2023/09/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にロレンツォさんが現れました。
■ロレンツォ > 平民地区内の一角に建てられた教会前。
別件のついでで立ち寄った教会では常に人手――特に男手が足りていないようで、滞っていた幾つかの雑務を手伝う運びとなったのが数刻前の出来事。
己に対して頭を垂れながら感謝の言葉を述べる修道女に男は笑顔を浮かべながら「気にしないでください。」と軽く告げる。
「それでは、私はこれで。また困った事があれば、いつでもお声掛けください。」
修道女の見送りに別れの挨拶を交わしてから、教会を後にして平民地区内の大通りへと抜けた所で、取り出した懐中時計を確かめる。
次の用件まではまだ相当に時間の余裕があった。
もう暫く教会の手伝いを続けていても良かったのだが、申し訳なさそうな顔で固辞する修道女に半ば押し切られる形で立ち去る形となってしまった。
「さて、どうしましょうか……。」等と呑気に呟きながら、男の足は大通りの雑踏の中を当て所も無く進み始めていた。
■ロレンツォ > 其処から暫く、ゆったりとした足取りで散策するように大通り沿いの商店や広場の露店を巡りながら、やがて男の姿は行き交う人波の中へと静かに消えていった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からロレンツォさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリセさんが現れました。
■リセ > 貴族階級、ではあるものの。家計は厳しく、火車と云う程切羽詰まってはいないが、富裕層の生活は困難な状況。
であれば、買い物する場所も自然富裕地区ではなく平民地区に赴くこととなる。
学院が終わった帰り道。平民地区のとある評判の良い商店へと足を運び。
「……わあ……セール中、ですか……季節商品がお安くなっている、のですね……助かります……」
貴族令嬢とは思えない懐具合なその女子学生はありがたそうに決算セールの前で主神に感謝をささげるかのように両手を組み合わせて瞑目。
夏に売れ残り、秋を迎えた今もまだ売り切れていない在庫を店先でワゴンに積んで販売しているその商店。
目ぼしい物は売り切れている代わり、残った商品を処分価格の赤札をつけて売ってくれている。
ざっと見た限りでも、来シーズンに使用したいと思う消耗品の類が目につき。手にとろうと近づいたところで、思わず、きょろ、きょろ、と周囲を見回し。
安物を買い込んでいる姿を嘲笑うような同級生がいないかどうかを確認してしまう。
「大丈夫、です、よね……?」
■リセ > 平気、誰も見ていない、多分。きっと。
それよりもワゴンに詰まれた最終処分価格の季節商品のひとつを手に取り。
「半額以下。半額以下なんて……本当に良いのでしょうか。訳アリ品でもないようですのに……なんてお財布に優しい……。ぜひいただきましょう」
お店の好意にすら思えるどんと7割引きの商品。今季は無理でも来季にはきっと活躍してくれるだろう。定価の3割で購入できるとは尊い。
想定よりもずっとずっと安く購入できることに気をよくして、店内も見よう、と店先から大きく解放された扉の中へと足を進め。
「こんにちは……」
愛想よく声をかけてくれる従業員へと挨拶を返して、棚に整然と並ぶ商品をひとつひとつ眺めていく。
季節を先取りした商品も多く見受けられ、感心したように看板商品を確認すると、
(……品質からすれば安価なくらいですが……7割引きを見てしまった後では少々高価に思えます……)
そんなことを考えながらあれこれと一人、店内を探索しながらふと、目に留まるのは友人と連れ立って買い物に来ている同じ学院の生徒。
思わず羨望の眼差しを注ぐ。放課後、友人と買い物をするなんてどんなにか楽しいことだろう。
羨ましくて注視してしまっていると、見られている方も視線に気づいてこちらを向くので。
目が合ってしまい、慌てて一礼して目線を外し逃げるようにくる、と踵を返すと。
「あっ……」
背負った鞄が商品のひとつに当たり、棚から落ちかけて――
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にタピオカさんが現れました。
■タピオカ > 学生を冒険者と兼業するようになってから驚いた事がひとつある。
クラスメイト同士の情報伝播の速さだ。
故郷で飼っていた黒い軍馬よりも速いぐらいだ、噂は共有される。
今日聞いたその噂のうちに、平民地区の商店での商品入れ替えセールが含まれていた。
「あっ、これ……!これもー!
秋の街中で着るにはちょっと寒いけど、野外でマントの下に重ね着するのに丁度いいや。買っちゃおう!」
放課後から直行した店内も店外にも、お値打ちものに溢れている。
見ればちらほら、さっき校舎で見た制服姿の女子生徒たちが居る。
価値あるものも7割引きも消えてしまう前にと、片腕に早速いくつか引っ掛けた。
……と、ひとりの女子生徒が踵を返していく。
その流れた長い白銀の髪に同性ながら見とれるうちに。
彼女の持ったバックパックの革製鞄がターコイズ色の宝石がはめ込まれたアンクレットを巻き込んだ。
「っと!
……へへ、大丈夫。ギリギリだったけど!」
咄嗟に手を伸ばすには少々リーチが足りなかった。
数歩を身軽に飛び、伸ばした片手から一度すり抜け。
……手首を下げながらもう一度握り。一度空中で跳ねた後に無事に捉えた。
相手の藤色の瞳に笑いかけ。
「キミもコクマーラジエル学院生だよね。
今日のセールを聞いて買いに来たとこかな。
何かお目当て、見つかった?」
棚にアンクレット、すっと戻しながらの立ち話。
相手の姿を失礼にならない程度に見て。
さらに、自分はすでに戦利品とばかり。片腕にかけていた袖無しのシャツをお披露目し。
■リセ > 学院ですでにその店のセールが噂となって渦巻いていたとは――友人もおらずたった一人で過ごす身には知らぬことだったが。
知らなかったから、余計にお得感を覚える夏物最終セール。
豊富な情報網でそれを目掛けてやって来たらしい、同じく小柄でかわいらしい短い髪の女の子が。
「――……っ、わ、あ……
お、お見事、です……っ、あ、ありがとう、ございます……、とっても身軽なんですね」
軽業師さながらの体重を感じさせない身のこなしで彼女が落っことしてしまうところだったアンクレットを上手にキャッチしてくれた。
一度目を真ん丸くしてその光景を目の当たりにし、それからほー…と無事な商品に胸を撫で下ろして、慌てて大きく髪を振るようにして頭を下げ、ゆるりと頭を上げながら感心した眼差しを注いで。
「あ……は、はい……あなたも、なんです、ね……
あ、いえ、わたし、はたまたま……こちらに伺ったらお安くなっていて……ちょっと、嬉しいなと思っていたところです……
え、と……この扇子が、売りきりでお買い得になっていまして……ゲットしま、した。
ふふ、そのシャツ素敵ですね。よくお似合いになりそうです」
アンクレットを元通りにしてくれながら、話しかけてくれる人懐こい印象の女生徒に、嬉しくなって思わずべらべらと答えてしまいつつ。
大事に握りしめていた畳んだ薄紅の扇子を見せて。
披露してくれる、活動的な印象の彼女に似合いそうなノースリーブのシャツに柔く目を細めて。
「あの、まだ、お買い物、なさいます、か……?」
そして、話しやすそうで親切な、年頃もそう変わらない女の子に思わずそう訊いていた。
■タピオカ > 白磁みたいな乳白色の肌の女の子が、自分のな動作に反応する。
その仕草ひとつひとつが優雅で、己が受講している剣術クラスでは見かけない人種だった。細い指先は剣よりも羽ペンが似合いそうな。
「どういたしまして!
そっかー、色の良い扇子、手に入ってよかったね!
まだ暑い日もあるし、午後の紅茶の時間をよりよくするために使えそう」
白い歯を浮かせる笑顔を返すと、彼女の話に頷いて。
薄紅色の扇子の入手を祝福した。
夏のアイテムでも、今からまだ出番は多いだろう。
お値打ちの満足感も良さそうで。
「もちろん!
明日どころか、あと半刻経たないうちに良い品から無くなっちゃいそうだし。見てるだけでも楽しいし!
ねえねえ、一緒に見て回ろう?
一緒だともっと楽しそうだよ!」
力強く。そう力いっぱい頷いた。
こんな機会は逃さない。狩人の目になっていた。セール品ハンティング。
狩人は1人よりは2人が良い。
単純に楽しいからだ。
誘いかけつつ、横並び。笑顔のままで顔覗き込み。
■リセ > 褐色の肌に短く切られた銀髪、青緑の双眸はとてもきらきらと輝いているようで、思わず見入ってしまいそうになりながら。
小さい身体で元気いっぱいといった印象に相応しいはきはきした受け答えに好感を覚え。知らずに表情が和む。
「とても助かりました。壊してしまったら、弁償でしたもの。
はい、サイズも手ごろで……7割引きは尊いです……。
教室も暑いですからね……教科書で扇ぐわけにもいきませんし」
何せ生徒のびっちり詰まった午後の教室は扇ぎたくなる程暑い日もある。
持ち歩きやすい小さく畳めるタイプがあったのもまた僥倖で。
お互いの戦利品をたたえ合うと、すごくいい買い物をしたような気になってこの上なく快い。
「そうです、ね…学院の生徒さんが増えてきましたし……
え、わ、わあ……っ。いいん、ですか…? わたしも、ぜひ、そうしたいと……っ。
あなたみたいな、明るい方と一緒にお買い物できたら、素敵だと、思ったん、です……」
きっと、彼女はとても何気なくそう云ってくれたのだと判っても、云わんとしていた言葉をいただけたのが嬉しくて、嬉しくて。
ぱあ……と表情が明るんで、親しみを覚えてしまうような笑顔に喜々と肯いて。
ぜひ一緒に、と心を弾ませながら、
「あの、わたし、リセアリア……いえ、リセ、とお呼びください。
いいもの、もっと見つかるといいですね。そんなお洋服も良さそうですし……」
速やかに値打ち品の衣類を手にしているのを見ていると、なんだかそれがいい物に思えて真似して欲しくなって、それはどちらにありました?と尋ねてみて。
■タピオカ > 「わーい!僕も1人じゃ寂しかったとこ!
買う色に迷ったら相談もしたいし!」
表情と態度和らぐ彼女につられ、浮かべる笑顔は季節遅れの真昼のひまわり。
短い銀髪をご機嫌そうにふるり、揺らしてはしゃぐは声音。
「リセ!お名前ありがと!
僕はタピオカだよ、呼び捨てでいいよー。
よろしくね、リセ!」
空いている手で恐縮ながら。気さくに伸ばして握手を強請る。
青緑の瞳を輝かせながら、何気ない商店への買い物で彼女との縁が待っていた事に感謝するのだった。
「ふふ。欲しくなったー?
こっちだよー!
――うん!まだ少し残ってる!
同じデザインだけど色違い。
リセには何色が合うかなー。たとえばー、これ?」
自分の片腕のほうにある視線に気づくと、誇らしげに少し持ち上げ。
手招きで彼女を売り場へ誘おう。
それは店の奥の角にあるこじんまりとした売り場。
壁にかけられたコート類のちょうど影にある場所だった。
丁寧に折りたたまれた数点の、自分の手にあるものと同じシャツ。
柄も飾り気もないシンプルな生地なだけに、冬の重ね着にも使えそう。
おっとりとした雰囲気の彼女の白銀と藤色とシャツを何度か視線往復させた後に。
相手の胸付近に持ち上げたのは、柔いエメラルドグリーンのシャツ。
どうだろ?軽く首を傾けつつ、微笑み。
■リセ > 「本当ですか……?
良かった……わたし、年の近い女の子とお買い物するの、初めて、で……なんだか胸がどきどきします……」
そわそわとわくわくと浮き立つような心地は今まで知らなったものだが、それがとても快い。
ほんのりと頬を紅潮させて、太陽みたいに笑う小さな顔を嬉しそうに見つめ。
年相応に高いその声のはしゃぐトーンが耳に心地良くて鈴の音みたいだと感じながら。
「タピ、オカ……? え、あ、呼び捨て、ぅ……え、と……
よろしく、お願い、します……タピオカ……」
普段他者を呼び捨てにしたことがない故に少し不慣れに確かめるように発音して。
握手と伸ばされる小さな手に嬉しそうに、お互い戦利品を片手に。空いた手を握って緩く上下に揺らし。
「その服、素敵ですから、いいなあ、と……。生地も良さそうですし。
わたしに似合うか解らないですが……。
あ、本当……色違いが、こんなに……。
わ……綺麗な……緑色……ちょっと、タピオカの眸の色にも似てますね……わたしに似合うでしょう、か……?
と、いうか、お揃い……いいん、ですか……?」
女の子同士でお揃いとか憧憬を抱く事柄。憧れても実行できることもない。
手招きを受けて店の隅にある、少し目立ちにくいコーナーに数色用意された同じ形のシャツ。
どれも女性の好む色味で目移りしていたところに、その中の一着。強すぎない柔めのエメラルドグリーンのシャツは魅力的に映ったし、何より彼女が選んでくれたのが嬉しくて。
「わたし、これにします……っ。
あの、えと……い、いつか……この服……一緒に着れたら、すごく、とても……嬉しい、な…って……い、厭じゃ…なければ……あ、い、厭、です、よね……すみません……」
ほわほわと温かい心地になって、そのシャツを絶対買う、と決断した上膨らんだ妄想を思わず口に出していて。
云った後で、それは余りにも調子に乗り過ぎたかも知れない…っ、と勝手に反省して速やかに項垂れていた。
■タピオカ > 「そうなんだ?
あはっ、僕も嬉しいな!僕が、リセの初めてのお買い物ともだちー!」
あけすけに喜ぶと、両手で万歳でもしそうな勢い。
慣れない呼び捨てにきょとんとするも、緊張する子猫みたいで愛らしい。
難しかったらちゃん付けから慣れて行ってもいいよ!とも付け加える。
握った手先は柔らかい。春先の草原の風に揺れる緑の葉を連想させた。なぜか、頬が赤らむ思いがしてほんのり染まる顔。
「ほんとだ!――ちょっと似てる?えへ!」
きれいな緑色と言われたのが嬉しくて。持ち上げたそのシャツの横から顔を出して。
すぐ間近で比較してもらうような仕草をして笑いかける。
「いいよ!というかお揃いしようよ!
僕はそういうの気にしないし、かぶってくれたほうが嬉しいや。
それじゃこのシャツはリセのものー。
――お買い上げ、ありがとうございますっ!あはは!」
彼女の控えめなお願いと、すぐさまそれを後悔するよな仕草。
反省を払拭するように明るい声音を上げると、元気づけるというか悪戯っぽく彼女の藤色の瞳を間近から覗き込んだ。
この色のシャツで決まり!とばかり、エメラルドグリーンのシャツを相手のほうへ差し向けた。
店員さんの物真似を交えた戯れ。
「じゃあ今!
今日は暑いし、袖無し日和だもの。
このシャツを今買って、今お揃いで着る。
でー、そのまま買い食いしに露天市に行く!
この予定、どう思う?」
一緒に着る機会は、今を除いていつが適当であろうか。
出会って、一緒にお洋服買って、一緒にお揃いお出かけ。
そんな流れを提案して笑みかける。
■リセ > 「はいっ……わたし、きっと……このこと忘れません……
お買い物……とも、だち……」
そんな言葉がいちいち胸に響く孤独の女学生。
明るくて元気で気さくで小さな太陽みたいな女の子がなんだか眩しく見えて。
隣にいておしゃべりをしてお買い物を一緒にできる、それだけで心が弾み。
「タピオカ、さん…ちゃん…? の目の方がずっと綺麗です……
っふふ、かわいい……」
眸の色を比べ易い様にシャツの横から小さな貌を出す所作が愛らしくて、無意識に本音をぽろっと漏らして。
小動物でも眺めるように双眸を和ませていた。
「い、いいん、いいんですか……? ほんとに? えー……うれ、嬉しい……すごく……ものすごく……嬉しい、です……。
お買い上げ、します、絶対、これ、わたしが、買い、ます……タピオカちゃんとお揃いのシャツ……」
明るい笑い声を立てながらこともなげにそんなことを云ってくれる声に、頬に朱を登らせるほど嬉し気に相好を崩し。
ふにゃ…と顔筋を弛緩させながら、鮮やかな青緑色の双眸が眸を重ねるように覗き込んでくるのに、満面と笑い返して。
その差し出されるシャツを大事そうに受け取ってしかと胸に抱き締め。
「い、いま……っ?
今、ですか? え? え? あ、あの、うそ、きゃあー……
そ、そんな、そんな素敵なプラン……っ、ぜひ、ぜひ…! お揃いで、あの、わたし、クレープがいい、です…っ、露天のクレープ、食べたこと、なくて……っ」
思いもかけない彼女の提案に大きく何度も首肯して、行きたい、絶対に行きたい、と意思をあからさまなほど表して。
憧れていた友達と過ごす放課後が急に手の中に転がり込んできて、まるでこれは夢?とウ難いながら。
夢でもいい、と扇子とシャツを小脇に挟むようにキープして、その小さな褐色の手をぎゅ…と両手で包むように握ろうと伸ばし。
■タピオカ > 自分の目が綺麗といってもらえたら、ありがと!
そう言いながら。今度は比較対象で手に持つシャツの反対側から顔を出した。そんな子供みたいな遊び。
「よーし決まり!色々決まりだね!
着替えてクレープ!リセといっしょの放課後ー!」
差し出したエメラルドのシャツを抱きしめる様子に大きく頷く。
彼女によく似合う笑顔を浮かべる様子に、つられて勢いがついた。
伸ばされた両手を、むぎゅむ!しっかりと5指で絡ませて。
既にクレープは決定事項とばかりの笑顔を見せた。
「店員さん探してくるー!
――っと、その前に」
見ると、少し先にあるカウンターには他の人の接客中なのか人が見当たらず。身軽にたたっと店内を小走りで確認しに行く。そこで何かを思いつくと、件のシャツを売る棚と、他の棚に立ち寄った。
――間もなく引っ張ってきた店員さんへと、それぞれのお会計。
試着室を借りての騒がしいお着替えを経て。
「リセとお揃い!楽しいなー!」
露天市へと向かう路上には、同じ袖無しのシャツを身につける女子生徒2人の姿があった。
彼女のまわりをぐるりと回りながら歩くと、また相手の横と並んで。
「ね!僕リセともうひとつのお揃いが欲しかったから、このブレスレット買ってみたんだー。一緒につけてくれる?」
スカートのポケットから何かを取り出す。
それは本革製のブレスレット。
らせん状に撚り合わされて、端には透明なビーズ粒が飾られている。
それを身につけるかどうかは彼女にお任せしつつ。
間もなく露天市の賑わいが近づいてきた。
自分たちの前には、制服姿の女子生徒たちが何組か列を作っている。
その後ろにうきうきと、一緒に並ぼうと。
■リセ > 朗らかに礼を口にする声に、微笑を浮かべてふる、と首を振り。
戯れにシャツの反対から覗く小さなお顔に、ころころと笑声を洩らして。
こんなにかわいい子が同じ学院にいたのかと感心気味に。
「はいっ、タピオカちゃん……っ
ふふ……こんなに楽しいことも、あるん、ですねえ……」
大きくまた首を縦に。そしてしみじみと時間の籠った呟き。
しかと絡み合わせて握り返された手、一瞬目を丸くしたが、ぎゅーと嬉し気に握ってるんるんと浮かれたように左右に揺らし。
「あ、はい、すみません……
え、と、制服のスカートじゃ合わないです、よね……」
お揃いの素敵なシャツを着ることに決まったのだから、ボトムスもそれに合うスカートを選ぼう、と白のロングスカートを合わせることにして。
店員さんを呼んでもらっている間にさくっと下も選び。
扇子とお揃いのシャツとスカートを会計すると、夏物はどれも投げ売り価格で思ったよりもずっと安くて安心した。
購入したそれを着ていきます、と値札を取ってもらって着替えを終えると。
制服と扇子は鞄に押し込んで。
「っふふ、はい…本当に、愉しくて……嬉しいです。
仲良しみたい、です、ね……タピオカちゃん、そのシャツやっぱりとっても似合ってて、かわいいです」
憧れの仲良しコーデ。涼し気なノースリーブシャツ。きっとこのこともずっと忘れない。
自分の周囲を巡る彼女の様相を確認して、何を着てもかわいいと目を細めた。
「え……? あ、お揃い……、もう、ひとつ……?
もちろん……っ、即つけます…っ。
これ、宝物にします……ずっと大事にします……ありがとう、ございます……ほんとうに……」
最初差し出されたそれに、やはり思いがけない贈り物に目を瞠り、
うる…と些細なことでも感涙気味に目を潤ませて、返事をする間にも即座に革のブレスレットを手首に嵌めて。
まだ強い暑い日差しに光るビーズに綺麗…とうっとり見つめ。
「く、クレープ……、ひとりで食べたら絶対おいしくないような気がして……むしろ淋しさが増しそうな気がして…鬼門だったんです、けど……
今日は初クレープ……嬉しい過ぎです……あの、あの、どのクレープがおいしいですか? タピオカちゃんが好きなのは?」
女学生の列ができている人気のクレープ屋台からは甘くてとてもおいしそうな匂い。
友人たちと華やぐ列に交じれるのもまた嬉しく、並んでいる間に乗り出し気味のテンションで思わず饒舌に無駄なことまで口にしながら尋ねて。」