2023/11/04 のログ
アルマース > 薔薇と同じ色で塗られた指先が、ついと一つの路地を示す。

「コーエン劇場――そこの角曲がって、夜には派手な看板が出てるからすぐ見つかると思うけど。
 踊りの仕事帰りでねえ、みんなお花要らないって言うから貰ってきたんだけど、重たくてどうしようもないから配ってたんだー。
 ――というわけで、今夜限りの花売りに会えて幸運だったね、お兄さん。
 花束のカードの宛先はアルマ、にしてね」

強引にひとつの目標を叶えることにする。叶わなくとも宣伝ということで良しとしよう。
不思議そうな顔をしている男――たぶん年上ではあるものの、ロマンスの分の経験が生死をかけた方面に行っていそうな印象を受けて、優しい目になってしまう。

「白黒つけないと気が済まないのはあたしもおんなじところあるけどねえ。
 理屈っぽいって言われるタイプなのかなあ……。

 一生に一度の情熱的な恋じゃなくても、誰にだって眠れない夜はあるから。
 同じように眠れずにいる誰かと夜を凌ぐことだって悪いことじゃないわ。
 さっきまで名前も知らなかったような相手でも」

正面に向き直り、青い瞳を見上げる。

「試してみる? あなたの仮説は果たして正しいのかどうか」

自分を好きになるような異性はいない。
好かれている相手はいない。
一夜明けてもそれは変わらないかどうか。

アドラー > 彼女の指先が示す路地に目を向ける。

「コーエン劇場。あぁ、なるほど、そこで君は…皆までは言う必要はないか。
 アルマ。確かに記憶した。今回の薔薇に負けぬよう豪勢な花束を用意しておく」

劇場という言葉、彼女の恰好。わざわざフードで身を隠していたことにも合点がいく。
溜飲が下がり、すっきりしたような胸元をなでると、優しい瞳でこちらを見つめる様子に違和感を覚える。
 
「お互い、仕事柄なのかもな。
 そちらも客の細かな要望に気を配らなければいけないだろ?」

笑顔で彼女の言葉に応答していたら、次に投げかけられた言葉にやや雰囲気が変わる。
黒い真珠のような瞳でこちらを見つめる彼女に、視線を逸らすことなく青い瞳で見つめ返し。

彼女の言葉の意味、雰囲気。
それらですべてを察する。

「例え一夜であっても、君のような魅力的な女性に想われるのは光栄ではあるが

 …やめておこう。私の愚考に君が付き合う必要はない。」

その言葉の意味することをすべて理解した上で述べる。
視線は真っすぐ、はぐらかしたりすることはなく堂々と。

アルマース > 「わあい。でも、また持ち帰れなくて花売りやることになるから、ほどほどのやつにして……?」

花売りは楽しかったから良いけど、貰い物を売りさばくのを贈り主が見たら――アドラーは悲しんだりはしなさそうではあるが。

逸らされることのない男の視線の先で、断りを受けた女の表情がゆっくりと変わる――故郷を懐かしむような、遠くへ向けた微笑みに。
この国において、誘いを断れる、ということがどれだけ稀有か。
別にその理由が、純粋さや高潔さとは異なる、彼独自の理論から出た結論であったとしても。
ふふ、と目を細めて笑い、むしろ機嫌を良くしたように、どうにか三分の二くらいにはなった花束を持ち直す。

「ざあんねん。ま、眠れぬ夜じゃなくしちゃったしなあ。

 ねー、それはそれとして美女を袖にした罰として、薔薇持って宿まで送ってくれない?
 冒険の話も聞きたいし。
 踊り子の仕事で面倒なのはお触りしようとしてくる客の相手くらいよ。
 そういうのの相手してると、森とか海とか砂漠とか、人のいない場所がほんと恋しくなるんだよね――」

手にした花束を、どさ、とアドラーの胸に押し付けて手を離す。
返事を待たずに手ぶらになった女は自分の宿に向けて歩き出す。
彼に二度目の拒否権は無いというみたいに。

アドラー > 「ふふ、どうなるかはその時のお楽しみにしよう」

贈った時点で花でも、黄金でも、城でも、それをどうするかは貰い手の自由。
今回みたく売りさばいても笑い話として記憶するだろう。

自身の想いが伝わったのか、彼女の表情が微笑みに変わっていく。
その様子に無意識に力の入っていた肩を脱力すると、花束を持ち直す様子を見据えて。

「ははは、君くらい美貌なら、美女を自称しても違和感はないな。
 そうだな。美女の誘いを二度も拒否するほど、私は命知らずではないさ。
 私の経験で良ければ、眠りのお供として好きなだけ語ってあげよう。

 ならば、最初に話すのは砂漠での冒険にしようか」

押し付けられた花束を優しく持ち、彼女の後についていく。
その後は彼女の宿で自身が経験した冒険の話を語り、一時の安らぎを与えるだろうか―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアドラーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都に幾つか存在する冒険者ギルドの支部の一つ。
とは言うものの、その実態は冒険者が客として集まる酒場兼宿屋であり、
申し訳ない程度に店内の掲示板に日銭を稼ぐための依頼文が貼られているに過ぎない。
それでも、1階の酒場では冒険者を始めとした荒くれ者や、彼らを相手に春を鬻ぐ娼婦、
その他にも飲食の為に訪れた一般客達にて相応の賑わいを見せていた。

その賑わいの中心、客達がそれぞれの卓にて同席の身内や仲間と思い思いの
時間や食事を愉しんでいる中で、独り、周囲の卓の客にちょっかいを掛ける中年男の影が一つ。
本来であれば、嫌われそうな行為であるが、誰も文句を言わず、また、店主も黙認する理由は至極単純で。

「いやぁ、運が良かった。ゴブリンの懐を漁ったら、まさかの宝石を見付けてよぉ。お陰で俺の懐が潤ったぜ。
 お、グラスが空じゃないか? マスター、俺の奢りで同じのもう一杯。ほら、乾~杯~♪」

等と、傍迷惑ながらも、明快にて、周囲の客達に見境なくも奢りを振る舞う故。
奢られた方は多少困惑するも、ただで酒が飲めるとあって強く文句を口にする事もできず、
店主も彼のお陰で儲かる上に支払い許容額も抑えている為に、この行為を見て見ぬ振りをする始末。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にギンジョウさんが現れました。
ギンジョウ > カランカラン、とドアベルの音をさせて見せに入ってくる影が一つ。
今日は適当に街から街へと移動する行商人の護衛を終えてやってきた。
その終了報告をするためにギルドへと顔を出した後のこと…。
本日の宿をどこにしようかと考えていた先に、目に入ったところに足を進めただけだったのだが…。

「……あ、あら?なんだか随分とにぎやかですね。」

入る前から聞こえていた喧噪に少し押され気味な様子。
中に入ったら入ったで、熱気にも押され気味である。

「ええと、お邪魔でしたかね…。」

トーラス > 喧騒の酒場内に響き渡る軽やかなカウベルの金属音。
耳聡く、その音色を聞き付けた騒ぎの中心にいた中年が、入口の方へと視線を向ければ、
異国情緒溢れる格好に身を包んだ女の姿を見付けて口端を緩め、
酒場の店主に酒をもう一杯、注文すると両手に木製のグラスを抱えて彼女の方へと近寄っていき。

「いやいや、お邪魔なんてトンでもないぜ。
 アンタのその恰好、シェンヤン辺りの“キモノ”ってやつだろう?
 遠路はるばるご苦労様だ。ほら、お近付きの証に駆け付け一杯ってな」

既にすっかりと酔いが回っているのか、酔っ払い独特の馴れ馴れしさで、
女へカウンター傍の席を勧めながら、片手に持ったグラスを突き出して、強引に乾杯しようとする。
差し出したのは相当に度数も高い酒で、酔っ払いながらに下心が見え隠れして。

ギンジョウ > カウンターに足を進めようとするも、中は結構な人ごみ。
どこに座ったらいいかな、と周りを見渡すも、
その中にこちらへと歩み寄ってくる男の影を見つければこてんと首を傾げる。

「そ、そうですか…?
 ええっと、そうですね、このあたりでは珍しい召し物になりますかね。
 でも最近はこのあたりを中心に働いていますので…。
 ええっと、ではお言葉に甘えまして……いただきますね。」

酔っ払い特有の馴れ馴れしさも、こういう場所ならばよくあることと。
男に勧められたままにカウンター席に腰を下ろして木製のグラスを受け取ると、
かこん、と嬉しそうに微笑みを浮かべながら乾杯。
くん、と少しばかり酒の匂いを嗅いだ後、くぴくぴ…、と疲れた体に一杯の酒をしみわたらせ…。

「ふにゃぁ……、美味しいですねぇ…。」

ほどほどには酒には強い気持ちでいるが、相当に度数の強い酒を進められた。
喉が焼けつくような感覚と共に、ふわり、と頭を揺らして。

トーラス > 「あぁ、王都でも滅多に見掛ける事のない目立つ服装だな。
 俺は冒険者のトーラスってんだ。お姐さんはやっぱり、シェンヤンの人かい?」

木製のグラス同士をかち合わせて乾杯しながら、相手に酒を勧めると共に己も口にする。
交渉事を有利に進めるために彼女だけを酔わせる等という理性ある行動が取れる程に素面ではなく。
咽喉を焼いていく強い酒精に目が眩むような酩酊感を味わいながら、くぅ、と唸りを漏らして。

「お、姐さん、イケる口だねぇ。こいつは、この安酒場でも秘蔵の火酒でね。
 マスター、同じヤツを瓶でもらえるか? ……ほら、姐さん、今日は俺の奢りだ」

カウンター越しに呆れ交じりの店主が提供する酒瓶を手に取ると彼女のグラスに注ぎ。
酒精に頭を揺らす女との距離を縮めるとその腰に片手を這わして、彼女の身体を抱き寄せていく。

ギンジョウ > 「うふふ…、でもこの街っていろんなところから人がいらっしゃるから…。
 だから珍しい格好をした方も結構いらっしゃいますよね。
 あ、私は冒険者のギンジョウと言います。
 出身は…、まぁ、そうですね、そのあたり…と言っていいのでしょうかね。」

あいまいな返答は、まぁ、どこで生まれたかなんて覚えてないからこそで、
確かにそこらへんを拠点にしていたころもあったという程度で返答する。

ぐいぐい、と木製ジョッキを傾けつつ、ぷはっ、と心地よい酔っ払い加減に吐息を吐き出し。

「うふふ~、私こう見えて結構飲める方なんですよ~。
 あら、いいんですか?随分景気が良いですね……ひゃっ。」

とぷとぷとぷ、と注がれる液体を見て目を丸くしつつも、
身体を抱き寄せられれば小さく声を漏らす。
店主はそんな二人をちらりと見たが、特に女を助けるでもなく…。

トーラス > 「確かにその通りだな。王国内は勿論、外国からも色々な奴がやってくる。
 正に、マグメール王国はまれびとの国って訳だ。
 あぁ、悪い悪い、詮索するつもりはねぇんだ。秘密の多さはイイ女の証ってな」

様々な国と繋がり、多くの客人が訪れるマグメール王国。
昨今では王位継承問題で争いが起こり、以前ほどの治安の良さは喪われたものの、
それでも、地方や諸外国から王都を訪れる者達は後を絶たない。
そのような街の暗黙のルールとして、お互いに素性や過去に立ち入らないという不文律がある。
彼自身、出自を探られたくない理由もあり、はぐらかす女の返答に、呵々大笑と笑い飛ばして。

「へぇ、益々、気に入ったぜ。ギンジョウ姐さん。
 今夜は二人っきりで思う存分、飲み明かそうじゃないか?」

彼女にグラスを持つように促せば、臀部に手を這わせて撫で上げながら椅子から立ち上がらせて、
相手の了解を得る事もせずに、有無を言わさぬ勢いの侭、腰を抱きつつ、店の奥の宿屋の部屋まで連れ込んでいこうとして――――。

ギンジョウ > 「たまに、私なんて比にならないくらい素敵な方もいらっしゃいますしね。
 いいえ、大丈夫ですよ、…ふふ、そういっていただけると嬉しいですね。」

様々な人が入り乱れるマグメール。
正直それだけじゃなく、そんなマグメール国、顔面偏差値も高い気がするのです。
それはあくまでも自分個人の思う気持ちでもあるけれども。
そんな中での暗黙のルールを守っている男性は何となく好感が持てると思った。
笑い飛ばす様子を見れば、クスリとこちらも小さく笑みを浮かべて。

「あらぁ、そんな簡単に気に入っちゃっていいんですか?
 逆に食べられちゃうかもしれませんよ…?
 わひゃっ…!!!っぁ……ちょ、トーラスさん…?」

グラスを持つよう促されればされるがままに、お尻をさわりと撫で上げられながら立ち上がる。
やや強引な様子で身体を抱かれながら店の奥まで連れ込まれる。
店主も、どうぞ、と、まるで見てない風を装った風で…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からギンジョウさんが去りました。