2025/04/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にれあさんが現れました。
れあ > ここは異国の地。

故あって、ここから東方に位置する島国を離れ、幸運もあり、人に恵まれこのマグメールの地を踏んだ。

見渡す限りの異文化。
王都マグメールの平民地区、広場を進んだ先には、冒険者ギルドというものがあり、そこで異邦人が仕事を請け負うのだと、そんな知識を手に入れて、ギルドなるものを目指す。

異国人の雑踏の中で、特に物珍しそうに見られることも無かったので、試しに一つ、現地民の男性に話しかけてみる。


「すいません、冒険者ギルドはどちらでしょうか?」

この地の言語は、ここに来るまでの船中で習得していた。
男性は普通に…いえ、十分親切に対応してくれた。
お礼を述べ、頭を下げ、そして冒険者ギルドに辿り着く。

れあ > 冒険者ギルドでは、肌の色、髪の色、面差し、様々な人種が散見された。

時分と同じ国の出身かどうかは分からないものの、母国と近しい文化圏の「東邦人」らしき人もいる。
なるほど、特に物珍しそうに見られることはなかった訳だと合点がいった。

さて、ここで糧を得ると言っても、その作法は分からないので、ここに集う人たちを観察し、会話に耳を傾けることにする。

受付や掲示板といったものの他、丸テーブルや椅子が備え付けられていたので、壁際にある誰も座っていなかったテーブルへと移動して、そこにお尻を落とすことにした。

れあ > 冒険者達のほとんど皆が、鍛えこんだ肉体で、武器を所持していて、ここでの仕事の多くは、力仕事…というか、「何かと戦う」ものである事を如実に語っている。

戦いと言えば人と人とが争うものを想像するけど、頻繁に耳にするのが「魔物」というワード。
つまりはそういう事なのだろう。

「魔物…ねぇ…」

母国においては「魔」とは人の恐怖心が作り出した幻影であることが多かった。
言葉では説明ができない何かを見た経験は一度しかない。

この地にいる限りは、必ずどこかで魔物と戦うことになるのでしょう。
何しろ自分が売りに出せるものは闘技しかないのだから、素直に「冒険者」をするしかないのだ。

今周囲で話している冒険者には、脳まで筋肉といった男性が多く、彼らの会話から魔物の情報を仕入れようとしても「ガチ」「あいつらマジヤバイ」「強すぎてヤバかった」等の死んでる語彙力でしか修飾されていなかった。

れあ > ならば積極的に交流を図り、教えを請おうと思い立つ。
次このテーブルに近づいた者がいたらこちらから声をかけてみよう。
そう考えていたのだけど、何故だか誰も寄り付かない。
個人的にはオープンにしているつもりだけれど、「黒!」って感じの、近寄りがたい空気を纏ってしまっているのだろうか。

そういえば、なんとなく目の合った他者が悉くサッと目を逸らす気がする。

雰囲気、服装、佇まい。
下手をすれば容姿そのもので忌避られている可能性すらある。
ワンチャン、誰か良くない人と勘違いされている、とかだろうか。

「まあ仕方ないか…」

彼ら彼女ら冒険者が、どんな人達なのかは分からないけど、諜報だの暗殺だのをやってきた自分の方が異質なのは間違いない。
良識を備えているのなら、「近寄らないほうがいい」と結論付けるべき人物。それが今の私なのだろう。

この分だと仕事は体当たり、それも単独でこなすことになりそうだ。
スッと席を立つと、受付へ赴き、仕事の斡旋を行っていると思われる役人に告げる。

「なんでもいいから、仕事をしたいのだけれど」

そうやって生活していくうちに、この国の空気に身体も馴染んで、異質さも薄まるに違いない。

れあ > 役人は一瞥をくれた後で、「登録は済んでいるのか」と聞いてくる。

「登録?いえ。何も」

じゃああっちに行きなと雑に指さされたのは、出口…ではなく、奥への扉。
なるほど、ここで仕事を得るには、何か証を持たないといけないらしい。めんどくさ。
まさかその登録というヤツ、お金が必要だったりしないだろうか。
……というか多分恐らく確実に、お金がかかる制度だろう。

「その、登録なしにできる仕事はないのですか?」

と、食い下がってはみたものの、役人の態度はケンモホロロ。
仕方なしに受付を離れる。
何だアイツ初心者か…的な視線を感じつつ、示された扉に向かう。

れあ > 扉の先にはまた違う受付と役人。

今登録を行っている冒険者(卵)の姿は無く、ここも体当たりを余儀なくされる。

「ここで、登録をしたいのだけれども」

要件を手短に伝えて、役人の出方を待つ。
役人は何か書類を手に、ペンを持った。
質問されたのは、名前、年齢、性別、そして簡単な過去の経歴だけ。
しかし私が答えた以上の「何か」をサラサラと書き込んでいるのはわかった。

そして言い渡される「登録料」。
それが高いのか安いのかもわからない。
無い袖は振れず、これでダメなら仕方がないと、正直に話す。

「さっきも話した通り、こちらに着いたばかりで、お金はありません」

それに対する役人の返事は「でしょうね」だった。えっ、なにそれ。

れあ > この冒険者という職業と、その仕事斡旋のシステムは分からないけど、収益は国のお偉いさんの懐に流れると考えるのが妥当。
そして「働きアリ」は大いに越したことは無いはずで、登録料の設定は収益性だけではなくて、何か他の意味もあるはず。
なんか横柄で嫌な感じの役人の顔をじろっと下から睨む。

「…あるんでしょ。登録料を後から収める、仮登録みたいなシステムが。それをお願いします」

役人は少し驚いたような顔をした後で、薄く笑いながら「ああ、あるよ。登録料の前借り」と言った。


「じゃあ前借りをします」

「証文をつくるが、お前さん字は読めるのか?」

「大丈夫です」

余程バカげた奴隷契約でもない限り、私に選択権は無い。
恐らくそんな弱みに付け込んだ、酷い内容に違いないとため息をつく。
出来上がった証文に目を通すと、それは単純に登録料そのものの借用書で、期日までに返せなければ、もうこの国で冒険者家業は行えないとのペナルティが課せられているだけだった。

「…これだけ?」

「それだけさ。後は掌紋を押してもらうが──その前に、これを発行するための最低条件が五体満足な事なんでね。身体を改めるから服を脱げ」

「……ここで?」

「表で脱いでも意味ないぞ」

ヘラヘラと返事する役人の顔には、弱者を虐げる事への快楽が張り付いている。
あ~そーゆう…みたいな憎まれ口をたたきそうになったけど、あえて飲み込んだ。
いつ後ろの扉が開いて、次の「登録者」が来るかもわからない状況で、行為自体はまっとうなんだけど、屈辱感がハンパない。

衣服を脱いで、全裸となる。
五体満足の証明は一目瞭然。でも「よし」の声はかからずに、そのまま放置された。
役人はわざとらしくなにか書類に書き加えている。

れあ > いつ開くかもしれない扉を背にして裸になって立たされて。
後ろで物音がするたびにビクっとしつつ、目の前にはのんびりと「登録料前借り借用書」を作成する役人の憎たらしい顔があって、目が合うたびにニヤっとされてイラっとくる。

そうやってどれくらい時間が経ったか。
最初は無言を貫いてやろうと思っていたけど、こちらから口を開く。

「あの、まだですか?五体満足なのは見ればわかると思いますが?」

暗に無能呼ばわりしてやるけど、そんなんじゃ全然スッキリしないし屈辱感も薄れない。
まさかコイツ誰かが来るまでこれを続けて、兎に角私に恥辱を与えるつもりではないだろうか。

なぜそんなことを?って…多分自尊心を満たすため。
もういいです!冒険者登録なんて結構です!
…と言えるものなら言ってやりたい。

(は・や・く!)

と心の中で念じつつ、また後ろの扉が軋んだ気がしてビクンとなる。

れあ > こんな状態が長く続くと、次第に肌感覚がおかしくなってくる。
今私に屈辱を与えている役人以外の、誰かにもこの光景を見られている感覚が、全身に突き刺さる。
不安に駆られて、視線を巡らせる。
無駄に広い室内には、役人と私の二人しかいない。
それはつまり、私が勝手に「他の男の視線を感じてしまっている」という事で、羞恥に頬が熱を持つ。

「……くっ」

それでも触られているが如くに肌を撫でる視線を感じ続け、汗ばみ。高揚する。
そしてまた扉が軋み、またたまらず不満を訴えた。


「あの……!」

「できたぞ」


長々と行われていた書類の作成が終わり、役人は証文と、ギルド登録証を受け付け台に提示する。
はぁはぁと息を弾ませつつ、急いで着衣してから彼に歩み寄り、睨み。ひったくるようにその二つを受け取った。
これさえ受け取れば用は無い。

忌まわしい受付部屋を出ると、何故か扉の前に不自然に若干齢若めの男性冒険者達が屯していた。

「……」

じろりと見ると、皆目を逸らす。
そして気付いた。今出てきた扉に、模様に紛れる様に小さな覗き窓が複数ついているのに。
毛が逆立つ。

「……なるほどね」

ちょっとヒクヒク来たけど、ここで暴れても仕方がない。
どこにでもある「新人いびり」みたいなものなんでしょう。多分。
せめてものプライドで「全然気にしてませんが何か?」風を装い、そのまま仕事斡旋の受付へ。

「これ登録証です。仕事を貰いたいのだけれど」

れあ > こうして半日かけて提示された仕事は、「お金持ちの護衛」という、至って普通のもの。
私はその募集要件に適っていたのだという。


「…どうも」

紹介状を受け取り、同時に報酬に関して「半分をギルドに納める」との条件を聞かされる。
半分って中々に酷いけど、とりあえず一歩前進した。
コツコツこれを積み上げて、生活の基盤を固めることが出来たなら、その先を考える事にしましょう。
この地で最初の仕事に向かうべく、冒険者ギルドを後にする。

「紹介先は…富裕地区の…」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」かられあさんが去りました。