2018/12/06 のログ
ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」にリスさんが現れました。
リス > トゥルネソル商会 王都マグ・メール店は、平民地区と富裕層の境目の大通りにある、4階建ての商会である。
 店の中はそれぞれの階ごとに、品物が分けて置かれて、ミレー族の奴隷が店員として走り回っている。
 今日は店長であるリスは来客があり、応接間を兼ねている事務室で人を待っていた。
 なにか緊急な事等で店員が来るかもしれないが……基本的なことは教えてあるので心配はいらないだろう。
 自分の決済が必要な時のみくるようにと申し伝えてある。
 来客があるまで、まだ少し時間はあるので、少女は今のうちにとお茶と茶菓子を用意しておく。

 しかし、少女一人ではない。もう一人、応接間に居るのだ。
 それは、鍛冶屋のドワーフである。
 今回の来客の目的に必要なことなので、忙しいところではあるが、お願いをしてきてもらっている。
 今は、待っている間は手持ち無沙汰なので、お茶を飲んでもらっている。
 それと、どんなものができるのかを軽く聞いておくのだ。
 このドワーフは腕のいい職人だから、きっといいものを作ってもらえるのであろう。
 そう、確信している。

ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」にレイカさんが現れました。
レイカ > 約束の時間よりかは、幾分か遅れている。
仕方がない、どうしても町に来るときは、私は慎重にならざるを得ないからだ。

―――元・王国騎士団第十七師団団長。
レイカリオ・レウリア・バーセルの名前を知っている人物に合わないとも限らない。
それ以外にも、私が過去に相手をしたものがいないとも限らない。
だから、こうして黒いフードで顔を隠して、街中を歩く。

「……………。」

私は、滑り込むように目的の店に入った。
できるだけ目立たない場所で、私は待たせてもらった。
前回は少し警戒もされたけれども、どうやらリスさんから話は通っている様子。
私を確認したら、すぐに奥の事務室へと通された。

そこには、リスさんと…もう一人。
ずんぐりとした体格に、明らかに職人気質な眼付…。一目でわかる、ドワーフの鍛冶職人だろう。
私は一礼をすると、ゆっくりとフードを外した。

リス > 店員には、ちゃんと言い含めておいた。偉い人がお忍びで来るから、ちゃんと丁寧にお相手なさいなと。
 そして、時間になり、やってきたのはひとりの女性。
 彼女が、中に入るのを確認して、店員にあとはお願いね、と話をしてからカーテンを閉め、鍵を閉める。

「いらっしゃいませ、レイカ様。
 ……すみません、私の気が回らずに。
 ここでなくて、ダイラスの本店で作業にすればよかったですね。」

 そうなのだ、ダイラスであれば彼女の拠点に近いし、王都からも離れている。
 危険性はずっと減るはずなのだ。
 それをパッと思い出せないところから、少女はそういうことは、苦手なのだろう。
 やってきた彼女に、申し訳なさそうに言って、お辞儀を。

「さて、お疲れでしょうし、まずはお茶をどうぞ。
 飲んでから、採寸してしまいましょう。」

 ドワーフの職人も、同意してくれるようである。
 というか、彼もまだ、お茶を飲んでいる最中だ。
 それでいかがでしょうか?と首を傾ぐ。

レイカ > 「いえ、かまいません。…種族のせいか、どうにも潮風が苦手で…。」

元々、エルフは森からほとんど出ない種族だ。
そのせいもあるのだろう、あまり潮風に関して私はいい感情を持っていない。
船旅も苦手だし、そちらよりもやはり、多少危険は伴うがマグメールのほうがいい。
勝手も知っていることだし、危険なところに近づきさえしなければ。

「ええ、私もそれで構いません…。それにしても、気難しいドワーフまで雇っているなんて…。」

あ、これはお土産ですと、里で作った蒸し饅頭を渡す。
以前、里の皆で作ったものをもう一度作り、家族で食べてくださいと。
私も椅子に座らせてもらい、お茶をいただくことにした。

リス > 「潮風が苦手ですか……なるほど。」

 種族的なものに関しては、考えがつかなかった。
 そもそも、エルフは絶対数が少ないし、あまり会うこともない。
 本店での修行時代や小さな頃も少し見たことあるだけで、潮風が苦手というのは初耳だった。
 なるほど、と彼女の言葉を聞いて、頷いた。

「あはは、父のコネでもあります。
 私個人では、まだまだなのです。

 あ、この方はガドギンさんです。」

 小さな頃から、父親の手伝いで良く会っていたから、お願いできるんです。
 早く自分でも、そういう人を招きたいと思いますと。軽く舌を出す。
 嬢ちゃんのためなら仕方ないからのと、ドワーフが豪快に笑う。

「あ、ありがとうございます。
 では、後でみんなで食べさせていただきますね。」

 蒸し饅頭、島国の方かシェンヤンの方か。
 どっちの作りなのか、お土産の袋を預かりながらワクワクするのはやはりお年頃でもあるのだろう。
 彼女の対面に座り、眺めることに。

レイカ > 父親のコネ…なるほど。
しかし、そのコネである人物がこうしてやってきてくれるのであれば、やはり彼女の信頼という部分が、大きく貢献しているのだろう。
少し立ち上がり、もう一度ドワーフ…ガドギンさんに一礼する。

「レイカです、今日は私のために、ありがとうございます…。」

おそらく内容は聞き及んでいることだろう。
スケイルメイルを作るのに、まずは寸法を出してもらわなければならない。
饅頭が入っている袋をリスさんに手渡し、軽くお茶をいただく。

「……ああ、そうそう。実は、少し考えていることがあるんです。
里で、稲や麦を作ろうかと思うのですが…よければ、その種を次の定期便で届けてほしいのですが…。」

里で作っているのは、主に野菜や生糸。
小麦粉などをこの商会から仕入れているが…せっかくだしと。
この商会で売れるものを作れるかはわからないが…。

リス > ちょっとだけ心配であった。エルフとドワーフは仲が悪いとよく聞く。
 こう、喧嘩しないかな、という所。
 でも、ガドギンさんも、レイカもそんな素振りはないのだ、ガドギンさんは仕事は仕事、と割り切っているのであろう。
 よかった、と内心吐息を吐きだそう。

『はは、ドラゴンの鱗が素材の鎧なんぞ、腕がなるからの
 さて、レイカさんや、準備が出来たら採寸するからの。』

 あ、目的はそっちか。なんて少女は軽く思うも口にしない。
 扱ったことのない素材で、ワクワクしてるのだろう、子供みたいだ。
 少女のドワーフを見る目が、ちょっとだけ半眼に。
 まあ、小さな頃からよく合うおじさんの一面に呆れた程度の視線ですが。

「イネって、確か島国の方で食べられてる奴よね?
 あと、麦は大麦と小麦、それぞれ入れておくからね
 大丈夫、取り寄せて、次の定期便でいれておくわ。
 農具の方は大丈夫?」


 稲というものは、確か水たまりに生息するはずだし、特別なものが必要なら併せて用意しようか、と。少女は首を傾ぐ。
 メモを取り出して、イネ、麦の種籾、農具と、書き込んでおく。
 農業はすぐになるものではなかろうし、まずは自活する能力を増やす方が優先である。
 パンの元になる麦を作るというのは、こちらとしても大歓迎である。

レイカ > 確かに、そういう話は私も耳にしたことがある。
しかし、そこはおそらく”純粋な”エルフに限っての話だろう。
私は、そのエルフに育てられたわけではない。
もっとも、そこに私がミレー族を守りたい理由があるのだが…ここでは語るまい。

職人気質、という奴だろう。
私もそうだ、加工したことのないものを加工するのだから面白いかもしれないと。
そう、わくわくする気持ちはわからなくはない。

「ええ、お願いします。…あの、変なことはしないでくださいね……?」

…だが、男の人に採寸されるのは……やはり、その。
女としても気が引けてしまうのは、仕方がないことだと思ってほしい。
そんなことを言いつつ、隣でメモを取っているリスさんに目を向けた。

「ええ、そちらのほうから流れ着いたミレー族の人に教えてもらったんです。
イネを育てて、オコメというものが取れればとてもおいしいらしいので。
ええ、農具はこちらですべて準備できますので、種だけで。」

この国では、オコメというものを食べる文化はない。
育てるのにはかなり長い時間がかかるらしいが、その時に取れたそれは絶品だとか。
自活力を増やしていくためにも、そしてここへの恩を少しでも返す意味でも。
私の里を活用してくれるのならば、いくらでも力を貸そうと思う。

リス > 『心外な、仕事と下心いっしょにするわけあるかい。
 それに、わしゃ、エルフになんぞ欲情もできんわ。
 とはいえ、先に言っとくが、完全にアンタに合わせた鎧にするんじゃ。
 筋肉とかも見せてもらわんといかんし、上半身は我慢してもらうぞ。

 覚悟ができたら声をかけい』

 変なことはしないが、妥協しない為には完全に体を測り切る。
 彼女の体の筋肉のつき方、それに合わせた鎧のサイズ。
 上半身なのはスケイルメイルは、太もものあたりまでを守る鎧。
 重要なのは重量と、彼女の上半身である、なので、そこは我慢してもらうべきところだろう。
 恥ずかしいのは判るが、一時的なものと思って欲しい。
 ごめんなさいねと、両手を合わせて謝罪するリス。
 このドワーフは仕事に一切の妥協をしない性格なのだ。

「ふむふむ。
 出来たらちょっと私も食べに行こうかしら。
 解ったわ、農具はなしで、種だけ、ね。」

 基本的に食べるのはパンである。
 それで十分だと思うが、異国のおいしいものというと、期待が高まる。
 シェンヤンには、麺というものもあるらしいし。
 そういえば、異国の人のレストランとか最近見る気もする。
 今度出かけてみるのもいいかな、とか思った。

レイカ > 「……そ、そのくらいなら…仕方がありませんね。」

上半身は正直、覚悟はしていた。
まあ、寸法を合わせるのに見せないわけにはいかない部分だし、このように言うのだろう。
リスさんの様子からしても、おそらく一度は説得を試みたのか。

仕事に妥協しないのはいいことだと、私は自分に言い聞かせた。
見せるだけならば、別に抵抗がないわけではないが…。
残ったお茶を喉に流し込み、私は意を決して黒いマントを椅子に立てかけた。

「ええ、ぜひ育てているところを見に来てください。
……さて、あまり待たせても仕方がないですし…お願いできますか?」

恥ずかしいことはさっさと終わらせてしまいたい。
なので、お願いしますと一言添えた。
妥協を知らないドワーフの職人が作る最高の逸品、それを作るための\に必要なことだ。

リス > 『任せておれ。
 全身全霊を込めて作るでな。』

 彼女の言葉に、ガドインさんは立ち上がる。その手に持つのはメジャー。
 恐ろしく細かい目があるのは、mm単位で図る気なのであろう。
 逆に言えばそこまで精密に作り上げる事ができるという腕でもあるが。
 彼女が協力してくれるなら小一時間程度でその作業は終わる。
 腕を曲げたり、伸ばしたり、腕を回してもらったりと。
 彼女の動きをガドインはメジャーで測り、その時の筋肉の張りを確認したり。
 暫くの時間の後に、うむ、と頷く。

『よし、これで十分じゃ。
 儂は工房で作ってくるから、待っておれ。
 体に合わせての仕立て上げになるから、そうさな……3~4時間程度あればできる。』

 十分なだけ採寸を終わらせて、納得したのかメジャーを片付ける。
 材料は工房に有り、そして、ある程度の形は作ってある。
 あとは、彼女の体に合わせての調整をすれば出来るのだ。
 とりあえず、服を着るのを待ってから、ガドインは退室した。

「育てるところ……か。ふふ、楽しみ。」

 見たことのない食物、育つさまはどんなのだろうと、ちょっとワクワクする。
 だって、将来の商品になるかもしれないし。
 少女は暇なので、彼女の体をじっと見るのだ。
 多分ガドインさんと違う視線。

レイカ > 私の身体は、一言でいえばエルフらしい…というところか。
腰回り、腕、あらゆるところが”細い”という一言で表すことが出来る。
だが、その細さには鍛えられている筋肉もちゃんとついていた。
体脂肪率という言葉が似合わないほどの、小柄で細身。
それが私の体…昔から、ずっと成長することのなかった部分はさておいて。

だが、やはり下着姿とはいえみられるのは恥ずかしい。
特にリスさんの視線が…なんだろう、少しどころか…。
少しほおを赤くしながら、私はその視線を受けていた。

「え……その程度で…?」

驚いた、加工すべて含めて1週間くらいはかかるのかと思ったが…。
3,4時間程度でできるのであれば、このままこの場所で待たせてもらえるだろうか。
服を着なおしながら、リスさんに視線を向ける。
その出来上がるまでの間の時間、ここで待たせてもらってもいいだろうか…と。
手紙に書いたお礼の時間もあることだし。

リス > 「ガドインさんは、家の提携してる鍛冶師で一番の人だもの。
 それに、材料は先に渡してあるし、ある程度の体格は伝えておいたわ?
 だから、あとは調整して作り上げるだけなの。」

 驚いて視線を向ける彼女に、すごいでしょ?と胸を張ってみせて。
 仕事は丁寧で早く、さらに妥協のない仕事。
 ほんと、お父さんのコネで良かったわなんて、と笑う。

「お約束の手料理は、今から作るなら、どうしましょう?
 家に行きましょうか。
 ご飯が終わったあとにここに戻ってくれば、ちょうどいいと思うわ?」

 どうかしら、と首を傾ぐ。
 一応お茶を沸かしたりする設備はあるけれど、料理するにはちょっと不足な気もするし、と奥の台所を眺める。

レイカ > 「……ええ、すごいです。」

ガドギンさんの後姿を見送りながら、私はうなずいた。
確かに職人気質だとは思ったが、まさかそこまでの腕を持っているとは。
鞍材料があるとはいえ、ノウハウがわからなければ加工も難しいドラゴンのうろこ。
それを加工するのに、4時間もあれば大丈夫だとは思わなかった。

「ええ、そのつもりでいましたから。
…あ、それと先ほど言いそびれたんですけど…いいですか?」

そう、先ほどイネや麦を発注してもらう際に言うのを忘れてしまっていた。

里は、ある程度の生産態勢は整えられた。
鍛冶職人も一人いるし、裁縫士も確かにいるのは、リスさんも知っているはず。
だが、その技術ははっきり言ってお粗末なレベルだ。
もともと奴隷であったから、その技術を学ぶ住めなど、持ち合わせていなかった。

なので、その技術を向上させるための人物を、何人か里へと送ってほしいのだ。

「誰か、里で技術指導をしてくれる人を紹介していただけませんか…?
出来れば、鍛冶と裁縫で一人ずつ…二人ほどお願いしたいんです。」

リス > 「?
 言い忘れていたこと?」

 彼女の言い出した事、まだなにか足りない資材があるのだろうかと。
 首をかしいだ所に彼女の言葉にあぁ。と納得するように頷いた。
 必要なものを送るのもあるが、自分で作る必要もある。
 自活するなら、それが必要となってくる、すべて外から運んでくると言うのは大変であろうし、いざとなった時に修理する職人は必要だ。
 彼女の言うことも最もである。

「ええ、任せておいて。
 なにか、要望があるかしら?
 ああ、住み込みで大丈夫な人材で送るから、それ以外で。」

 鍛冶も裁縫も確かに必要だろう。
 ガドインさんのような人だと忙しいので難しいが、それ以外であればなんとかもできよう。
 裁縫なら、この店の店員として、現在寮で教育しているミレーでも十分大丈夫であろう。
 彼女の要望を聴きながら、扉の鍵を開ける。

レイカ > 正直に言うと、取引としては小虎川ばかり得をしていたのはわかっていた。
採算度外視でのこちらへの提供、支援といえばそのままでいい。
しかし、取引ともなるとそうはいかない。

対価に見合った対価を払わなければ、こちら側ばかりが得をしてしまう。
商人を相手にしている以上、やはりこちらも相応な対価を払いたい。
しかも今…私の里は規模を拡張していっている。
ドリアードたちと相談しながら、徐々に広げていく。
今は集落だが……いずれは。

「大丈夫です、教材などはこちらで用意するので、指導していただける人物だけで。
…正直、私も裁縫などには疎くて…。」

ただ、料理の腕前だけは…正直少しだけ、自身がある。
何しろこの町の廃墟地区で、ミレー族の支援をしていた時は、飲食店で働いていたこともあるのだから。
扉をくぐり、キッチンへと案内されれば、やはりそこは里とは違った大掛かりなものに、私はきっと驚かされるだろう。

「さて…何を作ってほしいか、要望はありますか?」

リス > 先物買いと言うものがある。
 成長することを見越して、安いうちに買っておくと言うものである。
 先行投資とも言えるだろう、今は損をしていても、そこが大きくなれば、その損を取り返すことができる。
 博打とも言えるけれど、それを見越しての行動なのである。
 そして、ちゃんと里は拡大し、防衛も自分で賄い始めているのだ。

 そこが大きな街となるなら、そこに支店を立てる。
 その後は商売をしっかりできれば、収入は大きくなるのだ。
 彼女が申し訳なく思う必要は、何もない。
 商売は、信用。信用という対価を払ってもらっているに過ぎない。

「ふふ、解ったわ。
 とはいえ、裁縫はともかく、鍛冶は一人で出来るものじゃないわ。
 なので、三人ずつ。工面するわ。
 一人だと、体調崩した時に、大変になるでしょうし。
 育成するなら、そのほうが効率良くなるでしょう?」

 それに。
 商人をしていればわかる。
 武器は劣化するものだ、鎧もまた。
 そういうものは、本当に一人で作るのは難しい。だからこそ、三人。

「じゃあ……。レイカが、一番得意な料理がいいわ。」

 確かにこの場所の台所も一通りはそろっている。
 確かに、一般家庭のそれよりも豪華だろうけれど、驚くほどのものではないと思う。
 と、思うのは少女がお金持ちで感覚がマヒしてるから、なのだろう。

レイカ > 「…わかりました、それじゃあ3人お願いします。」

ただ、住み込みで指導してもらうならば食事と住むところはこちらが提供するべきだろう。
木材を使えるので、ここのところは独学とはいえ、建築に関してはそこそこ見れるようにはなったはずだ。

人を入れるようになって以降、里には活気が生まれ始めている。
いずれ、いろいろな店も出してみたい、町として発展させていきたい。
…最初は、30人というミレー族を護れればいい…そう思っていただけなのに。
町として発展させていこう、そう思うようになった私は…やはり、傲慢なのだろうか。

「私が、得意なのですか……?
…わかりました、それじゃあ腕によりをかけて作らせてもらいますね。」

…本格的に料理をするのは、いつぶりだろうか…。
あの里に来る前…もう3年以上前になるのか。
私は少しだけ腕をまくり、食材を使わせてもらいますねと一言添えてから、包丁やボウル、フライパンなどを準備し始めた。

リス > 「解ったわ、ではこれは、後日になるけど選んでおくわね。
 あと、彼らの住む家と、職場をお願いね?
 あとは……うちの娘で連れて行かないとね、流石にドリアードいるからそのままいかせられないし。」

 鍛冶をするには、鍛冶場が必要となるが、まずは家だ。
 鍛冶場に関しては、鍛冶師が音頭をとり作る必要があるが、そのためにも家がないとである。
 家の中に作るだろうから、早めに選別して連れて行くけれど。
 裁縫の人に関しては……まあ、問題はないだろう。
 木材の家で普通にできるし。

「うふふ、楽しみ。
 あ、食材とか足りないのあったら言ってね、取ってくるから。
 あと、脇の箱、そこは保存庫になってるわ、開けると寒いから気をつけて。」

 彼女はどんな料理を作るのだろう。
 エルフの料理というのはどんな物なのだろう。
 魔道具は便利である、冷たいまま保存できるものとか、すぐに暖かくできるものとか。
 調理した食べ物を温かいまま保存できるものもある。
 それらの使い方は説明いるだろうか、と。

レイカ > 「……そのままでも大丈夫だと思いますよ。
この季節は、ドリアードの力が弱まるんです。」

精霊の力は、季節によってその強さが変動してしまうのが最大の欠点だ。
例えば、夏の時期には氷の精霊…セルシウスと私は読んでいる。
しかし彼女たちにしてみればシヴァ、という名前のほうがしっくりくるだろうか。
その精霊の力が弱くなる。

この季節だと、ドリアードとイフリート…この二体の精霊の力が弱くなる。
その反面、シヴァと知る負の力が強くなる、といった具合に。
卵と鶏肉、トマトと…オリーブオイル。あとは少々の調味料。
それらを準備しながら、保存庫の寒さに身を震わせた。

「材料は大丈夫です……それにしても驚きました。
私も、貯蔵庫は作りましたが…精霊の力で、同じようなものに仕上げましたけど、それ以上に寒いですね…。」

火をつけながら、私はまずにんにくをみじん切りにしていく。
その隣で、鍋を温めオリーブオイルを敷きながら。

リス > 「あれ?じゃあ、大変じゃないの?娘、冬のあいだ置いとく?」

 守りの一番の要が弱体化する、魔法を知らない少女からすれば、え?と目を丸くする事態。
 冒険している方はともかく、引きこもっている次女であれば、常駐させても問題はなかろう。
 それに、彼女は魔法を使えるから何かと助けになるはずでもある。
 彼女の里にも、守りの竜や傭兵もいるらしいが。
 何もしないというのは、防衛に関してはいいこととは思えない。

 料理の音が心地よく響いてくる。
 どんなものが来るのだろう、ちょっとヨダレが垂れてしまいそう。
 美味しい物を食べるのも、大好きなのだ。

「魔法の道具って便利よね。
 その分値が張るんだけれど、精霊の力よりもすごいのね。」

 貴族たちは持っているだろう保存庫。
 魔法の道具はいろいろあるが、精霊よりもこれは寒いのね、と確かに寒いのはわかる。
 比較対象を知り、今使っているのがそんなにすごいんだ、と認識。

レイカ > 「ええ、ですからこの間のラファルさんのトラップは本当に助かりました。
私が使える精霊の力も…そう多くはないので。」

私が使える精霊は、風と水と木。
その一角である木が使えないのは、本当に困る事態だった。
特に気の精霊、ドリアードの力が弱まるのは非常に困ってしまう。
私が冬の間、ほとんど里を離れないのもそのせい…。
だからこの時期は、傭兵を多く雇うことにしていた。
彼女を呼ぶ笛も、もちろん常備しているので、何もしていないわけでは…一応はない。

刻んだにんにくをオリーブオイルで炒め、香りを出してから、トマトペーストとコンソメをいれ。
塩コショウ、そして砂糖で味を調え、ひと煮立ちさせてから味見をする。
…さすが、いいトマトだと思った。

「ええ、やはり自然に影響されやすい力よりも、純粋な魔力を使う魔法のほうが便利ですよ。
私には……魔法と呼べるものといえば、識色眼というものくらいしかないので。」

私は、今でこそ魔力を持っている。
しかし以前は、私には魔力というものが備わっていなかったのだ。
ボウルに卵を割り落とし、かき混ぜながら苦笑する。