2023/08/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にユールさんが現れました。
ユール > 「おっし、毎度ォ!!」

威勢良い声を上げながら、とある酒場から出てくる赤髪の女。
その手には依頼の報酬であろう、硬貨が入った小袋が握られている。
さっとその中身を一瞥して確認。そのまま前ポケットに仕舞い込んだ。

「──さて、今日の仕事はこれでおしまいかな。……うん、おしまいだ」

他に何か依頼が無かったか脳裏確認。
大丈夫そうであれば頷き、ぽん、と軽くポケットを片手で叩いた。

「思いのほか時間が空いちまったな…… ……ん?」

ぐるり、片腕を回した拍子に一瞬見えた赤。
それを見ると、どうやら先程魔物から逃げる際に食らってしまったらしい。
薄らと皮膚が切れ、血が滲んでいた。舌打ちが漏れる。

「ちえっ。……つまんねぇ怪我しちまったな。ま…」

放っとけば治るだろ。そう結論づけて終わる。そういう人間なのだ。

ユール > 「……はー、やれやれ。…どっか遊びに行こうとも思ったけど、今日のところは大人しく帰っとくかい」

意識してみれば、じわっ、と微かな痛みが傷口に滲む。
溜息ひとつ。これなら遊ぶにしたって集中できないだろう。

そんな独り言をでかでかと呟けば、ユールはくるりと踵を返し速足で歩きだした。
平民地区の自宅兼お店へと、軽やかな足取りで戻っていく…

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からユールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨商店」にセリアスさんが現れました。
セリアス > 「ん……? ……ヴィ―二―、ここに置いていた試薬はどこに?」

まだまだ暑さの残る王都。
平民地区大通り沿いの雑貨商店内で、店主たる男がカウンター奥の棚を漁りながら店員に問う。
カウンターそばで荷出しをして居たポニーテールの店員ははて、と言った風に首を傾げた。

商会の店員たちは主には魔族の国から連れてきている、人に近しい姿を取れる者なのだが。
彼女も例にもれず、本来は単眼巨鬼(キュクロープス)で、本来の姿から変化の魔術を使い、
人間として違和感ない背格好になっていても膂力に変わりはほとんどなく、特に力仕事では頼りになる存在だ。

反面、細かい事は気にしない性格である。
にこやかに笑い『ちゃんと表の棚に並べました!』と返事が返ってきた。

「……あぁ、そぅですか……」

雑貨店アーレア・ミラで常時募集している新規商品試験者の依頼。
実際に知人であったり、出資していたりする錬金術師の新しい薬の効能を確認することもあるし、
自身の出自を生かして魔の域から仕入れた薬が人間にどう作用するか調べることもある。

今回、どうやらよく似た瓶で、よくにた薬品の色であったから、店員は店頭に並べてしまったらしい。
試薬は魔族の国、欲望の街『ナグアル』から仕入れた精力剤。
混ざったのは、ついこの間試用が終わって新製品として売り出した栄養剤。

とっくに売れてしまったかもしれないし、まだそこにあるかもしれない。
商人としては回収して確認するなり、するべきだろう。
けれどかなり薄めて小分けにしたものだったし、そのままでもまぁ効力としてそこまで違いはないのでは。

そんな風に悩みながら、新製品の上に嬉しそうに店員が飾る『夏をこの一本で乗り切ろう!』という店頭表示を見遣った。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/雑貨商店」にサウロさんが現れました。
サウロ > (神餐節の時期はどこの教会も忙しない。
 その忙しない教会に付属する孤児院の出である青年が一時的にその助力をしている。
 今日もまた信者たちに振る舞う料理を熱気で噎せ返る厨房で作っているシスターたちに代わって、
 買い出しやら届け物やら色々と雑用をこなしている修道士の服を着た金髪碧眼の青年が一人、
 平民地区の大通りに並ぶ店でも有名な雑貨商店へとやってくる。
 こまごまとした買い出しのリストを見ながら、ふと宣伝されている棚の商品に目が行って。)

「栄養剤か……」

(店頭に貼られている宣伝効果は抜群のようだ。
 まさかその中に魔族の国絡みの精力剤があるとは思いもしていない様子で。
 一先ず買い物を済ませようと、店員へと声をかけよう。
 カウンターの奥にいる見目の良い男性と、ポニーテールをした女性の店員と。
 どちらも忙しそうにしている様子ながら、反応したほうへ尋ねればいいかと声を掛けて。)

「お忙しいところすみません、少しお尋ねしても?」

セリアス > 悩んでいる間に薬品の瓶を眺めていたけれど、どうにも区別がつかず。
或いは魔術師に鑑定の魔法なりでも頼めばどうだろうかなどと思案を巡らせているところ。

あらたに来店した美丈夫に声をかけられては、普段からの癖のまま。

「いらっしゃいませ。何かお探しでいらっしゃいますか?」

ゆるりと癖の無い笑みを浮かべて応える。
修道士の恰好をした相手の振る舞いは彼の外観に添うように丁寧に見え、
ちらりと手に持つなにがしかのメモを視界に映しては、儀式事の準備か何かだろうと当たりをつけながら。

宗教関係者の中には面倒な手合いも居る。
故に毒にも薬にもならないよう、営業的に対応しようと。

なによりカウンターそばで奥から商品を並べている件の店員に任せて、
これ以上面倒なことを増やされても、と。先だってカウンターの表に出ながら対応する。

サウロ > 「これらの品を探しているのですが、こちらにありますでしょうか?」

(対応してくれたのは物腰の柔らかそうな笑みを浮かべた男性店員の方で。
 自分で探すよりもこういったものは店員に見せた方が早い。
 手間を掛けさせてしまうことは申し訳なさそうにしながらも、
 メモには当たり障りないタオルにできそうな布や小さな布巾、
 石鹸、インクやゴミ袋などの日用品のものが必要数と一緒に記されている。
 儀式とはあまり関係なさそうなものばかりだ。)

「神餐節でどうにも消費がはやいようで…あるもので結構です。
 あと、この栄養剤も、二十本程包んで貰っても?」

(本当に忙しそうなシスターたちに差し入れをしようと。
 清貧が問われる時節ではあるものの、それで炎天下の中倒れてしまっては元も子もない。
 そんなつもりで事情も知らないまま注文を重ねよう。)

セリアス > 「ふむ、失礼、お預かりいたしますね」

青年の差し出すメモを受け取り、さっと目を通す。
どれも一般的な消耗品であり、その内容であれば過不足なく用意できそうだった。

「ヴィ―二―! 棚出しは後で。こちらの商品を用意……ああ、アールサ。貴女も一緒に、というか段取りは貴女が」

セリアスが来客対応を始めたのを見るや、カウンター裏と店内を往復していたポニーテールの店員。
その彼女に声をかけ、先のことで彼女だけでは不安を感じたのか、
近場で台帳整理をしていた前髪で目が隠れ視界が悪いのではというような店員にも声をかける。

ひとりはうるさいほど元気に、ひとりはぼそりと『はい』と返しては、
在庫を置いてある奥へと進んでゆき。

「神餐節……ですか? ふむ、すみませんねぇ。儀礼には疎いもので……ぇ。
 えー。あー。ぃえ、ああ、ええ、ええ。そちらも併せて配達いたしましょう。
 後程にはなりますが、きちんと数を揃えて。お代もその時で構いません」

聞きなれない教会用語に首を傾げながらも消耗品の類が補充しづらくなるということは、
何か忙しなくやることがあるのだろうとも思いながら。
けれど栄養剤をと言われれば、流石に冒険者などが買っていって野営先で盛るのだの、
奥様方が買っていって夜の営みが盛んになるだのといったこととは様相が違ってくる。
教会関係者に、いくら薄めたとはいえ魔族の国で流通している精力剤。
堕落の噂も多いこの国でも、少々刺激が強すぎるのではと、そのまま渡すのは憚られて。
思い付きではあるけれど、配達を、と。後で間違いのない商品だけ送る心づもりで提案をした。

サウロ > 「お手数おかけします」

(メモを受け取って店員の女性たちに声を掛ける様子を見れば、
 どうやら彼が店主か、それに近しい地位の人のようで。
 片や元気よく応じる女性と、片や静かに応じる女性と、彼女たちの方へ感謝の目礼を。
 サウロよりはやや目線の低い男性へと視線を戻せば、神餐節を知らない様子に意外そうな表情で。
 とはいえ、信心深い者や日常的に教会へ足を運んだり、
 貴族との繋がりがなければあまり話題にも上がらないことだろうか。)

「そうでしたか。貧民地区では炊き出しがされたり、平民地区でも捧げられた供物を調理して、
 信徒の方々に振る舞ったりするんです。
 とは言え、僕は正式な教会関係者ではないので、詳細はさほど詳しくなく……。
 ただちょっと忙しい日、みたいな印象ですね。
 貴族の中でも、無償で祝宴を開く方もいるようです」

(そんな風に、彼女たちが用意してくれている間歓談のように話題を出して。
 そして注文した栄養剤も、どうやら配達までしてくれるようだ。
 流石に20本は多かったか、けどこのサイズなら20本ぐらいは持って帰れるな、とも思い。
 彼の焦りが滲むような提案には不思議そうにしつつ、顎に手を当てて。)

「配達はありがたいですが、いつ頃になりそうでしょうか?
 出来れば早めに届けてあげたいので、20本ぐらいなら、それほど重みもないでしょうし、そのまま持って帰ることも」

(事情を知らないからこそ、配達にも料金がかかるだろうし、
 時間がかかるなら手間をかけるのも、と真面目な表情で伝える。
 なおその教会は腐敗の手が及ばぬ珍しく清廉とした教会。
 その清廉潔白さが、あくまで真面目と丁寧を併せ持つようなサウロの態度からもわかるかもしれない。)

セリアス > 奥では間をおいてがたりごとりと品出しをする音が聞こえる。
声が聞こえるのは元気のよい声のほうだけだが。
ほどなく用意される商品の一部がカウンターにと運ばれてきて。
また奥にと戻っていく際に揺れるポニーテールをちらりと眺めながら、小さく息を吐き。

「ああ、成る程。救貧活動の時節でしたか。
 当商会もいくつかの教会にはご協力させていただいております」

教会も宗派が色々あり、彼の関わるそこでの催事の呼び名までは知らなかったが、
色々な思惑がありそういったことが行われているのは知識としてあった。
教会や貴族たちの思惑は清廉なものばかりとも限らないが、
街の一員としては協力したことは確かにあった。

「明日にでも運ばせましょう。ぃえ、実は少し効能の強い物が混じってしまったようで。
 普段うちに足を運ぶ冒険者のような客層の方ならむしろ良い影響もありましょうが、
 教会の方々には過分な効能が出ては申し訳なく。配達料はそれこそ、喜捨ということで」

彼の出で立ちや立ち振る舞い、物言いを見ていれば少なくとも表面上はまともな教会なのだろう。
故にすべてを明かさずとも嘘にならない程度に事情を話していく。
ちらりと向ける視線の先。並べられた栄養剤。

別に売ってしまった後のことなどどうとでもなるし、
むしろこの街であれば最初から怪しい薬などいくらでもあるのだけれど。
そこは人ならざる者とはいえ、商売人としての矜持というところか。

サウロ > 「ああ、やはりそうでしたか。
 ────と、ありがとうございます。明日なら大丈夫です」

(丁寧な対応を受けながらそつなく接客をこなす彼に礼を告げる。
 さらには効能が少し強いものもあると聞けば、冒険者と違って一般人である女性たちには少し厳しいかと納得の顔。
 喜捨ということで配達料までサービスしてくれると聞けばそれに乗らない手もない。
 わかりました、と頷いて、配達先の場所や連絡先などを伝える手続きがあれば従おう。
 ちらりと棚の方を見てから、冒険者ぐらいなら売れるというなら、
 元々自由騎士であるサウロ自身もまた一本ぐらいあってもいいか、と判断したようで。)

「では、別に一本だけ買っていきます。
 これは自分用なので、多少効果が強くても大丈夫です」

(ここまでサービスしてくれるのだから、お店に感謝しつつお金を落としていこうと。
 上背と、修道服に隠れているものの体幹の良い姿勢からは鍛えられていることも伺えるかもしれない。
 これはサウロ自身の判断。
 一本だけなら"当たり"を引く確率もそう高くはないだろうと。)

セリアス > 全てを明かしたわけではないけれど、一応は誠実に対応した甲斐があってか。
彼の方も納得してくれたようで心中で一つ息を吐く。

配達先の協会を聞き、連絡先をと確認して自由騎士団の名を見つければ、おや、と瞬いて。

「自由騎士団の所属の方でしたか。何度か需要品を卸させていただいたことがあります。
 よろしければまた御贔屓に……ああ、ヴィーニー、配達に変更です。アールサに伝えてください」

教会とはまた別の伝手であると見て取れば商会を売り込みながら。
ぱたぱたと次の商品を準備していた店員に声をかけ、また奥に引っ込んでいくのを見送りながら。

そうしていれば、一本だけ、と。
効能がどれほどのものか、試してはいないけれど。
かの魔族の国の欲望の街も、人間が混ざり暮らす所でもある。
まさか薄めてもなおとんでもない効能のものでもないだろうし、
彼のような美丈夫なら、帰ってから飲むのなら対処する相手もいるだろうと判断して。

「お買い上げ有難く。即効性もある程度確認されております良い商品ですよ」

本来の栄養剤は熱中症やらの夏の体調不良に実際によく聞く代物であるから。
自信を持って勧めて――……これで『あたり』だったら特別効能の強い物が混じっていたと。
そう言い訳しようかな、などと心中では次善策を検討し始めてもいて。