2024/03/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にメルヴィさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に”徒花”ジョーさんが現れました。
”徒花”ジョー >  
"君は真面目さん"なんて言われれば、思わず口元が緩んだ。
さっきまで無愛想だった顔が初めて笑みを浮かべたが、何処か小馬鹿にするようだ。

「生憎と、真面目とは程遠い。他人に無関心なだけだ。
 ……仮に真面目に生きているのならば、もう少し生き方を考えている。」

「先ずは、そう……うんざりするこの国からさっさと離れるか、改革でも考えるとするか。」

今でも思う。真面目に生きていたほうがもしかしたら、幸せな思い出も多かったかもしれない。
探究心のままに、好奇心のままに生きてきた。愛を知ってもその生き方を変えることはなかった。
その結果、今や立派な世捨て人。斜陽の国と吐き捨て、ただ思い出にすがるだけの過去の残影。
当然、そんな気は毛頭ないので冗談めかしに言ってやった。
たった一人の誰かが動いた所で、変わるようならこの国は此処まで落ちぶれちゃいない。
酒に映るどんよりした自らの顔。なんて顔をしてるんだ、と思わず自重気味に笑ってしまった。

「王立学院なら或いは……まぁ、規模の広い学院だ。
 特に最近までは非常勤だったからな。正式な教師となったのは最近だ。」

「……真っ当に生きる若者の助力になる程度の事しか教えてはいないがね。」

何よりもジョー自身がそこまで教員自身に興味を持っていない。
広い学院内、或いはすれ違う事もあったかもしれないがそんなものだ。
ただ、教鞭をとる以上はそこは真面目に教える。
爛れた国ではあるが、それでも真っ当に生きようとする者はいる。
そうであるなら、それくらいの助力位はするべきだと思っての行動だ。

本人は否定したが、"真面目"という評価は存外的を得ているのだ。

「…………。」

僅かに眉を潜め、酒を仰ぐ。何杯目からもう忘れた。

「他人がどういう生き方をしようが止めはしない。
 精々、痛い目だけは見ないようにするべきだな。」

火遊びも程々に。爛れた関係は火傷だけでは済まない時もある。
火に慣れていようと火の本質は変わらない。燃え尽きないようにと注意位はしてしまうお節介だ。

「……昔の話ではあるが、俺にとっては現代(いま)と変わらない。
 俺はただ、出会いが良かっただけなのかもしれないな。」

「何年経っても、彼女の事を一時も忘れる事はない。
 ……俺にとっては彼女が全てだ。お前もいい女だとは、思うがね。」

それほどまでに愛せる、愛してくれる人と出会えたことが。
そうした結果、ずっと彼女のために生きることになったことが。
幸とか不幸とかそういう次元の話ではない。もうそういう風にしか生きれない。
何年と続いている一途な気持ちはこれからも変わることはないだろう。
そう語るジョーの顔は懐かしむと同時に、楽しそうなものだった。

そうこうしているうちに、二人の眼の前に置かれたのはヨーグルトのデザートだ。
真白の表面に転々と浮かぶカラフルな果物達が食欲、別腹を刺激する。
ちょっとちんまりとしたレディースサイズは、さっきまでの濃い食事軍団の締めには相応しいのかもしれない。

「来たぞ。サイズはちょうど良さそうだが、入るか?」

メルヴィ > 「ふむ、外れてしまったね。割と人を見る目はあるつもりだったのだけれど」

残念とは口で言いながらも、彼と同じく僅かに口角を上げてにやりと笑んで見せる。
小馬鹿にするような表情へのカウンター、という訳では無いが、ただ笑われるのも面白くない。
これも酒宴の遊びのようなもの。無礼講らしいからアドリブで楽しむのみである。

「この国を改革……難易度高そうだねぇ。どこもかしこも爛れてるから、やるとすれば国家転覆の領域かも。
 逆に国を離れるのは凄く簡単だから、どっちを取るかで生き方がすっぱり変わってしまいそうな気がするよ」

少女はどちらかと言えば多少爛れている方が色々面倒がなくて居心地がいいのだが、それは半分入った淫魔の感性だと理解している。
故に、同種族以外の他者と会話する中にそれを滲ませることはない。わざわざ自分の生きる世界を生きづらくする様な真似はご勘弁。
どんよりとした彼の顔を肴に酒をちびちび。いやはや、美青年ともなれば憂いも落ち込みも全てが映えるのだから、良い目の保養だ。

「確かに、あそこは色々ごちゃまぜだからね。敢えて整えないことで何が起きてもおかしくない場所って感じ。
 ――なるほど、まぁ、こっちも真っ当な教員じゃないから、君に威張れる様な存在じゃないんだけども」

少女にとっての教職は単なる肩書だ。実際、人に教えるより自分の研究や楽しみが先に立ってしまう。
極稀に、偏屈でへんてこな教授枠にカテゴライズされそうな少女に興味を示してやってくるような猛者もいる。
それらは見込みがあれば育てるし、上手く噛み合えば囲うし、そうでなければ適当にあしらって保存食のキープだ。
つまり、様々な思惑の坩堝と化した学び舎は、半人半魔な少女の欲求を満たす上でも素敵な楽園なのである。

或いは極稀に一般クラスの授業を代行して面倒見ることもあるが、そういう時はわりかし真面目にやるらしい。
サボりと悪事は目を付けられない様にやるのが鉄則、と言うのが本人談。求められれば与える、そういうスタンスだ。

「良いじゃない、後進の育成は大切さ。種は蒔いて育てなきゃ収穫期に刈り取れないんだからね。
 まぁ、新芽を手折って味わうのもそれはそれで何とも言えない甘美さがあるのは否めないけれど」

くふふ、と僅かに怪しく笑いながら、酒をちびちび。穏やかながらも程良く楽しい酒の席で、少女も少し饒舌になっている。
眼の前には何杯目かも分からぬ酒を飲む彼が居る。しかし、先程酔わないとも言っていたから止めるのも野暮というものだろう。
彼の言葉には少女も概ね同意である。彼と違うのは、操を立てている訳でもないから興味本位の摘み食いが挟まるくらいか。

「痛い目も程々には見た方が良いかもだけど、取り返しのつかない失敗への注意位はしてあげないとね。
 失敗出来るうちに失敗しておかないと、いざ失敗した時に何も出来なくなっちゃうからねぇ。大変、大変」

会話を重ねる内に、デザートがやってくる。ことりと置かれた小さめの皿の上に、締めくくりの幸せが乗っていた。
じぃ、と宝石めいて輝く果物を眺めつつ、彼の褒め言葉には一瞬きょとんと目を丸くしてから、僅かに笑んで。

「眼の前で酒を嗜む良い女が霞む程に、素敵な女性に出会えたってことかねぇ。この国ではどんな宝石より珍しいんじゃない?
 そんな経験を味わったなら、この国に嫌気が差すのも無理はないよねぇ。真の愛なんて、何よりも縁が遠すぎる代物だもの」

懐古する彼の顔は、何とも楽しそうな雰囲気だ。彼に今尚愛されている彼女は、正しく幸せ者である。
純な部分を垣間見ながら、やっぱり君は真面目だと思うけどなぁ、と心の中でぼやいていた。

”徒花”ジョー >  
「尤もだな。そこまでこの国を愛してる人間がいるかどうか、だがな。
 ……もし、いるのであれば、ソイツの末路くらいは見届けたいものだ。」

今更国を変えようなどと思う気骨の人物が存在するだろうか。
勿論、いないことはないだろう。
彼女がいうように転覆レベルまで思いを持つものがいるかどうかだ。
それこそ、そうするにしても途方もない時間がかかるだろう。
本当に夢のような話だ。ただもし、そんな夢を間近で見れるのなら見届けたいと思うのは老婆心だ。

「……お前がどんな目的で教員をやろうとお前の自由だ。
 如何なる行いも、許される範囲ならそれは生徒と教師の自己責任だ。」

国の瓦解は、国を形成する者たちにもしっかりと影響をしている。
あそこは学院の名こそ持っていようと、とてもじゃないが学び舎とは思えない有り様だ。
勿論ジョーは革命家ではないし、それを変えるために教員になったわけではない。
如何に爛れた決まり事だろうと、社会が作ったものならばそれを変えようとは思わない。
彼女が普段、どのように教鞭をとるかは知らないがそれ自体を咎めるつもりはない。

「お前が真っ当な教員じゃないなら、それでも良い。
 だが、俺の生徒に"余計なこと"を教えた時は相応の対応をさせてもらうまでだ。」

但し、此方の教鞭のスタンスに踏み込んだ時は容赦はしない。
真っ当に生きようとするものを導くために取った教鞭だ。
数少ないクラスの生徒に手を出すことはまかりならん。
表情こそ相変わらず無愛想だが、声音には確かに"熱意"のある警告だった。
少なくとも彼らは、誰かに食われるため、手折られるために生きている訳ではないのだ。

「……全く、うんざりする例えだな。生徒を何だと思っているのやら……。」

ついでに苦言も呈した。
思わず片手で顔を覆い、首を振るほどに。

「だが、その意見に関しては一理ある。失敗を知らぬものは、一度崩れると脆い。
 ……とは言え、限度はある。それを守ってやるのが教師だとは思うがな、俺は。」

痛みなくして覚えないというのは真である。
だからといって、傷跡が残って良いわけではなく、それを如何に程々に抑えるのが大人の役目。
そういうからこそ、彼女の言う人を見る目は正解とも言えよう。
指の隙間からちらりと彼女の顔を見やれば、僅かな沈黙の後……。

「……別に彼女とお前を比べるつもりはない、すまない。
 初対面かつ所感ではあるが、ハッキリ言ってややだらしない印象は受けた。」

「だが、何処か男を惹きつける魅力は確かに持っている。
 それが正しい愛、とまでは言わないが、男に"知りたい"と思わせるのは魅力的な女性だと俺は思う。」

人それぞれである以上、そこを比べる気はなかった。
そう思われたなら素直に失言だと謝罪した。
何であれ、性根がバカ真面目なのは違いない。
ハッキリとした物言いに嘘はなく、ジョーなりに彼女を褒めているつもりのようだ。

メルヴィ > 「誰しもが君みたいに純な愛を抱ける訳じゃないからね。偏愛だって情愛だって、同じ愛の分類に入る訳で。
 まぁ、この国は何よりも情愛が溢れすぎてて大変だけどね。学生だけでもそんな雰囲気が透けて見えるし」

時折授業のない教室の前を通れば、仄かに性臭がしたり甘い声が漏れ出てきたりする。
国を担う若者達がそうであるなら、彼らが見習う大人達の世界だって同じようなものなのだ。
どの様な意図かは知らないが、学び舎の中もこの国の混沌を切り出したかの様な縮図になっていると見える。
とは言え、どれ程濁った水の中にも咲く睡蓮の如くに、乱れた世には英雄的な存在が現れることもある。
確かにその様な存在が居るならば、その先を見てみたい。どう転がっても退屈だけはしなさそうだ。

「おや、それではまるでボクが真面目な先生ではないと言われてるみたいじゃないか。まぁ、ご明察なんだけどさ。
 可愛い子とかついつい虐めたくなっちゃうからなぁ――もちろん、あの学び舎の先生に許されてる範囲でだけど」

少女は真っ当な教師でないどころか、どちらかと言えば今の国のあり方に近い存在である。
とは言え、積極的に生徒を堕落させたり利用したりはしない。大っぴらに悪いことをしない小悪党だ。
いのちだいじに、人生は楽しく。そんなモットーを掲げながら、気まぐれに生徒を助け、時折嗜む程度に食べる。
概ね害のない存在だから、捕捉された時は犬に噛まれたと思って、仕方なく大人の階段を登って欲しいとかなんとか。

「……ふむ、まぁ、君の気配は覚えたから、積極的に手を出すのは控えておくさ。面倒事は嫌いだからね。
 おや、賃金の分は授業で贖っているのだから、それ以上の個別指導は対価をとっても良いんじゃないかなぁ。
 ――少なくともボクを師と仰ぐのであれば、師の無聊を慰める位の対価は貰っても良いのではないかい?」

そこはほら、スタンスの違いってやつだ。等と便利な言葉を放り込んでおく。
もちろん、節操なしに誰彼構わずつまみ食いしているわけではない。例えば恋人持ちに自分から手出ししたりはしない。
やっぱりお互い気持ちよく後腐れなく、お互いにとって都合の良い割り切り関係がベストだよねぇ、というのが本音だ。
たまにどうしても嗜虐的な欲求が疼いて突っ走る時もありはするが、まぁその時見つかったら仕方ないので観念しよう。

「まぁ、そうだねぇ。ボクも気が向けばちゃんと助けてあげるさ。だから、偶に地下の見回りもしてるし。
 ほら、迷い込んで酷い目に合う子が減る様に頑張ってる訳ですよぉ。なので、情状酌量とお目溢しよろしくぅー」

へいへい、無害な半人半魔ですのよ、と謎のアピール。実際、魔物に襲われてる生徒とかはしっかり助ける先生だ。
ついでに夜にしっぽりなんて言うのも狙っていないわけではないが、まぁそこは呆れられるだろうから言葉にはするまい。
続く彼の言葉には、寧ろ感心したように頷いて見せる。実際、だらしないんだから仕方ない。主に性的に。

「んー、君こそ占い師みたいな的確さじゃない。ボク自身もだらしない自覚あるからねぇ、色々。
 ボクは君の細君とは全く違うタイプなんだし、そう考えるとかなり良い感じの褒め言葉貰ってるかも?」

謝罪には別に気にしてないと応えつつ、皿の上を飾るフルーツを楽しむ。甘さ控えめなのが寧ろさっぱり目で良い感じ。
いつの間にやらヨーグルトもするりとお腹の中に消えていた。これできっちり満腹。腹八分よりちょい上くらいだ。
ふぅ、と一息つきながら、ぽんぽんになった腹を緩く撫でる。酒も丁度空になったし、良い夕食だったと頷いて。

「……ふぅ、これでお腹いっぱい、大満足だ。君との話も楽しかったよ。お付き合いしてくれてありがとうね。
 お腹も満たされたからボクはそろそろ御暇するけど、君はどうする?もう少し飲んでいくなら、お先に失礼するけどさ」

そうでないなら、適当に散歩して別れるかい?等と問いかける。実際、どちらに転ぼうと少女としては構わないのだ。
全て気まぐれ、意欲の赴くままに。ついでに彼が名乗るなら名乗りを返すし、そうでないならば敢えて明かさず別れもする。
その必要があれば再び巡り合うだろうし、名が必要になればその時で良い。そんな些細なことも、将来の一興にするつもりでいた――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」から”徒花”ジョーさんが去りました。