2020/08/05 のログ
ご案内:「竜胆の部屋」に竜胆さんが現れました。
ご案内:「竜胆の部屋」にフィリさんが現れました。
フィリ > 「――よ…ぃのでしょぅ、か。…っぃぇ、ぉ姉様が、仰るのでしたら――」

一瞬だけ戸惑ったものの。直ぐに思い直した。
その好意を素直に受け取る事の方が。礼儀的に正しい――というか、血を分けた者として、そうする方が自然だと。考えた為に。
ただ、当然と言うべきだろうか。好意の方には気付いたが、もう一方、悪意…とまではいかずとも。小さな意地悪に関しては。気付けそうにない。
お陰で、矢張り家族の一員である筈だ、という油断の下。後日再び巨狼と邂逅する事になる…その時は。
きっと色々な意味で、悲鳴を上げてしまう事となる筈だ。

「――それ…は、痛み入るの、です。…はぃ。そぅ、思って頂けてぃるというだけで…」

正直、少し不安だった面も有る。
母からは、何かと気難しい為人なのだという事を、再三聞かされていた為に。
同じ屋敷に暮らしている筈なのに、これまで顔すら見る事が無かった…というのも。心配に拍車を掛けていた事だろう。
だが、実際に対面し会話をしてみれば。理詰めのような感こそ有るものの、決して怖い人ではなかった。
寧ろ自分から色々と喋り辛い少女にとっては、てきぱきと要点を掻い摘んでくれるかのような物言いに、助けられている感すら有る。
そのお陰で、此方からはなかなかに話し辛いような事も。それなりに説明出来た…気がする。
当人にとっては珍しい程長い説明台詞。それを一区切り付く所まで言い終えたなら。
それだけで気疲れしてしまったかのように、深い息を吐きながら。漸く紅茶に口を着ける事とした。
…何でも読みたい少女なので、料理本、紅茶の淹れ方、等も頭には入れているかもしれないが。
知識の内容を現実に持って来られるだけの技術が無い為に。素直に、美味しい、そう感じる側に回ろうか。

「それは、何と…言ぃますか。東に於ける言霊、のよぅな…ぃぇ、少し違ぅと思われ…ます。
言葉故ではなく、ぁくまで、竜の言葉故、で―――― ……ぁぁぃぇ。其処は、今は良ぃの、ですね。

――ですが。そぅぃぅ事かも、とは…思ぅの、です。
私は、ぉ姉様方よりも、もっと。竜の血とぃぅのが薄ぃ…ですし…此処までずっと。人の中で育って。
…ちゃんとした、竜としての知識とぃぅ物は。足りなぃの、です。間違ぃ無く。
ぉ勉強――大切、です。矢張り…」

それは、当たり前と言えば当たり前の事。だが同時に、こうして生きる場所を変えなければ、決して解決し得なかった事。
魔法云々と言うよりも。国語的、文化的な事なのだと。改めて、確証を得る事が出来た。
但し、続く言葉には。少しだけ…唇を引き結んだ。

暴走すれば。いや、既に暴走した事が有るという事実が存在し。それが、こちらの屋敷に来た理由の一つ。
だから、どんな物なら。言葉なら。万が一の時も、迷惑を掛け辛いだろう。
大丈夫とは言われていても、どうしても其処には気を使ってしまう。
せめて、直接彼女や自分に影響しない物。考えて、考えて―――― ぽつり。

「―――”calidus”―――」

言葉が向いたのはティーカップ。
……両手に包み込んだその中身、冷めてしまった紅茶が。徐々に温もりを取り戻し、湯気を立て始め。

竜胆 > 『良い』と言ったのだ。巣に財宝を貯め込み、自分のものを手放さぬ『竜』が。それなら、それを持ち帰るべきなのである。
 迷う姿を見せるもすぐに思いなおす姿に、少女は満足そうにうなずいて見せるそれで良い。好意もちゃんと受け取れるのは良い事だ、と。
 狼犬なので、多分純粋な狼ではない筈だ、あと、悲鳴を上げるのはきっと、竜胆がいる時のみ。他の家族はちゃんと止めてくれる―――筈だ。多分きっとメイビ―。

「あら?それだけで、良いのかしら。」

 気難しいというのは、基本的思考が竜に依っているという事であり、人間のそれを、常識をあまり重視していない故に、『気難しい。』
 竜としての思考をすれば、彼女はわかりやすい。竜として出いえば、温厚な方なのである。人を見下し過ぎず、意に介さないわけではない。
 だからこそ、直ぐに気を悪くし、実力行使を行う。竜としての正義の儘に。
 まあ、地雷を踏めば即反撃(物理)という所もあるから、安心しては居られない筈だ、本人は、戯れて行っている程度ではあるが。

 話を戻し、彼女の話を、言葉を静かに聞く女、紅茶を啜る音は響かせず。一言、一言、大事に言葉を、選んで話をする彼女のそれを、聞き入る、理解し、自分の中に落とし込む為に。
 彼女の言いたいことを、考えを、知るために。長くても、それは苦にならない。
 彼女と似通った場所があるとすれば、女も又知識を収集する癖があるから、彼女の言葉も、情報も知識として、経験として取り入れるために。
 彼女の話が終われば、今度は此方が話す番だ、彼女に、教えるために。

「人の言葉も、竜の言葉も―――言葉、というもの自体が、力を持つものよ。
 ただ、ただ。発音がしやすいかどうか、という所、人の言葉は人で発音しやすい、竜の言葉は、竜で発音しやすい。
 簡単に説明すると、そういう事に、なるのよ。
 貴女の喉は、竜の言葉を他の人よりも発音しやすい―――小さなころから、竜の言葉を覚えている、とも言い換えられるわ。

 あと、フィリ、『竜』と言うのは、血で薄まる物ではないわ。
 人と交わって、それで薄まる物ではね、だから……貴女は貴女なのよ?
 竜というものは、どういう存在かを、後でちゃんと調べるといいわ、貴女なりの解釈で良いから。
 そして、貴女が学んだことに、私が付け足していきましょう。
 最初は、その方が、貴女が知りたい竜というものを、知っていくといいわ。」

 こちらから、こういう物だという定義は簡単だ。
 しかし、彼女に関しては、自分で覚える意思がある、自分から求めている。なら、まずは彼女が求めるものを、彼女自身で学んでもらおう。
 ここは書庫だ、本がたくさんあるのだ。
 竜と言う分類の事に関しても、沢山ある、だから、彼女は何を求めるのかを言えば、それを出すのは簡単だ。

「人が、人為らざる力を行使するために作ったのが、魔法、魔術。
 それの多くは、言葉を依り代としている。
 竜の言葉もまた、魔法と同じような力を持つ。

 差は、何処にあるのかしらね。」

 彼女は気を使ったのか、弱い力を紡いだそれは、竜の言葉だ。
 その言葉に呼応して、彼女の掌の中にある紅茶が温まる。
 それを見ながら、姪に言って聞かせる。

「――a――。」

 竜胆の言語、人の耳では聞き取りづらい言葉、人の言葉で、似通ったそれに聞こえるそれ。
 竜の言語で、ぐらり、と周囲が揺れる―――ように感じるだろう、空気と、周囲を揺らした。
 こんな風にしても、大丈夫なのよ?と。一切本が落ちてこない書架を眺めて、彼女に視線を戻す

フィリ > 好意を受け止める事もだが。――後から少しだけ考えてみると。
則した力、適した素養、そういった部分を見極める為という目的も。彼女には有るのかもしれない。
尤も、それならそれで。少女の方も助かるのである。自分で自分の力を把握しきれない、そう言った通りなのだから。
選んだ書物の体系という、何らかの判別基準が付け加えられるのは。きっと自身にとっても有難い。
どんな時でも、少女は頭でっかちなのである。
…という事は裏を返せば。身体を使う方に関しては、からっきしという事であり。
止めてくれる者が居ないのならば、確実に、狼犬によって押し倒される事となる筈だ。…求む、いざという時家族が居てくれる事を。

「――はぃ。それが、初感とぃぅ物なのだと、思われます…ので。
それ以上を望むのは…もっと。知って頂けた後になるのでは…と。はぃ、そぅ思ぅの、です――。」

正直普通の他人からすれば。少女も充分、扱いの難しい性格をしている事だろう。
控え目で、引っ込み思案で、普段は我が儘を押し通すような事も無いのだが…得てして。
当人なりの理屈っぽさという物が、先ず第一に出て来てしまうのだ。
人らしい、竜らしい、というのではなく。寧ろ子供っぽい、自身らしい…という理屈でしかないので分かり辛いが。
彼女のように聡明な存在であれば、直に、一定の法則を見出せるに違いない。
何はともあれ。遠慮しているようでいて、その実、当人なりの考えに則りながら。
理屈と同じく、少女自身の私感等も端々に混じるものの。どうにか、説明したい話は終える事が出来た。
緊張に汗を浮かべ、少し乱れた吐息を。紅茶の香りと甘みとで落ち着けつつ――返答を待って。

「――とても不思議に思われます。…生まれてから、つぃこの前まで。私の周りには、母方――人ばかり、でした。
それでも、私は。竜の言葉…を、前から。…ぃぇ、生まれた時から覚ぇてぃました。最初から在ったの、です。
…薄まる物ではなぃ、というのは。そぅぃぅ事なの――でしょぅか。私も、ちゃんと。ぉ母様方と、同じなのだ――と。
自身を識るのも。自信を持つのも。難題ではぁるの、ですが…とても。とても大切、です。どぅやら。」

言われてみれば。何処かで納得する自分が居たのだろう。こくんと小さくだが頷いてみせる。
竜としての血が薄いという認識は、言い換えてしまえば、竜としては不完全だという自覚に他ならない。
そして完全ではないのなら、竜の力を御する事が出来無いのも当然なのだと――心の何処かが決めつけているのだろう。

だから。自分自身を含めて、そもそも「竜」とは如何なる存在や事象なのか。
彼女の言う通り、それを識る事は重要だ。解らないから信じられない。信じられないから力及ばない。
勿論、それだけで全てが解決出来るとは思わないものの。最初の一歩として、これ以上の物は無さそうだ。

「―――― …………!!」

そして。彼女の使ってみせた言霊は。
同じようで、けれど、圧倒的な差を有していた。
大気その物を揺さ振り、震わせ、けれどそれ以外には被害を及ばせない。
言ってみれば物理的に震動を発生させたのではなく。空気という存在その物への干渉。
言葉次第。同時に、発想や認識次第――「どうするか」、「どう出来るか」の。
驚愕と興奮に染まる頬を隠せないまま、向けられた視線に対し目を耀かせて。

「――そぅ、ですね、魔法とは似て非なる――其処に、囚われすぎてぃまし、た。
どれだけ異なっても、基幹に、言葉が在るの…でしたら。もっと言葉を識る事も、きっと――

――――っひゃ、 ぁぁっ!?」

知識欲の爆発が、思わず前へと身を乗り出す程、少女に行動力を与え…きれなかった。
途中で思わず悲鳴を上げてしまったのは。
手にしたままのカップ、「温かくする」という言葉が、その役目を止める事なく継続し…
思わず手を離してしまいそうになる程、飛び上がりそうな程、紅茶を熱しつつあった為。

掌には包めず、持ち手ばかりを指先で摘んで。ぷるぷると震わせつつ。
どうしよう、どうしたら、と。彼方此方意味もなく見回して。

竜胆 > 識るという事は大事な事だ、知るから、判るから、その力を十全に発揮することができる。
 それは、どんな事だってそうだ、彼女は知りたいと来たのなら、まずは、その彼女の事を知らねばなるまい。だから、竜胆は彼女の事を知る為に、見る、聞く、問う、探る。
 彼女自身を知り、彼女の求めを知れば、その先を促すための知識を持つことができるのだろうから。
 肉体の動作に関しては、竜胆もそれほどではない、人の限界程度―――竜としては惰弱、そして、望んで運動はしていない。
 姉よりは動ける、と言う程度である、それも本能的な物で、運動方面であれば、妹や、彼女とは別の姪達、もしくは義姉の方がよっぽど上手であろう。
 腰を振る運動以外なら、にこやかにそっちを案内する。絶対。

「―――そう?……そう。」

 彼女がそう言うのであれば、それで良い。興味というもの以外に食指を動かさないのは、彼女も、己も同じ性質と捉える。
 彼女の中の大事な物、大事な事それが、彼女(フィリ)の中では優先される。竜胆だって、自分の中の大事なものが優先される。
 つまり、其処に突っ込みを入れても仕方がないという事だ、自分の中の大事なものは、自分にしか判らない。
 今はまだ、彼女を知る為に、追及をせずにおく、これがもう少し分析できてくれば、別のアプローチなどのの追及を始める筈で。

「そ、フィリは、確かに竜であるわ。だから、竜の言葉が判るし、話せる。そして、人でもあるわ、人の言葉を、聞いて、話せる。
 ただ、人の言葉を先に覚えた、それだけの事よ。

 フィリ、人には、先祖返りというものがあるわ。よく聞くのは、先祖に神や、魔族とつながった人がいて。薄まっていたと思って居た血が、強く現れる現象。
 ―――血が、薄まるものと考えれば、ありえないわ?だって、色々な血が混じって、いる筈。
 だから、血で物を考えることでは、無くてよ。
 もし、血がつながっていなくても、貴女は、リスと、あの母君の、娘、なのよ。

 それと。自分を知るのは兎も角、自信なんて、持たなくてもいいのよ?自分を信じたくないなら、信じなければ良い。
 信じなければ、それだけ慎重になれるわ?自分の行動に対して。
 むしろ、自信満々な方が、考えなしに行動して、周囲に面倒ごとをまき散らすのだもの。」

 彼女は、不完全ではない、そもそも、生物は完全不完全で考えるべきものではない。潔癖なものが陥る思考だと竜胆は思う。
 だから、血に拘る事は大事でも、それに縛られない方がいいという話を。
 あともう一つ、自信に関して。
 自分を信じることは良き事だと人は言う。本当にそうなのか?女は常々思う、自信を持てと言う人に、問いかけたく思う。
 大事な所での決断力になるのは確かだ、しかし、自分を信じるのは十全に自分を理解して、出来る、出来ないをしっかり見極められる人がするものだ。
 根拠なく、自分はこうだから、と言う自信は、良くない。だから、自分を信じるな、と最初に伝えた。

 それと、彼女の指針になったようだ、竜と言う存在に対しての問題定義。
 ちょうどいい、自分も彼女と共に、経験を蓄積することにした。

「私は、竜としての種族はバハムート……トゥルネソルの家では、竜神とされる種族。
 特性は、波動操作。波を―――海の波ではないわ?世界を波打たせ、それを操るのよ。」

 母は、海竜リヴァイアサン、海の王、妹はテュポーン。台風をはじめとする風の竜。
 どれも違いは在れど、波に関係する竜である。リスは―――実は未だによくわかっていない。なんなの有れ、と、未だに一族全員から言われる。
 純粋な空気だけの揺らぎならば、妹の方が優れている。が、竜胆の方は汎用に長ける。ありとあらゆる波を、操るのだ。

「……もう。『frigus』」

 彼女の言葉、熱を産むために作った言葉、それと同じ言語、逆の意味を紡ぐ。
 普段の自分のそれではないが、彼女に一番わかりやすく、行う事が出来る筈。
 自分で起こしたことの対処法ぐらいは、ちゃんと覚えましょうね、と。

 先の言葉の通りに、止めて見せた。

フィリ > 何一つ識らなければ、何一つ出来ない。一つ識れば、其処から次々に出来る可能性は広がっていく。
だから、識る事は大事だと。少女の側も、きちんと其処を認識している。
差し当たって自身が、先ず優先して識っていかなければならない事は。自らを含めた、「竜とは何ぞや」という所からか。
この屋敷に来る前には、それこそ、人間達のお伽噺やら。生物学上の話やら。そういった第三者視点での知識しか得られなかったが。
此処ならばそれはもう、周りに住まう殆どが竜の側なのだ。身を以て色々と知識を得ていく事が出来る筈。
勿論、ただ一つだけ学べば良いという訳ではない。その他に関してもまた、目の前の叔母に頼る事となるのだろう。
生物としての運動機能やらについては、彼女の妹の方が良い、という点に関してだけは。言われるまでもなく、噂話だけで同意するものの。

――ちなみに、少女の方の、「そういう」事情については。あの親達にしてこの子在り、そうとだけ言っておこうか。
もしかすると興味やら嗜好やら。そちら方面でお互い、語り合える部分が出て来る…そんな可能性も。無きにしも非ずだが。
流石に初対面の本日中に、踏み込み過ぎた話題に移る事は無い……筈だ。きっと。
アプローチとして有効である事は間違い無いのだが、先ずはそちらに触れる切っ掛けという物が。出て来ていない訳で。

「――これは。リスぉ母様ではない、ぁちらのぉ母様の言葉なの、ですが。…生まれよりも。生まれたその後、生き方を考ぇて欲しぃと。伺ぃました。
違ぅ意味も含まれるの、でしょうけれど…ぉ姉様の言葉通り。血に、囚われすぎなぃ事も。言葉の中には在るの――です。きっと。

…そして、ぇと、そこは…何とぃぅべきなの、でしょぅ…?
自信とぃぅより。自覚――とぃぅ方が。良かったのかもしれません。
知り得た、自らが何なのか、とぃぅ…事を。忘れなければ。何が出来るかも、考ぇてぃけるかも…しれません、ので。」

訂正を受け。うぅん、と声に出して唸りつつ。
それこそ、先の力が、竜の物であるのだと。…竜とはそういう事の出来る存在なのだと。
枠組みや範囲をきちんと自覚する事は。自然と、自制や制御に繋がっていく事だろう。
…御する事が出来て初めて。其処に自信を持つべきだ。彼女の言う事は、制御しきれていない身として、痛い程良く解った。

なので、もう少し自分なりの考えという物を、自覚と自戒も込めて言葉に置き換えつつ。
次なる講釈が始まれば。当然、人の中では聞ける筈も無かった知識に対し。目を丸くして。

「――たくさん。種類が存在するの、ですね。…当然と言ぇば当然なの、ですが。
…リスぉ母様、ぉ姉様、もぅ一人のぉ姉様――私にとっての、姉様方。皆が皆、姿も違ぃます。…そぅではなぃか。思ってぉりました。
其処もまた、ぉ、――、……っ…ぉ聞かせ、願ぃたぃの……っ、 っ、ですが……ぁっ…」

世界の波動。正直を言うと、現段階の少女には、話の規模が大きすぎて。何処まで出来る力なのか、把握しきれないものの。
それはきっと、大きな力なのだろう。それこそ神の名を冠している程なのだから。
竜の種類。最初に思い浮かべるのは、竜の母だ。そしてダイラスに暮らす祖母や、目の前に居る叔母達。
…少女にとって異母姉と呼べる二人は。更に違う血も混じっているから、また見た目からしても複雑だが。
血について、種について、興味が尽きないものの。途中で加熱の暴走が起きた為に、すっかり動転してしまう。
中途半端に腰を浮かせ、ぐらぐらと沸騰すらし始める紅茶を、どうしたものかと持て余し――

それを。矢張り、止めるのも彼女だった。
対義語というシンプルな形で紡ぎ出された竜の言葉は、だが。茹だった紅茶をあっという間に冷ましてしまう。
力量の差。技量の差。…同時に、きちんと使いこなした場合の具体例。
とてもとても解り易く、見せ付けられて。しばし、ぽかんと見入ってしまうのだが。

「――、――ぉ…ぉ姉様、ぁりがとぅ御座ぃ――ます。
こぅすれば。こぅ出来れば。…百聞は一見に如かず、です、から…っ。」

そろそろと慎重な動きで、ティーカップを机の上へと戻した後。
目を耀かせ、伸ばした両手はがっしりと。彼女の両手を押し抱くように。
うっかりこのまま。違う意味でのぉ姉様に認定してしまいかねない、そんな勢いだった。