2025/03/24 のログ
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ご案内:「王都マグメール 平民地区 憩いの広場の隅」にイオリさんが現れました。
イオリ > 漸く冬の凍えそうな寒さも和らぎ春の気配濃くなったマグメール。
平民地区も活気を取り戻し、朝早くから人々の往来で賑わいを見せ……

それもひと段落したころ。
老人が散歩をしたり、家事の一休み、とばかりに主婦たちが会話を交わす
通称、憩いの広場。

その隅にポツン、と置かれた木製のベンチに、つい先ほどまではいなかったかもしれない存在があった。
横向きになり眠っていたその存在―――幼い少女―――は体を起こして。

「おはよ……」

寝ぼけ眼をコシコシと手の甲で擦り、誰に向かってでもない朝の挨拶を向ける。

広場の者達はそんな少女に気付いているのかいないのか、誰も其方を向く者はいなかった。

イオリ > 広場の者達は見知らぬ少女に気付いていないのか……?

その理由は、少女の存在感が希薄が故に。
まるで景色と同化しているように。

そして少女自身、今の状況に驚いている様子はもない。
目が覚めると、何時も違う場所にいる。
疑問や不安は、最初のうちこそ沸いていたが
今はもう慣れた………と言えば語弊があるか。
それが当たり前、と思い始めていた。
家族や故郷への郷愁も消えかけている。
この世界で目が覚める前の記憶は徐々に薄れかけているのかもしれない。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 憩いの広場の隅」にイオリさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 憩いの広場の隅」にイオリさんが現れました。
イオリ > 「ん……」

しばらく経ってもまだぼんやり眼。
ここはどこだろう、なんて少しきょろきょろしてみる。

お腹は空かない。
喉も乾かない。
ただ、眠くはなる。

そして起きればどこか別の場所にいる日々。
それを不思議に思わないのはなぜか……
思考のループに至るには幼すぎて、なのか。
はたまた別の何かなのか。
春らしさを感じさせる日差しも差し込んできた。

イオリ > ぽかぽかの日差しに、何時しか少女はまた眠りについたよう。
誰かが散歩の途中の一休みにベンチに腰掛けようとした時
そこには誰もいなかったという―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区 憩いの広場の隅」からイオリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 三寒四温。
春の芽吹きが迫っているらしい昨今、日中は不要なもこもこ襟巻も夜となればまだ現役で。
取引のあるお貴族様の接待と、貧民地区の正体を明かさずとも遊興に耽溺できる店に連れ込んで。
好い具合に出来上がったのを見届けたなら、当人はひょっこり平民地区へ。
酒だ、色だと、もっぱら喋ることに使っていた口に、重要な役割を果たさせようと。
即ち、食事である。
時間も時間で、込み入った美食を求めるつもりはなく。
酒場の並ぶ繁華街に、ちみっとした少年が一人。

「嗚呼、包み紙なんぞ要らぬ。
ここでこう…がぶりとやるのが一番じゃろうしのぅ。」

代金と引き換えに、羊肉の串焼きを受け取り。
大ぶりにカットされたもも肉と思しき部位。
焼成煉瓦を組み立てた竈の中に吊るして、じっくりじわじわ火を通しているらしい。
やはり、羊肉といえば独特の臭みが付きもので、それが良いというのもあるけれど。
とはいっても、特定の購買層に売れるだけというのでは店が傾きかねない。
故の試行錯誤の成果か、葡萄酒と大蒜と甘みの強い酢と香草を数種。
そのタレに漬けて焼いているものだから、加熱された際に香ばしく、刺激的な匂いが立ち上る。
焼き上がりに、ヨーグルトにレモンと少量のピクルスを混ぜ込んだソースをお好みで。
あとは…はむっと。

ホウセン > もぐもぐ、もきゅもきゅと。
常なら、のべつ幕無しに駄弁る口も、食事時だけは例外らしい。
細っこい体の癖に健啖家なのは、育ち盛りの子供たちと変わらぬ。
一つ違う点を挙げるなら、彼ら彼女らのように、ベタベタとタレやソースを零したり、顔や服に付けたりしないというぐらいか。
単にお上品な所作というのもあるし、汚すと洗うのが面倒な装束を纏っているというのもある。
北方帝国辺境に由来を持つ土着の装束。
王国では早々見かけない意匠ではあるけれど、生地の良さや仕立ての丁寧さから値打ちは察せようか。
それなのにこのメニューチョイスは、真っ新な白いシャツを着ながら、汁気たっぷりの麺類を啜るリスクと通底する。
当たり前なのだ。
高価な装束に袖を通すことに。

「店主よ、もう一本追加じゃ。
ちぃとばかり、ソース多めが良いのぅ。
中々の相性の良さで気に入ったのじゃ。」

斯様に羽振りの良さそうなお子様が、おかわりを貰って暫し。
平民地区とはいっても夜、素性のよろしくない者から見れば、鴨が葱を背負っているようなもの。
己がどのように値踏みされるかを知ってか知らずか、てこてこと通りを進んで。
街路の交差する広間に至ると、端っこのベンチにちょこんっと。
再び形の良い唇を開いて、肉の塊にかぶり付く。
ほんのり頬を内側から膨らませつつ、見るとはなしに通行人を視線で舐めて。

”何ぞ、面白そうな者はおらんかのぅ”というのが、腹の内。

ホウセン > 「さて、腹ごしらえは終いじゃ。」

ベンチからぴょこんっと身軽に降り立つと、物怖じせぬ足取りで――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からホウセンさんが去りました。