2020/07/27 のログ
フィリ > うむむ、と小さく唸りながら。首を傾げはするものの。
結局何を「される」のかは聞きそびれた…というか。部屋に書物に意識が向いて、聞く機会を逸してしまった。
…後日、巨狼によってその時が訪れたなら。屋敷の中庭辺りででも、小さな悲鳴が上がる事となるだろう。
――ただ其処に。これから語る「術」の暴発が加わって、屋敷に被害なり騒動なりを巻き起こす事となるか否かは。
彼女とどう関わっていくかに掛かっている。きっと。

「――そぅ、ですね。とても惹かれてぃる…と、思われます。
…私の触れたぃ物の中には。…文字を、言葉を、残してきた方々の…知識も。技術も。…色々有るの、で。
私はまだまだ。何も、知りません。書物、とぃぅ形になったそれ等に。惹かれて、惹かれて――堪りません。

…も、もちろん、その…好きなの、です、から。…邪険に扱ぅ事は、ぃ…いたし、ません。約束で…す。」

無意識に。手近な書物に意識が吸い寄せられる。…が、ひょっとすればそれも偶然ではなく。
彼女のいう危険な魔導書に、引き寄せられる感覚だったのかもしれない。
びくんと肩を強張らせると。そろりそろり、まるで眠った虎の前でも通るかのように。音を立てない仕草で、彼女へと向き直す。

「――…?ぃ…けなかった、のでしょぅか。…も、もしかして、先約が…?
っぁ、の、ぁ――は…ぃ。……ぉ言葉に、甘ぇさせて…ぃただきます――」

例えば暖炉の前に寝っ転がりたがるかのように。このスペース、巨狼の専用だったのかもしれない。
そう思い付けば、ぱ、と慌てて立ち上がる。
寧ろ彼女のような人物に謝罪されてしまうと、どうして良いのか解らなくなり、両手を顔の前で振るように。
…ともあれ、椅子と紅茶が用意されるなら。大人しく、其処へと座り直す事にした。
空間その物を操ってしまうような人なのだ。椅子が飛んでくるくらいでは驚いていられない。多分。

「――其処は、何と言ぃますか。…とても、恥ずかしぃのですが……自分の一部、です。
それを、どぅにも出来なぃと…ぃぅのは。それこそ、物心のつかなぃ、子供のよぅに、感じます…から。

…何がと言われると。…それすら答ぇられなぃ、不甲斐なさにつまされます。私は――」

正直、「力」を封じるという事も。一度くらいは考えた事が有った。
だが封じるという選択肢は、現実的ではないと。既に、かなり以前から結論づけていた。
そもそも封じるというのも、それはそれで、制御するという行為の中に含まれるだろう。
他者に封じて貰うのではない、自分自身でそうするというのなら。それはもう御する方がずっと良い。
周囲や他人に対しては、子供らしく夢見がちなようでいて。自分自身に対しては割とシビアに考える。
それ故の判断と結論を、頷きと共に伝えてから…

そこから先。折角の紅茶が冷めてしまうくらいの時間を掛けて。訥々と、だが切々と、少女は語る。
人語とは異なるその「詩」が、言葉の意味をその侭、現実に変えてしまう事を。
例えば…もし先程の巨狼に対し、彼女のフォローが間に合わなかったのなら。
「離れて」と上げてしまう悲鳴が、巨狼を物理的に吹き飛ばしていたか。同じように何処ぞへ転移させてしまったかもしれない。
そういった属性やら分類やらの何も無い曖昧さ故に。ますます、自らの知識では掴みきれないのだという事を。

竜胆 > 「それなら、帰りがけに、気になった一冊を手に取ってみなさいな。その本を見せてもらって、大丈夫であれば、それは貴女のものよ。」

 首を傾いでも、質問にしなければ竜胆は言葉を放たない。だから、彼女がそれを知るのはきっと先に事になるはずだ。
 その時がどうなるのか、わくわくしている竜胆はとても、とても、とても、底意地が悪い女なのである。
 魔導書に関しては、縁というものがあるので、この中で惹かれる本があれば、偶然でも手にした本があれば、それは彼女との縁があるはずだ。その魔法を覚えることが彼女にとって、何らかの切欠になるのだろう。
 本に関して、並々ならぬ思いを伝える彼女に、そんなプレゼントを一つ。先ほど一冊の何かを気にした事を見ている。


「いいえ、客を招いているのに椅子を用意してないのは、落ち度、でしょう?
 貴女は大事な姪なのだから。先約とかそういう物ではないわ。」

 彼女に、説明をしておく、彼女を呼んでいるのに、椅子を用意してなかったのだ、と。それは竜胆なりの謝罪でもある。
 彼女が悪いわけではなく自分の準備不足だ、と言うだけで。
 紅茶に関しては、ちゃんと一流の茶葉を使っているけれど――家に住んでいるなら、メイド長シスカちゃん(13歳)にかなわないのだ。
 それは諦めて欲しいという竜胆だった、あの娘は紅茶の天才だ、と。

「…………。」


 彼女のたどたどしい説明を静かに、聞きこむ、喋るのが苦手な様子なのに、それでも、とゆっくり、時間をかけて彼女は説明をする。
 彼女の言葉を聞いている間、静かに紅茶を啜り、瞳を閉じたままで。
 話を終えてから、竜胆はソーサーにカップを置いて見せる。

「竜詞<kotoba>ね、竜の言葉。
 竜は幻想種の主と言える存在で、魔力を持つ存在、彼らの言葉は力を持っているもの。
 竜の言葉は、そのまま魔法となる……竜としての言語をちゃんと覚えれば、制御できるわ。
 中途半端に言葉を把握しているから、不意に出てしまう。

 知っている単語を、言ってみなさいな?
 大丈夫、この部屋はその程度で破壊できるようなものではないし、貴女の竜の言葉を、私が消してあげるから。

 暴走なさい、暴走すればどうなるのか、見を持って覚えなさい。
 その恐怖をしれば、貴女は一段先に行けるでしょう?」

ご案内:「竜胆の部屋」からフィリさんが去りました。
竜胆 > 継続します
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