2023/10/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアドラーさんが現れました。
アドラー > 平民地区。その一画に佇むやや古びた武器屋。
老舗故なのか、外見は良くはないが品揃えはピカイチ。
いわゆる穴場というやつだ。その店内には外套を纏った男が顎に手を添えなにやら難しい顔をしている

「…」

ジーっと見つめる先には砥石や油、打ち粉という道具。
どうやら刃物を整備する道具類だ。
数秒それを眺めると、ちらっと隣のコーナーに目をやる

「やはり…」

そこには丁寧に磨かれ、展示されている刀剣が数本。
刃物は鋭く、まるで鏡のように自らを映す。

この男、どちらを買うか迷っているようだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にギンジョウさんが現れました。
ギンジョウ > そんな武器屋に気まぐれのように足を運んだ女が一人。
戦いの手段をあまり持っていない身として、それを危惧したのだが。
そこらへんにあった刀なんかを手に取ってみて一言。

「重…っ。」

がくん、と持ち上げることすら叶わず、うめき声をあげた。
女性でしたらこちらのナイフなんかがおススメですよ、
店主が明らかに不自然に距離を詰めながら棚に案内してくるのを、
困ったように笑いながら、ああ、はい…、なんて後ずさりしながら頷いた。
もちろん店主に悪気が無いのはわかるし、悪いのは自分の体質だとわかっている。
でもこんなところで発情させてしまうのも困ったものだ。

アドラー > 資金も無限にあるわけではない。
今後の生活費や行動方針を計算に入れながら、どちらを買うのがコストパフォーマンスが良いか。
道具の方に軍配が上がりそうなところにうめき声と店主の声が聞こえた。

「…店主…」

硬派で滅多なことではアドバイスをしない店主が鼻の下を伸ばしながら女性に迫っている。
確かに色気のある着物だが、あまり女性に靡かないイメージを持っていた故かあきれた表情。
しかも女性の方も困っている様子。これじゃ明らかにセクハラおやじだ。

「その店主の言う通りだ。
 君のような膂力に乏しい女性は小さなナイフか、大きいものでは軽めの槍などがいい」

ある意味では女性、ある意味では店主のイメージを守るために二人に割って入る。
ここは任せてほしいと店主に目配せし、店内にあるナイフや槍を指さす。
必然的にやや女性と距離が近くなったからか、彼女から発せられる常人とは違う何かに違和感を覚え、目を細める。

ギンジョウ > 「ん、んっと……。」

殴っちゃだめだ、と、自分に言い聞かせ、こうさせているのは自分なのだからと。
良かったらもっといろいろ見てみますか?オマケしますよ?と、嬉しい言葉もついてくるものの…。
それも我に返った後に後悔することになるのだからと首を左右に振り。

「い、いえ、大丈夫です……。」

普段は硬派で、だからこそ信頼される腕前を持った店主なのだろう。
けれど、今ここにいるのは淫魔の肉体にすっかり骨抜きにされた男が一人である。
そこに男性の声がかかれば、渡りに船とばかりに申し訳ないながら顔を上げた。

「っぁ……、あ、ありがとうございます…。
 その、すみません、お騒がせしちゃって…。」

店主は少し残念そうにしつつも、それじゃあ…、とカウンターの方へ戻っていく。
すっかり助けられてしまったと思いながらぺこん、と頭を下げると、
着物に包まれた豊かな胸が揺れつつ…。

「そ、そうですね、もともと腕力には自信がありませんし、
 言われた通りそっちにした方がよさそうですね……。
 ………あの、えっと、助けていただいてありがとうございます。」

店主のイメージを壊さないようにと、ナイフや槍を見つつ、こそりと男性に小さく囁いて。

アドラー > 「…いや、別に迷惑ではないさ。
 幸いなことに、客は君と私しかいない訳だからな」

カウンターの方へ戻っていく店主にやや苦い顔をしつつ
女性の方へ振り替えると微笑みながらそのように伝える。
馴染みの店だからか、面倒なことになり気まずくなる前にと対策を取ったまで。

ある意味自分のために行動したのだが、それで感謝されるのは悪い気はしない。

「あぁ、特に槍は閉所での戦闘でなければ活用するべきだ。
 物理的な距離の長さは死への恐怖心を薄れさせる。

 別段何もしていないさ。私が割って入らずとも、君なりの方法で解決していただろう」

武器の特性だけでなく、あまり気付かれないであろう利点を話しながらも
囁きに対してはこちらもやや小さめのボリュームで返答する。
 

ギンジョウ > 「そうですね、それだけが唯一の救いって言うか…。」

カウンターからこちらをチラチラとみてくる店主に苦笑を浮かべつつ、
男性の微笑みにほっとした様子で胸をなでおろす。
此方でできる形で解決…となると、今後こういう店に来づらくなることになりそうで、
その手段を取らなくて済んだことはありがたかった。

「そっかぁ、そういう考え方もあるんですね。
 死ぬことか……。

 いえ、私なりのやり方だと…ちょっと今後困ることになりそうで。
 だからえっと、貴方に助けていただけて本当に助かったんです。」

死ぬことが怖いとか、あまり考えなくなった身。
それはそれでいかがなものかと思われそうだが…。
こっそりとお話をしながら、ふにゃりと微笑みを浮かべて見せた。
助けてもらったのは嬉しかったのだと。

アドラー > 「…まぁ、ここは中々人の往来も少ない。
 彼は君のような新規のお客さんが来てくれて嬉しかったんだろう」

店主のこともフォローしつつ、ほっとした様子の女性に目をやる。
一応警戒心というか、この店のことを嫌いにはなっていないようで安堵する。
この店はいい。潰すには惜しいが、自分のような一端の冒険者じゃ支えるだけの財力はない。

「そちらの都合もあるだろう。自分の戦い方などに合わせて武器は選ぶことをおすすめするよ。

 はは、確かに。こんなところで暴力なんか振るわれたら私としてもたまったもんじゃない。
 そう考えると、私が割って入って正解だったな」

含みを持たせながら復唱する彼女に、それ以上は踏み込まずに要点のみ伝える。
そして、微笑みを浮かべた相手に自分が予想していたことを述べる。
仕事以外の日は血は見たくない、などと冗談めかしに付け加えるだろうか。

ギンジョウ > 「ん…そ、そうですね、そうだといいなぁ。
 な、なんていうか…あの人がああなったことに、心当たりがあるので…。」

店主のことをフォローする様子を見て、なんというか、心底優しい人だ…と思っている様子。
なんせもとをただせば自分のせいである。
そこを考えて、今日はちょっと多めに買い物をしておこうと思った。
幸い懐は温かいので…。

「あ、はい…。何から何までありがとうございます。

 んっと、暴力的なものじゃなくて……いや、そうですね、
 とにもかくにも助けていただけてありがとうございます。
 助けていただいたお礼に何かできればいいんですけど…。」

男性の言葉を聞けば、おそらくはいろいろなことで血を見ているのだろうと。
それならば平穏に過ごしている時間くらい、その通りに過ごしたいだろうと。
そう頷きつつ、自分に何かお返しができないかと考え始めて。

アドラー > 「確かに、私も君から『何か』を感じたが。
 深くは詮索しないでおく」

店主の様子がおかしくなったことや彼女と接触した際に感じた違和感。
何かの力で、恐らく彼女自身も完璧なコントロールは出来ないのだろうと予想を立てる。
自分に対し害のあるものではないため、不要な詮索はしないと宣言して

「…?
 お礼か。ではこちらのナイフを買ってもらおうか。」

お言葉に甘えてと言わんばかりに先ほど自分が買おうか迷っていたナイフ指さす。
無骨なデザインながらも匠の技術で仕上がった其れは決して安くはない。
助けたというだけのお礼にしてはやや高いだろうか

ギンジョウ > 「んっ……、そ、そうですか。
 やっぱりそうなんですね…、いや、制御しようとはしているんですが…。」

やはり男性にも感じ取られていたであろう違和感。
しっかりとした淫魔ならば制御できる(けれど制御しない場合が多いだろうが)、
そんな力を持て余し気味なことに苦笑を浮かべて見せる。
そこを不要な詮索と言うあたり、男性はやはり大人だなぁと、
そう感じながら小さく頷いて。

「ええ、もちろんです。
 むしろそれだけで大丈夫ですか?
 お食事くらいならごちそうしますよ?」

もちろんこれも買わせていただきます。
そう言って指さされたナイフを手に取ると、
自分様にもとそれの一回りほど小さいナイフを手に取る。
槍も考えたものの、隠し持つのに不便かなと思ったのでとりあえず今回はナイフのみに留めて、
それらを手に取るとカウンターにいる店主におずおず…と近づいていく。

アドラー > 「特別な力というのも難儀だな」

制御ができない力ほど厄介なものはない。
彼女の場合、様々な場面で苦労したのだろう。
今になって店主の様子や自分の感じた違和感から、女性の正体が段々と分かり始めてきた。

「なっ…君、私が言うことでもないと思うが、金銭はもっと大事に使った方がいい。
 しかし、食事か。この前も女性を助けて食事を奢られたが…ありがたくご馳走になろうか」

太っ腹すぎる彼女に今日初めて驚きの表情を見せる。
というかここ最近、奢られたりお礼をされることが多い。
まるでごく潰しみたいだ、などと思案しながら頭を抱える。

「あぁ、そういえば、自己紹介がまだだったな。
 私はアドラー。アドラー・アリストテレス。王都(ここ)で冒険者をやっている者だ。
 君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」

思い出したかのようにすらすらと自信の胸に手を当てながら自己紹介を済ませる。

ギンジョウ > 「まぁ、体質的なものだから…。
 生まれた時からそうだから、私自身は慣れましたけど。」

そのせいでいろいろ痛い目にも遭ってきたが、
そればかりはもうどうしようもないとあきらめがついてきているところもある。
男性に自分の正体がわかりつつあることもしょうがない…、と苦笑を浮かべている。

「助けていただいたお礼をすることは無駄遣いじゃないと思ってますから。
 それは貴方が優しかったからですよ、お返しをしたいと思わせる人だったからです。」

はい!と、にっこり微笑みを浮かべた。
男性のここの所お礼をされることが多いとの言葉には、
それは良いことをしたから戻ってきているだけだと、
クスクスと笑いながら頭を抱えるさまを見て。

「あ、そういえば…。
 私は最近此処に来たばかりですけど、同じ冒険者です。
 名前はギンジョウ、って言います、よろしくお願いしますね、アドラーさん。」

改めて自己紹介をすれば、ぺこん、と男性に向かって一礼し。
そして改めてありがとうございます、とお礼を言ってから先ほどのナイフを手渡すだろう。

アドラー > 「そうか」

彼女には彼女なりに悩みがあるのだろう。
これ以上は嫌な思い出に触れそうな気がして、淡々とした態度で話を区切る。

「君がいいならいいが、その甘さはいずれ足を掬われるぞ。
 あと別に私は優しくはない。すべて自分のためだが…そこまで言うのであれば、その言葉はありがたく受け取っておくよ」

自分は何かと損得勘定で物事を考えている合理主義者だ。
そんな自分に屈託のない笑顔を向けられるとやや心が苦しい。
あまり考えてはいなかったが、周りの評価は優しいおじさん、といった感じなのだろうかとぼんやり考える。

「なるほど。ここらじゃ見慣れない装い。通りで。
 依頼共闘することがあればよろしく頼む。ギンジョウ。」

彼女につられ、こちらも軽く一礼をする。
ナイフを受け取ると外套の中の鞘にしまい込めば、店の出口を指さし。

「ではギンジョウ。王都を案内がてら食事にでも行こうか。
 美味しい店を知っているんだ。ついてきてくれ」

手招きしながら店の出口へと向かう。
その後は、彼女に王都を案内しながらお勧めの店へ案内するだろうか。

ギンジョウ > ははは、と苦笑を浮かべてしまったのを自覚すれば、
相手に嫌な思いをさせたかなと少し思ってしまって。

「甘いといわれることはよくあります。
 でも自分でやりたいようにして、それで痛い目に遭うならもういいかなって。
 それに、優しいかどうかは助けてもらった側が思うことだと思いますよ。」

男性が合理主義だと思っているならばそれはそれで間違っていないのだろう。
そのうえで、助けてもらったとも思ったし、それを素直に嬉しいとも思った。
だからこそお礼を言うし、お礼をしたいとおもったのだと。

「ええ、その時はよろしくお願いします。」

若干店主の心づけをいただいてしまったことは言うまでもなく。
男性にナイフを手渡せば、自分のナイフを着物の内側に隠すように身に着けた。

「あ、いいんですか?
 また親切にしていただいちゃいましたね。」

へへへ、と緩く笑いながら店の出口へ向かった。
そのまま男性に連れられて、王都を案内してもらって、
最後にお勧めのお店にたどり着けば二人で料理に舌鼓を打ったことだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアドラーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からギンジョウさんが去りました。