2022/05/07 のログ
ご案内:「アルピヌム魔法薬局」にラブルナさんが現れました。
■ラブルナ >
「ええと……この薬はこっちの棚に……」
ある日の昼下がり、あるいは夕方、はたまた夜。
新しく調合した魔法薬の入った小さなビンをロビーに置かれた陳列棚に並べている。
カラフルな液体で満たされた小瓶は形こそシンプルだが、綺麗に並べるとちょっとしたアートのようだ。
ここにあるのは回復薬や解毒薬などの一般向けなもの。値段は手頃で試用もできる。
服用者の体質などによっては微調整が必要な場合もあるためだ。
完全オーダーメイドも承っており、幅広い層に需要があったりする。
「今度また、材料を採ってこないといけませんね……」
魔法薬の材料は一般的な薬剤のそれとは異なる。
市場に出回っていない物も少なくはなく、そうした材料は自ら採取に赴いたり、冒険者ギルドに依頼して集めてもらっているのだ。
次に発注する素材を羊皮紙に書き出しながら、客が来るまでの暇を過ごす。
ご案内:「アルピヌム魔法薬局」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 王都の夕刻。
取引先の老貴族との世間話が長引いてしまった故に、聊かの疲労感を背負った小さな背中。
それでも、収穫は皆無ではない。
何でも、良心的な魔法薬の店があるという話を聞き出すことができたのだから。
「はて、店構えは、その…確かに風情があるのじゃが。」
聞いた道順を辿り、聊か以上に趣のある店の前に至る。
中を覗けぬものかと、短躯をぴょんぴょんと跳ねさせてみたが、どうにも目ぼしい何かを得るには至らず。
こうしていても埒が明かぬと、店の扉に手を掛けて。
「御免、人より粒ぞろいの魔法薬を取り扱っておると聞いたのじゃが、こちらで相違ないかのう?」
店内に響くのは、未だ変声期に至っていない少女と少年の境が曖昧な声。
その高い響きと裏腹な、王国語こそ流暢ながらにやたらと古めかしい物言い。
昨今王都でも見かける機会の増えたシェンヤン風の装束…よりも更に辺境の風土に由来する装束に袖を通したお子様という風情。
ちんまい癖に、腰に手を当ててふふんっと威厳を見せんとする雰囲気を醸し出してみるものの、滑稽さとイロモノ感が先立つかもしれない。
■ラブルナ >
からんころん、と音を立ててドアベルが来客を告げた。
中はアンティーク調な外観とは打って変わって小洒落た雑貨屋のような内装で、
入って正面にレジカウンター、左手には待機用のテーブルと椅子が置かれている。
そして右手側にある陳列棚の前にいた店員と思しき女性──ラブルナが、音に振り向いてあなたの方へと向き直った。
「あっ……い、いらっしゃいませ。
アルピヌム魔法薬局へようこそ……魔法薬のお求めですか?」
ゆったりとした黒色のローブと同色の三角帽子は魔女を思わせる。
肌の露出は最低限で、顔には野暮ったい丸眼鏡。
子供のような外見のあなたに対しても営業スマイルで対応しようとしているが、緊張からか若干ひきつっている。
見様によっては畏敬を表しているように見えなくもない……かもしれない。
■ホウセン > 初めて足を踏み入れる店だからと、少しばかり勢いをつけてみたものの、店内は至極整然とした店構え。
自らも商いをする身としては、ほうほうと小さく頷きながらあちらこちらに視線を巡らせて。
最後に黒い目を向けたのは、少しばかりぎこちない接客をする店員。
戸口に立っていても邪魔になろうと店内に歩み進み、二、三歩分の距離に。
「嗚呼、幾つか薬を頼みたい。
思い当たるものは複数あるのじゃが…一先ず儂用に疲労回復の薬を。
丸薬でも液体でも構わぬが、苦いのは避けて貰えると助かる。」
注文をする間も、どことなく客慣れしていなさそうな様子に疑問符。
ピンと直感に何かが引っ掛かったらしく、くんくんと鼻を鳴らして匂いを嗅いで。
もしかしたら目の前の女が調合自体を担っているのかもしれぬと、薬品の臭いが染みているかどうかを確かめようと。
「そうそう、儂は怪我も疾病もありゃせん。
常に飲んでおる薬も無いが、嗜好品として茶を飲む習慣はあるのじゃ。」
そう付け加えたのは、この小さな客も自ら調薬をすることがあるから。
勿論、王国の薬学体系とは全く異なる北方帝国由来のものが主体になっていのだけれど。
ある程度情報を与えて、ベストな一品が出てくるかお手並み拝見…ということなのだろう。
■ラブルナ >
店内を見回されると、何もやましい事などありはしないのだが、どことなく気恥ずかしくなって頬にほんのり朱が差した。
物の配置から掃除まで全て一人でやっているので、己のセンスを問われているような心持ちなのだろう。
「ええと、疲労回復の薬ですね。
苦くないものでしたら、原料が薬草じゃないこちらの方が……」
注文を聞けば再び陳列棚へと向かい、ラベルを確かめずとも手に取って戻ってくる。
石鹸の香りに混じっているが、彼女自身からも薬品臭がするのを嗅ぎ取れるだろう。
自分で作ってここに並べているので、見なくてもどれが何の薬か分かるのだ。
「ご健康でいらっしゃるのですね……はい、どうぞ。
必要でしたら、先に私の方で毒見をいたしますが」
紅葉色の液体が入った小瓶をあなたに差し出しつつ、
初めて利用する客には薬が怪しいものではないことを自身で証明している。
ただでさえ独自製法なので、信用は何より大事なためだ。
■ホウセン > 薬品の臭いと、迷いない足取りと手さばき。
目の前の店員、或いは店主かもしれぬ女が、薬を作っていると断定する要素は揃い。
差し出された小瓶を、小さくしなやかな手で受け取る。
「構わぬよ。
人づてに善い店じゃと聞いておるから、発言者への信頼込じゃ。」
左手をヒラヒラと振って、構えずともよいと。
小瓶の蓋を開け、ふっくらとした唇に運んで、くぴ、くぴっ、くぴり。
子供相手だからと見縊ったり、初見の客だからと足元を見たりするようなら、然るべき意趣返しをとも思っていたのだが。
両肩をぐるぐると回して、疲労由来で心持ち凝っていた肩が改善したのを確かめるように。
「んむ、上々じゃな。これなら本題に入れるじゃろう。
欲しておるのは、荷運びの隊商向けの冷やし薬。熱を籠らせて倒れられるのも難敵じゃが、そも暑さで消耗するのを避けたくてのぅ。
数は…延べ二百日分。」
良いものは良いと、すぱんっと太鼓判を押して本題を切り出す。
この小さい客が求めているのは、熱中症等を避けるための薬。
己の商会の荷運びを、円滑に進めるための備えとしたいという腹づもり。
少なくとも、シンプルな傷薬や毒消しよりは、相応に稀有な用途だろう。
心当たりはあるか、と、人形めいて整った顔立ちを乗せた頭を傾げて。
■ラブルナ >
「そ、そんな……恐縮です」
良い店だと言われれば照れ臭そうに、赤みを増した頬に手を添えて。
魔法薬は彼女にとって唯一と言える取り柄であり、それを評価されるのは素直に嬉しかった。
とはいえ噂は噂、実際に薬を気に入ってもらえるかどうかは別問題だ。
やや緊張した面持ちであなたが薬を服用する様を見守る。
さて、薬はというと───
色合いやとろみの付いた液体から蜂蜜を想起させるが、味わいはもう少し爽やか。
喉を通って吹いた涼やかな風が疲労をさらっていくかのように、すぅっと疲れが引いていくのを感じるだろう。
ついでに目も若干スッキリするかもしれない。
「ほっ……お、お気に召したようで良かったです。
それで……暑さ対策の魔法薬を、に、二百日分……」
その量に面食らったような顔を一瞬見せたが、効能については無理なく用意できる範疇だ。
ひとつ頷いて、陳列棚から今度は青色の液体を持ってくる。
「ええと、こちらは冒険者のお客様向けにお作りしている暑さ対策の魔法薬です。
丸一日は持ちませんが、砂漠から溶岩地帯まで適応できる効果があります」
あくまで暑さが平気になるだけで、溶岩遊泳はできないし、適度な休憩や水分補給も必要ではあるが。
先の疲労回復薬とも併せれば多少の無茶は利くようになるだろう。
というところまで説明してから、ふとあなたを見て。
「……その、大きな取引になると思いますので、
できれば保護者の方か隊商の代表の方に来ていただけると……」
───流石に見た目通りの年齢ならまずいと思ったようだ。