2019/06/23 のログ
ご案内:「訓練所」にスバルさんが現れました。
ご案内:「訓練所」にパンドラさんが現れました。
■スバル > 平民地区にある訓練所とは、基本的には冒険者などの王国に所属しないが戦闘技能を持つ者が使う場所である。
訓練所と言えば聞こえはいいが基本的には打ち込み用の人形が幾つかと模擬戦用の広場がある程度の設備が整っているとは言えない場所。
公共の場所と言うだけであるその場所、少年はひとりやって来ていた。
その少年は、普通の少年としか見えない格好であるが……その腰に穿いている小刀と、その右手に身につけている篭手は、普通というにはやや物々しかった。
とはいえ、逆に言えばその二つがなければ少年は、ただの少年でしかなかったりするのだ。
少年は、訓練所の打ち込み台の近くに移動し、弓矢練習用の的を、隅にある的置き場から取り出して、打ち込み台に取り付けていく。
それから少し離れた場所で、篭手を身につけた右手を持ち上げる。
左手で篭手を操作すると、それはカチンと音がして篭手がボウガンに変形する。
腕につけたまま変化したボウガンは、クォーレルを設置するところに、魔力の矢を作り上げていく。
魔法の矢を飛ばすための、ボウガンで、マジックアイテムであった。
少年は静かにボウガンの狙いを定めて、髪の毛で隠れた三白眼を細める。
■パンドラ > 「……。…………。……………………。」
その姿を、じっと見つめる少女の姿が塀の上にあった。
背に翼を携え、頭上に光輪を頂く、神秘的な姿の少女が。
「……。初めて会った時を思い出すの。」
唐突に、そう話しかける。
だが、相手の少年にとっては慣れたことかもしれない。
困ったことにこの妖精、は死角から突然話しかけるという『悪戯』を好んでいるからだ。
「……。スバルは。……。弓、剣、魔法。何を一番、学びたい?」
ふわ、と重力を感じさせない動きで塀から降り立ち。
的当ての練習風景を見つめ、静かに歩み寄りながら、そう問いかける。
■スバル > 魔力の矢は………残念ながら端っこの方を掠めるようにして命中する。
流石に少年はまだ訓練を始めたばかりであり、射撃もまだ、訓練中なのだ。
狙ったところに当てるというレベルには、程遠いのである。
集中している少年は、篭手をもう一度持ち上げる、魔法の矢が、ゆっくりと作り上げられていく。
少年の魔力を使い作り上げられるその矢は、まだまだ弱々しいものであった。
「……!!」
聴こえてくる声、少年は息を飲んで驚きを胸に秘める。
聞き覚えのある綺麗な声は、よく聞く声、もっと聞きたい声である。
とはいえ……驚いて、集中を切らしたから、矢は霧散してしまうのだ。
「パンドラ。」
彼女は、とても綺麗な妖精であった。
彼女が近づいてくるのを眺めつつ、少年は笑みを浮かべた。
とはいえ、彼女の言葉にふと、考えるのだ。
「僕は……。」
何を学びたいのだろう、力があるわけではない。
魔力も……あると言っていいのだろうか。
少しの間、逡巡するように彼女の目を見て。
「今は、これ、かな……。」
彼女に示すのは、腕につけたボウガン……弓である。
筋力があるわけではない、魔力があるのかわからない。
今、確実に力として示せるのは、弓ではないか、そう考えたのだった。
■パンドラ > 「……。邪魔、しちゃったの。ごめんなさい。」
眉を下げて、霧散した矢が本来突き進むはずだった方向を見る。
「……。スバルには、あまり時間がないの。
だって、何十年も修行して、達人になってから家族を守る、なんてわけにはいかないでしょう?」
だから、学ぶことは取捨選択も必要になる、と。
「……。その道具については、正直わからない。剣については、少しは教えられる。魔法は……。
……。どう、かな? スバルに何の適正があるか、わたしに判ればいいのだけれど。」
一度、試してみる?
そう問いかけて、首を傾げた。
■スバル > 「ううん、いいんだ。」
彼女の言葉に少年は首を横に振る。
それで集中を切らしたのは自分で有るからであり、それに子供であり、独学で訓練しているとなれば、仕方のないことなのだろう。
そして、家族を、という言葉には……小さく苦い笑い。
「うん……パンドラの言うとおりだね。
何十年も修行してられないし、いつ何があるかわからない。」
だから、少しでも早く、少しでも強くなりたい。
彼女の言うとおり、取捨選択が必要となるということに、理解を持った。
けれど、どうすればいいのだろう。
「一応……そうだね、これは、魔法を飛ばす武器だよ。
剣は……うん。
そうだね、まずは、どれに適性があるのか。
パンドラが分かるなら、教えてもらえると、嬉しいかな。」
彼女は、剣と、魔法に心得があるらしい。
それなら、わかる人に教えてもらうのが近道だと。
少年は問いかけに同意するのだ。
■パンドラ > 「……。耳に痛い言葉だろうけど。ごめんね。」
正論は、時としてナイフよりも鋭い。
そのことをわかっているからこそ──そして少年を愛しているからこそ──申し訳なく思って。
「……。まずは、魔法の適正を試してみるの。わたしの持つ魔力は地。この属性は、他との属性との親和性が高い。
火と交われば溶岩となり、水と交われば濁流となり、風と交われば砂塵となる。
だから。……。スバルが四大属性のいずれかを持っているならば、何かしら共鳴すると思う。」
少しこっちに来て、と手招き。
その後は、少年の胸に手を当てて、彼の体に地の魔力を通わせてみて、どのような反応や共鳴をするか探ってみようと考えて。
■スバル > 「……大丈夫、事実だから。」
彼女の言う通りなのだ、正論とはいつでも正しく、それゆえに傷を付ける。
それを受け止められるかどうかは、本人次第である。
申し訳なく思うことはないよ、と少年は彼女に首を振って笑ってみせる。
「うん……なんか、少し、ドキドキする。」
魔法の適正。
あるのだろうか、少年は息を呑む。
近くに有る妖精の顔に見惚れそうになるが、少しだけ意識を集中する。
何かが、流れ込んでくる気がする―――― [1d6→5=5]1:火 2:水 3:土 4:風 5・6無し
■パンドラ > 「……。スバルは優しいね。」
少年の気遣いに、少しだけ笑顔を見せて。
そして、彼の魔力を検証してみるものの。
「……。…………。……………………。」
無言のまま、残念そうに首を横に振った。
「……。何の反応も、共鳴も感じないの。四大属性のいずれも持ってない……これは、魔法の才覚に乏しいか、それ以外の希少な属性を持っているかになる、けれど。
……。残念だけど、前者の蓋然性の方が高い。」
はっきりと、そう告げた。
確定ではないし、マジックアイテムが使えている以上、完全に才能がないわけではないだろうが…。
少なくとも、『実は少年は凄まじい魔力を秘めていた』という奇跡に頼れるほど、妖精は楽天家ではなかった。
「……。次善の策を模索しましょう。『守る』という意味合いなら、わたしとしては。……。剣の練習をするべきだと思うの。
弓は、補助にはいいと思うけれど、それだけで誰かの盾になるのは難しい。」
■スバル > 「そう、なのかな……?」
笑顔になる彼女、しかし、すぐにその表情に無念を見た。
何かが入ってきたのはわかるけれど、それだけであった。
そして、何よりも雄弁なのは、悲しそうな彼女が首を横に振った、それが全てなのであろう。
「そっか……そっか……。」
魔法の才能は、ないとのこと。
無いものを強請っても仕方がないことは解る。
魔法の武器……このボウガンが使えるだけでも僥倖というやつだろう。
魔法が使えない少年にとって、この武器が唯一魔法の力を行使する武器となるのだから。
それよりも、才能がないのに魔法を学ぶという、無駄が減ったと前向きに捉えることにしよう。
「……うん。そうだね。」
少年は体格に恵まれているわけではない。
持っている刀も小太刀……本来の刀ではなく、謂わばショートソードのようなサイドアームなのだ。
しかし、鍛えて大きくなることを見越して、彼女の言うとおりに、剣を学ぶのはいいかも知れない。
「パンドラ、剣を教えて、くれる?」
ボウガンを篭手の形に戻しながら、少年は尋ねるのだ。
■パンドラ > 「……。自分が何も知らない、何もできないと、思い知らされることほど無念なことはないの。
わたしは。……。かつてのわたしは、そうだった。」
かつて神と呼ばれていた力と栄華。
魔族の侵攻でそれを失った時の無念は、筆舌に尽くせるものではない。
それと同じ気持ちを味わわせることに、申し訳なさを感じていて。
「……。前向きに考えられるのは、スバルの利点なの。まずは、わたしの知っている『型』から教えるね。」
そう言って、レクチャーを始める。
彼女が手解きをしたのは、剣道で言うところの『中段』の構えだ。
「……。これが、わたしが知る限り最善の構え。どう優れているか、今から説明する。わたしの剣を、良く見ていて。」
彼女の手が閃き、その光の中から取り出すように、一本の剣が現れた。
刺突に適した細身の剣である、レイピアだ。
大地のエレメントが凝縮した魔法武器であるが、華美な装飾は一切ない。
■スバル > 「パンドラは、すごく、辛かったんだね……。」
少年は彼女の無念に思いを馳せる、どんな辛かったのだろう、というのかと。
人間だから、最初から持たざる者だから、力を失ったわけではなくて、最初から無いと判っただけ。
そのあたりは、人間と、神の違いなのだろう。
「強くなりたいんだ、その為に、立ち止まっていられないんだ。」
少年は利点と言われて少しだけ照れるも、直ぐに意識を切り替える。
彼女の手に作り上げられる剣。
そして、構えられる動きを、ジッと見つめるのだ。
「ん。ちょっと、待って。」
少年は、見ているだけでは、と己の刀を構える。
そして、彼女の型を真似るのだ。
視線は彼女の剣に、まずは、それを学ぼう、と。
■パンドラ > 「……。でも、今は大丈夫。一人じゃないから。スバルのことも、できる限り支えたい。」
支え、支えられるのが人という生き物だと知ったから。
人ならざる身ではあるが、人らしく彼に寄りそうために。
「……。その意気。どんな障害があっても、負けないで。」
そして、彼の構えている刀に、軽く切っ先を当てながら説明を始める。
「……。この構えを維持している間、その武器はスバルと敵の間にある『盾』にもなるの。
わたしを敵だと思って、こっちを向き続けてみて。……。そうすれば、その武器を何とかするか、回り込まない限り近づくことはできないと、わかる筈。」
こちらもレイピアをフェンシングのように構えながら、軽く周囲を回るように移動する。
「……。そして、その盾を『盾のまま武器に』できれば、誰かを守る力は飛躍的に高まるの。どうすれば、いいと思う?」