2017/05/01 のログ
■メンシス・パール > 「…」
バレてる。
相手の発言に動揺するが必死に今の表情を保つ。
しかし、自分の身体の事を探れる彼女に対しては無駄な努力だろう。
心臓の動きが、動揺していることを誰よりも彼女に分からせるからだ。
「っ!出した炎は自在に操れるのか!」
意識を後ろへと向ければ、パチパチと木々が焼ける音と共に業火が視界を覆い尽くす。
明らかに指向性を持ってこちらに向かっていくそれに目を見開きながら、剣を構える。
剣に魔力を込め、それを業火へと振り回せば、切っ先から水が出て業火へと降りかかる。
当然、消火するには水が足りず、逆に蒸発してしまうも炎の回りを若干遅め、その隙に危険地帯から脱する。
「厄介だな…クソ、一か八かやってみるか…?」
彼女の方へと再び意識を向ければ、剣を構える。
ジリッと距離を測り、少しずつ相手に近づいていく。
中距離での戦いは不利と踏んだのか、近距離戦に持ち込むつもりだ。
■タマモ > 「不用意な言葉は、相手により的確に近い予想を立てさせる。
妾の予想は当たっておったようじゃな?また、心の蔵が教えてくれたぞ?」
相変わらず、少女はそれ以上の動きを見せはしない。
予想が当たっていたならば、こちらに意識していなければ、繋げる攻撃は向けれはしない。
しかし、もしそれをしたならば…背後の業火が、相手を一瞬で丸焦げにするのだから。
一撃で致命傷を与えられたとしても、己の命が尽きては意味も無い、そんなところだ。
これも予想通りだ、相手は迫り来る業火へと意識を向け、何とかその場から脱した。
繋ぎの攻撃は、当然来ない。
「ふふ…心を読まずとも、先を見ずとも、経験はものを語る。
魔法による攻撃に不利があるならば…次は、接近戦じゃろう。
さて………お主は、これを見て、どう予想をする?」
じりじりと距離を詰める相手に、唯一動かしていた手を、今度は手刀のようにして、軽く上へと向ける。
見せ付けるような動き、その手の先、5本の指の爪が鋭い刃となって伸ばされた。
と、今のところ、こちらの動きはここまでだ。
まず動くのは、相手としているようで。
■メンシス・パール > 「チッ、つべこべうるせぇ!」
自分の動きを全て看破している彼女。
苛立ちを見せるかのように怒号を浴びせる。
頭に血が上り、キレている…フリをしているつもりだが、本人自身が認めないだけでイライラは募っていく。
冷静に、冷静に。そう常に言い聞かせる。
「…クソ」
相手の手、もとい爪が鋭い刃となれば、悪態を着きながらも距離を縮める。
見た目は華奢でも容易に想像できる彼女の内包された力。
手数の多い彼女の方が有利ではあるがそれでも接近戦に持ち込む。
「オラァッ!」
剣を振り上げ、彼女に接近。
そのまま剣を振り下げて頭から攻撃…すると見せかけて地面を蹴り上げる。
地面の土や砂を巻き上げ、彼女にかけてせめてもの目つぶしを行うつもりだ。
■タマモ > 「おや…分からぬか?
語る事により、お主にも平等に予想する見立てを付けさせてやっておるのじゃぞ?
そのお陰で、お主は、妾が心の蔵である程度の感情を読めるのが分かった。
そして、妾の言葉で、背後の音を残してやった事で、背後に迫る業火を教えてやった。
…その程度はしてやらねば、少しでも平等に近付けまい?」
相手の苛立ちも、怒号も、どこ吹く風と平然とした様子。
己の行為が、言葉が、そして今の流れが、相手にそういった感情を湧き上がらせる事を理解しているからだ。
本当に…人間とは、分かり易いものだ、と。
「気を付けよ?妾は人では無いのじゃ…分かっておるじゃろうが。
もしかしたら、お主に害を与えるのは、この爪だけでは無いやもしれぬぞ?」
こちらへ向かい、剣を振り上げる。
先の魔法といい、次を次をの繋ぎを考えてくる相手だ、これにも次があると考えて良いだろう。
だが、それが分かっていようと、どうでも良いのだ。
更に紡ぐ言葉、そう、爪を見せたのは…攻撃がここから来るものなのだと、意識を向けさせる為だ。
剣が振り下ろされる、その瞬間まで、相手の全身を隈なく視線に捕え続けていた。
そして、気付いた、相手の足が本来とは違う動きをした事に。
楽しい…本当に、こうして先を読ませる行動をする相手に、久し振りに会えたのは、楽しい。
きっと相手は意識をしてないだろう…己の九尾が、一斉に動きを見せた。
数本が己の前を覆い、巻き上げる土砂を防ぐ。
そして、残った数本が…勢いよく、相手を吹っ飛ばそうと立て続けに薙ぎ払われる。
当たろうと、防ごうと、相手の体重程度では背後の木々にまで地面に付く事無く届く程に。
ちなみに、業火に覆われた場所は、避けている。
■メンシス・パール > 「だまっ…!?」
特に気に掛けなかった相手の発言。
思えば、冷静に攻撃をしたつもりが冷静になった『つもり』で攻撃をしてたのかもしれない。
爪を携えた相手の手が動くことはなく、代わりに九本の尾が一斉に動き始めた。
自身のこずるい攻撃を全て防ぎ、余った尻尾は全てこちらへの攻撃に向かってくる。
咄嗟に剣を下ろしてガードする。
まともに食らうよりはマシと、ブレブレの体勢で防御する。
当然、ガードは破られて数本の尻尾が彼の身体に衝撃を与える。
「が…はっ…!」
身体がふわりと浮く。
体感時間にして、数秒、宙を浮いたかと思えば背後の木に背を思いっきりぶつける。
ぼきぼきっと鈍い嫌な音が聞こえ、口から血が吹き出る。
「っ…はぁ…はぁ…」
地面にトンと足が着けば、倒れそうになる体を支える。
ふらっと少し覚束ない足取りで体勢を整えれば、口に付いた血を袖で拭き取る。
そして、彼女を見据える。
その瞳は恐怖でも驚嘆でもなく、逆に闘志に満ちていた。
■タマモ > 「常に相手の身に、言葉に、仕草に、注意を向ければ何かしらの違和感を感じられるものじゃろう。
お主には、まだまだそれが足りぬ…要するに、妾とやりあうには経験不足じゃ。
しかし、残念な事に…ここで終わるんじゃがな?」
尻尾の攻撃を受け、吹っ飛んだ相手を見遣る。
思った通り、耐え切ったようだが…何とか立ち上がった程度だろう。
そんな相手に、そう伝えながら、ゆっくりと歩み始め…
「………?」
後数歩、そこで歩みが止まる。
爪を戻した手が、己自身の額に触れた。
「運も、実力の内、か………なるほどのぅ。
世はまだ、お主を必要としておるらしい」
逆に数歩、今度は下がる。
思ったよりも、今日は戻ってくるのが早い…理由はそれだ。
闘志を燃やし、こちらを見据える相手の視線の中…少女は地面をとん、と蹴る。
その姿は一瞬で木々を越える程に上空へと舞い上がり、そのまま、姿を消していった。
■メンシス・パール > 「経験、不足だと…?」
恐らく、何千年もの時を過ごしてきたであろう相手。
その相手と比較するならば、決して埋まらない経験の差がある。
目の前の九尾の少女がこの男に対してそういうのは至極当然であった。
しかし、彼女はそんなつもりはないにしても、彼にはその言葉が自分の人生を否定するように聞こえたのだ。
闘志に燃える瞳を少し伏せ、呼吸を整えるために下を向く。
「…!?」
自分の方にやって来る。音でわかる。
一歩、また一歩と近づいてくる歩みが止まったと気付いたのは、彼女がしゃべり始めてからだ。
意味深な言葉と共に今度は下がった所作をしたかと思ったら上空へと舞い、姿を消した。
「…チッ、認めたくないが、助かった…か」
その場に座り込んで呼吸を整える。
まずは回復だ。と自分の体に手を宛がう。
何故彼女は今の状況で去ったのか、未だに意味は分からないが
ともかく、山中で変な音が鳴ったら不用意に近づかないと心に誓い、治療を開始したのであった。
ご案内:「九頭龍山脈 山中(過激描写注意)」からタマモさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中(過激描写注意)」からメンシス・パールさんが去りました。