い瞳に支配された女は恍惚の虜になっていた。
そっとかけられる言葉は身体の奥をくすぐって性感さえ刺激した。
その鈴を鳴らすような声に命令される歓びに密着したままでぴくんっぴくんっと震えた。
股間から静かに流れる甘酸っぱい蜜が太腿についた銀色のアクセサリを濡らす。
「……はい。
あるてぃりすはあじみしていただいたことをわすれます。
わたくしはちをすわれていません。
わたくしはみりょうされていません……」
まるで夢を見ているかのようにうっとりとした言葉が濡れた唇の間からこぼれ落ちた。
いただきますの言葉のあとに首筋に濡れた感触。
それだけで胸の先端の桃色の蕾はきゅんっとしこってぴくんぴくんっと揺れた。
痛みはなかった。
それどころかまるで身体中が性器になったかのように気持ち良い。
石畳に押し付けている膝ですらが気持ちよかった。
「…ぁあぁんっ……♡」
ぎゅっと抱きつく腕の力を強める。
押しつけた乳首がこすれるのが気持ち良い。
すぅっと血が首筋の穴を通っていく感覚がとても気持ちが良い。
思わず気が遠くなりそうになって乳首の先端にうっすらと甘ったるいミルクが滲んだ。
股間も熱くなってとろりとろりと蜜が溢れ出てきた。
いったん身体が解放された。
両膝を石畳につけて膝立ちになっている女はうっとりと目を閉じたまま上半身をゆらゆらと揺らしている。
その表情はトロトロに蕩けて薄い色のルージュを刷いた唇の端からは涎が一筋垂れてしまっていた。
胸の瑞々しい果実に白く細い指がかかる。
張りがありながらも柔らかい乳房に指が沈み込む。
掌で支えられた乳房は物欲しそうに目の前の美少女を見つめているかのよう。
白い親指で桃色の蕾がぷにぷにっと柔らかくもてあそばれる。
「…ぁぁああんっ……ぁぁんっ……ぁはぁんっ♡
…ひゃんっ……ぁんっ♡♡」
気持ち良すぎて頭の奥で白い光がチカチカと瞬いている感覚がした。
通りにいるにも関わらず気持ちよさそうな喘ぎ声を隠すこともできない。
蕾の先端に半透明のミルクがじわじわと滲み出してきた。
吸血鬼に血を吸っていただくという快楽に女は溺れてしまっていた。
■レヴィア > 美味しい、おいしい、おいしい、おいしい。
舌の味蕾に感じる新鮮な血液の味、鼻を抜ける鉄錆の香り、ちぅ、ちぅ、ちぅ、と吸えば吸うほど満ちる甘露な味に紅色の瞳を恍惚に蕩けさせるも、――…枯らすまで吸い上げるのは勿体無いと、我慢する。
吸い尽くして殺しては勿体無い。
でも少しだけ、少しだけ、あと一口だけ。
吸って吸い上げて、コクリと最後に喉を鳴らして飲み込んでから、愛しげに穿ちあけた皮膚の穴を舐めて、あふれて滲む一滴すら舐めとり堪能をすると、傷が残らぬようにと約束をしていたのを思い出し、唾液に治癒の能力をのせて、ぺろっと舐めあげてから唇を離して顔を遠ざける。
血液混じりの薄桃色になった唾液の糸は太く長く。
それすらも逃さずに零さずに自分の舌肉でぺろっと舌なめずりをする事で唾液も拭ってクスりと笑った。
「……はい、ご馳走様。
そんな可愛い声で甘えても、もう御仕舞。
ほら、暑いでしょ?家に帰るまで上の衣装を着ないで身体を冷ましながら帰りなさい、ね?」
気に入った証拠。
最後の最後に意地の悪い命令を恍惚の笑みを浮かべる唇で告げてから、踊り子のしなやかな腕より身体を離しながら、椅子から立ち上がり、掌に今だ残るぬくもりと甘い香りに、クスクスと少女のように吸血鬼は笑って、自らの指を舐めて半透明なミルクの残滓も綺麗に舐めとると、その指をパチンと弾いて鳴らして、椅子もテーブルもランプ代わりの蝶も自分の影にしまいこむ。
「………また会いましょう?」
吸血行為の副産物として恍惚に悦楽に溺れている踊り子の耳にそっと冷たい呼吸を吹きかけながら、次なる逢瀬を約束する言葉を囁くと、吸血鬼の少女はふっとその場から姿を消す。
まるでそこに最初から誰もいなかったかのように、甘い薔薇の香気を残して吸血鬼は味見程度ではあるが久々の食事に満足げな様子で立去るのであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/大通り」からレヴィアさんが去りました。
■アルティリス > 身体から血を抜かれていく感覚が気持ちよかった。
血液の量が少なくなって頭がぼうっとする感覚ですら快楽だった。
きゅっと抱きついた腕に感じる体温を感じると言いようのない安心感を感じることができた。
こくりこくりと喉が鳴る音が聞こえるのが多幸感さえ呼び起こした。
唾液に込められた治癒の力により首筋の傷口が塞がっていく感覚がする。
それが吸血が終わった合図であることは魅了された心でも感じることができた。
もう終わってしまったことが寂しくてうっとりと閉じていた目の端に涙の珠が浮かんでくる。
「……ぁぁぁんっ♡
……わたくしからすってくださってありがとうございました……。
はい。あるてぃりすはからだをさましながらかえります」
くすくすと笑う声が耳をくすぐるのが気持ち良い。
けれど、もう忘れなければならない。
わたくしは血を吸われなかった。
わたくしは魅了されなかった。
その事実が消えてしまうのが寂しくて悲しかった。
けれど、これは絶対従わなくてはならない命令。
褐色の肌にするりと涙の跡を残しながら女もまた立ち上がった。
「はい……またすってくださいませ……」
パチリとフィンガースナップの音がすると吸血鬼の姿が消えた。
女は石畳の上に落ちたアクセサリを拾い上げるとくるりと回れ右をする。
うっとりと恍惚の表情を浮かべたままでこつっこつっとヒールの音を刻みながらふらふらと大通りを歩き始める。
一歩踏み出すごとに褐色に実った胸の果実がぷるんと揺れる。
それと同時にいまあったことが頭の中から幻のように消えていく。
もうほとんど人通りもない大通りを女はゆっくりと戻っていった。
女が正気を取り戻すことができたのは塒に着いたときだった。
「きゃっ?!
な、なんで?!」
あの黒衣の美少女にツッコミを入れたところまでは覚えている。確か何もされなかったはずだ。
にも関わらず自分はずっと上半身をはだけたままで戻ってきた。
そんな奇怪なことが起こったにも関わらず、女はまたあの美少女に会いたいと思うのだった。
その夜。眠りにつくまでずっと考えていたが会いたい理由は結局わからなかった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/大通り」からアルティリスさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にイーヴィアさんが現れました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にアルマースさんが現れました。
■イーヴィア > (鍛冶屋は本日も通常営業だ
高く伸びる煙突からは、今も黙々と煙が昇っているし
店の中も、この時間にもかかわらず、品定めに棚を凝視する客なんかが少なからずいる
こんなご時世だ、商品を選ぶのにも時間をかけたいのだろう
少しでも良いものを、自分に合った物を、と考えること自体は正しい
道具なぞ何でも言い、と考えるのは、余程の熟練者か、甘ちゃんのどちらかなのだから。)
「――――ようし、そろそろ準備だ。
よう、ぼちぼち清掃と閉店作業宜しくなァ。」
(鍛冶場から出てきた店主が、従業員に声をかけた
とは言え閉店にはまだ時間がある、客を急かした訳ではなく
金物を扱う特性上、閉店までの片付けに時間が掛かるのだ
何せ、数が多くて重いのだ。 作業には余裕をもって当たらせる)。
■アルマース > 寒い季節の先触れのような風が吹く日もあるけれど、今夜は晴天。昼はまだ半袖で出歩く者もいるほどの陽気だった。
日が暮れてカフタン一枚で外に出たらひんやりとしたから、茶や白の混じった兎毛のベストを着て表へ出た。
鍛冶屋のある通りを訪れるのは、依頼の日に手付金を渡しに立ち寄って以来だ。
街に住み着いたばかりだから、何だかんだ入用な日用品を優先していたらまとまった代金が出来たのが今日になってしまった。
この辺だったはず――と店の並びを見て記憶を掘り起こしながら目当ての店を見つけて顔を覗かせる。
赤地に白い刺繍模様のカフタンに、手提げを持って買い物帰りといった姿。
「あれ、もう店じまい? 赤毛の兄さんは?」
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にイーヴィアさんが現れました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」にイーヴィアさんが現れました。
■イーヴィア > (棚を凝視している客は、まだ決めかねている様だ
買うのか買わないのか、あるいは、今日は単に品定めだけで済ませる積りなのか
其れは其れで一向に構わない、暴れたりしなければ、店の客は歓迎だ
対応は他の従業員でも問題無いだろうし、己は商品の引き渡しを担当すれば良い
――響いたのは扉の音。 近くを通っていた従業員の若者が
赤毛、と聞いて少し考えた後、嗚呼、と納得したように店の奥を指さした
ちょうど受付に出張って来て居た店主、呼ばれたような気がして、ん、と顔を向ければ
見覚えの在る女の顔が、其処に覗く。)
「よう、今夜の仕事は上がりかい? それとも休日だったか?」
(片掌を掲げ、挨拶とばかりに声を向ければ。
ここに訪れた用事なぞ一つだろうと、受付の中で品を用意しだす
足元の棚から、取り出したのは客注品の木箱
其れを机の上に乗せ、ぽん、と蓋を叩いて見せれば。)
「こいつがお目当てだろ。 ……出来てるぜ、見るかい?」
■アルマース > にこっとしてゆったりした薄布の裾を翻し、カウンターの方へ。
「いたいた。今日はね~昼に仕事っていうか今度やる舞台のテストだったよ。
褐色の女だけ集めて何かやるんだってさ」
そんなわけで化粧はしているが衣装は着替えて普段着だ。
「色々入用で支払い遅くなっちゃった。
兄さんも寂しがっているだろうし、とりあえず顔見せついでに一本でも引き取っておこうと思って」
机の上に手提げ鞄を置き、その中から残りの支払金――の一部――の入った包みを置いた。
紐を解いている途中で木箱に気を取られ、ぱちんと手を合わせた。
「あたしのナイフ! 見せて」
■イーヴィア > 「へぇ、シェンヤン舞台でもやるって感じかね。
肌色揃えるっていうと、その位しか思い浮かばねーけど。」
(ゆっくりと踊り子を見に行ける様な余裕が、此処の所は余り無い
アスピダの状況が落ち着きでもすれば、また骨休めも出来るだろうが
今は仕事の方に打ち込む時期、と言う事なのだろう
まぁ、其れは其れとして、鮭くらい飲みに行きたいのは山々だが
それを寂しい、と表現するかは、ノーコメントだ
女が此方に歩み寄ってくれば、其の眼前で木箱の蓋を開け始めよう
支払金については、そっと近づいてきた従業員が代わりに、幾ら入って居るかを勘定するだろう
支払い済みの金額に、帳簿を加算して確り記載し。)
「ま、順調に作業は進めてるさ。 他も素の刀身は出来てるが、仕上げは未だだ。
先に完成させて置いた一本になる。 ……まぁ、逆に言えば、今なら調整は出来るぜ。」
(蓋の中、包まれた一本のナイフは、その形状こそ
女が先に持ち込んだ、黒柄のナイフと変わらぬ雰囲気だが
独特の刃紋を残す、鉄銀色の刀身部分が、矢張り異なる物と言うのを教えるだろう
元より大道芸用の投げナイフ故、刃の鋭さは無く、斬れない様に加工され
黒染め加工を施された柄の、柄頭に部分には、細長く銀装飾が埋め込まれて居る
柄の根本部分には、楕円研磨されたレッドスピネルが埋め込まれており
握り心地を悪くしないよう、凹凸は調整されて居るか
刀身、柄、共に艶消しされて居るのは、照明に照らされ、反射で目を遣らぬ為
女が注文した通り、あくまで、仕事道具としての実用性を重視した作り。)
「……軽く握ってみな。
念の為、もし違和感が有るなら、今の内に言って欲しいからな。」
(仕上がりに隙は無い。 ――が、其れでも怠慢は無い。
確りと手に取り、確かめて貰わねば、真の意味で完成とは言えぬ物
箱の中身を女に見せるよう傾ければ、手に取るようにと、促して)。
■アルマース > 「どうなんだろうねー。シェンヤンもそのうち行ってみたいなあ」
舞台については至極あっさりわからない、と言う。
採用になるかどうかは、雇い主の好みや、体格や目の色肌の色の濃淡などどうしようもないところで決まることも多いから、終わったことは考えない。
決まってから考えれば良いのだ。
開いた木箱の中のナイフの刀身の紋様を、赤く塗られた指先がついとなぞる。
その爪の色と紋様と、ふふ、とうっとりした笑い方が相まって、悪い魔女のような雰囲気になってしまう。
「……これ、どうなってるの?――いいね、強そう……」
刀身の模様が描かれたものなのか、焼き目なのか鍛金の跡なのか、鍛冶のことは分からない。
促されるまま手に取って、表裏を確かめ、幾度か右手左手に持ち替えて、
「石も入ってる。殺せそうだし、呪えそうだし、最高じゃない……?」
石についてはそう依頼したから当たり前なのだけれど、実物が目の前に出てくると感動がひとしおだ。
ふわふわしたイメージを口で伝えただけのものが具現して出てくるとは。
視線の高さに投げては受け止めて、を繰り返した後、重さにも掴んだ感触にも違和感が無いことを確かめる。
「前のより滑らない感じがするな。ぎらぎらしてないのも良いね――うん。これが良い。
……ね、斬れないナイフには名前は入れない派?」
仕上がりに満足すると、吸い寄せられていた視線をようやく男へ戻して問う。
■イーヴィア > 「旅費さえありゃあな。
ま、贅沢出来る位に人気者になるこった。
向こうでも、仕事で引っ張りだこになる位になァ?」
(実際、人気の踊り子はあちこちに呼ばれるとも聞く
国を跨いで重宝されるようになったら、ついでの観光も出来るだろう、なんて
箱の中、ナイフを手に取るその様子を見守りながら
ついでに、今日の売り上げ帳簿を手に取り、めくりながら確認を。)
「嗚呼…、……具体的に言っても、まぁ、伝わらないだろうから割愛するが。
そう言う紋様が浮き上がる鍛ち方、ってぇのが在るのさ。 頑丈で錆び難い。
彫り装飾を入れると、如何しても照りがないと、見た目がぱっとしないがよ
其の紋様なら、照りを抑えても味が出ると思ってな。」
(――実際に、刀剣に使用される技術と遜色は無い
ダマスカスナイフ、特殊な鍛造によって浮き上がる年輪紋は
見る者が見れば、興味を引くかも知れない代物か
其処に加え、紅玉の飾りが埋め込まれていれば、其れだけでも美術性は在ろう
柄頭に埋めた銀色は寧ろ、装飾というよりも、放り投げた際の視認性を上げる為の物だ。)
「刃は削ってるが、刺せば刺さる形だから気をつけろよ。
一応、金属柄の分、汗で滑らないようには気を使った心算だ。
……それと、銘を入れると金属柄じゃあ、隠し様が無いからな。
入れた後で、これ要らないーって言われたら、困るだろ?」
(一応、お節介とは思うが、忠告をしつつ
此方に向けられた視線には、嗚呼、と肩を竦めた
銘を入れるかどうかについては、少し悩んだのだ
女が入れても良いと言うなら、今入れても構わない、と)。
■アルマース > 「ふふ、ここの支払いが終わるまではこのあたりで大人しくしておくから安心して。
とりあえず舞台が決まるように祈っておいて」
あまり先のことも考えない。皮算用したってなるようにしかならないのだし、芽が出るように種を蒔くのみだ。
一旦机の上にナイフを置いた。
「全然分からないけど、金属は楽しそうだってことは伝わった。
――そうだ、これは何て石?」
紅色の石をつつく。
石の目利きなんてできないけれど、早くも愛着が湧いたことだし名前くらい知っておきたい。
「ふうん……? 途中で要らないなんて言わないけど、そういうもんか。
飛び込んでみるもんだね。頼んで良かった、ありがとう。
銘も入れてほしいな。すぐ入れられるものなんだ?」
彫刻のイメージを掻き消し、焼き鏝を想像して、こっちかな、と首を傾げる。
■イーヴィア > 「そうだな。
あ、もし仕事が決まったなら教えろよ、祝いにかこつけて酒でも飲もうぜ。」
(これは単純に酒が飲みたいだけだ。
だが、仕事が順調に得られれば当然、支払いも安泰となるのだから
互いにとって良い事なのは、間違いなかろう。
踊り子の仕事時間に出歩けるかは判らないが
夜中というのは、飲み歩きには持って来いの時間とも言える。)
「興味が有るなら幾らでも講釈してやるさ、ついでに受付にでも立つか?
うちの店は年中店員募集中なんでね。」
(今でも仕事は回っているが、余裕が在るかと言えば微妙な所だ。
人員はある程度多いに越したことはないし、足りない人材も多い
――まぁ、踊り子という職業を知っているから、半分位は冗談だが
手にしていた帳簿を一通り目を通せば、元の場所に戻す
示された紅玉を問われれば、膝元の棚から、依然見せた石の見本を取り出して
其処に括られた札を示して見せよう。)
「レッドスピネル(赤尖晶石)だ。 丈夫だから、そう簡単にゃ割れないだろうよ。
今日中に持って帰りたいだろ? 貸しな、この場で彫り込んでやる。」
(一度、女の前から姿を消して、鍛冶場に消えた
直ぐに戻って来るが、その際手にしていたのは、金槌と鏨(たがね)
焼き印ではなく、手による加工なのだと、再び女の想像を修正させる事になるだろうが
――もし、女からナイフを受け取れば、其れを固定具へと置いた。
動かない様に確りと固定を済ませてから、ナイフの刀身、其の根元部分に
他の刀剣にも刻まれている、店の、そして己が一族の銘を切り入れよう
その文字もまた、一種の飾りとして成立する様に、丁寧に、そして、手際良く)。