2015/12/06 のログ
シャロン > 「互いに素性は割れましたね。そうなると予想はしていましたが――やはり面倒です」

少女自体は魔族の討伐などほとんどしていない――というのも基本生かすからだ。
ただ、彼女が旗下に置いた軍勢全てが彼女の方針に従うわけもなく、彼女が直接手を下さずに、彼女が屠ったと言われる魔物の数だけが増えていった。
という背景があるのだが、其れは関係ないことだろう。少女が魔族にとって敵であることに変わりはないのだ。

「……返すつもりはない、ですか。その場合は、お互いに手痛い損害をこうむることになりますが、よろしいので?私も当分動けなくなりますが、同じように貴方を当分派手に動けなくすることはできますよ――」

この相手には切り札の龍化を切ることも考える。アイオーンを守護していた白龍を身に宿す、秘中の秘。ティルヒアの王女と奇しくも似てしまった力だ。無論、あちらは真の龍であるから少女とは比べ物にならないくらい強靭なのだろう。だが、だからといって目の前の魔王に手傷を与えられないとは思わない。自動修復されるなら、結界を内部から破砕しながら飛び出せばいい。特殊な魔法で温めた生卵のように爆発させるのだ。

「ならば私は、ここから出ると決めました。故に意地の張り合いですが……正々堂々という気はなさそうですね。であれば――!」

自らの中の龍の血を開放する。少女の切り札たる《龍血覚醒 ―アウェイク・ドラグーン―》。それは、体の中に存在するアイオーンの魔力を吐ききる代わりに、魔族の力を大幅に減衰させる結界を生み出す力。空間が燐光に満ちると同時、周囲に召喚された四天王の動きが鈍る。低級魔族では一瞬で浄化されて消滅するような神聖結界。その中にアスタルテすら取り込むと。

「――それでは、今宵は失礼をば。そちらのお嬢さんは責任持って幸せにしてあげてくださいね」

救いの扉のコードを詠唱。同時に少女の姿が光に紛れて掻き消えた。あとに残るのは神聖な結界の残滓。どのくらい魔王の力を縛ったかは分からないが、少なくとも今夜のうちは不自由を強いることだろう。逃げおおせた少女は性への乾きを内に秘めながら、街へと戻っていく。これが憂鬱を司る魔王との初邂逅――脅威を知った瞬間だった。

ご案内:「メグメール街道 平原」からシャロンさんが去りました。
魔王アスタルテ > (噂程度でしか“幼き聖女”の事は知らないので、シャロンが実際に魔族の討伐をしていない、というのはほとんど知り得ない。
 そしてアスタルテは、全く面倒とは思っていないご様子。
 魔王として影響力を強めれば当然有名になり、素性なんて簡単に割れる)

「そこは出来れば、平和的にいきたいところなんだけどなぁ。
 だけど、あたしを憂鬱の魔王アスタルテだと知りながら、脅しにかかる君の気高さは素敵だよー」
(そしてそれは、強大なる魔王を脅せるだけの切り札が彼女にはある事を表している。
 シャロンの言葉的にその切り札は、大きなリスクを伴うのだろう。
 アスタルテにはよく分かっていた、覚悟を決めた強靭な者は何よりも勝り強い事を。
 大きなリスクを伴う能力を発動する際には、それだけ覚悟も必要になる)

「そっかぁ。魔族相手だからかな、君は意地を張っちゃうタイプなんだねー」
(シャロンを可愛がろうとは思ったが、リスクがある切り札まで使うような意地の張り方するんじゃあ、アスタルテもそろそろ『じゃあ、帰っていいよー』とも言いたくなった。
 別に、シャロンを愛でていじめちゃいたいだけで、意地の張り合いとかする気もないからねー。
 そして、それなりにシャロンの実力を認めての判断でもある。

 シャロンは、龍の血を解放した。
 魔族の力を大幅に減衰させる結界が張られる。
 低級魔族程度では、まずこの結界内では耐えられない事だろう。
 それだけの神聖を帯びた結界だ)

(だが、アスタルテも四天王もその結界が張られたて取り込まれたからと言って何かしら反応を示すわけではない。
 なぜなら、元々規格外の力が大幅に弱められたところで、強大である事には変わりないからだ。
 しかし、それは決して無駄というわけではない。むしろ神聖結界の効果自体は、アスタルテ達が規格外の魔族だからこそ並の魔族よりもさらに効いているかもしれない。
 メカルトとスライミーがシャロンに手を伸ばそうとした時、アスタルテは手を動かして二人を制止させる)
「シャロンちゃんがここまでやっているんだから、逃がしてあげようよー」
(四天王にそんな指示を出した後、シャロンに、にこりと笑みを浮かべて軽く手を振る。
 そして闇の結界も、アスタルテの意図的に解除された)

「中々に神性が高い結界だねー、やはりシャロンちゃんは大したものだよー。
 その意地の張り方に免じて、今日のところは素直に返したげるねー。
 またねー、シャロンちゃん。
 この娘の事は、あたしに任せてよー」
(シャロンの姿は、光に紛れて消えていった。
 そして神聖結界の残滓が残る。

 それにしても、まだまだ強大な力は残っていたとしても、一時的にとは言え大幅に力を削られてしまったのには変わらない。
 神聖な残滓がまだ魔王と四天王を蝕もうとする。
 邪悪な魔王にとっては、そんな残滓など邪魔なものでしかない)

(アスタルテから禍々しき暗黒のオーラが滲み出ると、神聖な残滓は闇に飲み込まれていく。
 その神聖な残滓がなくなれば、暗黒のオーラもまた消えていく。
 そしてアスタルテは、村娘へと視線を向けてにこりと微笑む。

 騒動が収まった事により、四天王はその場から去っていき、ダンジョンの魔族達はシャロンに気絶させられた魔物の手当てにあたったのだった。
 まあ、力はしばらく経てば元に戻るし、アスタルテも四天王も少なくとも日常生活を送る上では何の不自由もない)

ご案内:「メグメール街道 平原」から魔王アスタルテさんが去りました。