2023/06/23 のログ
ご案内:「平民地区・酒場」にサウロさんが現れました。
サウロ > 【約束待ち合わせ中】
ご案内:「平民地区・酒場」にダアトさんが現れました。
サウロ > 「……? はい、勿論」

(確かに覚えている。そう記憶力は悪いほうではないつもりだ。
 が、彼女の驚きは別の意味があるのだろう。
 サウロ自身にも、彼女のことを覚えている理由はわからないが、
 恐らくは覚えている理由、その原因はサウロではなく、ミレー族であるジャミルの方にあるかもしれない。
 ミレーという特殊な血と能力が関わっているのだろう。それにサウロも影響を受けていると言った方が正しい。
 見つめてくる濃い紫紺の瞳、少女のような顔立ち、彼女のことは覚えてはいたけれど、
 改めて見ればこのような可愛らしい顔立ちだっただろうかと、じっと見つめ返すことになる。)

「なるほど……、それじゃあ、お願いします」

(カードと、その上に置かれた透き通って色付く石。
 彼女の細い指先がそれを転がすのを見ながら、告げられた冗談めかす内容には、
 男としては気恥ずかしいものがあり、笑みを浮かべる彼女に困ったように眉尻を下げる。)

「いえ、そういうのは、あまり……ジャミルにはそっちの方がいいかもしれませんが。
 ええと、そうですね……改めて聞かれると難しいな。……運勢、とか」

(何を占ってもらうかを考えていなかった。
 意中の相手がいるわけでもないし、娼館について女性に占ってもらうのは恥ずかしい。
 金運、あるいは恋愛……どれもしっくりこなくて、結局無難なところに落ち着き──。
 ふと、聞きたい事が浮かんでくる。
 しかしどのように告げればいいのか一瞬迷って、額に軽く手を当てて。)

「……その、……少し体調面というか、身体のことで困ってることがあるんですが、
 それは将来的に解決するかどうか……とかは?」

(病気、と捉えられてもおかしくはないざっくりとした聞き方。
 肉体の変調について、明るい方へ進む展望はあるのだろうか。自然と声を潜めていて。)

ダアト > 「本来……で、あれ、ば
色々、と……準備、する、の、じゃが、な」

占う前にカウンセリングを行い、そこで得た情報から望まれている回答を測り、
それに即した占い結果を告げる。占う前に、大抵伝えることは決まっている。
往々にして占い師の腕とは占いそのものの技術よりそのヒアリング能力や推察力、
観察力が物を言う統計的な技術のことを指す。

「心配事、の、有無……から、当てたほ、うが……それらし、い、じゃろ?
 そう、でも、せねば……信用、せぬ、者、も
 ……多い、と、いうの、も、あるが」

例えば先の男で言えば持ち物のくたびれ具合や愚痴や後ろ向きな言葉の多さから生活が上手く行っていない事が伺えた。
肌や白目が黄色くなり、震えている手にも紅斑等が見られ、息も澱んでいた。
身体的にも金銭的にも許容量を超えた飲酒を慢性的に続けている。
……どんな運が待っているとしても、あのままでは恐らく待っているのは破滅だっただろう。

「……今回、の、これは……文字、通り、占い、じゃ。
 主、の、運気や……流れ、だけを、見る、よう、な……
 強いて、言えば……主、とい、う、船が、今……
 どこを、向い、て、いる、か。
 ……と、いった、所、か。」

とん、とん、と机を指先が叩く。その度にカードの上に置かれた宝石がぼうっと輝く。
青年の言葉を聞きながらゆっくりと机に音を刻んでいた魔女の指先がある一点でぴたりと動きを止め、
暫く卓上を見つめていた魔女は顔をあげて目の前の青年へじっと目を向ける。

「ふむ、中々、に、愉快、な、事に……なって、おる……のか?
 珍しい……訳、では、ない、の、か。この、都、では。」

会話をしながら流れを繋いでいくうちに感じた違和感。
相手と場を繋ぐときの性差とでもいうべき感覚が何処か朧気で
詳細まではこのままではわからないものの、これも困っているうちの一つだろうと推測を立てる。
……可愛らしい顔をしているけれどそれとこれとは別問題として。

「……解決、は、……する、じゃ、ろう、な。
 主、が、望め、ば。
 じゃが……」

ゆっくりと伸ばした先で一枚のカードを捲る。
真っ黒に塗りつぶされたそれは「夜」のカード。
余り幸先は良いとは言えないといった所か。

「戸惑っ、て、おる、と、いった、風、じゃの?」

僅かに首を傾げながら唇に人差し指を当てて思案顔。

サウロ > (ゆっくり、途切れ途切れながらも静かに言葉を紡いでいく彼女の声に耳を傾ける。
 本格的な雰囲気を纏う姿には必然と背筋も伸びて、彼女の手元にあるカードとぼんやりと発光する宝石を見つめ。
 自分が今、どこへ向いているのか。それを見るのだという言葉に、サウロの碧の瞳も真剣になる。
 やがてその白い指の先が、机をたたく音を止め。
 視線が交わる。
 何かを見抜かれたような、見透かされたような感覚があって、秘しておきたいことを明かされたような、
 言葉で例えるのも難しいが、近しい感情で言うなら、"恥ずかしい"、だろうか。
 はっきりと何かを言われたわけではないのだが、無自覚に視線を僅かにテーブルの上に走らせて。)

「……! 本当ですか!?」

(望めば、解決はする。その言葉にハッとして顔を上げるものの、
 彼女が捲ったカードは、明るい展望とは言い難いような黒く暗く、明かりがなければ先を見通すことも難しい夜のカード。
 望めば解決する。
 けれど望まなければ、行くべき道は見えない、ということなのか。)

「それは……、──そう、ですね。正直、戸惑っています……」

(自身の理解の範疇を超える現象だ。戸惑わないわけもない。
 仲間も知っているし、解決する手段を講じてくれている。
 サウロ自身は、受け入れがたい現実だと思っているが、現状、どう解決すべきかも不透明だ。
 小さく息を吐き、軽く腕をさすりながら、申し訳なさそうに苦笑を浮かべて。)

「……良い結果が出れば、少しは、気が紛れるかもしれないと、思っていたところもあります」

ダアト > 「うむ、解決は、する。
 ……むしろ、停滞、を、許さぬ、と、いった、方が……近い、かの。
 然様、戸惑う、のも……当然、じゃ。
 良けれ、ば、もう少し、話を、聞きな、がら、続け、たい、処、じゃが……」

悩める青年からつい、と視線を移すと同時に幾つかの飲み物と軽くつまめるものがテーブルの端に置かれた。
先に店主に頼んでおいた客用の飲み物とその当ては店長の目利きでのチョイスという些かばくち成分を含んだものだが、
恰幅がよく潰れた鼻のひげ面という悪人面だが目利きが上手いのか今の所余り外していない。
持ってきたあとは邪魔しないというのもいい。
これでしばらく邪魔も入らないだろうから……

「……少し、騒がし、い、な」

ぽっ……と小さな音ともに机の端に置かれていた燭台に火がともる。
同時に周囲の喧騒がまるで水底から耳を澄ませているような大きさへと変わる。
音避けの魔道具の一種であるこの蠟燭は地味に人気の高いものの一つ。
それは練り込まれた香りで周囲を安心させる効果もあって……
それを確かめるとフードを下ろし、じっと瞳を覗き込む。
そこに在る道しるべの光を探すようにじっと。

「……悪い、結果、とは……限ら、ぬ、よ。
 確か、に、少々、見目の……悪い、子で、は、あるが、の。
 これ、は、迷う、もの、の……予兆、で、も、ある。
 ……少し、話し、て……みぬか?
 わし、の、他に……聞く、者、も、おるま、い、よ。」

しばらく見つめた後、ふっと笑みを浮かべて手元のカードを数枚とり横に置く。
そうしてまた、一枚、伏せた山札から3枚カードを取り、青年の前へと裏のまま寄せる。
良くも悪くも書く仕事のできなそうな性格の青年と見立てているが
その実直さゆえにどこかで恨みを買ったか、もしくはそれ故に面白がられたか。
どちらにせよ、気をひどく落としているのは確かなので

「先導……という、には……心許ない、がの。
 標、位、には……なれる、やも、しれ、ぬ、よ。」

サウロ > (解決はする、という断言に、暗闇の中に明かりを灯されたような心地になる。
 気付けば店主が持ってきた飲み物やつまみがテーブルの端に置かれて、軽く頭を下げる。
 話しかけるでもなくすぐに戻っていったスタッフの後ろ姿を見ていたら、不意に周囲から音が消えて驚いた。
 正確に言うなら消えたわけではなく小さくなったというだけなのだが、何をしたのかと軽く目を瞬かせ。
 そしてサウロの視界にある燭台が明るく揺らめいているのを見る。
 どうやら魔導具であるらしいそれから香る不思議な香りは、知らず内に凝り固まった緊張をゆっくり解きほぐすようで、小さく、ふ、と息を吐く。
 覗き込む視線と再び視線が合わされば、彼女の言葉に耳を傾けて。)

「……、────迷う者の予兆……」

(事情を話してみないかと言う彼女の言葉に、碧の目が揺れる。
 目の前に裏返したまま差し出された三枚のカード。
 そのカードと彼女を交互に見つつ、少し思案するようにテーブルの上に置いた掌の指を、ゆっくりとまげて拳を作り。)

「……少し、前に。魔族とは異なる、人ならざる存在と、遭遇しまして。
 恐らくは、その時に……原理はわからないのですが、身体が……その、性別が変わってしまう、ようになり」

(何をされたかまでは流石に語れないが、おおよその予想はつくだろう。
 しかし重要なのはそこではなく、何か強大な力を以て性別が転換される術を掛けられたということ。
 ただの肉体だけの変化であれば──それはそれで大問題ではあるのだが──とにかく、
 問題は自由騎士団の活動に影響が出てしまうことである。)

「……────戦えない自分が、……皆の足手まといになってしまうことが、一番、怖いんだ」

(──戦えない。
 剣を握ることも、盾を構えることも、魔法が使えるようになるわけでもなく、それまで培ってきた全てが失われて、
 ただの非力な娘になってしまっている。
 今はまだ、少女の姿になっても一夜を明かせば元の姿に戻れるが、もし戻れなかったらと思うと、
 底知れぬ恐怖が付きまとう。
 それが今、サウロが一番気落ちしている原因だと、落とした視線と沈む声が物語るだろうか。)

ダアト > 「ふむ……それ、は、由々しき、事態……じゃな」

肩を落とし、幾分か沈んだ声でぽつぽつと語る青年の声に耳を傾ける。
恐怖と不甲斐なさの滲む口調にどこかもどかしさを感じるのはこの青年が何かを守るものでありたいという願いを強く持っているからか。
硬く握られた拳がその感情を強く表している。

「暗闇、では……灯が、良く見、える。
 ……寒さ、が、身に……染み、る、時間、でも……ある。
 悴め、ば、道も……見えぬ、じゃろう。」

気丈に振舞う事にも疲れてしまうときがいずれ来る。
そうなる前に見つけられてよかったとどこかほっとしている所もある。
薬師として、そして療術師として聞きたいことは沢山あるけど……
今は占い師の時間。

「……そうじゃな。
 これは、あくまで、占い……に過ぎんが
 主の、星は……幾つか、あるかの」

もう少し聞きたいところもあるけれど、
男性は割と答えを先に告げたほうが良い傾向がある。
ゆっくりと、労わる様に声をかけながら青年の前に伏せたカードを捲る。
捲られた一枚目のカードには花が描かれていた。
廃墟に咲く一輪の花は一見して美しいけれど、植物の知識があるものがあれば
それはとある毒草を描いたものだと気が付くだろう。

「一つ目、は……諦めて、しまう、事。
 諦め、全て、を……受け、入れて、しまえ、ば
 何が、起ころ、うと……その先、へ、進む、事が……出来る。
 変わら、ずに、は……いられ、ない、が、
 ……変わる、事を、受け入、れて、しま、える。」

二枚目を捲る。
茨の中に座る大きな獣が何かを飲み込んでいるような絵が描かれている。
その体にはいくつかの武器のようなものが刺さり、傷跡のようなものも見える。

「二つ目、は……飲み込、む、事。
 主は、その、変化の、枝から……取り、入れ、る、ものを……選ぶ、事が、出来る。
 その為、には……何を、望み、何を、許せる、か、
 主は、枝を、選び……其々、を、剪定、せね、ば、ならん。
 ……恐ら、く、……最も、険し、い、道に、なる。
 美しき、も……醜き、も、共に、見つめ、なお、す、事を……強いら、れ、よう。
 その、過程、で、更に、失う、もの、も……あるや、も、しれぬ。
 そして、三つめ、は……」

三枚目を捲る。
古びた王冠と玉座が金色の線で描かれたそれは
周囲の明かりを受けて鈍く煌めくもその表面はくすんでしまっていて

「その、種、を、取り除、く、よう……抗う、か、じゃな。
 切欠、に、なった、ものを……完全、に、取り除き、元の……お主、に、戻る。
 それ、は、自ら、の、王冠を……取り、戻す……機会、と、なるじゃ、ろう。
 失われ、た、物が……何か、かは、主次第、じゃが……
 拒絶……とは、時に、切れ味、の……良い、宝剣に、も、なる。」

そっと捲ったそれらを見て訥々と口にした後、どこかぼう、と霞の向こうを見るような瞳で青年を見つめる。
きらきらと周囲に漂う光の残滓のようなものがその瞳の中の青年の周りに漂っている事に気が付くかもしれない。
それが魔女から見た青年の姿で……

「いずれ、に、せよ……恐怖、と、向き、合わね、ば、ならん。
 ……騎士、では、なく、独り……として」