2019/07/10 のログ
ご案内:「王都マグメール・平民地区(過激描写注意)」にアポティさんが現れました。
■アポティ > 王都、平民地区、商店街に分類される広小路。時刻は午後3時を回ろうかという頃。
午後の買い物タイムに勤しむ主婦、元気に遊び回る子供など、人通りは絶えない。
わいわい、がやがや、賑やかな雰囲気。いつもの光景である。
そんな通りの端っこ、とある民家の壁のそば、立派な作りの樽の上に5つの小さな人影がある。
「ひまー」「あそぼー?」「なにしてー?」「あつーい」「ぼーっとするあそびー」
「それあそびじゃないー」「じゃあ上向いてぼーっとするあそびー」「いいねー」
人形めいた5つのミニチュアが、白い脚を伸ばし、樽の上に並んで座り込んでいる。
その身の丈は各々20cm程度。髪の色はパプリカめいてビビッドな原色だが、5人ともそれぞれ異なる色を帯びている。
丸く大きな瞳も、そして身にまとった単純な作りのワンピースも、それぞれの髪とまったく同じ色。
色の差を除けば、5つの人形はまったく生き写しのように同じシルエットをしている。
背中からは薄くきらめく2対4枚の翅を生やす。トンボのそれに形は似ているが、脈は通っていない。
……その造形、妖精によく似ている。
ぺったりと座り込んだまま、何やら会話している様子。
しかしその声のボリュームは身の丈相応に小さなもので、通りの喧騒に容易く呑まれてしまう。
じっと座っているのもあって、通行人の中でこれらの妖精の存在に気付けるものはそう多くはないだろう。
■アポティ > 「あっ」「……どうしたのー?」「あっ」「あっ」「あっ」
5人並んで座り込む妖精達。そのうち1匹、赤い色を帯びた個体がふと顔を上げ、声を出す。
残る4匹も少し遅れて、ウェーブを描くように視線を上に向けると。
「カラスだ」「カラスだねー」「黒いねー」「こっち見てるねー」「見られてるねー」
通りを挟んで向かい側の家屋、その屋根の上に1匹のカラスが留まっているのが目についたのだ。
逆光をものともせず見上げるアポティ達を、カラスの側もその黒い瞳でしっかりと見下ろしていた。
「カラスとあそぶー?」「それって危なくない?」「死ぬねー」「カラスつよいからねー」「死ぬかー」
「でもヒマなままでも死ぬよー?」「じゃあ死んであそぶー?」「…………あっ」
10の瞳でカラスとにらめっこしたまま、風鳴りのような声で意見を交わす妖精達。
しかし、屋根の上のカラスがバサリと黒い翼を拡げるのを見ると、会話はふと止まり。
……陽光の中、黒い影がどんどんと迫ってくる。カラスはいつの間にか離陸し、一直線にアポティ達に向かってきてたのだ!
「ひぎっ!!」
「「「「……おー?」」」」
鈍色の鉤爪が振るわれ、並び座る小人達の右から2番目、茶色の個体が無慈悲にもカラスの脚に捕獲されてしまった。
爪が食い込み、何本かは白い肌にずぷりと突き刺さる。しかし血は出ない。
そのままカラスは力強く翼をしならせ、茶色を握りしめたまま再び飛び立とうとする。
この間、他の色の個体は逃げるでもなく、反撃するでもなく、ぺったりと座り込んだまま。
「あはははー! つかまったー! じゃーまたねーアポティー!」
「うん」「じゃねーアポティ」「いってらっしゃーい」「アポティかわいそー」
黒い怪物に捕らえられ、空高く連れ去られていく茶色個体。
一人分空いた席を詰めることもなく、残る4匹はカラスの飛び行く先をじっと見つめていた。
……無邪気な笑顔のままで。
■アポティ > 茶色のアポティを捕らえたカラスは、数ブロック向こうの公園に生えたポプラの中へと突っ込む。
そこにヤツの巣があるのだろう。
「アポティ、捕まったね」「食べられちゃうのかな?」「あっ」「食べられてるね」
「左足がとられちゃったね」「カラスのくちばしつよいねー」「どんどん食べられてるよー」
なおも呆然と人形めいて座ったままの4匹。互いに向き合うこともなく、独り言めいて順々に言葉を吐く。
巣に連れ込まれた茶色の様子はここから一切伺えないはずなのに、彼女らには茶色の惨状がわかるのだ。
……それどころか、彼女らの実況に合わせて、伸ばした脚の左側がびくんびくんと激しく痙攣している。
4個体それぞれの脚が、同時に。そしてやがて、痙攣はそれ以外の部位にも伝播する。
「お゛っ」「お゛っ」「お腹もやぶれた」「おっぱいも食べられてる」「早食いだねー」
「アポティおしっこもらしてる」「おげひんー」「アポティ達はガマンしようね」「腕も脚もなくなっちゃったね」
がくん、びくん。人形めいた白磁色の肢体4つが、互いに繋がれたマリオネットめいて規則正しく蠢く。
カラスの巣の中で茶色個体が無惨に喰われていくのに合わせて、その感覚がフィードバックしているのだ。
……そんな凄惨な体験をしているにもかかわらず、妖精達の顔には笑みが張り付いたままで。
実況めいたセリフを吐く声色もどこか楽しげで。
やがて、糸が切れたように、彼女らを襲っていた痙攣がぴたりと止まる。
「終わっちゃった」「アポティ終わっちゃったね」「半分と半分の半分くらい食べられちゃった」
「でもカラスさんバカだねー」「うん」「茶のアポティは『下剤』なのに」「そうだっけ」「そうだよ」
「あのカラスさん、3日間くらいずっとうんちぶりぶりーだよ」「おげひんー」「絶対ちかよりたくなーい」
何事もなかったように、再び空を見上げ、人形めいて座り込みながら小声で語らう妖精たち。
「「「「ひまだねー」」」」
ご案内:「王都マグメール・平民地区(過激描写注意)」にマーナさんが現れました。
■マーナ > 「おー、やってるねー」
カラスが妖精を啄む様子を、手で日差しを隠すようにしながら見上げる。
公園を散歩しながら、もはや夏の風物詩とでもいわんばかりに、妖精の解体ショーを眺めていた。
「さて、いつもならこの辺に潜んでたりするんだけどな」
妖精はだいたいグループで行動する。
それなら、他にもいるかもしれない。…あれが最後の一匹でなければ、だが。
「ほれほれ」
罠を仕掛けるように甘い蜂蜜酒に漬け込んだ桃を数個、ベンチの上に置いて妖精たちが来るかどうか待ってみることに。
■アポティ > 「んっ!?」「んっ!?」「んっ!?」「んっ!?」
くるり。4体の人形の首が同時に公園の方を向いた。マーナが置いた蜜漬け果実の匂いを敏感に嗅ぎ取ったのだ。
公園のポプラに残っている茶色個体の遺骸が、未だ嗅覚を残しているせいかもしれない。
甘い物は大好物だが、それ以上に甘いお酒を好むアポティ達。
ブゥン、と翅を鳴らすと、樽の上から飛び立つ。その様は、注意深く見てなければまるで掻き消えたように見えるだろう。
「おねーさん」「おねーさん」「なにしてるのー?」「おねーさん?」
次の瞬間、4匹の妖精は肩を並べ、マーナの眼前に浮遊していた。
力強く羽ばたく翅からそよ風が生まれ、マーナの前髪に吹きかかる。漢方めいた多種多様な薬剤の香りが漂う。
「ベンチのうえに果物おいてるー」「ばっちぃー」「焼いてるの?」「おりょうり?」
「それとも」「アポティたちをさそってるの?」「会ったことある?」「ないような気がするー」
順繰りに、しかしまったく同じ声色で、4色の妖精たちが語りかける。
■マーナ > すん、と香りがする。漢方の混ざった匂い、樽の木の匂い。生き物の体臭。それが高速で近づいてくる。
ふと、気づけば、目の前に4匹の妖精。
相変わらず人を驚かすのが好きな妖精たちにくすっと笑うと、指先でくすぐるように撫でて。
「食べてもいいよ。今日は、君たちで遊びにきたの」
くすくす笑いながら、まだ容器に入ってる果実を取り出して手のひらの上に。
■アポティ > 「わーい!」「モモだー!」「お酒のにおいがするー!」「ミードだー!」「ミードなのにモモだー!」
赤・青・緑・黄、顔料めいて人工的な色彩を帯びた4匹の妖精達は、差し出された果実にバンザイしながら歓喜する。
そして促されるままに、蜂蜜酒を染み込ませた桃へと殺到し、顔を突っ込んで貪り始める。
ぶちゅぶちゅと音を立て、アルコール臭を帯びた果汁が四方八方へ飛び散る。非常に下品な食べ方といえよう。
お尻を突き出して顔を突っ込むスタイルのため、マーナの側に来た赤の個体に至ってはワンピースの中身が見えている。
真っ白な脚の間に、すっと切れ込むように穿たれた大陰唇の谷間、そして針の穴のような肛門がさらされる。
下着を着用していないのだ。それどころか、実は彼女らが着ているワンピースすら幻術で作られた非実体なのである。
「おいしー!」「おいしー!」「昼間っから酒!」「たまらねーぜ!」
「それでー」「おねーさん、アポティであそびたいの?」「どういうあそび?」「死ぬやつ?」
4匹がかりに噛みつかれ、徐々に徐々に桃の体積が減っていく。それでもすべて平らげるには数分は要するだろう。
1匹ずつ顔を上げては、とくにマーナの方も向かずに言葉をかけ、そしてまた果肉に顔を埋める。