2023/01/22 のログ
ご案内:「魔族の国(過激描写注意)」にエリーシャさんが現れました。
エリーシャ > ―――――――― ざく、ん。

掌に伝わる拍動、痙攣、断末魔の叫びに、娘は金色の宿る瞳を軽く細める。
手にしているのは慣れ親しんだしろがねではなく、肉料理を切り分けるときに使われる、やや大振りのナイフだ。
けれどよく磨かれた銀色の刃は、飛び掛かる娘の体重を乗せて『それ』の喉笛に深く食い込み、
どす黒い飛沫が勢い良く噴き上がって、娘の白皙をしとどに穢す。
ぬめる掌を重ね、強張りたがる指先を伸ばし、強く柄を握り直して―――――左から右へと、思いきり振り抜いた。

ざ、しゅっ――――――――――

小気味よい音、ごぼごぼとくぐもった呻き声、力無くのたうつ黒い塊。
それら全てから意識をもぎ離すよう、圧し掛かっていた半身を起こして立ち上がる。
半歩、また半歩と後退り、首尾を確かめるやに見下ろして。

「―――――…… こんなものでも、それなりに使えるのね」

呟いた口腔に、忌まわしき血の味。
半ば反射的に右手を浮かせ、手の甲で口許を拭ったけれど、
恐らく血の汚れは落ちるどころか、いっそう紅く塗り拡げられてしまっただろう。
溜息を吐いて、左手に握ったままの刃を、ぶん、とひと振り。
刃の血曇りを拭うには、とても足りない。
かと言って身につけたもので拭うのは、まだ、躊躇われた。

ここが何処なのか、娘は知らない。
いまの己が果たして虜囚なのか、客分なのか、あるいは別の何かなのか、すら。
獄に繋がれてもいない、出入りを咎められもしていない。
このまま逃亡を図っても、追っ手など無いのではなかろうか。
それでも、この『近場』に留まる理由を―――――娘自身、決めかねていた。

苛々する。
だから、こうして―――――目についたモノを、屠らずにいられないのだ。
低級な魔物の類、これはもしかしなくとも、単なる弱い者いじめではないかと、思いながらも。

ご案内:「魔族の国(過激描写注意)」にラボラスさんが現れました。
ラボラス > 「―――――……間引きは順調な様だ。」

(響いた声は、娘にとって今は、どの様な響きを持つだろう
其処までの気配を欠片も感じさせず、されど、唐突に表れた圧倒する存在感
其れ迄、娘の周りにゆっくりと集って居た有象無象の気配が、其の刹那
唐突に、蜘蛛の仔を散らすが如くに消えて行く、離れて行く

或いはもう、見慣れた姿であろうか。 黒き鎧の巨躯は。
ざり、と地を踏む音すら響く程には、静寂が訪れる。)

「………斬れるなら、ナイフであっても人は殺せる。
突き刺さるなら、釘であってもな。」

(娘が持つ、大振りの肉斬り刃を示して、紡ぐ言葉
この辺りの魔物であれば、充分に過ぎる程の獲物だと告げ

――そうして、近付く。 血の穢れに塗れた娘にも構う事無く。
娘にとっては間合いである筈の距離すらも、容易く踏み込んで
そうして背後より、問うのだ。

『少しは気が晴れたか――』と)。

エリーシャ > いっそ、闇雲に森を駆けて――――― その先に何が、待ち受けていようと。

そんな思考を玩び始めた、娘の神経を逆撫でする、その気配。
僅かに眉間へ皺を寄せ、小さな舌打ちの音を鳴らし、
現状、唯一無二の得物であるナイフを、ゆっくりと握り直し。
鮮血を浴びた黒髪から、ほとほとと雫を散らしながら振り返って、
そこに、予想した通りの―――――漆黒の、巨躯を認める。

その男を定義することばも、娘はまだ決めかねていた。
ただ、仇であるとはもう言えず、けれど、それならば、それでも、なお。
そうして相応しい呼称も思いつかぬまま、血に濡れたくちびるを開くことに。

「―――――こんなもの、どれだけ殺しても、なんにもならない」

知っている筈だ、わかって、いる筈だ。
目覚めてしまった娘が、その衝動が、こんなもので満たされはしないこと。
もっともっと強い、もっともっと大きな獲物を、渇望してやまぬことを。
その男を見つめるとき、娘の紫電の双眸が、より鮮やかな金色を纏うことを。

「わたしが欲しいのは、こんなのじゃ、ない。
 ………わたしが、啜りたいのは…… こんな、まずい血じゃあ、ないわ」

ゆえに、不満はくすぶるばかりである。
不機嫌を隠そうともしないその表情は、しかし、どこか幼い甘えを孕むようだった。

ラボラス > (足元に転がる躯を踏む、骨と肉が拉げる音
最早躯と化した其れが、只のモノでしかないとでも言うかに

血に濡れた姿は、本来であれば他の獣を呼び寄せるであろう
より強き獣を、より強き魔を、其の果てに娘が望む者が招かれたやも知れぬ
だが、其れよりも前に、圧倒する個が訪れて仕舞った
ならば、其れ以上が招かれる事もあるまい

宵闇にも爛爛と浮かび上がるであろう金色を見据えながら
此れまでと変わらず、不機嫌そうな様子を隠さぬなら。)

「―――――……なら、挑むか。
とは言え、まだ幼く弱い貴様では、まだ届かぬだろうがな。」

(――包む事も無く、言葉が投げかけられる。
甘えたな娘を甘やかす――何て遣り取りには到底思われぬだろう
一蹴するかの如くに、まだ、まだ、目覚めたばかりで未熟であると、そう評せば
されど、挑む事其の物を禁じはせぬ。 求め、そして渇望する事を、留めはせぬ。)

「挑め、死線を越えろ。 弱者を踏み躙った所で、得られる物は塵しかない。
――其れとも、蝶よ花よと慈しまれたいか。」

(――娘にとっては、いっそ挑発とも取られかねぬ戯言で在ろう
何を望んで此処に留まって居るのか、其の全てを知って居る以上
だが――歯牙にも掛けぬならば、言う必要もない言葉だと言うのも、確かか)。

エリーシャ > 年頃の少女なら顔を顰めるでは済まないだろう、噎せ返るような血臭の只中で、
己が屠ったばかりの骸から立ち上る、死の気配を踏みしだくように。
佇んだ軍靴の踵を軋ませ、躰ごと向き直った。

娘が望むと望まざるとに拘わらず、次々と寄ってきていた魔物の気配が、
もう、ひとつとして感じられない。
『彼ら』はきっと、素早く身を隠し、逃げ去ったのだろう。
目の前に立つ、この男を恐れて―――――それが、また、腹立たしかった。

「――――――――… 言われなくても、わかってるわ」

まだ、少しも足りていない。
いま挑みかかっても、きっと爪の先ほども及ばず、掠り傷ひとつ与えられない。
男がその気になれば、己などきっと、ものの数秒で―――――
踏み躙られる、小さく、弱く、獲物にすらならない、そんな存在に成り果てるだろうと。

だけれども。

「 、―――――――― 花のように、着飾らせてくれるの?
 綺麗に髪を結って、上等なドレスを着せて、血の匂いを忘れるくらい、香水を振りかけて?
 何もしなくていい、愛でられるだけの花に、……… ふ、ふふ」

面白いわね―――――― そう、吐息で呟いた。
左手で柄を握る刃物の、血塗られた刃に右手を添えて、胸元へそっと翳し。
ただ歩み寄るだけのような、静かな足取りで一歩、二歩と距離を詰めてから、
その刃先をついと、男の胸元へ突きつけにゆきながら。

「―――――…良いわよ、好きなだけ着飾らせてあげても。
 なんならそのまま、夜伽でもしましょうか。
 ……夜更けにその首、掻き切らせてくれるならね」

もう、知っている。
この男がただの花など、求めも、望みもしないこと。
だから半分は嫌がらせのつもりで、半分は、恐らく本気で。
いずれにしても、――――――――――ここから先は、男と娘との、秘めごととなるだろう。

ご案内:「魔族の国(過激描写注意)」からエリーシャさんが去りました。
ご案内:「魔族の国(過激描写注意)」からラボラスさんが去りました。