2024/03/15 のログ
メアリ > 「あらぁ、そうだったのですね。お疲れ様です。
お酒を飲むのでしたら、すこし後ろにある酒場がおすすめですよ……」

酒でも飲もうとしていたところならば、先ほど己が出てきた店が良いと告げておこう。
質の悪い酒を出すこともなければ、水でかさ増ししたようなものを出す事もなく。
治安は程々だが、美味しい酒を飲むならば良い場所ではあるので、知り合いに進めても問題ないところだ。

「んぇ……?んふふ、でしたらかんたんに持っていけるか試してみます?」

呆れた様子の男を見ながら楽し気に笑い、冗談でも言うような口振りで告げて。
そこにこちらへ差し出す手があると、一瞬きょとん顔でその手と男の顔を見てから微笑みを向け

「相変わらずおやさしいのですねぇ……これから飲みに行かれるところだったのでしょう?
こんな酔っ払い、さっさと放っておいて行けばいいものを……」

また気まぐれの内かもしれないが、それでもその手に甘えて肩を貸してもらうと、軽くそちらに身を寄せて支えてもらい

モーリッツ > 「さっきメアリが出てきた酒場か?確かにそうみたいだな」

女の様子を見れば少なくとも不味い酒を出す店でない事はわかる。
これだけ酔えるのだから酒の質にも問題はないだろう。
ただ、酒は飲もうと思いはするが酔っぱらっている知り合いを放置するほど非情ではなく。
何より傭兵仲間はできるだけ大事にするという魔族に似つかわしくない考えもあり。

「それも悪くないな。持ち帰る事ができたら酒以上だ」

冗談のような口ぶりの女に、それも良いなと笑みを見せ。
なんにせよ酒よりも顔見知りを優先することに決め手は手を差し出し。
その手を見てきょとんとした後に微笑む姿を見つめ。

「気まぐれだ気まぐれ。酒なんざ何時でも飲める。
そう言ってはいるが嬉しいんじゃないのか?
で、宿はどっちだ?こんな場所で寝るよりはいいだろ」

優しいといわれては気まぐれと返し。
女に肩を貸し、身を寄せてくれば支えて歩き出し。
女が宿泊している宿の場所を問いかけて。

メアリ > さっき出てきたところかと問われると、一つ頷きながら「えぇ」と短く返事を返した。

「あらまぁ、嬉しいことをいってくれますねぇ……」

酒以上だなどと言う男に返す言葉には笑気が含まれ、それが己の本心か冗談なのかは測れない物言いで。
壁から身体を離すと、よいしょ、と小さく呟きながら男の方へと自重を傾ける。

「ふふ、わかりました。そういうことにしておきましょう。
……それは嬉しいですとも。だれかに優しくされるのは嫌いじゃないですよ。
宿はあっちの方向に。少しだけ歩きますけれど……ちゃんと最後まで送っていってくださいねぇ。」

唯の気まぐれだと言う様子に笑いつつ、嬉しいのではと聞かれたら少し間を置いて頷いた。
優しくされるのは嫌いではないという言葉に嘘はなく。
それも今夜ならば猶更、その気まぐれの優しさでさえも己にとっては嬉しく感じらた。

宿の方向を聞かれると、己が先ほどまで向かっていた方向を指さす。
少しばかり距離があるが大丈夫かと問いかけようとも思ったが、少し考えてからその言葉を
引っ込めてにこりと笑い、最後までなどと図々しくも告げる。
男の肩にかけた手でぽんぽん、と肩を叩きながら、無遠慮にそちらに自重をかけて凭れかかり、宿の方向へと共に歩き始めて

モーリッツ > 問いかけに短い返事で答えられ、次に王都に来た時にはいくリストに入れておき。

「一人で飲む酒とメアリなら、どっちを選ぶかは判るだろ」

酒は確かに楽しめるが、一人で飲む酒と知り合いなら知り合いをとる。
ここで遭遇したのも縁だと思えば、そっちを優先しては本音のわからない女の言葉に返し。
女の体を預けられればしっかりと支えて。

「そう言うことにしておけよ、それがいい。
嬉しいなら問題はないな。俺の優しさは気まぐれだ、毎回は期待するなよ?
あっちか、わかった。少しと言っても大した距離でもないだろ。
途中で放ったりはしないぞ、そこは安心しろ。それよりも狼が出るかもな」

女の笑う姿に視線を逸らせ、少し間をおいての頷きを見て。
優しくするかしないかは本当に気まぐれ、もし今日は稼げていなかったらきっと声はかけていなかっただろうが。
本当にいいタイミングでの出会いだからこそ、今こうしていて。

そして宿の問いかけに方向を指されれば歩き出す。
少しばかりと言われるがきっと些細な距離だと思えば気にもならず。
最後までと言われては当たり前だと笑い。
肩を叩かれては狼が出ると冗談のように告げては、凭れかかる女に肩を貸し、そちらへと歩いていき。
その姿に多少の酔っぱらいの冷やかしなどもあるは、一睨みで追い払ったりとして。

メアリ > 「えぇ……二度もこうして優しくされたら、期待してしまいますよ。
次お会いした時に冷たくされたら拗ねてしまうかも……」

優しさが気まぐれと理解しているから毎回こうもいかないことは重々承知だが、頬に手を当てながら
拗ねてしまうだなんて白々しく告げる酔っ払い

「こんな街中に狼ですか?恐ろしいですねぇ、いったいどこから現れるのやら……」

建物の物陰か、それともすぐ隣か。何処からだなんて言いつつ言葉での戯れを楽しみながらのんびりと歩みを進める。
そこに冷やかしなどがあれば、睨んで追い払ってくれる男の傍らでくすくすと笑う酔っ払い。
いつもよりも笑う事が多い姿から笑い上戸が含まれているのも理解できるかもしれない。

「……気まぐれでも、こうして声をかけていただけて良かったです。
先程まで気持ちがもやもやとしていたのですけれど、モーリッツさまとお話ししながら笑っていたら大分すっきりしてきました。感謝せねばなりませんね」

暫く歩みを進めたころ、夜空に浮かぶ月を見上げながら、何気なくポツリと語り始める。
酒でも拭いきれなかった胸の中の重い蟠りが気付けば消え失せ、心も大分軽くなっていた。
交わしたのは少しの会話でしかないが、それでも己の中で感じている変化は大きなもので。
一方的なものでしかないが、男の横顔を見ると礼を告げて

モーリッツ > 「そういうもんか?
なら次も優しくしないとな」

頬に手を当て拗ねると言われると大げさに笑って見せ。
次も優しくな、と冗談のように返して。

「どこからだろうな?けどな、この国は多いよな」

戯れの言葉遊びをしながらゆっくりと足を進ませ。
酔っ払いと素面ではあるが話は盛り上がり、その邪魔をする相手には鋭い視線。
そんな相手を追い払えばよく笑う女、もしかして笑い上戸なのかと今知ったという顔になり。

「そうか、なら掛けてよかったな。
なんか嫌なことでもあったか?今日はサービスで愚痴も聞いてやるぞ。
俺と話してすっきりしたならいいんだけどな。感謝は一晩付き合ってくれるだけで十分だ」

どれだけ歩いたか、ポツリと語り始める女。
ここまで飲むほどにあった何か、それが己と話したことで少しでも軽くなったのならよかったと。
ついでの愚痴も聞くと告げてはお礼を言われ、それに冗談で返しては宿の多い場所までやってき。
あの宿かと見えてきた宿に目を向けては口にして。

メアリ > 「んふふ。随分サービスが良いですねぇ。何か良いことでもありました?
……もう大分すっきりしましたし、大丈夫ですよ。」

気まぐれでも随分と優しい男に良い事でもあったのだろうかと思えば何気なく尋ねてみたりもする。
愚痴までも聞いてくれるという男の言葉に更に笑みを深めるも、その必要はなくなったことを伝えて

見えてきた宿は己が数日留まっている場所で。
その傍まで辿り着けば、ゆっくりと立ち止まりつつ男の肩から離れて斜め前に立ち、男の片手を両手で
包み込むようにやんわりと握り込み。

「では今夜もたっぷりと感謝させていただかなくてはですねぇ……」

手に取った男の手、その指先に口付けたあと、五指を絡めては手を握りつつ笑みを向けながら告げる。
夜風に当たっていたからか、まだ酔いは残っていながらも足取りは大分まともになってきた様子。
しっかりと繋いだ手を引けば、相手を己の部屋へと招き入れ、その優しさへのお礼をたっぷりとさせてもらったに違いない――――

モーリッツ > 「ただの気まぐれだ。それ以上でもそれ以下でもな。
そうか、ならいい」

暴れるときは暴れる、それ以外は気分次第。
良い事と聞かれても依頼で予想以上に戦える機会があっただけという程度。
そのことは口にせずに気まぐれだと返し、愚痴を聞く必要がないと聞けば、そうかと笑みを見せ。

そうして宿につけば肩から離れる女。
これでお別れかと思えば片手を包むこむように握られ。

「そうだな、たっぷりと感謝を返してもらうとするか」

指先に口づけをしては5指を絡めて手を握り告げる女の顔には笑みがある。
最初に出会った時よりも酔いがさめている様子にその誘いに乗り。
そのまま繋いだ手を引かれ部屋にと招かれ、そのお礼をたっぷりと受けて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からモーリッツさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からメアリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にメルヴィさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に”徒花”ジョーさんが現れました。
”徒花”ジョー >  
「尤もらしいな。酒自体は俺も嫌いではないが……酔うのが難点だな。
 俺自体は酒に酔うことはないが、自他共に認識を鈍らせる行いは好ましくはない。」

良く酒に逃げる、溺れるなんて言葉が使われる。
事実、嗜好品や食品以外の点でもそういった使われ方をするのは事実だ。
自らの現状から目を逸らし、涅槃に微睡む愚かな行為。
ため息交じりに吐き捨てたのは、他ならぬ自分がそうならない為だ。
言った通り、飲食や嗜好品として、酒自身に悪い印象は抱いていない。

そんな憂いを抱いたような青年の姿はどう見えただろうか。
実に酒場の雰囲気とは不釣り合いな細く、物憂げな表情。
淫魔として、他者の心底を覗く慧眼が鍛えられているのであれば
実際不死者の心は何処か"空虚"、心此処に有らずと言ったものが見受けられる。
厭世的で、物静かさは拠り所が無い所以か。

但し、唾液から感じ取ったものも相まり同時に底は深い。
その性根を覗く術があるならばまだしも、長く生きた刻を"一見"で語れるほど浅くはない。
ただ寂しさに嘆いているだけではなく、憂鬱そうな視線には確かな"意思"がある。
寂しさを埋めるなど、誘惑などに乗るような芯のなさは皆無と言えよう。

「……、……甘いもの、か。大凡の女性は似たようなことを言うのだな。」

全員が全員ではないが、どうにも大凡の女性が甘いもの好きなのは間違いないらしい。
何回も聞いたようなフレーズだ。懐かしさも感じれば、僅かに口元も綻びる。
その観察には気づいているようだが不死者自体は特に何も気にしてはいなかった。
見られて困るようなものも特にはないし、どう思われようとどうでもいい表れとも言える。

「事実、その"オススメ"の破壊力はこうして実証されている。
 確かに一切れだけで、酒を嗜みには十分すぎる味だな。」

「酒の事を研究していなければ作れぬ絶妙な味だ。
 店主の手腕、技術の積み重ねなのは間違いない、が……。」

要するに美味すぎるってだけなんだが妙に饒舌になる。多分癖。
実際に喋っては肉を切り取り、口に運び、酒を流す。此のループがたまらなく終わらない。
この身が満腹を感じるからだでなくて助かった。
それを感じることなく食事を楽しめるのは不死者の特権と言っても良い。
もにゅ、肉を口に入れて肉汁を噛み締めている最中、彼女の食レポに訝しげな横目で見やった。

店主の手腕を褒めているのだろうが、妙な違和感。
或いは杞憂で、本当に味だけで其処までわかるグルメなのかもしれない。
ただの食いしん坊な不死者という訳では無い。言動の端の機敏には少し反応もする。
言葉で言及したりはしないから、スルーすればそれまでだ。
"どういう意味だ?"と、横目でただ尋ねるのみ。

メルヴィ > 「ふむ……お酒を飲んでも酔いにくくなる魔道具の装飾品とかもある。だけど、お酒は酔う為に飲むもの。
 酔う必要がないなら、果汁や果実水飲めば良い訳だし。つまり、今日はふわふわ気持ちいい気分になりたい」

酒を飲む理由は人によるが、少女の場合はほろ酔いのふわふわした感覚が好みだから、程よく嗜む感じである。
泥酔する程に飲むのはみっともないし、十分に味わうことなく飲んでしまう酒そのものももったいない。
何事も塩梅が大切。そう理解しているからこそ、自分の酒量を弁えて楽しく酒盛りに勤しんでいる。
晩酌で飲むのは多くても五杯まで。度数の強いお酒を頼む場合は、二杯分として数えるのがマイルールだ。
今は、柑橘の果実酒、りんごの果実酒で二杯目。最大であと三杯まで楽しめるが、今日は料理の満足度も高い。
頼むならもう一杯くらいかなぁ。酒精でほんのり頬を赤くしながら、呑気に思考を転がしていて。

「ふむぅ、酔わない体質ってお酒沢山飲めそうだけど、そもそも酔わないのに沢山飲む必要あるのかってなりそう」

仄かな酩酊感も含めて酒の楽しみとしているからこそ、少女には酔わない相手というものが分からない。
酔えないならお酒じゃなくて良いよなぁ。ふわふわ、気持ちいいんだけどなぁ、と少し残念がる程度。
まぁ、それでも味が好きとか香りが好きとか色々在るから、好きな物食べて飲むのが良いよねと結論づくらしい。

さて、同じ皿をつつき合う中でこっそりせしめた彼の体液だが、その味は何とも深くて底知れぬものだった。
複雑で重厚。外見とは不釣り合いの、しかしその雰囲気を納得させてくれる味。それでいて、どこかもの寂しい。
深みと寂しさの味とはどんなものかと形容するのは難しいが、複雑に重なり合ったそれを一言で表現するとそうなるのだ。
舌の上で味わいを転がして、彼を理解するには時間や量が足りないと言う結論に至る。それはそれで、楽しみでもある。
ただ、それとは別に、なんとなく彼は一筋縄でいかない気もする。それは、味からの判断というより経験則や直感だ。
少なくとも直接的な色仕掛けとかは逆効果そうだ。とは言え、今は積極的に色事に望む必要もないから問題はない。

「ん、ボクも一般的な女性だからねぇ。皆が皆、甘い物好きって訳ではないだろうけど、ボクは甘い物大好きだよ。
 こう、頭を使うお仕事だから、色々考えてひと仕事終えた後で、とっておきの砂糖菓子を齧る時なんか至福だね」

お酒、お茶、お菓子。つまりは嗜好品大好き娘である。料理も最低限食べられるものを超えればその類になりうるだろう。
それらに共通するのは、摂取することで気分が高揚すること。有り体に言えば、幸せな気分になれるということだ。
幸せになれることを好み、そうでないものを嫌う。どの様に理論武装を施しても、結局それが少女の大前提だった。
今、彼の前で酒と料理を嗜んでいるのもその一環。彼が多弁になるのを聞きながら、うんうんと頷いて同意を示す。

「素面で食べたら濃すぎるんだけど、お酒がいい感じに感覚を緩めてくれるからイケイケになれる。
 そして、実際に食べるとお酒が欲しくて仕方なくなる。悪魔的な誘惑を織り込んでくる店主は凄い」

もむもむ、むぐむぐ。徐々にお腹が満足してくると、後は眼の前の皿が少しずつ綺麗になっていくのを眺める。
彼と違って少女には胃袋の限界がある。飲み過ぎ食べ過ぎは楽しい人生の大敵だ。腹八分、多くて九分が望ましい。
料理の評価に混ざる、彼の味への評価。ついと視線が向いたならば、こてんと首を小さく横に傾げて。

「ん、何か気になることでもあった? それとも、ボクに一目惚れでもしちゃった?」

向けられた視線に対して、しれっと茶化してみる。なお、冗談を言う時も表情は割とフラットだ。
更に踏み込んでくるならば、さっくりと説明するだろう。そうでないなら、りんごの果実酒を楽しむ所作に戻ることとなる。

”徒花”ジョー >  
彼女の言うことも最もではある。
その酩酊感を味わえるのも酒の醍醐味だ、と。
事実、その楽しみが味わえないなら果実水で十分なのは最もな意見である。

「お前の言うことは最もだが、そんな難しい話でもない。
 せっかくの酒場なんだ。酒を飲まないのも失礼だし、酒は酒で味だけでも美味い。」

「量を気にせず飲めるというのは時に便利な事もある。
 ……それに、酔うのが嫌なのは俺の個人的な問題だ。」

要するに"付き合い"という奴だ。
果実水もそれはそれで美味いが、酒独特の苦みもまた嫌いではない。
言葉で語る程のことでもない、単純な事柄だ。
それに、食事としての楽しみ方は生命維持以上の意味だってある。
純粋に一度に多くの味を楽しめるのは、この体の利点だ。
それはそれとして、酔うのが嫌いなのは食事とは一切関係がない問題だ。
本当に個人的な問題だ、語るに及ばず。無論、追求するならば隠すこともしない。

軽く容器を揺らし、酒を揺らせばまた煽った。
そして、気づけば後一杯、後一杯と増えていく。
酔わない強み、最早酒が一個単位の飲み物としてか機能していない。
傍から見れば素面で黙々と飲む酒豪である。

「……そうか。俺も色々やってはいるが、仕事終わりの甘いものが格別なのは同意する。」

「デザートは欲しい派か?」

仕事終わりの開放感に、甘いものは最適だ。気分がいい。
奢ると言った手前、ケチケチするのは好きじゃない。
さり気なくメニューを開き尋ねるのもは、お節介の性分だ。
勝手に頼むのではなく、ちゃんと訪ねておく。デザートは別腹、なんてものは幻想だ。
満腹な時には何を食べても苦しいだけだ。開いたメニューのデザート欄を指でなぞり、軽く示してみよう。

「…………そうだな。」

今眼の前で素面で食っている人…もとい、不死者がいるのだが???
と、思った気持ちはお酒と一緒に飲み下した。濃い味が好きなんです。
普通に考えれば確かに酒と合わせるために、素面で食べるには濃いものかもしれない。
こう見えて、舌はしっかり男の子。肉!濃いめ!辛め!何でも美味しくいただけます。

「……酔ったなら介抱位はしてやれるが?」

明らかに不機嫌そうに顔をしかめて返してやった。
余りこの手の冗談は好きではないようだ。まったく、と酒で流してふぅ、と一息。

「いや、随分と独特な料理の感想が気になっただけだ。
 本当に料理の感想なら、それで良い。」

とは言え、ただ見るというのも確かに気が悪い。
そういうのは不器用らしく、素直に理由を答えるのだった。

メルヴィ > 「確かに、酒場だからお酒を飲まないのは勿体ない。うん、単純にして明快だね。
 ――なるほど、便利な時もあるんだ。まぁ、ボクは酔うの好きだけど強要はしないさ」

他人に無理やり酒を飲ませる位ならば、その分自分が飲む方が良い。楽しんでやらなければ、酒が可愛そうだ。
そんなモットーが在るから、他者の食べ方、飲み方にはあまり干渉しない。お互い自由な方が良いのだから。
ある程度彼の情報が集まったならば、後は観察と言う程ではなく、ただのんびり彼を眺める様な視線を向けるのみ。
こうしているだけで気分が良いものだから、難しいことは色々放って、考えないことにしたのだ。

故に、今は眼の前の皿が緩やかに、しかし綺麗に片付いていくのを『凄いなぁ』と感心していた。
ついでに酒もまた、彼が注文する度に盃がやってきて、いつの間にやら中身が乾く。健啖家で酒豪とは恐れ入る。

「同士だね……そうだなぁ、デザート。少しだけ頂こうかな。お腹も大分満たされてるし、軽くね」

出資者たる彼に問われたならば、遠慮せずに頼むつもりで示されたメニューを眺める。
腹具合的に焼き菓子等は少々重い。そのまま下に辿っていくと、気に入ったものを見つけたらしく。

「これが良さそうかな。ヨーグルトに果物を色々入れたやつ。甘酸っぱくて美味しそうだし」

濃い味のものが続いたから、選ぶならばさっぱり味が良い。ヨーグルトの爽やかな酸味と果物の味わいを想像すると、僅かに頬が緩む。
じんわりと湧く唾液を林檎酒の残りで誤魔化しながら飲み下して、後は男の子を見守る女の子の構えである。

「おや、お言葉はありがたいけれど、自分の酒量を誤る程のポンコツではないよ。嗜むなら、無様は見せられないからね。
 っと、どうやらお気に召さない冗談だったみたいだね。申し訳ない。特に意図がある訳でもないから、さらりと流してほしいな」

あまりにも珍しい味だったから思わず言葉にしてしまったが、やはり体液の味の批評は言葉にしないでおこうと思う。
ツッコミを入れられた時に誤魔化すのが何とも大変だから。酔った様子のない彼に、忘れてもらうのは望めまい。
故に、謝意を述べながら大人しくデザートを待つことにする。あれは料理の感想だったことにしておこう。

”徒花”ジョー >  
「……酩酊に微睡み、無礼講を嗜む。
 確かに楽しかった事もある記憶だ。だが、酔いは容易く逃げ道になる。」

「少しでも自分を、そんな逃げ道を用意したくなかった。それだけだ。」

そうして酒を楽しんでいた時期の記憶は確かに存在している。
ノイズがかり、霞んだ脳裏の裏には確かにそんな明るい過去もあった。
同時に、その酒が用意に人を陥れることを知っている。
自分はそうならない、そうあってはならない。
酒に写った自分の顔は、なんて顔をしているんだろう。
酒場に相応しくない、眉間に皺の寄った険しい顔つき。いけないな。
軽く首を振れば、一気に表情ごと酒を飲み干した。何杯目かは、覚えていない。

「何、教鞭をとる立場となれば自然と頭も使う。
 ……ふむ、では。同じものを二つ。」

確かに此れなら軽くて丁度よいのかもしれない。
さっきの濃いめ濃いめのラッシュの締めには丁度よいさっぱりさは想像が付く。
いい選択だな、と感心しながら注文をまた二つと頼んだ。

「……酔いつぶれる連中を介抱するのは慣れている。
 まぁ、わざわざ"こんな場所"にいるのであれば、余程の身の程知らずでなければそうだろうな。」

最早斜陽の国マグ・メール。
下手に一人で酔いつぶれたら、その日にお持ち帰りされてしまうだろう。
身を汚されるだけならまだしも、人攫いならそれで終わりだ。
隙を見せた輩から食い物にされるような国だ。言っておいて嫌気が差す。
うんざりするな、と深い溜め息が思わず漏れてしまった。

「……、……そうか。一応、妻がいたのでな。」

既に妻に操を立てた以上は、おいそれと女性に手を出すはずもない。
その手の冗談も余り好まない。緊急でなければ、女性など抱くはずもない。
それにしても、何か含むような言い方だったがそう言うならそういうことにしておこう。

メルヴィ > 「羽目を外す時はきっちり外して、そうでない時は真面目にって感じかな。
 ふむ、君は真面目さんな気配がするねぇ。ボクは不真面目だから怒られない様にしないと」

酒は人生の楽しみにもなるし、逃げ道にもなる。だが、彼は逃避を自分に許していないらしい。
他人事故に、大変そうだなぁ、という感想だけを抱くに留める。行きずりの酒場で必要以上に踏み込むのも何だ。
どんな物でも意志がない以上は扱う者の器量次第。酒も剣も魔術も何もかも、その担い手が悪であれば悪になる。
魔道具職人たる少女はそんな思想の持ち主だが、それもまた多様性の中の一つだ。林檎酒で流し込もう。

「んゆ、キミも先生なの? 実はボクも先生なんだよね……ってことは、機会がないだけで同僚さんなのかも。
 とは言え、ボクは魔道具やそれに関連する魔術の類じゃないと教えられないからあんまり学校に居ないんだけどね」

教鞭をとる。その言葉に自らの所属や職業も軽く明かして、ヨーグルトを待つ間の楽しみにする。
少女の立場は学び舎の教師にして魔道具職人だが、基本的に講義ではなく研究室に近いものの担当だ。
或いは、学院の後ろ暗い部分にも関わって居たり居なかったりもするのだが、そこらは守秘義務でノーコメント。
時折地下でコソコソ作業をしていたりもするちび白衣は、話せる所だけさらりと話すことだろう。

「まぁ、うん。酒場で酔い潰れたら、近くの連れ込み宿までご案内だよねぇ。隙を見せる方が悪いってやつ。
 それはそれで、爛れた夜を過ごしたいときには悪くないかもだけど、お酒の入った荒くれ者は面倒くさいからなぁ」

半分淫魔な少女からすれば、拐かそうとしてくる輩=自分の餌にしていい存在だとしか思っていない。
襲って良いのは襲われる覚悟の在るやつだけ。そんな気概が重要だ。だからこそ後腐れなく『喰える』のだ。
仮に少女が『喰った』としても、数日はやつれて動けなくなる程度で死にはしない。最低限の加減は弁えている。
とは言え、あの手の輩はどうしても我慢出来ない時の最終手段で、出来れば可愛い男の子や女の子が良いのは秘密だ。

「――なるほど、細君が居たのであれば、勝ち目は万に一つもないってやつだね。
 ふふ、この国は案外爛れているけど、誰をどれだけ愛するかは自由だもんねぇ」

様々な人と愛し愛されるのも良いものだが、一人を愛し抜くのも素敵だ。そこには素敵なロマンスが在る。
そういうのも憧れてしまうよねぇ、等とのたまいながらも、同時に自分には似合わないよなぁとも思いつつ。
ともあれ、一人を愛し続ける一途さと言うのは尊いものだ、と感服していた。