2023/08/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にメリッサさんが現れました。
■メリッサ > (────平民地区の大広場。
朝市に昼市と様々な食材や飲食の露店が並ぶ賑やかな場所。
天候に恵まれた晴天、青々と突き抜けるような爽快な空の下で活気のある声が飛び交う。
少し騒々しくも、人間の営みの一部、その熱を感じられるような所。
主君が学院に通う中、食材の調達に来た。
富裕地区に住んでいるとはいえ貴族位としては下の方。
爵位も屋敷も金で購入した。
とある事情で金銭的にも数百年ぐらいは遊んで暮らしても余裕があるけれど、それは資産であり収入ではない。
よって、こういう場で日々の食材を少しでも安く買うのは、従者であるメリッサの義務であり仕事の一部だった。)
「……さて、何にしようか」
(主食となる肉や魚は質の良いものを用意するけれど付け合わせや副菜、スープの下地などは高品質でなくともよい。
野菜もバランスよく取って頂かなくては。調味料も少なくなっている物を買い足そう。
海が近いおかげで塩が安価で手に入るのはありがたいことだ。
そんな風に色々と考えながら、行き交う人々の中を、露店に並ぶ食材を眺めて歩いていく。)
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にセリアスさんが現れました。
■セリアス > 暑さも盛りの昼下がり。
それにも負けぬくらいの熱気で行き交う人々とそれを掴まえようとする声の交わる場所。
店を構えていて来客の対応をするのとはまた違う商売の色を眺めては、
文字通りの市場調査とばかりに脚を進める。
とある魔物の素材は季節柄流通が減っている模様。
とある作物は例年よりも収穫量が良いようで、多く出回っているようにも思える。
そんな風にして周囲を見回していれば、ふと記憶の隅にある姿を見つける。
かつて魔族の国に居た頃に、とある一族の夜会に参加したおりに、
一族筋であるのにも関わらず冷遇といっていいほどの扱いをされていた姿。
ゆえにむしろその家の他の者たちよりも印象に残っていて。
「もし、すみません。ヴァハフント家ゆかりの方では?」
その後のかの一族と、彼らが使えていた魔王の顛末は風の噂程度には聞いている。
魔族の国ではままある出来事ではあるけれど、彼女が記憶の相手であれば詳しい話も聞けるかもしれない。
興味本位がてら、違ってもそれはそれで、と、声をかけて。
■メリッサ > (あれもこれもそれも。購入した品は空間魔法が付与された鞄へと詰め込んでいく。
幸いにも似たような魔導具とかいうものが高価ながらこの国にはあるようで、
元はメリッサの一族が仕えていた収集癖のある魔王の集めた品の一つだが、そうそう見分けがつくものでもないだろう。
便利でいいね、なんて言葉もよくかけられる。
食材を購入し、次の店へと向かおうとした矢先にかけられた声に僅かに双眸を見開いて、振り返る。
束ねた蒼の髪を揺らし、つり上がった紅い目が鋭く、その声の主を見据えた。)
「……どなた様でしょうか?」
(肯定も否定もしないまま、警戒をしながら静かに問いかける。
今は滅んだ一族の名を知っているなら、その男もまた魔族なのだろう。
目線はやや近い、褐色の肌に金髪、同じ赤い目をした黒い外套、整った身形の服装。
しかし、メリッサの記憶にはない相手だ。
流石にこのような場で騒ぎ立てる相手にも見えないので、一先ず様子を伺うように見据えている。)
■セリアス > ふわりと揺れる括られた髪。
こちらを正面から見据える真っ直ぐな瞳。ああ、記憶に違いはないはず、と一方的に確信する。
そう、覚えていたのは冷遇され日陰に追いやられたものが持つ諦めや卑屈なそれでなく。
確固たる自身を保つ瞳であったのだから。
「ああ、これは失礼を。セリアス・ストリングスと申します。
この街で家名を冠した商会を営んでおりまして。人違いであったなら申し訳なく」
胸の前に掌をかざしながら、ゆるりと腰を折り頭を下げて礼を送り。
合わせて家名を出し、今の生業を告げる。
彼女がこちらを魔族だと看破するのなら、かつて交流があった男の一族のことを思い出すだろうか。
あるいはそれすら知ることが出来ない扱いであったなら、自己紹介は半ば無意味なものになるが。
頭を上げながらちらりと自身の赤を相手に向ければ、相手の赤と視線が結ばれるだろうか。
警戒を解こうとにこりと笑んで見せるが、それがどのような印象を見せるものか。
■メリッサ > 「……。メリッサ・ヴァハフントです。
とは言え、本家はもうありませんので、この家名に意味などありませんが」
(確信めいた表情の彼が紳士的な所作で名乗るのであれば、応じなくては無礼というもの。
メリッサもまた胸に手を添え、軽く一礼すると共に名を名乗る。
彼の確信通りにヴァハフントの名を伝えるが、その一族の末路も魔族の国なら知られることも早いだろう。
焦土と化したあの更地と財貨が何一つのこらない空っぽの魔王城を今は誰が取り合っているかは知らないけれど。
セリアス・ストリングス。────ストリングスという家名はどこか聞き覚えがあるが。
一族の交流に関わる相手を知らされることはついぞなかったメリッサには、その程度の認識しかなく。
微笑を浮かべる様子は警戒を解きほぐそうというもののよう。
ヴァハフントの名を知ってどうこうするというよりは、知古の一族であるから声をかけた、というところかと見当をつける。)
「今はただの使用人です。そう接して頂けると助かります。
……ストリングス商会は聞き覚えがあります。確か、平民地区にもお店を出されていますよね?」
(淡々とした様子でそう伝えた後、彼の営んでいる商会というものには興味を示した様子で問いかける。)
■セリアス > 本家は無い。
没落した、他家に取り込まれた、そういった意味ではないことは知っている。
文字通りの「もうない」家の、けれど確かに彼女は生き残り。
なにゆえにそうなったのかも十二分に興味はあるも、先の警戒も見れば一旦は頭の隅に追いやって。
「ぉや、使用人とは。かしこまりました。こちらでお住まいなのですねぇ。
ええ、ええ。こちらの地区の大通り沿いに本店を構えております」
使用人と聞いては、偶さか人間の街に立ち寄った、
あるいは風来坊をしているわけではないのだろうと当たりを付けつつ。
「こちら」と、人間の国のことを指しながら、頷いて見せる。
そうしながら、ちらりと彼女が買い物をしていた露店の店主に視線を向けては、
店先で話し込み迷惑をかけたとばかり礼を向け。
彼女を近くの別の露店の方にと誘うように指先で示して見せる。
男の指の先、果実水を冷やしたものを売っている露店は店先にテーブルと椅子が置かれ、
日除けの布も張ってあり、立ち話よりは幾らか落ち着いて話ができそうで。
■メリッサ > (かの魔王に仕えていた者達、支配されていた者達含めすべてが文字通り"なくなった"。
その唯一の生き残りともなれば、興味が湧くのも理解できる。
けれどその興味を満たして差し上げるほどの関係でもない以上、メリッサが優先するのは主君の身の安全。
それを脅かす者かどうか、警戒するのは必然とも言える。
こちら、が人間の国を指していることを読み取れば、「色々とありましたから」とだけ短く返す。
大通りの店、入ったことはないけれど良いものが揃っているとよく話には聞いた。
折角その店の商会長が目の前にいるのだし、話を聞くには丁度良いかもしれない。
別の露店に促されれば否やはなく。
買い物をした露店の商人に軽く詫びてから、彼と共に移動をしよう。
立ち話より腰を落ち着けたほうが話が捗るのも事実だ。)
「──私は白ブドウを。ストリングス卿は何になさいますか?」
(冷やした果実水にも色々種類があるようで、その中の一つを指さす。
彼にも問いつつ、それを伝えたら、自分の分はきちんと支払って。
そのまま空いているテーブルを取りにいこう。日差しを遮るパラソルがありがたい。
そうして二人、果実水を手にテーブルにつけば、改めて向き合うことになるだろうか。
故郷のことを訊ねられるより先に、話題を固定してしまおうと、メリッサから声を掛ける。)
「お店の評判は耳にするのですが、立ち寄る機会には恵ませんでしたので…。
ストリングス卿のお店では、何を扱っておられるのですか?」
■セリアス > ヴァハフントの一族とその信奉の対象であった魔王は何者かとの争いの末に滅んだ。
他の領地や家が関わった経緯は見られず、闘争の痕があったことだけは解っている。
故に、組織や国などに依存しない何かと争ったのだとは推定され、
その領地は周辺の支配者たちが奪い合って久しい。
経緯に関わる者として彼女が最も色々と知って居そうではあるけれど。
それを問われまいと相手が警戒している雰囲気も察せられれば、少なくとも今は暴こうともせず。
食材を売る露天商の主人に幾らかの硬貨を渡してから果実水の露店へと移動して。
「では、白桃の果実水をお願いします。……セリアスで結構ですよ――メリッサ様。
うちは雑貨商店ですねぇ、何を、と言われると困るほどに色々と。
店頭扱いのもの以外も商会内で賄える商品はありますから、お時間さえ頂ければ最大限ご都合致しますよ」
手早く自身の分の支払いを済ませる辺りに、ついくすりと笑みを零してしまう。
この街で警戒心を盾に行動するのは良き事だと。
相手が話題を振ってくるのには当然逆らうことは無い。
好奇心はかの家、かの領地の事だけでなく、彼女自身にも向けられているのだから。
店員が果実水を運んでくればそれを受け取り、
乾杯、という雰囲気でもなければそのまま一口喉に流し込んで、はぁ、と。細く息を吐いた。
■メリッサ > 「……いえ。今はまだ、ストリングス卿、と」
(此方の一族の事情を知るとは言え年上の異性と思しき相手だ。
その実力もいかほどの物か、メリッサには今はまだ計り知れない。
────というのはやや建前で、主君以外の異性とどう接していいのかわからないのだ。
何せ一族の恥として冷遇されてきた環境下で育ち、主君以外は皆メリッサの敵だった。
こちらに来てからも、交友関係を未だ築けていない。そもそも築き方を知らない。
なので、初対面の異性をいきなり名前で呼ぶ、というのはメリッサにとって非常にハードルが高い行為。
表面上は淡々としているが、要するに異性と相対する経験が乏しいのである。)
「雑貨商……なるほど、それは便利そうですね。
必要最低限の家財は揃えたのですが、まだまだ不足しているものもありますし……。
そう、屋敷では犬と猫を飼っているんです。彼らの遊び道具になるものはあるでしょうか?」
(一口に雑貨と言っても今のところは必要最低限揃っている。
そこから充実させていくなら何から手をつけようかと言う所。
頬に手を当て、真剣に考え込む表情を見せながら、思いついたのは愛犬二匹と愛猫。
こちらにきて、小さな屋敷を購入し、番犬代わりに使役できる犬を二匹購入したついでに、主君が選んだ猫もいる。
彼らの遊び道具などがあればと思い尋ねつつ、果実水を一口啜る。
どうやら、彼の興味が自身に向けられているという自覚はないようだ。)
■セリアス > 彼女の思惑に気付くはずもない男は、呼び方については一つ頷いて了解の意を示す。
セリアスとしては、かつての一族で冷遇され、けれどその滅亡には巻き込まれていない存在。
このくらいの警戒心、慎重さがあった故になにかしらの危険を免れたのだとすら考えている。
あるいはそういったものを回避する異能があるかもしれない。
となれば件の家の零落より彼女への興味はむしろ増して。
美しく抜け目のなさそうな緋色の瞳を眺めながら。
つい、その思惑を探るような、楽しむような、そんな視線を向けてしまいそうになる。
「実際、便利に使っていただいております自負もございますとも。
ああ、こちらに居を構えられたのは最近で? ご用命があればいつでも。
……と、ふむ。犬が咥えても問題のない素材のボールであるとか。
猫が上り下りをして遊ぶキャットウォークであるとかでしたら、すぐにでも。
他も色々とある気はしますが――ぃやお恥ずかしいことに、流石に全ての商品を把握まではしておらず」
家財を揃えた。不足している。
そのあたりの言葉から、王都に来たのはそう以前のことでもないと当たりをつけつつ。
商売のこととなれば幾らか饒舌に語り始める辺りは、商会の主らしい振る舞いとも言えるだろうか。
幾つか商品を提示し最後には困ったように笑みを浮かべながら、
商材の全てを把握しきってはいないとの言葉。
商人としてふがいないとも取れるし、任せるところは委ねることのできる上役とも取れるか。
かつり、かつりと。果実水の入った木製コップを指先でつつきながら、
それでもまだ何か彼女の気に入りそうな提案はできないかと頭を悩ませるような様子を見せて。
■メリッサ > 「ええ、そうですね。この国には、沢山の方がいらっしゃるでしょう?
その中でも国の中枢に近しい親切な方が色々手を貸して下さったおかげですね」
(異性相手の経験不足さを警戒や慎重と捉えて貰えているらしい。
特に強要もされないのであれば安堵する。
親切な方、というのが王国に古くから住む魔族を指すこともわかるだろう。
人間の国で暮らすことを選んだ魔族が頼れるのは、そこに長く居着いている魔族だ。
貴族籍を持ち、金を用意した自分たちに、最低限の爵位と屋敷を用立ててくれたのもその親切な方。
もしかしたら彼も知っているかもしれない。老齢の姿形を取りつつもパイプを多く持つ高位貴族の一人だ。)
「キャットウォーク…それは良いですね。
気に入ってくれればいいのですが、すぐにテーブルに飛び乗ったりするので困ることもあるんです。
種類が他にもあるようでしたら、一度実物を拝見させていただければ。
どこに設置するかも考えたいですし…、主様にもお伺いを立てなくては」
(自由、の意味を持つ名前の猫は本当に自由気ままに屋敷をウロウロする。
犬と違って猫はメリッサの能力では使役することが出来ないので、いつも対応に苦労しているのだ。
彼がメリッサの言葉の端々から情報を取って、推測を立てているとは思ってもみない。
そう言う点が魔族の国の貴族にありながら貴族らしからぬ部分と、無防備にも取られてしまうところか。
だがそこに食いつけば、警戒心が増す恐れもある。
まだ何か悩んでいる様子を見れば、他に何か良い商品があるを思い出そうとしているようにも見える。
商品を把握しきれない程充実している店なら、今度主君と一緒に訪れてみるのもいいかもしれない、と
木製コップを傾けて白ブドウの爽やかな甘味を楽しみ。)
■セリアス > 人間の国とはいえ、王の不在もあってか堕落と腐敗に満ちたこの街には多くの他種族が入り込んでいる。
一見は人間とそれに属するコミュニティの街だが、少し探れば魔族の姿も多い。
もちろんそれを知らない者も、知った上で受け入れる者もいるのだろうけれど。
彼女の言う親切な方、というのが誰かまでは今はわからないが、
後で少し調べてみれば、その相手や彼女がここに居を用意できた経緯も解るかもしれず。
とはいえ、今のところはなるほど、と、一つ頷くに留めて置くのは、
彼女の警戒心――実際は交友経験、対男性経験の不足によるぎこちなさだが――を、考慮してのもので。
「そぅですね、お住いのほうの内装やらと合わせるのに一度、
柄や大きさも見ていただいたほうが宜しいでしょう」
実物を、と言われれば頷き彼女の考えを肯定して。
ヴァハフントの家は魔獣を使役していた一族。
けれど、彼女の言う猫が一般的な人の域での猫だとするならば、
彼女が一族で冷ややかに扱われた理由が、それこそペット程度の犬にしか通用しないからだとはつゆ知らず、
魔獣使いの一族がただの猫に手を焼くという事実につい、くすりと喉を鳴らしてしまう。
それと、話の端に出てきた"主"との言葉。
それが彼女と共に生き残った一族なのか、それとも先の本家は無くなったとの言葉どおり、別の誰かなのか。
どちらにせよ、一族の零落の憂き目から逃れたのには、その"主"も関係しているのだろうと思えば、
果実水を口元で傾ける彼女の豊かな胸元、その左胸あたりに揺蕩うなにがしかとの繫がりにと視線を向けて。
「……では、宜しければ店の方にも是非脚をお運びくださいませ。
使いを遣ってくれれば、そちらに出向くことも致しましょう。
それと――……好き絆に出会われたようで。寿ぎ申し上げます」
かたりと、椅子から立ち上がり、先程の挨拶の際に向けたものよりも丁寧に、
彼女と誰かとの縁を祝福するように深く礼を送る。
少なくとも、その言葉の端に自然と主への気遣いが出る辺り、
かつてのかの一族の夜会で見た時よりも溌剌と過ごしているように見える。
故にその関係性を祝福しながら、それでは、先に、と。
残った果実水を飲み干せば、大通りに向けて立ち去っていく。
何れ彼女の主とも相まみえることがあれば、かの一族の顛末も聞けるだろうかと。
それが無くとも彼女との縁を繋げれば彼女のことを知ってゆけるだろうかと。
そんな風に算用をしながら……。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からセリアスさんが去りました。
■メリッサ > (名前こそ伏せているが、調べればすぐに誰のことか知れるだろう。
少しばかり珍しい品でも提供すれば、屋敷のこと、両親をなくした貴族籍を持つ少年のことも知れる筈。
流石にその少年がかつて災禍を齎すとされた【星喰う獣】であることまでは知る事は不可能だろう。
他に使用人もなく、二人とペットたちだけで暮らしている、ということまでは調べがつくはずだ。)
「ええ、宜しければ近い内、お店のほうに伺わせていただきますね」
(内装に合わせることも大切だと頷きながら、もし彼のお店で用意して貰えるなら助かる。
そう伝えて、改めてお店の場所と名前を聞き、書き留めておこう。
笑みを零す様子に笑いごとではないんですよ、と小さく困ったような微笑をつられて零した後。
退席を示すと同時に、好き絆────と祝福を伝える彼に対して数度目を瞬かせ。
無意識のうちに軽く左胸のあたりに手を当てて。
去り際の彼に「……ありがとうございます」とだけ返礼した。
己を知っているような素振りであった彼からすれば、丁寧な礼にも真摯さを感じ取り、
悪い人ではないのだろうという印象を抱くに至っただろう。
立ち去る姿を見送った後、息を吐く。
突然のことで驚き、一族のことで警戒はしたものの、悪い出会いではなかった。
白ブドウの果実水を飲み干してから、そろそろ主様を迎えに行かなくては、と席を立って。
彼とは反対の、コクマー・ラジエル学院の方へと歩き去っていった──。)
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からメリッサさんが去りました。