2015/10/26 のログ
ご案内:「ハイブラゼールの通りの一角」にクロウさんが現れました。
ご案内:「ハイブラゼールの通りの一角」にマユズミさんが現れました。
クロウ > 騒めきは最高潮を迎える。
突如として、刀を持った女が陣痛でのたうち廻り始めたのだ。
それは相当な騒めきだ。
しかし、最高潮を迎えた騒めきは、更にそれを更新する事になる。
いっそそれは、悲鳴であった。

当たり前だ。
その、今にも母親にならんという女が刀を握ったのだ。
何をするつもりなのか。
産みの苦しみに錯乱しているとしか思えぬ女を、何かに気付いたのか数人の者が駆け寄って止めようとする。

そして彼女は、おそらく彼女の人生において最も狂気に満ちた行動を実行に移した。

彼女は気付いているだろうか。
己の臨月の腹を、陣痛の中で刺し貫く事が狂気以外の何者でもないと。

明確に、通りを悲鳴が支配した。

彼女は自らの意志で、狂気を正気にした。

一瞬遅れて、吹き上がる鮮血。当然、彼女の胎から。

彼女の中から、生命が失われていく。
喪失だ。
それがどれほどの喪失感なのか、その実それを見ている男には理解できない。
おそらく、雄というイキモノには生涯理解できぬであろう、圧倒的な喪失感が彼女を蝕む。
悲鳴と共に、娼婦を含むすべての女から向けられるのは、侮蔑と憎悪のまなざしだ。
この中に一体、どれほど「産みたくても産めなかった」女がいる事だろう。

「かわいそうに。」

そんな中、男の声が響く。
喧騒。誰もこの男を見てはいない。
見ているのは女だけ。
しかし男はそこにいる。
声が響く。彼女の脳裏に。

―――同時に。
有り得ない感覚が彼女の胎内に走った。

刺突の傷の痛みではない。
陣痛が、続いているのだ。
明らかに失われた生命が、彼女の中から這い出して来ようとしている。
生命でないものが、彼女の胎から出て来ようとしているのだ。
それがどれほど悍ましい感覚であるか。

びぢゃっ、ぐぢゃっ、づるるっ、

まるで肉を引きずるような感覚と共に、破水。

ブシャァッ!と飛び散るのは、鮮血を伴う羊水。

そしてそれは、確実に這い出して来る。
産みの苦しみは、陣痛の比ではない。

いつしか悲鳴は止んでいる。

長い、長い、永遠にも思える苦痛の末、

―――果たして、それは生まれ落ちた。

『ま、ま……』

有り得ない。
しかしそれは、産声も上げずに言葉を吐いた。そして、彼女へと振り返る。

『―――どうして産んでくれなかったの』

ソレは、彼女が喪った同僚の顔をしていた。
無言で彼女を見つめる群衆と、同じように。

マユズミ > ―――。

喪失。
知った事の無い失った感覚。
己が刀が刺さる痛みなど全く気にならない程の。
今、明確に彼女は一つの命を絶った。
先ほどまでの視線から、明らかな嫌悪と敵意、思いつく限りの負の感情が彼女を刺す。
それすら気にならない程に。
この喪失感は本物で。

「ごめんね……ごめん……ごめん」

ぶつぶつと譫言の様に。
―――もう既に彼女は傍から見れば狂人の類にしか、見えなかった。

制止しようとした人々ですら、後ずさる中。


終わらない。

――かわいそうに。――

響く声は男のもののはずなのに。
それは―――聞き覚えのある、もう聞けないと思っていた声で。

どくん、と身体が跳ねる。

「っ!?」

なん、で―――。

声が出ない程の痛み。

         生命
先程、消したはずの痛み。

「ぁ……ぁ」

膣内から外へ何かが蠢き這い出ようとする感覚。
表情が歪む。
それは明確に、絶望と言う名に塗り潰され始めていた。

「う……ぁ……ぎ……」

上がる声は痛みを我慢するのと同時に。
少しでも楽になるように、尻を突出し、四つん這いになる。
それはひり出す行為と何ら変わりなく。

「ぁ……ぁ……ああああああ!」

一際大きく声を上げれば。

びしゃ、という音。
びちゃ、という音。
破水、そして何かが生まれ落ちる音。

「―――」

前後不覚の後、ただ苦痛に耐え続け。
どれほど経ったかわからない。
身も、心も限界に近づいた時、ふと。
耳をよぎる声。

まま、という聞きなれた声。
どうして産んでくれなかったのという聞きなれた声。

「ぁ……ぇ?」

カタカタと歯の音が合わない。
両手で身体を抱く。
嘘だ。
嘘だ。

―――それは。
聞きなれた、彼女の―――。
相棒とも言えた、既に―――。

「う……そ」

見つめられている。
懐かしくも彼女の相棒だった同僚と同じ貌で。
無表情に。

どうして産んでくれなかったの、と。

「ごめ……ごめ、ん……ごめんごめん……違う、違う……ごめん……」

それは懺悔、譫言。
どちらももう一緒だった。

クロウ > 無念であろうと。
産まれて来る事の敵わなかった命は、さぞ無念であろう、と。
生者は思う。夢想する。
身勝手に。
だって、死んだ者に念などない。
死者は死者だ。
不死者として生き返ったとて、それは生者とは異なる形で生命を獲得した生者に過ぎない。
死者に念などない。
無念であったであろうな、と。
そういった生者の身勝手な、そして当然ともいえる念が、死者の無念を作り出す。
魔物ではなく。
ヨウカイとかバケモノとか言われる、オカルトを生じさせる。

この狂気の世界でそんなモノが生じればどうなる事か。
それは彼女の狂気を混ざり合い、加速度的に形を成す。

かわいそうに、と。その言葉はまぎれもなく男のものだった。
しかし彼女は夢想してしまった。
その人物を。

狂気は、加速し、彼女を捉えて、離さない。

見つめる。
多くの死者が、見つめる。

彼女の身勝手な念が生み出し、そしてここに顕現させた死者たちが、彼女を見つめている。
ただ恨めしそうに。モノ言わず、見つめている。

「貴様が呼び起こしたのだ。」

男の声が響く。
耳をふさぐことも、心を閉ざす事も許さない。
彼女の精神に響く声。

「彼らは、死んでいた。たとえどれほどの無念を抱いて死んだのだとしても。
彼らは、安らかな死という眠りの中にいたのだ。
そこに無念などない。
死者は無念など抱かない。
それを、貴様が呼び起こしたんだ。
あまつさえ貴様はその死者に、またしても死を与えたのだ。」

彼女の目前。
もはや生命など持たないハズのそれはしかし、彼女の目の前で、

息絶えた。

死因は明らかに、刀による刺突傷。

誰が殺したかは、火を見るよりも明らかであった。

「しかし彼らは赦してくれる。
貴様は知っているだろう。彼らがその実、貴様を恨んでなどいない事を。
死者を悼み、その無念を想う事を責めたりなどしないと。
そう、彼らは。
だが、貴様はどうだ?
それでいいのか?
こうしてよみがえった、貴様の身勝手によって黄泉がえり、貴様の狂気によって二度目の死を与えられた彼女を、このまま黄泉へと返すか。
しかし、彼らはもう何度でも黄泉帰るぞ。貴様がその脳裏に彼らを思い描き、彼らの無念を、彼女の死を夢想する度に、彼女らは死と言う安寧のベッドからたたき起こされ、貴様が一度しか味わわずに済んだ圧倒的な無念と、貴様が未だ味わわぬ死の苦しみを味わう事になる。」

悍ましい。
忌まわしい。
言葉が、彼女を蝕む。
いつしかフードを纏った男の蒼い眼が、彼女を見つめ、そして侵す。
呪いが彼女に染み渡る。
本来ならば、そうした死者の無念、己の中にある彼らへの感傷を昇華させる為に、「弔い」が存在する。
即ち、「宗教」だ。
そうやって生者は、彼らと正しく決別する。せねばならない。彼らの為にも。
しかし彼女は引きずった。引きずってしまった。
それが狂気を産み、男に絶望と言う形で突きつけられた。
狂気の先にある絶望を塗りつぶせるものは何か。
狂気の先にある正気という名の絶望を塗りつぶせるものは。

それは、狂気でしかあり得ない。

「だが安心しろ。
―――良い方法がある。彼らに安らぎを与え、貴様も幸せになる方法が。
そして貴様は、もうそれを知っている。
貴様は一度、その幸せを得たのだから。
……産み落としてやれ。今度こそ。彼女らを。」

狂気が、加速する。

マユズミ > ―――気づけば。

「……ぁぁ」

涙は止まず。

周りは知った顔。
一緒に戦った仲間。
一緒に笑い合った仲間。
一緒に死線を共にして―――私だけ生き残った仲間達。
滅びた国の滅びた人々。

一同に、彼女を見つめ、ただ何も言わず喜びも無く、怒りも無く、哀しみも無く、楽しくも無く、ただただ無表情で。

「わたし……が」

がくん、と肩から力が抜け、地面にぺたんと座り込んだ。
それは胸で手と手を合わせれば懺悔する姿に酷似していて。


「ぁ……だ、め……」

今また再度の死を迎えた相棒。
どくどくとあかい水が彼女から流れ落ちつづけ。
それはただの肉塊になった。

―――殺したんだ。

「……」

無言で男の言葉にふるふると首を振る。
赦される訳が無い。
彼らが赦しても―――自分で自分が赦せない。

殺してしまった相棒。
奪ったのは彼女だ。
なら、救ってやらなければならない。

それは呪い。
彼女に課せられた背負うべきモノ。
これから先、永遠と彼女が引き摺り続けるモノ。


そして―――。

知っていると、男は語った。

「―――ぁ」

彼女も幸せになり。
仲間も相棒も皆がしあわせになるほうほう。
知ってしまった。
知っている。
知った。

「あ、は」

嗤う。
くちゅ、と秘所が音を立てる。
準備は出来ていると。
後は―――口に、行動に移すだけだよ、と。
彼女が自分に語りかけた。

加速する狂気は。
矮小な彼女をあっさりと。

狂気から絶望、絶望から正気へと路を辿った、辿り切った、辿らされた彼女を。
狂気へと変貌させた。

尻を突き上げ、濡れはじめた秘所を己で広げる。
粘着質な蜜が糸を引き太腿へと伝う。

「あのぉ……誰でも、いいからぁ♥生まれてくるあかちゃん、ころしちゃったつみぶかいわたしに子種、恵んでください♥はんせいしてるからぁ♥」

それは今まで起きた衝撃を全て塗り潰す現実改変。

そこには先ほどまでの侮蔑を向けられていた、痛ましい少女は居ない。
ただ淫靡に、男の精を漁ろうとする雌が居るだけだった―――。

クロウ > 彼女は不幸だった。
或いは。幸福だった。

男は目前で壊れた彼女を……気に入ってしまった。

自らの手でグチャグチャに蕩けた秘所を広げ、浅ましく強請る彼女。
男は嗤う。
彼女の誘いに群がるのは、人だかり。
二人を、否、女を見つめていた死者の群れだった。
不死者の群れではない。
彼らは生きていない。死者だ。
それが、無言のままに彼女に躍りかかった。
老若男女の別などなかった。
皆一様に、その股座に様々な男性器を滾らせて、彼女に襲い掛かる。

彼女は幸福だ。

彼女は、自らの罪をその胎で清算する術を得た。
快楽に、肉の悦びに身を任せていれば、今この場にいる死者たちが彼女を気持ちよくしてくれる。
しかも、そうして身を委ねていれば、彼女の胎には喪われた彼の人々が宿って、彼女の産道を通ってうつつへと産まれ直すのだ
それはある意味、究極の贖罪。
悍ましく、忌まわしく、最低最悪の狂気の贖罪だった。
彼女の瞳に映るのは、失った仲間。喪われた人々。
それらは死者の貌をしながら、しかし彼女の肉体を求める。
当然、膣だけではない。
肛門も。口腔も。すべての穴を彼らは求めた。
肌にそれをこすりつける者もいた。
手に握らせようとする者もいた。
既に入っている膣に入れて来ようとする者もいた。
それはまさしく、狂気の交わり。

「どうした。一方的に悦ばせてもらうだけでは、贖罪としては弱かろう。
きちんと腰を振り、愛を囁き、懇願し、体中の穴で奉仕するんだ。
それが貴様の望みだろう。」

男の声が、また響く。まぁ、言うまでもない事かも知れないが。
だって彼女は、娼婦として、これまで数え切れぬ程の男を悦ばせてきたプロフェッショナルなのだから。
彼女の瞳に映る現実。
終わらない黄昏の光の中で、懐かしき死者たちに犯され、彼らを産み落とし、贖罪する。
彼女の胎に宿った生命は、驚くほどのスピードで彼女の胎を臨月として、彼女の陣痛と産みの苦しみを与え続ける。
そして産み落とされれば、満足そうに笑い、彼女に『ありがとう』と言って、彼女の乳を飲んで、何処かに去って行く。
産ませた死者もまた、穏やかに微笑んで、光となって天へ上る。
悍ましく、美しい光景。
それが、彼女に見える世界。
現実。

―――そして男が見る世界は。

「さぁ、まだまだたくさんいるぞ、貴様が贖罪すべき死者達は。
それが終われば貴様は……もう罪など背負う事なく、その悦びだけを享受して生きられる。」

男は彼女に言葉をかける。
普通の言葉だ。普通に、口から発せられて大気を振るわせ、鼓膜を伝って伝達される音声。

揺れる大地。
波だ。
波に揺られる、床。
暗く、そして汚くて、磯臭い一室。

男の見つめる先には、夥しい数の悍ましい海魔に嬉しそうに犯される女の姿があった。
夥しい数の、触手が、魚人が、彼女を取り囲み犯している。

―――彼女が産み落としているものが何かなど、言うまでもあるまい。

マユズミ > 「はいっ♥ありがとうございますぅ♥」

膣を貫くその感覚にただ感謝を。
償わせてくれる事への感謝を。

「ん……ぁ♥くちでも、手でも、おしりでも……好きな所、使ってください♥」

仲間だった者たちに輪姦される。
それでも彼女は笑い、感謝を述べた。

「んっ♥もっとわたしに子種、ちょうだい?♥がんばるから、うんで、皆を―――だいすきなみんなを―――」

自ら腰を振り、両手の指で肉棒を弄り、口にも含み、胸に導き、菊門へも導き。
髪も使わせ、使える場所は何処でも、何でも使ってもらって奉仕する。

それが贖罪。

胎が膨らみ、再度の陣痛と生み出す痛みを幾度と無く繰り返す。
そうすれば救いがある、救われる。
痛みももはや繰り返せば快楽へと変貌するのか、ただただ善がる。
笑う。
それは慈愛にも満ち溢れていて。
少女と思えない貌。

―――それが彼女の現実だった。


男の観る現実と彼女の見る現実。

真実はただただ触手と魚人に犯され続けているのだとしても。
今の彼女には映らない。
映るのは己が償うべき、同僚たちの顔。

きっと彼女は幸せなのだろう。

クロウ > しょせん世界など、どこかの偉大なるクソヤロウが見ている夢かも知れない。
己らなど理解の及ばぬ高次元存在の遊んでいる遊戯の一幕であるかも知れない。
故に、彼女にとっての現実がそうであり、己にとっての現実がこうであっても、何ら問題などない。
どちらも現実だ。
どちらが真実の世界を見ているのかなど、誰にも確かめようがないのだから。

異様な数の海魔は、どうやら室内、おそらく船底に当たるであろう部分に空いた大穴から出入りしているようであった。その大穴からは、何故か浸水がなく、まるで海水だけをせき止める場のようなものが働いているようであった。
彼女の肉体は、長い娼婦生活と、度重なる出産で、もはや鍛えられた剣士の面影を残していない。
それもまた、現実。
乳房は、発達しきった乳腺の影響で更に肥大化している。乳首もまた、幾度も海魔の仔に……彼女にとっては再誕した仲間たちに吸い上げられて肥大化し、色素も沈着して変色してしまっている。
腹は、贅肉が余り気味でだらしなく揺れ、それだけではなく全身に脂肪が乗って丸みが増している。それは肥満というより、やはり母性を感じさせる丸みだ。
大量の吸盤のついた太いタコの触手が、彼女の肛門を幾本も貫いていた。ぐっぢゃぐっぢゃぐっぢゃぐっぢゃと、腸液を飛ばしながら蠢くも、吸い付いた吸盤があり得ない刺激を彼女の直腸に与えている。
クラゲの触腕のような大量な細い触手が苛むのは彼女の尿道。本来ならば外部から何かを受け入れるような場所ではないそこを、ぐぢゃぐぢゃといじっている。
口腔を塞いでいるのは、魚人の肉棒であった。鱗に覆われた生臭く、大きな蒼黒い男性器。ヒトのものとは明らかに異なるグロテスクさである。表面には悍ましい突起がいくつも浮かび、しかも絶えずボコボコと泡立っているのだ。吐き出す精液も、黄ばんでいて恐ろしく濃く、そして磯臭い。
そして、膣を犯すのはウミヘビのような触手。それをたどれば、それが男の下半身より生じている事が分かる。
男の下半身は、大量の触手を生やす異形のものへとなっていた。スキュラなどのような、タコの足を持っているのではない。大量の様々な触手が男の上半身を支えているような形態なのである。
そのうち一つが、彼女の膣を貫いている。どう見ても太すぎる代物だ。表面はザラザラしたおり、擦り上げる度に彼女の膣内を有り得ない刺激で蝕む。その先端は、確実に子宮を犯している。あるいは、細い触腕を使って卵巣にまでちょっかいを出しているかも知れない。
ボコボコと、彼女の胎が蠢く。
同時に、ボコボコと彼女の肛門に海魔の卵が注ぎ込まれる。ソフトボール大の卵だ。無数にそれが、産み落とされる。それは彼女から栄養を吸収しながら、育っていく。

「さぁ、その調子だ。もっともっと、もっともっと乱れて雄を誘え。すべての死者が骨抜きになる程に。
そうでないと、貴様などには見向きもせぬ死者もいるだろう。
心当たりはないか?貴様如きでは相手にもしてもらえぬような者もいたろう。
或いは、産まれ直したくとも、貴様のような小娘では満足できんという男も。
妻がいた者もいれば、幼かった者もいるだろう。
それでも貴様は、等しく産み落とさねばならんのだ。さぁ、もっと気を入れろ。」

男が愉し気に言葉を向ける。
そして同時に、彼女の膣内に注ぎ込まれる。大量の海魔の精。一瞬で彼女の内側を染め上げて、胤の袋と化させる膨大な量の吐精。
さて、この異様な、狂気の交わりは、彼女にはどう見えているのか。
男は、まるで彼女に救いの道を示した教祖か何かのように彼女に語り掛ける。
或いは、彼女にとっては、実際にそうなのかも知れないが。)

マユズミ > 「んんっ♥」

既に身体は元の面影は無く、ただ、生み出すものとしての機能だけを有し、ただただ死者の―――海魔の精を受け止める。
それでも彼女は壊れない。
ただただ死者を救い―――海魔を産み落とす。

それもそうであろう。

壊れたものがこれ以上壊れる事は無い。
それは何処まで行っても壊れている以外の意味を持たないのだから。

肛門を蹂躙する触手は―――ただの同僚の好きものの戯れに映り。
しょうがないなあ、と笑いながら受け容れ。
腔内を汚す精液も―――彼女にとっては溜めこみ過ぎで彼女で出すまで我慢してくれていたように映っており嫌悪の一つも無く。
膣を貫く触手は―――心優しく、身体の大きかった同僚の一人と映り遠慮なくいいよ、とそれこそ甘い言葉を呟く。
吐き出されるその卵も痛みすらなく、甘く痺れるような心地よさと快楽だけが身体を突き抜けて行き、そんな最中でも何度でも絶頂を繰り返す。

狂宴、彼女から見れば贖罪の宴。
終わるとも知れない海魔の凌辱。
終わるとも知れない贖罪の行為。

男の声にそうだ、と思い出す。

子供心に。
団長に恋をして。
でも団長はもう妻が居て。
それが彼女の初恋。
終わった初恋。
膣を貫く海魔がその団長に見えて。
一際、その小さな彼女には大きすぎる海魔のソレをきゅっ、と愛おしく、締め上げる。

「だん……ちょうっ♥ずっと、ずっとぉ♥……お慕い……あんっ♥」

愛の睦言。
彼女の敵う筈のない恋。

「ずっと……すきで……あっ♥はげし……♥」

ごぽ、ともはや射精の音では無い音が響き、次に響くのはぼたぼたと吐き出された液が詮をされているのにも関わらず漏れ落ちる。

「だんちょうの……こぼれちゃったぁ♥」

蕩けた顔で泣きそうな顔で。
零れ落ちた海魔の精を物欲しげに眺めた。

クロウ > 「俺も愛しているぞ。ずっと、お前に俺の子を産んでほしかった。それは叶わない。だから、俺を生んでくれ。生まれ変わったら、一緒になってくれ。」

男は口にする。彼女の睦言に対して答える。
それは明確に男の声だ。口調とて、彼女の慕う団長とは違うだろう。
だが、それは彼女にとってどう聞こえるか、分からない。

「もっともっと、お前の淫らな様を見せてくれ。俺を生んでくれ、苦しみを忘れる程に。妻を失った悲しみを、お前のその浅ましい痴態で埋めてくれ。
さぁ、さぁ、産んでくれ。俺を、産んでくれ。」

男の下半身から伸びる触腕が、彼女には初恋の男に見える。
その初恋の男は、彼女に狂気的な愛と願いを囁いて、彼女の中に体力の白濁を吐き出す。
その人外のものとしか思えない、あまりにあまりな精子は彼女の卵子と結合し、着床し、アッと言う間に懐妊に至って、その腹を膨らませる。
そして、触手が抜け落ちると、大量に吐き出される白濁と同時に、再び陣痛が始まるのだ。
かつて恋した男を、彼女は産み落とす。
づづ、づ、と
産道の奥、子宮でそれが蠢いた。
彼女には聞こえる。己が胎内から語り掛ける声が。
『ああ、暖かいよ。もうすぐ産まれられる。狭い。痛い。もうすぐ産まれられる。ありがとう。ありがとう。頑張って産まれるから、お前も気持ちよくなっておくれ。』
それは、彼女が愛した男の声だ。
陣痛の感覚は急速に短くなる。
づづ、づぢゃっ、とそれが這い出して来る。
子宮口が開く。
破水。
ぶしゃあぁっ!と大量の羊水が床を汚した。
産道が広がる。
大きな頭が、彼女の産道をこじ開けながら外へと向かって来る。
彼女がいきみ、そして激痛の中に有り得ぬ快楽に声を挙げれば、それを励みとするようにはい出て来る。

「団長と睦み合うのはいいが、他の死者が寂しがらん程度にな。」

男の声。
出産中だろうと、海魔たちは容赦ない。
口を、肛門を、責め立てる。彼女の直腸に産み落とされた卵が、彼女の中で孵る。
大量の異形の蛸が、彼女の中から、触手と腸の粘膜の隙間をこじ開けるようにしてはい出て来ようとするも、そのうちのいくらかは触手との擦れ合いと吸盤によって生まれぬままに絶命する。

その間にも、産道は広がる。
頭が、膣口から顔を出す。
当然それは、人のものではない。少なくとも男の眼には、立派な海魔にしか見えない。
悍ましく醜悪な海魔。魚のような頭。しかしそのまま産まれて来る胴体、づるづると産道から這い出すそれはウミヘビのようで。
やがて完全にそれが生まれ落ちると、それは彼女の乳房へと向かってゆき、黒く変色したその乳首を吸う。
無論彼女にとってそれは、愛しい初恋の男が再誕して、彼女の乳を幸せそうに吸う光景だ。それが彼女の現実だ。
やがれそれは、『ギャァアア』と世にも悍ましい、聞くに堪えない声を発して、海へと飛び込み、消えて行った。
今、仔を産み落としたばかりで、子宮口までぽっかりと開き切った女の膣には、また別の海魔がその生殖器官を突き込んでいた。今度は、三本同時のようだ。)

マユズミ > 「だんちょうぅ……うれし……♥」

涙すら浮かべて、答える。
それが妻も居る団長が、その場だけの言葉だったとしても。
今は彼女を愛してくれると言う事に変わりは無いのだから。

「はい♥もっと、まゆずみのえっちな所……見てください♥」

既に見られていない所など、汚されていない所など無く、それでも彼女はただ団長の―――団長だと思っているモノに応えようと身体を捩った。

吐き出された団長の精。
そしてそれと同時に始まる再度の痛み。
それは悦びで。

「―――♥」

団長を救える。
それは彼女を更に笑顔にしていく。
荒い息の中、再度の生を迎えた団長。
無論、現実はただ他と何一つ変わらぬ海魔をまた一匹生み出したに過ぎない。
          海魔
それでも生み出された団長が己の乳を吸うのを愛おしく眺め、やがて消え去るのを慈しんだ。

「あっ♥ごめんね……だんちょうは……はつこいだったから」

謝りながらも既に他の触手は、肉棒は彼女を汚し続けており、男の声に慌ててほかのみんなに声を掛けた。
照れくさいような声で。
笑い掛ける様に。

ぐぱ、と開いたままの秘所へ三本の触手が突き進む。

「んっぐ……きつ、いけど、いいよがんばる……ね♥」

ぼこ、と既に下腹部は変形するほどに受け入れ、中でぐねぐねと蠢く。

それも彼女にとっては彼女が看取った彼女を慕っていた自分よりも幼く小さな少年兵達のモノにしか見えておらず。

「焦らないで……ね?おねえちゃんは逃げないからぁ♥」

優しく諭すようにそう呟いた。

クロウ > その場所で、どれほどの時が流れただろう。
彼女は産んだ。産み続けた。
産道は爛れ、子宮は壊れ、それでも尚も産み続けた。
女というよりも、肉。
苗床のように、彼女は死者の仔を、死者を生み続けた。

おぞましい海魔達を、量産して、量産して、量産し続けた。

気付けばその場には他の海魔はおらず、変わり果てた姿の彼女と、男が立っているだけだった。

男は彼女を見下ろしている。

「おめでとう。貴様は贖罪を果たした。貴様はすべての死者を産み落としたよ。
おめでとう。貴様は救われた。貴様はこれで、女として生きていける。雌として生きていける。
もはや貴様に罪はない。
肉の悦びに、快楽に身を委ねて生きていけるだろう。
死者ではなく、生者を産め。孕め。産め。
罪を『失った』貴様には、もはやそれが生きるという事よ。
殖えよ。
今尚、貴様とはかかわりなき場所で喪われている生命は、貴様には産み直せぬ。
だから、新たな生命で以て、この世を満たせ。
貴様は母だ。偉大なる母だ。
誇るがいい。
剣士でも戦士でも騎士でもない。
貴様は女として、母として、この上なく立派だ。」

狂気を誘う男の声。
言葉。
それが彼女をこの地獄に堕とした。
しかしそれは、果たして彼女にとってはどうだったのだろう。
男は彼女を救いに導いた。
その声で、言葉で。
そして、蒼い瞳で。
そして認める。彼女が求めてやまなかったものは、既に貴様の中にあると。そして、彼女を支えていた『罪』はもう失われたと。

「これは証だ。」

彼女の胎に、男の指先が触れる。
臍の下、子宮の直上に刻まれるのは、黒い紋様。

「これは貴様の、母の証。雌の証。これからも、この印が貴様の「母」と「雌」を守るだろう。」

男はまるで聖者のように告げる。
刻んだ淫紋を見つめながら。

ぐにゃりと、彼女の視界で現実がゆがむ。

もし彼女が男に、滑稽で悍ましく忌まわしい事に、この男に謝意を示そうとしても、今はもう敵わない。
急速に彼女の目前の現実がゆがんでいく。めまいのような感覚。
遠くで男の声がする。
彼女はそれを確かに耳にして、そして、新たな現実の前に立った。


―――そこは、ハイブラゼールの通りの一角。
黄昏時、人通りは多い。
彼女が立っているのは、一件の娼館の前だ。
周囲からは喧騒が聞こえてくる。
あの日のあの夕刻と同じ。
否、そもそも、あの日とは今日の事だ。
まるで悪夢から覚めたように、或いは、蕩けるような夢から覚めてしまったように、彼女はそこに茫然と立っていた。

本当に、夢でも見ていたのか。

ふと彼女は、己の身体が重い事に気が付いた。
下を見る。

そこには、臨月に膨れ上がった大きな大きな自らの胎があった。

ぶしゃぁっ!!

それを知覚すると同時に、破水。
それまで微塵も感じていなかった陣痛が急速に押し寄せる。
彼女の胎内から、それは這い出そうとしていた。

現実と現実は地続きだ。

彼女の産道を通り産まれ落ちようとするそれは、『つい先ほどまで』彼女が産んでいたのと同じものだ。
彼女は、どちらの現実を見るのだろう。

着衣に覆われた彼女の腹部には、確かに新しい刀傷と、淫靡なる紋様が刻まれている。

どこか遠くで、刃傷沙汰があったようだ。
その騒めきが、彼女の耳に入ったかどうかは分からないけれども。


「その気があれば、『獣王の誘い号』を訪ねて来るがいい。」


男の最後の言葉が、彼女の耳に残っていた。)

マユズミ > 周りにもう同僚も団長も誰も居ない。

独り残された。
否、元々独りだったではないか。

倒れ、身体を動かす事すらままならない海魔に蹂躙されつくした壊れた少女を見下ろした男の声が耳に届く。
終わったのだと。
全ての罪は洗い流されたのだと。

「―――ぁ」

ぽた、と一粒だけ涙が頬から零れ落ちた。

母になったのだと。
それはどれほど立派な事なのか。

罪はもう無い。
無くしてしまった。
それを受け容れた。

本来この場所で下すべき罪ではないのに―――その罪を今此処で下した。

男の声がもはや肉と呼ぶしかない有様の少女に染みて行く。
狂気を孕ませたその言葉が。
狂気も絶望も正気も贖罪も全て男の思うが儘に。
壊れはしても死なずにやり遂げてしまった。

―――恐らく、そのまま肉塊になれれば、最も救いがあったのかも知れない。

証だと。
男の指が胎に触れぽう、と妖しい光が漏れ、刻まれるのはその証。

次の瞬間、視界が揺れる。

世界が変わる。
戻る?
それは―――。

「―――ぁ」

ビクンと身体が震え、気付けばそこはさっきまで。
……何時かに彼女が立っていた場所。
いや、ついさっきまで彼女が立っていた娼館の前。

辺りを見回せば、騒ぎも何も無い。
そこに居たはずの「誰か」も居ない。
それでも先ほどまで行われてていた贖罪の行為は覚えていて―――。

「っ!?」

ずぐん、と身体に痛み。
さっきまで何十何百と感じていたあの痛み。

陣痛。

「ぁ―――」

破水してまた、生み出した感覚。
だがそれは。
彼女に神通と破水、そして何かを生み出した感覚だけを残し。
何も見えない。
ただその感覚だけが彼女を支配していて。

「……一体……んっ」

次に来るのは腹部に刺すような痛み。
軽く腹部は出血しているようだった。
それは刀傷で。

「―――誰に……?」

覚えがない。
何らかの魔法かで傷つけられたのかも知れないが、一先ず辺りに殺気も無く、ただ不思議に首を傾げた。
そして頭に残る『獣王の誘い号を訪ねて来るがいい』。
という言葉。
これも全く覚えも無く、ただ頭に刻まれていた。


そして最後にやってきたのはピクン、と疼く子宮の直上に刻まれるその証―――淫紋。

「ぁ……」

くら、とする。
熱い。
全身と思考が過熱する。

『どうしました?』

気づけば、先ほどまで娼館の呼び込みをしていた男性が心配して声を掛けてくる。
肩に触れられれば―――。

「ぁ♥」

びくん、と子宮が疼いて。
止まらなかった。
肩に触れた手を掴む。

「ね……おにいさん、私、……ちょっと身体が火照っててぇ……♥」

誘う様に。
初めてとは思えない―――否もう何度もやってきた。
男が悦ぶ事なんて幾らでも―――。
男が喉を鳴らすのが聞こえる。
にたり、と笑う。

「ちょっと看てほしいなぁって♥」

何処かで起きた刀傷沙汰の喧噪に紛れる様に、そう男へ呟くと路地の裏へと誘っていった―――。

ご案内:「ハイブラゼールの通りの一角」からマユズミさんが去りました。
ご案内:「ハイブラゼールの通りの一角」からクロウさんが去りました。