2019/06/15 のログ
ご案内:「王国内研究室」にリスさんが現れました。
ご案内:「王国内研究室」にミリーディアさんが現れました。
ミリーディア > 日没から間もそうは無い時間と為ろう頃合か、王城内に在る研究施設、其の室長室は普段と変わらぬ様子だった。
デスクの上に散らばった資料の数々。
柔らかな椅子に身を委ねている少女の姿。
大きな問題が起こらない限り続く静かでのんびりとした、然し、暇な日々。
尤も此れを実際に他の誰かがやろうとした為らば、こうした余裕は生まれない。
そうした機会が無い為に知られる事はない。
故に、関わった研究員以外には少女が何時仕事を執り行っているのか疑問の声が挙がる事も在ると云う。

だが本日は少しばかり違う点は在った。
此の室長室に或る時間帯の入室制限が掛けられたいるのだ。
今、直接に扉を抜けて入れる存在は其の者だけだろう。
そして、其の者が現れる時間は近付いている。
取り付けた約束の時間ピッタリに来る者で在る為らば、だが。

「彼女の性格だ、もう少し先の筈だが儂の予想が正しければ…」

そうした呟きを洩らした少女は、椅子に身を任せた侭で視線だけを扉へと向けるだろう。

リス > 今日は、以前から約束をしていたこと―――少女の竜としての力を教えてもらうという日。
 魔法などの力も一緒に教えてくれるという、騎士団の―――第二師団の副団長直々というのはとても光栄なことである。
 軽い縁が有り、教わることと成ったのだけれども。

 今日も少女は王城の入口で、見張り番の兵士に挨拶をして要件を伝えて歩き始める。
 片手にはお土産のお菓子の入ったバケット。
 しかして、通路を歩く少女はどこかぷりぷりしているようにも見える。
 金の竜眼を持つ人竜の少女は、目的の場所に向かって歩いていくのだ。
 約束の時間よりは、少しばかり早いが時は金なりという言葉もあるので、基本的に時間よりも早く動く少女。
 約束の相手を待たせるのは商人としてのマナーに欠けるものなのだ。

 そして―――。

「……?」

 少女はその目を瞬かせる。
 扉が少し輝いて見えるのだ、普段の状況から考えれば、記憶を思い返してもこんな色はしていなかった。

 思い起こされるのは、魔法という二文字。
 約束をしているし、と少女はそのまま扉に手をかけて開くのだ。
 鍵が掛かっている様子もなく、滑るように開く扉。

「ミリーディア様、お人が悪いです!」

 入室と同時にいうのは、彼女でも理解が出来るかどうか。
 この少女の母親と知り合いだったということ、先日たまたま家に戻った時に聞かされたのだった。
 つまり、彼女はもともと少女のことを知っていた可能性が高いという事にちょっとばかりぷりぷり怒っていたのだった。
 ある意味八つ当たりにも聞こえるだろうか。

ミリーディア > 幾度の会話を交わしていたからこそ、一部とは云えど彼女の性格を理解出来ていた。
そして今回の対処は、事前連絡が入っていたからこそ行われたいたもの。
内容に依っては不要で在ろうが、今回は必要な内容で在る事も含まれているのだ。

予想通りに約束した時間からは早めの対象の確認。
彼女が来る前に椅子から上体だけは起こして迎え入れ様と。
だが、そんな少女にも予想外の事は在るものだ。
入って来た相手からの言葉、其れが理解出来ずに首を傾げる。

「如何かしたのかね、リス君?
すまないが、思い当たる節が無い」

何故か入って来た途端に怒っている様子の彼女へと聞いてみる。
前にも伝えている通りに位置情報は把握してても、何を如何しているかは予想でしか解らないのだ。
そう為っている理由を理解し切れないのは仕方無い事だろう。

リス > きょとんとしている相手、少女は意図していないだろうが、第二師団の副団長である彼女に、怒るなどと、師団の面々がいたらヒヤヒヤハラハラしていたのかもしれない。
 このあたりは、父親譲りかもしれない。
 そして、大きく呼吸を一つしてから、彼女にお辞儀。

「ごきげんよう、ミリーディア様、そして、これは本日のお土産、です。」

 蜂蜜たっぷりのブリオッシュ・デ・ロワ。ブリオッシュの一種で、ケーキのように見立てて作る菓子パンである。
 甘いし、お腹にも貯まるものですわ、後でご賞味くださいまし、と。
 ちゃんとお土産を入れたかごは優しく置くのは、中の菓子パンが崩れないように、である。

「ダイラスに棲息するレヴィアタン……個体名、オリヴィエという名に、覚えはございませんか?
 先日実家に戻った時に母に教えていただいたのですわ。
 ミリーディア様、母と友人だって。
 今もたまに連絡とってるって、聞きましたわ。」

 私のこと知っていたなら、知ってるって言ってくださっても良かったのに。
 ぷりぷり、と怒る少女は。
 ミリーディア様も人が悪いです、と。

ミリーディア > 確かに、少女が純粋に怒りを向けられる機会は滅多に無いだろう。
そうした内情を秘める輩は立場を考えて行う事も出来ないのも在る。
若し誰かが居たの為らば、どちらかと云えば物珍しく見ていたのかもしれないか。

言葉の後の御辞儀とデスクに置かれた籠に、挨拶の代わりに片手を上げて。
土産に対する言葉が直ぐ出ないのは、先程の言葉の続きを促す意味も含めてのものだ。
其れを待つ様に静かに彼女を見詰めている。

そして彼女の言葉を聞き終えれば、小さく一つ頷いてみせた。

「成る程、其れで怒っていた訳か。
リス君が先日に在ったリシェラ君と同様に、オリヴィエ君とも以前から交流が在ったのは確かだ。
其れを君に伝えなかったのは……何時気付けるか、と思ってね。
此れは儂のちょっとした好奇心だ、悪い悪い」

怒っている彼女と対照的に、涼しい顔で正直に伝えておいた。
興味や好奇に惹かれる心には逆らえないのだよ、と付け足して。
其れでも少しは悪く思う気持ちは在るのか、軽くとも謝ってはおくのだろう。

リス > 「……もう、意地悪なお方。」

 涼しげな表情、そして彼女の言葉に少女はフゥ、と息を吐き出す。
 確かに怒りはしたが、猛り狂うというよりも、知ってたのに黙ってたという行為に対する不満の吐露程度でしかない。
 軽い謝罪に対しても、それでいいので、怒りを収めることにする。

「そもそも、友人関係なんて、普通に……。」

 普通に。

 それは、人としての言葉なのか、それとも竜としての言葉なのか。
 人竜として生まれ、しかし人として成長し、生活してきた少女。
 妹達とは違い、竜の力等に関してはとても疎い。
 もしかしたら、竜はそういう友人関係とか見れば分かるのだろうか、と考えて言葉を止めたのだ。
 しかし、妹たちの様子を見ても、そういうのは知り得ている様子はないし。
 うちの家令長は……あれは、国中をリアルタイムで見てる。
 うちのメイドは……うん、そういうのは見てるというよりも匂いで判別してる。
 近しいものの匂いがついてたりとかそういうレベルの判別方法なはず。

「―――普通はわからないと思いますわ。」

 それがリスの出した結論だった。

ミリーディア > 「研究者と云うのは、そうしたものを大事にしなければ為らない。
興味、好奇、そして知識と閃き、そんなものなのだと考えた方が気が楽ではないかな?」

其れを理解しているからだろうから、少女も其れにこう答える。
彼女の性格的にすんなり受け入れれはしないだろうが、其れを知るだけでも十分違う。

「普通には分からないさ。
だから、如何やって儂との関係に娘達が辿り着けるのか興味が湧くものだろう?
儂だって君達姉妹の事は聞いていたが、細かい事は知らなかった。
御互いを知った事に依り知る事も在るが、御互いを知らない事に依って知る事も在る。
知識と云うものは、色んな角度から知る事も大事なのさ」

彼女にとっての普通は、彼女自身がどちらを基準とするのか選ぶもの。
人間であれ、竜であれ、彼女が彼女なのは変わらない。
重ねて来た会話で彼女が人間に依った考え方なのは知っている。
だからこその行動とも云えるだろうか。

其れを伝えればデスクに置かれた籠へと触れる。
既に決めてある次に聞きたい事を聞く為に。

「処で、そろそろ聞きたいんだが。
先ずは今日の土産の説明を願えるかな?」

リス > 「けんきゅうしゃ……。
 そのようですけれど、ミリーディア様のお言葉を借りるのであれば。
 『そんなものだ』という考えは思考の停止にはなりません?」

 彼女の言葉、成る程そういうものなのかという納得と。
 先程の意地悪な返答に対しての、意地悪返し……所謂意趣返しをしてしまう。
 負けず嫌いなのかもしれない。

「あ、やっぱり普通にはわからないのですね。
 ………。

 商品の選択に通じるものがありますわね。」

 商品を選ぶ。
 剣という種類を見ても、様々あるのだ。
 ショートソードに、ロングソード、グレートソード、サーベル、レイピア、カタナ。
 彼女の言わんとしていることは、それに当てはめて考えればなんとなく理解ができた。

「ふふ、お勉強よりも先に、ですか。
 くいしんぼさん。

 と、それはブリオッシュ・デ・ロワと言うお菓子で、ガトー……ケーキの一種ですわ
 普通のブリオッシュよりも大きめな生地の上に砂糖漬けにした果物などをのせて焼く菓子ですの。
 ただ、今回は砂糖漬けではなく、もう少し貴重な、蜂蜜をたっぷりと使ったものですわ。
 今、公主のお祭りなので、あそこのお菓子屋も奮発していたのです。
 なので、それを取り寄せておきましたの。」

 ひとりで食べると太ってしまうかもしれませんわ?
 なんて、ニンマリ笑って見せる少女であった。

ミリーディア > 「おや、リス君も負けず劣らずに意地悪なものだね。
大事なものだからと、常日頃から真面目に考えてばかりは疲れるだろう?
偶には遊びも必要なのさ」

彼女の言葉に肩を竦ませ乍もそう返す少女なのだが…
此れを少女を良く見る者や研究員が聞けば、『偶に?』との御言葉がきっと貰えるだろう。

「如何考えても偶然性が必須と為るだろうね。
今回、リス君が彼女から直接聞けたのも其れだろう?
だからこそ面白いのだよ。
幾重もの枝分かれした確率から、何を掴み関係を知れるのか。
今云っていた商品を選ぶ事にも確かに通じるものは在るだろうね」

其の結果結局は知らず終いに為ろうとも、少女は其れが結果だと考えるのだろう。
其の時は何時か自分から伝え様とはしていたが、もう不要だ。

「頭を使うには甘い物が一番。
其れが先に為るか後に為るかなら儂は先を取るさ、何とでも云い給え。

……成る程ね。
そう云えば、あれはまだ続いているのか…然し其れの御陰で食べれると考えると無下には出来ないか。
複雑な心境だな」

何よりも甘味を好む少女、優先順位なんて在って無きものだと云わんばかりに答える。
尤も幾ら食べても変わらないのだが、大食らいで無い為に立証手段は無い。

今回の土産として選ばれた経緯を聞けば、王国の現状を微妙と考える立場としては難しいもので。
だが其れが無ければ此の菓子は選ばれなかった事も在れば、思い悩むのは仕方が無いかもしれない。
取り敢えずは、今の説明で予想立てて合いそうな味の紅茶を棚へと向けた視線で探る少女だった。

リス > 「もう、敵いませんわ。」

 鮮やかに切り返してくれる彼女の言葉に、少女は小さく笑って両手を挙げる。
 そもそも、魔法という知識をたくさん必要とする師団の副団長に知恵比べで勝とうと思う方が烏滸がましいのだろう。
 ただただ、いま現状は少女立ち二人きりしかいないので、研究員達のツッコミはないのだ。
 ツッコミ不在の恐怖とも言えるだろうか。

「私はまだ未熟な身ですから。
 報・連・相はしっかりとしておりますの、商売に関しても、日常に関しても。
 その話題の中、お母様が、今更というレベルでお話くださりましたの。

 英雄の人は、その武器を選んだ、と武器が呼んだ、とかいいますしね。」

 私には、良く判らないものではありますが。
 剣士と剣が出会う、人と人との出会いじゃないのだし、と、そんなふうに思うのだった。
 確率論で言えば、本当に奇跡と言っていい出会いなのであろう、とか。

「可愛らしいことです。」

 何とでもという許可をもらったので、甘いものに一喜一憂する彼女の態度、可愛らしいと素直に言ってしまおう。

「あれは、商売人として考えればお金が動いて街が活気にあふれていいとは思いますが。
 国民として考えれば……そんな祭りを続けるお金、あるのでしょうかと。
 国が疲弊してるはずですわね、あれ。」

 彼女の言葉に対して、少女は、少女の見解での危惧。
 金がなくなれば軍隊はやせ細り、そして、いま戦争中の相手に勝てなくなる。
 降嫁で、つながりが発生したとして。
 本当に戦争がなくなるのだろうか、ほかの商人も危惧している。
 武器が、まだ売れているのだと。

「この、紅茶ですか?」

 視線が動く彼女。
 客ではあるが、教えを請う立場でもある、弟子みたいなものだろう。
 なら、このくらいはするべきと判断して。
 お茶の缶を取り、確認を取る。

ミリーディア > 「……ああ、助かった。
二人で此れを続けると終わりが見えなさそうでいけないな」

自分としても、もう一返しで終わらせようと考えていた処での彼女の降参だったのだ。
そうした考え方は似たり寄ったりなのかもしれない。
止め役が不在為らば致し方無しだろうが。

「口止めでもしておけば、もう少し楽しめたのかもしれないね。
十分其れを伝えるだけの余裕は出来た、そう思ったから教えたんだろう。
自分では未熟と思っていても、案外と周りは認めてる事も在るものさ。

そう云った話も聞いた事は在るね。
尤も、儂の場合は作り与える立場だからそんな経験は無いんだが」

謙遜とも受け取れる言葉に、此方としては思った侭の言葉で返す。
自分から見ても、安心して任せられる存在で在るとの認識を持っているから。

彼女の考え方について云えば、理解は出来るもの。
只、言葉で伝えた通りに伝説級とは云わずとも装備を作り与える立場である付与術師。
そうした物を手にする依りも、寧ろ自分で作ってしまうのだ。

「偶に云われる。
だが、好きなものは好きだしね、仕方無いよ。

さてね、流石に限界を越えて迄も祭りを起こし続ける者は居ないだろうが…
見栄を張って身を滅ぼす様な間抜けは居るかもしれん」

此れだけは譲れないと、見た目に見合うかの様な少女の主張。
続いての言葉は少し考えた後に彼女へと伝える。
そうは云っても少女自身は完全に参加専門、祭を起こす立場なんて面倒だと切り捨てるだろう。
寧ろ少女の懸念材料は、シェンヤン関係者が此の国に留まる事と為る事か。
一応は手は打って在るが、面倒な事を知られる確率は零では無いのだ。

「ああ、そうそう、それだ。
頼んで良いかね?」

立場的なものは在るだろうが、本来は出す立場なのは少女だろう。
然し先手を出されれば任せようとの流れに為るのも此の少女。
確認を取る彼女へと答えて。

リス > 「こういうのは、言葉遊びで終わらせるべきだと思いますわ。
 入り口もあまり上品なものでもありませんし。」

 その内かっかしてしまったら……と、少女は笑う。
 気にしすぎなのかもしれないが。

「お母様もミリーディア様も、正直そこが深すぎますわ。
 何を持っての余裕なのか……もう少し教えて欲しくも思いますが。

 自分で学べ、というところなのでしょうか。

 私は、そもそも……売るほうですから、ね。」

 認めてもらえるのは嬉しいが、何を認めてもらえたのかがわからないのが不安である。
 ミリーディアとの会話で、性格が認められているのはなんとなく察せる。
 が、母親は何を認めたのか、本当によくわからない。
 妹たちならわかるのだろうか、とか考えてしまうのだ。

 そして、武器等に関しては。
 基本的に売るほうで自分は使わない、使えない。
 彼らの感覚にはちょっとわからないのだ、そういうものがあるという認識だけで。

「好きなら、仕方ありませんわね。
 それとお菓子が嫌いな女の子はいないと思います。

 早く落ち着いて欲しいところでもありますわ。
 あと、見栄を張って没落するのは、自業自得ですわ。」

 そもそも、カネを貸す方でもある少女、貴族が見栄を張り、お金を借りてまで調度品を集めるのは知っている。
 見栄を張り没落する方法は祭りだろうがそうでなかろうが。
 結局はお金を理解してないという一言、貸してる貴族が没落するなら、その前に回収してしまうだけである。

「はい、お任せくださいまし。」

 頼んでいいか、というなら、少女は笑ってみせる。
 そして、紅茶の茶葉と紅茶を入れる器具を取り出し、お湯を沸かし始める。

「あ。
 そういえば、入口の魔法は、一体どんなものでしたの?」

 お茶ができるまで時間があるので。
 ここに入るときに見たあれを、質問としてみた。

ミリーディア > 「儂もそう思うよ。
其れで止まるとも思っているけどね」

自分と、其の相手が彼女だから、互いに限度の弁えは心得ている。
其れを理解している上での遣り取りとの認識だからこそ出来る事なのだろうと。

「御互いに長く生きているからね、其の分探れる底も深まるものさ。
君達はまだ若いんだ、焦らなくても何時かは理解出来るよ。
寧ろ、儂等が思う依りも早く気付けるのかもしれないね。

ああそうか、確かにどちらかと云われれば儂に近かったか」

自分と同じく中々に気付かれ無さそうな彼女を思い出す。
気楽で適当な態度で対応する自分、常に笑顔で対応する彼女等の母親。
然し何時かは気付ける時は来るだろう、世の流れはそうしたものなのだ。

後の言葉に関しては御互い様であった。
作るにしても、売るにしても、扱う側の存在では無いのだから。

「……確かに。

まあ、結局の処は国の決める事だ。
流石にそうまでは為らんだろう…多分、な」

彼女の言葉に何かを思い出すかの様に口元に指を当てる。
然し例外らしい相手も浮かばなかったのか短く答えた。

自分としては其れが続こうと続くまいと今の日常を続けるだけ。
だが続けば何時か誰かに誘われる機会も出来てしまう、さっさと止めて欲しいのが本音だったが、其れは流石に心の内に仕舞っておいた。

紅茶は彼女に任せ、改めて籠の中身をチェックする少女。
其れを見れば顔が緩むのも、其れもまた仕方が無いとしよう。

「……ああ、あれか。
君以外が開け様としても開かないだけさ、鍵が掛かったみたいにね。
入れる対象を限定したロックの魔法、と云えば分かり易いかな?」

そうしている処で彼女の質問が向けられれば、一度目を彼女へと向けて答える。
ロックの魔法、魔法の素質が少しでも在れば使えそうな安易な魔法だから分かるだろうとの考えで。

リス > 「ふふ、怒らせたくありませんもの。」

 ここまでなら大丈夫という線引き、それは大事なことである。
 彼女は頭も良くて、話もわかりやすい、だから、彼女の線引きの仕方も学びたいものである、と。
 深いというのは、その線引きがどこにあるかも、まだ手探りしているとも言えるから。

「うふ、若いから、焦るんです。
 のんびりするのは基本的に、お年を召してからなのですから。
 焦るのは特権と思わせてもらいますわ。

 多分、いざという時の対処法は真逆だと思いますけれど。」

 性格とか、そういったのはどちらかといえば、目の前の女史に近いだろう。
 のんびりと隠れ住んでいる。
 が、いざという時はその種族そのものを表すような暴虐が姿を現すのだ。
 彼女一人ではなく、徒党を組んだ状態で。

「……そうであることを、祈るだけ、ですわ。」

 貴族でもない少女は、この国の政に関わりはしない。
 金があるので、買おうと思えば、貴族位を買うことさえできるだろう。
 しないのは、そこに旨みがないからだ。
 腐った肉、金を出して買うのは好事家でも居ない、それだけの事だ。
 彼女も、彼女の感覚での話だが、考えているのであろう。

「確か……妹の本にもありましたわね。
 冒険者がよく使う類の魔法で上位の魔法であれば、扉が鉄のように変質した上で鍵が掛かる……でしたっけ。」

 妹は魔法の勉強をしている。
 ミリーディアに教えを請うようになって、少しだけ借りたがちんぷんかんぷんだった。
 なので、わかりやすいの、ということで、生活で使えるものが、書き記された本を借りた。
 簡単な明かりの魔法とか、鍵の魔法とか、そういうものだったはず。

 お湯が沸いて、ポッドを温め。
 慣れた手つきで紅茶の準備を進めていく少女。

「もう少しで、できますよー。」

 と、紅茶を作りながら、声をかける。
 そして、それからしばらくして、しっかり手順を守って作った、紅茶が出てくるのだ。