2017/11/17 のログ
ご案内:「山賊街道(過激描写注意)」にティエラさんが現れました。
■ティエラ > 山賊街道。
その名の通り山賊がたくさん現れる街道であり、危険の多い場所である。
気分転換に港湾都市へと出かけて、マグメールに戻る最中であった女。
少し離れた場所で、爆音と閃光を認識した。
そして、そこからもくもくと沸き立つ黒い雲。
何かがあったのは自明の理というやつであり、女はふむ、と考える。
「うん、まあ……うん。」
無視してもいい懸案である。
が、大声あげている盗賊らしき声の中に、女を囲めという言葉が聞こえた。
襲われてるのは女性らしい、それならば、助けに行くに否はなく。
胸元から、大量の符を取り出して。
地面に幾つか罠を仕掛けつつ女は、音のする方へと駆け寄っていく。
「ーー障壁符!矢を弾く壁となれ。
ーー炎避符!炎を避ける道となれ!
ーー金剛符!我が身を金剛のように!」
走りながら防御の符をいくつも重ね、盗賊の前に躍り出る。
「だいじょうぶですか!」
問いかけた瞬間、もちろんのごとく、薄着の女に降るのは矢の雨で。
■レナーテ > 魔法銃で応戦しようとするも、木の幹の両側面に不規則に飛んでくる矢に、顔を出すことは難しい。
どうしたものかと考えつつ、向こうが近づいたところで瓶を使ってひっくり返すしかないかと、次の手を模索する。
山賊達は顔を出させるな、矢を撃ち込み続けろと、こちらを囲む気満々で攻撃を繰り返していく。
「っ……!?」
掛かった声に、地面に付きそうな程身を低くして、どうにか片目分顔を覗かせると、そこには踊り子のような格好をした女性の姿。
見た目から覚える印象とすれば、戦えるようには見えない。
驚きと共に丸くなる瞳、そしてそこに立てばどうなるかと察していく恐怖に青ざめる表情。
守るための符術を敷いているのに気付いていなければ、暴勇といえる無謀さだ。
やっちまえと再び矢が放たれれば、銃を落とし、彼女の方へと飛び出す。
彼女へ飛びつければ、覆い被さるように押し倒し、飛翔する矢から自身の身体で彼女を守ろうとするだろう。
ぎゅっと細腕が抱きしめて縮こまり、矢に晒される面積を狭めようと。
■ティエラ > ここに立ったのは、目的があった。
盗賊と、襲われている側に意識を向けさせるために。
盗賊の意識がこちらに向けば、攻撃の手は緩まるだろう、囲もうとする動きも止まるだろう。
そして、それは成った。
少し予想外の動きもあったけれども。
「あら……ぁ?」
襲われている彼女の方もこちらに来てしまった。
そして、そのまま飛びかかってきている、表情は青ざめている。
そこで把握した。
ああ、自分を護るために飛び出したんだな、と。
飛びつかれて、伸びてくる手をそっと取って、流れるように女は彼女を自分の後ろに隠すように移動させつつ、符を貼り付ける。
「大丈夫よ、私は。
金剛符、障壁符、彼女を守る盾となれ。」
落ち着いた女が、魔術を発動した直後に飛んできた矢は、魔術の盾に弾かれて落ちていく。
「此処にいるのは、貴女だけ?
人数も多いし、逃げましょう?」
矢がはじかれて戸惑ってる今がチャンスだけど?と、首を傾ぐ。
それとも、退治しちゃうけいの依頼とかだったかしら?とも問いかける。
■レナーテ > 飛びついた身体は、そのまま彼女を押し倒そうとしたが、勢いが綺麗に流されていき、反転するようにして彼女の背後に着地してしまう。
握られた手と動きに、瞳を何度か瞬かせている合間に術が働き、矢が障壁に阻まれて地面に転がっていった。
山賊達は新手かと慄き、矢をつがえたまま足を止め、二人の出方を伺う。
「……え、えぇ、今はそうです。逃げれるならそうしましょう…集落まで行けば、彼等も来ませんから。光で目潰ししておきます、瓶を見ないように…」
状況を確かめる彼女に、戸惑いつつ頷くも、逃げるなら今だという言葉に心の乱れが落ち着いていく。
小さく頷くと反対側のベルトに収められた瓶を取り出し、カシュッと音を立てて蓋を捻る。
瓶の注意を促すと、それを放り投げて背を向ければ、再び手を取って走り出す。
背後では強烈な閃光と、視野を白く焼かれた山賊達のうめき声。
転がった魔法銃を拾いながら、集落の方まで一気に走っていくと、安全圏といえそうなところまで逃げたところで、ゆっくりと減速し、彼女へと振り返った。
「助けていただき、ありがとうございました……てっきり、踊り子さんかと思ったもので…失礼しました」
深々と頭を下げてお礼を告げると、顔を上げ、苦笑いを浮かべながら庇った理由を告げた。
とはいえ、改めて見てみても旅の踊り子といった感じしか覚えぬ彼女の姿は、不思議にも思えるほどで。
■ティエラ > 逃走には彼女も理解を示してくれた模様。
では、死にたくないので逃げましょうと提案し、女は彼女の瓶の説明を受けてこくりとうなづいた。
「それなら、置き土産も置いておきましょう。
爆閃符、爆閃符、爆閃符………。
愚かな者が足を踏み込んだら、どっかんとね。」
注意を聞いて、瓶から目をそらして、走り出す彼女についていくついでに、罠の符をいくつかばら撒く。
追っ手が踏み込めば爆発するそれは、追撃防止のために、馬車が充分壊れてくれる威力。
彼女の先導に従いつつ走って走って。
速度が緩んでこちらを見たときには、息を軽く吸って吐いて。
「いえいえ、お邪魔しちゃったんじゃないかしらとも思ったの。
それに、ぎゃくに危険な目に合わせちゃったかもだし、ごめんね?」
苦笑いを浮かべる彼女に、遠目の夜陰では仕方がないことよと、首を横に振る。
「それに、本職は踊り子だから。
副業として、魔術師しているだけのね?」
彼女も、先ほどの道具を見て、魔術に関連するものと思ったがゆえの暴露。
基本的には、踊り子ですよーって言ってます、と女は軽くウインク。
■レナーテ > 置き土産と彼女が仕込んでいった符は、名前と言葉から察するに地雷代わりといったところかと思いつつ、走り出す。
それなら馬車で追いかけて来ても問題ないだろうとは思うも、念には念をと、集落の方へ走っていくと、途中でぶんぶんと手を振った。
遠くに見える石垣状の壁に囲まれた集落の中、見張り台から光の反射が何度か返っていく。
「そんな事ないです…反撃もできなくて、困っていたところでしたから」
ゆるゆると頭を振って答えると、続く言葉と軽いノリにクスッと微笑みながら、ゆっくりと歩きだす。
「副業で魔術師さんですか……。ぁ、遅くなりました。私はレナーテ、そこの集落で戦闘職と、組合長の秘書をしています。助けていただいたお礼がしたいので…ぜひ、立ち寄っていただければと」
自己紹介とともにお礼を申し出たが、少しだけ先日の記憶が蘇る。
お礼と言って嫌な顔をされたこと、それを思い出せば、少し不安げに彼女へ視線をかえし、様子をうかがう。
■ティエラ > 「だったら、良かったわ。
本当は、もっとかっこよく全員薙ぎ払えればよかったんだけどね。
思った以上に盗賊がいてうわ無理だなんて思っちゃったわ。」
あははっ、と軽く笑いをこぼしながら集落にたどり着けば、あらあらと首を傾ぐ。
近くに街もあるのになぜこんなところにと思うものの、口は閉じる。
自分と似たようなものなのだろうな、とそんな思いがあるからで。
「そ、ジプシーといえば判って貰えるかしらね?
私のいたところでは、魔術は迫害の対象だから、表向きは踊り子ってことなのよ。
この国はそうでもないようだし、公言しても良さそうなのはいいわ。」
さきに、副業に関して言ってから、彼女の表情が曇るのを眺めて。
うん、とうなづいた。
「私は、ティエラよ。
先程も言ったけど、踊り子に、魔術師。
得意なのは、モノに彫り込む紋章魔術よ。
あと、そうね、これは言っておいたほうがいいわ。
同性愛者よ。
でも、安心して、だからこそ……レナーテ、貴女の今日の宿と食事ををお礼として受けるけど私からは求めないわ。
嫌がる相手と、しても面白くないし。
信じられないというなら、このまま帰るけれど?
流れ者として、祖国を追い出されたものとして、ここの事は言わないわ。」
女はにこやかに首を傾ぐ。
■レナーテ > 王都や近くの村にも行こうと思えば遠くない距離だが、ここに居を構えている理由は、彼女が思う理由に近くも遠くもないといったところか。
冗談めかした言葉に、クスクスと微笑んでいると、彼女が語る言葉に小さく頷く。
占いやまじない等をしつつ、旅先で踊り子としても稼ぎを得て、生計を立てる人々だときいたことはあったが。
「魔術が迫害……ですか、此方ではそんなことないですけど…珍しいですね」
しかし、魔術が迫害の対象聞けば驚きつつも、表向きに踊り子である理由にも納得がいく。
なるほどと行った様子で納得していると、集落の傍までたどり着いた。
石垣に囲まれたそこは、集落というよりは、ちょっとした砦のような構えであり、門には二人の門番が彼女と同じような銃を携えて立っている。
「ティエラさん、ですね。紋章魔術……魔法陣とかと似たような感じで――」
と言いかけた言葉が途切れたのは、続いたカミングアウトにピシリと身体が固まったからで。
同性愛者、その言葉は意図して此方に意識を向けられたような気がして、落ち着きなく視線が動き回る。
しかし、嫌がる相手にはしないという言葉よりも、信じられるかどうか、それを問う言葉に柔らかに微笑んだ。
「……信じます、ここの国の人はそんな正直に話してくれません。それに……魔法銃を教えてくれた、憧れの人がいるんですけど、その人も女の子で同性愛者でしたから」
だから、それだけで突き放したりはしないと言うように、自身の気持ちを吐き出していく。
そしてベレー帽を脱ぐと、隠れていた垂れた猫耳が顕になる。
尻尾の中で丸めていた猫しっぽも曝け出せば、この国で迫害されているミレー族とそっくりな姿を見せていく。
「この先はドラゴンフィート、竜の足元と呼ばれる集落です。組合長が迫害されるミレー族に、生きる場所、存在価値を知ってもらうために作った場所です。流れ者さんでも歓迎です、守って欲しいのはただ一つ……この中では皆平等、人だということだけです」
同性愛者でも、流れ者でも、その一つを守るなら誰でも歓迎すべき場所。
微笑みのまま、どうでしょうかと軽く首を傾げながら問いかけた。
■ティエラ > 珍しいと納得してくれる相手に、女は軽く言葉を続ける。
「でしょう?まあ……あそこで生きることをやめた時点で、あの国に対して何かを言うことはもうないわ。
そういう国だった、それだけの話。」
面白くなくなる話だし、ここはこれで終わりね?と、自分の国に大しての言葉をやめる。
すごく重厚な石垣、重要なものを守っているとも思えるというか。
戦をしているようねとも、そんな感想を集落の入口を見て考える。
物々しい門番もそのイメージに一役買うか。
「私の中では、紋章術は魔法陣はイコールよ。魔法陣を作れば、それは魔術的な意味を持つ紋章なのだから。
ふふ、可愛い反応。食べちゃいたくなるわ。」
自分のカミングアウトに固まる相手、意図したものだ。
先程の様子から見ても、先に明かしておいたほうがいいと思ったのだし。
微笑み、信じてくれると言葉にしてくれた相手に、こちらも笑みを浮かべる。
「ありがとう、レナーテ。」
信じるということは難しい、彼女を助けたといえども初対面の相手なのだ。
それを信じてくれたのだから嬉しくて、嬉しいから、その信に答えようと、思うのだった。
「ええ。判ったわ。
とはいえ、私はもともと別の国から流れてきたものだし。
ミレー族が、平等という感覚はこの国の人よりもすんなり入ってくるのよね。」
問題はないわ、と彼女に言葉を放って、大丈夫と頷いた。
■レナーテ > 彼女から話を切ってくるなら、それ以上は問うこともない。
言葉の通り、面白くない話だということだが、それよりも彼女が嫌がることはしたくない。
「守るものが沢山ありますから……。っ……」
冗談めかした彼女の意図的な言葉に、ぽっと頬が赤くなり、言葉が途切れる。
基本的には異性愛者だが、同性にそういうことをされたことがあるのもあり、記憶が色々と蘇る中、頬の熱を冷ますことも出来ず、恥ずかしげに視線を反らしていく。
「いえいえ……。ふふっ、ここの国だとティエラさんの故郷で言うところの魔法が、ミレー族みたいな感じなんです」
問題ないと言われれば、満面の笑みで門の方へと誘う。
門番の一人は使い込まれた軽装備に槍を持った中年の男、そして反対側にいるのは、レナーテと同じ年頃の細身の愛らしいミレー族の少女。
男が口を開こうとした瞬間、もう伝えてありますとレナーテが答えれば、それならばと開門を促す。
木製の分厚いゲートが開かれると、中は見た目とは裏腹に賑やかな観光地の様に活気づいた世界。
ミレー族が笑顔で走り回っているのも、このへんでは珍しいことだ。
「ようこそ、歓迎します」
その夜、更に奥にある組合の館へと招待すれば、新鮮な食材を使った料理や酒で彼女を持て成していく。
周りにいるのも、可愛らしいミレー族の少女ばかりなので、癒しになったか、触手を伸ばしたくとも伸ばせぬところにもどかしくなったか。
ともあれ、客間の大きなベッドは心地よく眠れる夜を提供するのだった。
ご案内:「山賊街道(過激描写注意)」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「山賊街道(過激描写注意)」からティエラさんが去りました。