2020/07/26 のログ
ご案内:「竜胆の部屋」に竜胆さんが現れました。
ご案内:「竜胆の部屋」にフィリさんが現れました。
竜胆 > トゥルネソル家、ダイラスに住まう両親が、此方で店長をするリスの為に作り、実家では窮屈だから、と妹たちが住み着いた場所。
 三姉妹だけでは何かと困るだろうから、と母親の眷属―――エルダードラゴンを筆頭に人に化けることの出来るドラゴンを何人も招いて作った家。
 通称―――竜の巣と言われる場所である。
 富裕地区の一角にあり、敷地は広く作られている、一匹二匹うっかりドラゴンの姿に戻っても周囲に迷惑は掛からない程度の広さ。
 家は、ロの字型の家で三階建てで、長い作りの正方形、中庭には露店のお風呂も作られている豪華仕様。

 部屋も一部屋辺り、20畳くらいの大きな部屋が並び、平民の一家が普通に暮らして過ごせるぐらいの部屋がずらりと並ぶ家。
 外観は―――富裕地区にしては珍しく、殆ど装飾がない、それは、作り手の大工の趣向もあるが、リスが居やがったのである、豪華な家は要らない。
 頑丈で、住みやすくて、強い家がいい、と。なので、一級品の素材で、作られた家は、ひたすらに頑丈で、重厚な家となる。
 ただ、彩などは色々考えて、圧迫感の無い様には、なっている。

 一階はリスの書斎やお風呂、食事処などの共有スペース。
 二階は個人の部屋、三階は、ドラゴンたちの住まいである。
 家人の殆どがドラゴンだが、例外は少しある、例えば、メイド長のシスカは、リスの嫁のゼナの妹で、人間である。
 ゼナの連れて来た狼犬グリム君も例外、あと、地味に料理長も人間である、理由はドラゴン、ご飯、生。
 後は、リスや竜胆が連れ込んだ女の子が人間と言う程度である。

 そんな家は、別に重苦しいとかそういうのはなく、何処にでもある普通の家でしかない。
 人間のように生きるための家だからこそ、此処にるドラゴンたちは、人間とは何か、を学び、生きている。
 ある意味人より人らしいかもしれない。

 そして、竜胆=トゥルネソル。竜胆は本名ではないが理由は、少女の中にのみ。
 トゥルネソルの次女で、高等遊民張りに家の中で本を読み漁る毎日、偶に外に出るけれど、それだけ。
 内にこもり切りな少女は、珍しく、その部屋に客を呼んでいた。
 客、と言うのも妙な表現になるだろう、とにかく、部屋に人を招いていた。

 竜胆の部屋は、二階の南の一角にあり、その部屋の床から天井まですべてが書架であり、ぎっしりと、古今東西の魔導書が詰め込まれている。
 他の調度品などは、部屋の中央に本を読むためのテーブルがあるくらい。
 足元には、狼犬グリムがぐぅぐぅ寝ている、毎日散歩するので、懐かれている模様。邪魔にならなければ特少女は何も言わないから、と言うのもあるのかもしれない。
 少女は、書机で魔導書をめくりながら、来客を、待つ。

フィリ > ――――そんな家に住むようになって、少し経った。
一応少女の血筋的には。母方の住まう生家から、もう一人の母方が建てた屋敷へ移ったという事になるので。どちらも「実家」ではある。
とはいえ当初は驚きの連続だった。元の家も比較的立派だった筈なのだが。此処はそれ以上に広い。というか、大きい。
一部屋一部屋辺りの広さもさる事ながら。それと同時に、各階の天井も非常に高い。恐ろしく開放感が有る。
正直籠もりたがりの少女にとっては、空間的に広すぎて、押し入れにでも潜り込みたくなる程だった。

が、理由は直ぐに理解出来た。
例え人の姿で人の国、人の街に生きていようとも。此処で暮らす多くは本来、ドラゴンだ。
何らかの理由で仮初めの人型から、本来の姿であるドラゴンへと戻る事が有るとすれば。この位広くなければ駄目なのだろう。
…もっとも、例え人の姿形をしたままでも、とある叔母(見た目はともあれ)の闊達さを鑑みたのなら。頑丈な造りは必須だとも思えたが。

そういう点でも、人間だけの中で生きていたのなら、知る事の出来無かった…自分の中にも少しだけ継がれている血筋の在り方。
今までと違い、そこから目を背け続けるのではなく。少しは向き合う事を決めた少女にとって。
本日遭おうとしている人物は、とても重要な存在となりそうだった。

家令に教えて貰った、とある一室。少なくとも初めて足を踏み入れる事になるだろう、その部屋の前にて。
胸元で拳を握り、小さく息を吸って吐き…を重ねた後。

意を決して、扉を叩く。

「――ぉ…お邪魔しても、宜しぃです、か?竜胆…ぉ――」

ここで。こほん。咳払い。生物学的に正しい血縁の呼び方ではなく。何と言うか、見目に合わせて、こう呼ぶのだ。

「――ぉねぇさま。」

竜胆 > 部屋の中は静まり返り、ぺらり、ぺらり、と書を捲る音と、すぴすぴと、寝息を立てて寝ている狼犬の鼻提灯の音位。
 そんな折に、狼犬の耳がピクリ、と動いてのそり、と起き上がる。入り口の方を見れば、そちらの方を気にしている様子。
 来客が来た、という事なのだろう、竜胆は、それでも書を捲る音を止めずにいて、ノックの音が、扉から聞こえて初めて、手を止める。

「―――どうぞ。」

 書机から、扉までの距離は、とても遠い。歩いてすぐにたどり着く場所ではないが、その声は静かで、落ち着いたもの。
 それと同時に扉が開かれ、新たな家族に向かって狼犬が―――。

「グリム、邪魔だから、庭で走って為さい。」

 未だ、屹度グリムの洗礼を受けてないだろう彼女、しかし、伝え聞いた性格を鑑みるにそれは酷であろうから。そのまま少女は指を弾く。
 狼犬は彼女に飛び掛かるような形の儘に、薄れて消える。
 転送の魔法で、庭に飛ばしたのである、グリムは賢い犬だ、悲しそうに一つ鳴いて、庭でうろうろ遊ぶのだろう。
 今の時間であれば、誰かしら庭で作業などしてるだろうから其方に行くはずだ。

 パタン、と本を閉じて、改めて、来客の―――姪の姿を視界に入れる。
 青色の竜眼は深海のような落ち着きを持って、じろり、じろりと眺め回す。
 部屋の中は、彼女の――フィリの部屋に似たような場所となろう、ただ、規模が違うはずだ、上から下まですべて書架、そして、其処にぎっしりと詰め込まれている魔導書。
 書架の奥に座る少女は、唯々、静かに見据える、魔導士と呼んでいいだろう風格を持って。

「貴女が、フィリね。―――リスから聞いているわ。
 貴女の事が、かわいい様ね、私なんぞに、頭を下げる位なのだから。」

 くつ、くつ、くつ、と喉の奥で笑いを零して見せて、少女はどうぞ、と手招いて見せる。
 彼女は、気が付くだろうか。
 この部屋は、空間が捻じ曲げられている事に。
 一歩入れば、書架は――三倍ぐらいに高くなる。本の量もまた多くなることに。
 気が付いて初めて、それが、理解できる部屋だという事に。

フィリ > ノックから、思ったよりも直ぐに。返答が有った。
…何というか部屋の主は、読書等に集中し、直ぐには反応がないのではないか…そんな予想をしていたので。少し意外。
答えが返ってきたのなら、これは寧ろ、待たせる方が良くないと。静かに、だが急いで扉を開き――

「     !? 」

――固まった。もっとも。大概の者がこの場合、少女と同じ反応を見せてしまう筈。
開いた扉の先、直ぐ眼前。自分よりも何倍も大きな狼めいた動物が、既に地を蹴り此方へと、飛び掛かってきている真っ最中だったなら。
声も出ない少女に対し、だが、その前足が届く寸前で。巨大な巨大な狼犬の姿は、幻のように掻き消えた。
何だったのか、何が起きたのか、咄嗟には解らない。多分たっぷり十数秒ほど。少女は立ち竦んだ格好のまま、フリーズしていた筈だ。
動きの固まったそのまま、頭の中でだけ、ぐるぐると様々な物が駆け巡る。
幾人かの従業員やらメイドやらに聞かされた、母の…というより母の周囲の者達に懐いているという、巨狼。きっとそれだと気が付いて。
ならば後は。懐いた飼い主の下に居たのだろうとか、それが移動させられたのだろうとか、半ば強引に結論を出せば。

ぱちんとパズルのピースが嵌るかの如く、現実に戻って来た少女の視界、その先に。
この部屋の主が待っていた。

「――そのよぅです、ぉ…初に、ぉ目に掛かります。…ぉ母様からは――竜胆さま、竜胆ぉねぇさまと、ぉ呼びするよぅにと…」

そうした事前の入れ知恵も。きっと、母の思いやり…何せ、此処で面と向かって口にする筈もないが。こうも聞かされているのだ。
…母の妹、その一方である彼女は。とてもとても気難しい人なのだと。けれどきっと、力になってくれるのだと。

実際、部屋の先へと一歩でも足を踏み入れれば。直ぐ、理解する事が出来た。
間取りが違う。外から見て、見取り図を見て、其処から導き出されるべき広さの…何倍も有る部屋の中。
まだまだ思考の幼い少女にとっては。先に魔術の気配を感じ取る事などは出来ないが。
愚直に現実と照らし合わせ、其処に違和感を見出せば。現実には有り得ない、即ち、超常の力が働いていると。速やかに理解した。
…何でも知りたい、覚えたい年頃だから。観察眼だけは有るのだろう。きっと。

「――こ…此処は。とても広いの…ですね。…けれど、当然だとも思われ――ます、こんなに…」

空間の歪曲と拡張。手段やその術理は解らないとしても、動機は容易に知れる。
…何せ、多いのだ。本が。端から端まで、前を歩くだけで息切れしそうな全長や。部屋の主が翼を使わなければ、届かないだろう高さ。
そうまでしないと収まりきらないのだろう程。古今東西、様々な書が並んでいる。
少女にとっては垂涎物。…ほぅ…と。感歎を通り越して、興奮にも似た吐息が漏れる。

竜胆 > 「ごめんなさいな、あの子、何時もここを根城にしてるものだから。飛ばすの遅かったわ。」

 自分の目の前で3mもの大きな狼犬が飛び掛かってくれば、慣れてなければ驚くだろう、確か彼女はとても気弱だと聞いている。
 彼女の性格からして、狼犬の日課は―――股間の匂いを嗅ぐ仕草は、未ださせない方がいいだろう。
 そう思って消したのだが、少し遅かったようで、彼女の様子、固まったまま動かなくなる、だから声を掛けてみたがしばらくは止まったままなのが判る。
 しばしの時間の後に、かちり、と音がしたかのように動き始める彼女。
 竜胆は彼女の事をその間もじっと眺めやっていた、彼女の事をじっと分析するかのように。

「ふぅん?娘に、おべっか言わせるなんて。ふふ、まあ、良いわ。
 おいでなさい、フィリ。」

 彼女のフルネームは訊いているが、面倒くさいので通称で済ませる。彼女もその方がいいと言っていたことを思い出して。
 部屋に入るなり、周囲を見回す彼女、へぇ、と小さく笑う。やはり彼女もドラゴンなのだ、魔法の素養が無くてもその竜眼は生きているという事だ。
 竜の眼は、先天的に魔力を視ることができる、違和感を感じるという事はそういう事だと。

「ええ。そう、この部屋は、広くしてあるわ。だって―――寝る場所もないわ。」

 あるのは書机に、魔法の実験用の寝台、それと、魔法陣など。
 休む場所は別にあるのだと。
 部屋の事に気が付いたさとい彼女に、竜胆は見込みを入れた。
 もともと本を読むことが好きであることも、知識を重要視していることも、気に入った。

「それは兎も角、用事があって来たのでしょう?なら、その用事を先に言いなさいな。
 私の興味を引くなら、その用事に対応してあげるから。」

 先ずは、近くまで歩いてきなさいなと。
 別に歩いて近づくだけなら、時間はかからずに、目の前まで来ることができるだろう。

フィリ > 「―― ――ぁ、の子。……子? …ぇ…と、ぃぇ、そぅ、なのでしょぅ……」

いつも、喋り出すまでに一拍置いてしまう少女だが。今回は、それ以上。
焦りに息を乱し、閉ざしきれなくなる唇から。形となった声が発話されるまでに、もう少し時間を要してしまった。
それでもきっと、彼女の落ち着き具合からすれば、家人にとっては飛び掛かられるのも日常茶飯事なのかもしれないと。
…という事は。あれは噛み付こうと、食い千切ろうとしていたのではなくて。じゃれつこうとしていたのだろうと。
判断材料さえ出て来てくれれば、それなりに物を考える事の出来る少女である。
なかなか特殊な習性も持ち合わせている、という事については。それこそ事前知識を与えられなければ、当面、知る由も無さそうだが。

「――はぃ、失礼……ぃたし、ます。
…ぉ気持ちは分かると。思われ、ます。…私も…こんなに、多くは出来なぃのですが。
本という物は、嵩張り、ます。けれど、形になった知識や、物語や、様々な物を…手元に置きたくて。仕方がなぃの…です。
ぉ母様に、書棚も頂ぃたのですが。近々整理しなければと――」

声を受けて、頷き、室内へと歩みだしながら。…元来無口な少女としては。珍しい程に言葉が出て来る。
とてもとても実用的な魔術を目の当たりにして、驚かされつつも納得している、という事も有り…
それ以上に、やはり純粋に。こうまでしないと収まらない蔵書量が。宝の山に見えて仕方がないのだろう。
この部屋に有るだけで。先日ハイブラゼールで訪れた古本市より、多くの本が有りそうだ。もう見上げるだけで目眩すら覚えそうな程。

一足先に、興味の有無をさらけ出してしまいつつも。やがて、部屋の主の前まで来れば。
流石に、我に返ったのだろう。一度口元を押さえて目を白黒。ほんのりと染まった頬は、はしゃいでしまった事への羞恥。
それでも、再度少しの間を置けば。
辺りを見回し、彼女の足元、丁度空いているスペース――多分先程迄巨狼が寝そべっていた位置だ――に。膝を揃えて腰を下ろす。
丁度シェンヤンやら彼方の方の、正座とかいう座り方に近い物。そんな姿勢で、じ、と見上げて。

「――竜胆ぉ姉様は。ぉ母様の身近の中で…一番、色々な術をご存じだと。窺っているの…です。
…そのぉ智慧をぉ借りしたぃ、そぅ思ぅの、です。…私が、私の…私に宿った術、を。…きちんと使ぇるよぅになる、為に…」

竜胆 > 「ふふ、気にしないで良いわ?まあ、住んでいればそのうち、されるでしょうね?」

 犬として、普通な事である、股間の匂いを嗅いで、仲間の体調を確認するというのは。彼らにとっては普通なことで、しかし、人からすれば恥ずかしい事だ。
 きょとんとしている彼女がそのうち、グリム君に股間に鼻を突っ込まれて、クンクン嗅がれたら、さて、どんな対応するのだろう。
 それを考えると少し楽しくなり、女はふふ、と笑って見せるのだった。
 だから敢えて、犬の習性に関しては、口にしないことにする、それに―――それは自分が教えるべきことではない、母親であるリスが、知っていて言わないのだから彼女の落ち度、という事になる。

「興味、在るのかしら?それらは、貴女の言う物語、ではないわ。
 魔法を使うための書物、魔導書と呼ばれる物よ、中にはとても危険な―――自分から憑りついて貴女を電池にして魔法を使うようなものも、在るのよ。
 なんにせよ、そうね、整理は、した方がいいわね。とは言え、書物とは読み返すために有るのだし、それなりに高い物。あまり胡乱に扱わない事。」

 魔導書ではなくても、書物と言うのは高い物だ、平民が本を買うなどほとんどない、貴族やお金持ち、もしくは自分で本を作る物だけの物。
 彼女はそれを理解してるのか、書物を宝とするならば、その扱いに気を付けるようにと竜胆は、言葉を紡ぐ。
 それから、視線を彼女に向けて、あら。と呟く。
 そこは床である、床に居住まいを正して座る彼女、書机に、椅子に座っている自分に対して、彼女は床に座る事を見せたのだ。

「お立ちなさい、今のは私の失態ね。
 椅子を用意するわ、メイド長には負けるけれど、お茶も用意するわ。」

 姪と言うだけではなく、客に地面に座らせてしまう、普通の人間であれば鼻で笑おうとも、彼女はトゥルネソルの――竜の血を持つものだ。
 それを蔑にするは、竜胆にはなかった。謝罪を一つ、そして、ぱちり、と指を弾いて彼女の隣にふかふかの座布団の乗った、安楽椅子が、何処からともなく飛んできて、静かに置かれて。
 綺麗に整えられている書机の上には、紅茶の入ったティーカップ。お菓子は、無い。

「貴女に宿った、術ね。
 ―――きちんと使いこなそう、と。貴女がそう判断して来たのであれば、良いでしょう。
 何が宿っているのか、教えてもらいましょうか。」

 彼女は臆病と聞いていた。だからこそ、最初は封印する術を聞きに来ると思って居た。
 否であった、彼女は自分の力を、内包する力を制御する事を選んだ、気に入ったわ、と少女は笑う。
 竜眼を細め、甘く笑って見せる。

「貴女に、竜詞<kotoba>の使い方、教えてあげるわ。」