2022/04/26 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 女子寮」にイェンさんが現れました。
イェン > 【約束ロルの待機中です】
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 女子寮」にウェンシアさんが現れました。
イェン > (講義全てが終了した放課後の、夕食には少し早い黄昏時。部屋着に着替えたイェンは女子寮ラウンジのソファに小尻を沈めて本を読んでいた。だぼっとしたスウェットは、男物のラージサイズ。チュニックワンピのように着こなすその短裾からは純白の脚線美を惜しげもなく晒し、ボートネックの襟ぐりもオフショルめいて華奢な肩口と胸の谷間を覗かせる。その姿はお風呂上がりの裸体にスウェット一枚をつっかけただけにも見えるだろう。もちろん、穿いてないなんて事はない。白脚の付け根は浅いスリットの入ったホットパンツに包まれてはいる。とはいえ、肩紐すら確認出来ぬ上半身はノーブラであり、迂闊に前屈みなどしようものならピンク色も鮮やかな先端部まで覗かせかねない。学院校舎での乱れ一つも存在しない無い制服姿を知る者からすれば、余りのギャップに驚きを覚える事だろう。ただ、異性が入り込む事のない女子寮におけるイェンの無防備はいつもの事なので、同寮に住む顔見知りにとっては最早驚くに値しない光景であった。さて、そんな留学生が物憂げに伏せた双眸で文字追う写本は、手製と思しき布カバーのせいでタイトルすら判然とせぬ物の)

「―――――――壁ドン、これが……っ。 なるほど、これは確かに、ときめきを覚えずにはいられませんね……!」

(中身は生クリームたっぷりのいちごケーキが如く甘ったるい恋愛小説であった。OGの影響力も遺憾なく用いて作られた学院図書館一郭の女の子コーナーには、そういったミーハーな書籍がずらりと並んでいるのだけれど、イェンがそこの常連である事は図書委員の間で何気に噂になっていたりもする。先に口にした壁ドンは、年頃の女子であれば大体がときめきを覚える定番のシチュエーション。なれど、実際にイェンがその状況に陥ったのなら――――逃げ道の無い壁際に追い詰められ、逞しい長躯の圧し掛かるかのプレッシャーを前にしても微動だにせぬ背筋の芯と、そこらのチンピラ相手なら一瞥だけで震え上がらせる冷淡な仏頂面で男を見上げるイェン。その姿は何か別の―――そう、傍から見ていた女子学生が『お姉様……♡』なんて背徳の憧れを抱く類の、凛然たる一枚絵になってしまうのだが、その辺りを本人は理解していない。)

ウェンシア > 少女が訪れているのは学園の女子寮。あまり親戚に迷惑はかけたくない。けれど見知らぬ人と生活を共にするなんて出来ない。そんな葛藤があったのだが、前者が勝ったのだろう、悩みに悩んだ末に寮に入る事を決断したのだった。しかしキャリーケースを引く手は重く、後者の思いが少なからず残っているのを物語っている。

「…うん――うん…――あ、はい…」

少女の生返事を受けているのは寮母。ラウンジをゆっくり歩きながら入寮に関しての説明をしている…のだが、どうも少女は上の空。視線も床に落したままであまり気乗りはしていない様子に見えた。半分頭を抱えている寮母と心ここにあらずな少女が、一人の生徒の前を通り過ぎようとしていた。

ラウンジの風景を眺めていると、少女の目にその一人の生徒が入った。その生徒は以前、校舎裏で男性相手に啖呵を切っていた人物だった。

「え?!!(…あ。あの人…)」
『どうしたの?ちょっと、ちゃんと話を聞きなさい』
「…やっぱ…カッコイイな…」


少女の視線は寮母を全く見ておらず、ただじっと、それはもう睨むように黒髪の生徒を見つめていた。その視線を向けられている生徒が機嫌を損ねなければ良いのだが。

イェン > (殺気に反応する剣客の風情。写本に落していた双眸を不意に持ち上げ、迷いなく向けた紫水晶の先には寮母と見知らぬ女子生徒の姿。しおりを挟んで本を置き、す…と静かに立ち上がり)

「――――今晩は、寮母様。何かトラブルでも……?」

(困り顔の寮母に長脚の歩幅で近付き問う。何やらじっとこちらを見つめる翠瞳にふと目を向けて『可愛いらしいですね♡ 下級生でしょうか……?』なんて感想を抱く。イェンの様な華美な外見ではない。どこか少年っぽい硬さは、短めの赤褐髪と、未成熟な肢体による印象だろうか。とはいえ、背丈は向こうの方が若干上の様だったけど。彼女から向けられる憧れの視線は慣れた物。とはいえ、これほどの至近距離から真っすぐに向けらるとなるとあまり経験も無く、誇らしさには若干の擽ったさも混じっていた。)

「…………なるほど、寮の案内を。分かりました。寮母様には他にも仕事がある様子ですし、後はこちらで引き継ぎましょう。案内が終わった後は、寮母様の部屋にお連れすればよろしいのですね。……はい、お任せ下さい」

(目弾きの視線を時折少女に向けながら、寮母との間で話を纏めた。彼女が寮に入りたがってはいるが、どうにも覚悟が決まり切っていない様子。ひとまず寮内を案内し、実際にここに住む者として寮生活の実情を伝え、ここに住むにせよ他所に行くにせよ、とりあえず意思を固めさせるのがイェンの役目となった。『助かったわ、お願いね』と己の仕事に戻っていく寮母を軽い会釈で見送って、改めて彼女に向き直る。目尻を朱に彩られた切れ長の双眸、むっつりと引き結んだヘの字の唇。大の男が思わずたじろぐ迫力を滲ませた留学生が、桜色の薄い唇を開いて告げる。)

「―――――私はイェン・リールゥ。北方帝国からの留学生で、今年からこちらの寮でお世話になっております。貴女―――ウェンシア様とおっしゃるのですよね。貴女の案内を引き継ぎましたので、どうぞ、着いてきて下さい」

ウェンシア > 周囲の生徒達の眼差しとは明らかに異質な少女のそれ。その視線を受けた彼女が寮母と少女の方に足を運んで来た。立ち上がり方もスマートで周囲が色めいた声を上げる理由もなんとなく分かる少女。加えてその姿はラフな格好で、女性らしい白い肌をもちながらも二の腕や脚線を見ればしっかりと鍛錬を積んでいるのが分かる。
寮母と彼女の会話も耳に入っていない様子の少女。自分の事を話しているというのに心ここにあらず、彼女を見詰め…もとい睨みながらただ一言『綺麗…』と口走るだけ。彼女に少女を託した寮母がこの場に居ない事さえも気がついていない様子。

「え?あ、うん、じゃなくて、はい…。わかった…あ、えっと、私、ウェンシア、で、す。」

少女が我を取り戻したのは彼女からの自己紹介があったからだ。緊張しているのだろう、先程まで彼女をジロジロと見ていた視線を床に落し、両手をぎゅっと握り締めながら彼女の斜め後ろを着いていく。――しかし、間が持たない。少女は何度も口を開き、何か会話をしようと試みるも、恥かしさがあってかそれがままならなかった。数分後、やっと出た言葉が

「…イェンさん、この前、校舎裏で喧嘩してた人ですよね…?上から見てて…」

説明不足この上無いが、今の所これが少女の精一杯だった。

イェン > (少しやんちゃな印象を孕んだ少女の奥二重はこちらを睨むかの風情。しかし、そうした目には毎日鏡で見慣れている。それ故イェンは翠瞳を煌めかせる憧憬の色を正確に読み取って、無為に恐れを抱くような事はしなかった。たどたどしい敬語にもほんのりと微笑みの気配が浮かぶ。ぱっと見は仏頂面のままなのだけども。通り道で忘れずに写本を回収し、それでスウェットの豊乳を抑える様にしつつ歩き始める。まずは食堂に連れて行き、混みあう前に彼女と共に食事を取るべきか。はたまた己の部屋へと連れて行き、重たそうな荷物を一旦置いてもらった方が良いかも知れない。そんな思考を巡らせていたため、少女の抱く気詰まりな想いには気付いていなかった。)

「――――――っ!?」

(驚きに若干広げた双眸が傍らの下級生に美貌を向けた。浮かべた困惑が幾許かの時を経て理解へとつながる。『そうですか、あの時のやり取りを見られていたのですね……』と。)

「…………お恥ずかしい姿を。どうか、その様な事は忘れて下さい」

(ついっと正面に向き直り、再び剥き出しの長脚が歩き始めた。先ほどと変わらぬ無表情が白頬に若干の色付きを浮かばせていた。少しばかり足早となったのは、やはり気恥ずかしさのせいだろう。乱暴な先輩だなんて第一印象を抱かれていたらどうしようか。そんな不安をちらりと流す横目に湛えたりしながら、イェンは3階にある己の自室へと少女を連れていく。階段では無言のままに白手を伸ばしキャリーケースの取っ手を半分掴んでお手伝い。)

ウェンシア > 「あ、いや!その、凄く凛としてて、カッコよくて…男の人にも負けてなくて…だから…」

ふいにこちらを向く彼女。その表情と口調からも分かるように、あまり誇れるものでは無いもの。しかし少女には憧れにも似たものがあり、先程の大人しさは何処にいったのか全力で否定した。しかし再び語尾が小さくなる。何か言いたげで。でも言えない。そんな様子。

少女と彼女が階段へと差し迫った時、彼女の手が自分のキャリーケースへと伸びてきた。スマートな気遣いは少女の心をほんの少し開かせた。二人で一つのキャリーケースを持ち上げながら、小さな声で漏れた『忘れられる訳、ないじゃん…』の言葉。拗ねたような声色と共に頬を染める。きっとその情景を思い出したからだろう、先程ラウンジで彼女を見ていた女性達と、同じような表情で彼女を眺めていた。

イェン > 「―――――……ふふ、ありがとうございます。その様に言っていただけるのでしたら、あの日の判断にも自信が持てます」

(強い否定に少しだけ驚くも、それに続いた一生懸命な言葉の羅列に再びへの字の唇端が綻んだ。思わず白手を持ち上げ赤褐の髪を撫でそうになるも、流石にそれは気安すぎるかと自重する。今の彼女の様な下級生から憧憬の視線を向けられる事は多い物の、そうした相手と直接言葉を交わす機会のないぼっち娘にとって、彼女の言動はとてもとても可愛らしい。どうにかして先輩と呼んでもらえる様にしたい。そんな下心を豊乳の奥に秘める。二人して荷物を運ぶ共同作業の最中、ぽつりと漏れた少女の声音を聞きつけてしまう。聞こえなかったフリはするけれど、彼女の気恥ずかしさが伝染する様に無言の頬もかぁ…っと僅か赤らんだ。)

「この先、色々と回る事になります。そろそろ寮へと戻る生徒も増える頃合い。邪魔になるでしょうから、ひとまずそれは私の部屋に置いておきましょう。幸い私の部屋は現在一人で使わせてもらっていますから、荷物に悪戯されるような事もないはずです」

(自室の前でそう説明して扉を開く。明かりをつけていない薄暗い室内は整理整頓の行き届く、簡素な内装をぼんやりと覗かせる程度だろうか。イェンの身体から漂っていた青林檎めいた体臭が、その部屋からもふわりと香る。彼女から荷物を受け取れば胸に抱いた写本と共に部屋に置き戻る。一通り施設の案内を終えた後には一度ここに戻ってお茶でも振る舞い、寮生活の実情を話すつもりでいるのでそうした意味でも都合がいい。折角3階まで登ったのだから、まずは共同の物干し場がある屋上へと彼女を誘おうか。なんて計画しながら部屋の鍵を掛け、案内を再開させた。)

ウェンシア > ただ普通の、何気ない会話にも関わらず少女の胸は早い鼓動を繰り返していた。屋上から眺めていた素敵なあの人が目の前に居り、自分と歩みを同じくしており、そして…何気ない会話をしている。学園に入学して初めて、楽しいという感情が芽生えた。だからだろう、ほんの少しだけ、彼女の言葉に少女の少女らしい微笑を向けていた。

「え、イェンさんの部屋?あ…ごめん…イェンさん、先輩だよね…私さ、その…」

ちょっと問題を起こして一年入学が遅れた事、もしかすると同じ年なのかもしれない事を彼女に伝えながら歩みを進める少女。彼女の部屋に着く頃には彼女の斜め後ろからほんの少し前にポジションが変わっていた。整理整頓の行き届いた部屋に自分の荷物を預かって貰えば、少女のポジションはまた、ほんの少し前に。真横とは言えないがそれに近い位置になっていた。これから何処を案内してくれるのだろう。でもきっと、どんな場所でも楽しく過ごせる、彼女に向けられているそんな期待と安堵を込めた瞳は、先程までの険しいものではなかった。

イェン > 「~~~~~っ♡ ええ、そうですね、先程聞いた学年からすると、私は先輩となるでしょう。ええ、先輩です……♡」

(本日の最終目的として据えていた中性的美少女からの先輩呼びが不意に叶った。思わずぷるる…っと背筋を震わせ感激に浸る。まさに感無量。が、続く話を聞けば本当の後輩という訳ではなく、年齢的には同い年である事が判明し舞い上がっていたテンションが若干落ちる。とはいえ、中途半端な時期に留学してしまったイェンに比べたとて入学の遅かった彼女は、後輩と呼んで差し支えないのではないだろうか。何ら問題ないはずだ。そんな結論を心中で下し、彼女からの先輩呼びは撤回させない事にした。『先輩……♡』 心が浮き立つのを感じる。)

「確かに年は変わらぬ様ですね。それでも、私の方が数か月とは言え早く学院に入ったようですし、シアちゃ……んんっ、ウェンシア様よりもいくらかは知識もありましょう。ですから、何か困った事、分からない事などありましたら、いつでも遠慮なくお声掛け下さい。出来うる限り貴女の力となりましょう」

(優しい先輩の笑顔を意識した仏頂面で、遠回しに先輩呼びを続ける様にと圧力を掛ける留学生。切れ長の双眸には妙な迫力が宿っていたかも知れない。そんなやり取りを交わしつつも、イェンの案内は実に無駄なくスムーズに進んでいった。共用の物干し場となる屋上から始まり、物置として使われている屋根裏、それぞれの階にある共用のトイレと洗面場。一階に戻って混みあい始めた食堂で共に食事を取り(先輩の奢りである)、最初に出会ったラウンジを経由して最後に向かうのは共同浴場。部活返りの生徒たちによる夕食前のラッシュはどうやら終わっているらしく、湯上りの女生徒と多くすれ違う。この後は、夕食を終えた生徒による二度目のラッシュが来るのだけれど、丁度その合間に案内を終えられそうだった。)

ウェンシア > 何やら自分が放った先輩、その一言が彼女の心に刺さったらしい。そんな彼女の喜び様を少女は見逃さなかった。というかだだ漏れだった。凛とした彼女の、少し違う面を垣間見た少女は、ふいに今まで味わった事の無い感情が沸き、戸惑う。もっと彼女のこんな所を見て見たい、という少々意地悪なそれは、少女の口を軽いものにさせていた。

「あ、うん、色々聞く事になるかもだから…よろしく、イェンさ…――先輩。」

シア、と自分を呼んでくれた事に気付くと、ちょっと気恥ずかしい気持ちが湧き上がり、聞かなかった事にする少女。誤魔化すように唇を大きく横に開き、歯を見せての意地悪そうな微笑み、悪戯をしている子供のような顔を彼女に向けながら、『先輩』を強調する少女。屋上では『ここ、良いね。うん、ここ好き。先輩有難う、教えてくれて』食堂では『奢ってくれるの?やった…先輩ありがと♡』 幸いにも先輩という言葉が少女と彼女の距離を縮めているようだった。浴場に着く頃には少女は彼女の真横。彼女を見詰める視線に険しさなんて全く残っていなかった。

イェン > 「~~~~~~っ♡♡」

(もしかしたらこの人、イッているのでは? そんな失礼な感想が浮かぶ程、立ち止まって細身を震わせる美貌の赤面は淫靡であった。勿論、実際にはそんなことはない。濡れたりもしていない。それでもボーイッシュな美少女の声音にて紡がれた『イェン先輩♡(♡は記憶の捏造である)』の破壊力は凄かった。若干呼吸を乱しつつ、頬に紅潮の紅を広げつつ、何事も無かったかの様に案内を再開する仏頂面。その後も少女の悪戯に悉く引っかかり、ぷるぷるしたり、びくっと肩を跳ねさせたりと、機械人形めいて温度の感じられぬ先輩は愉快な姿を晒し続けた。そんな先輩呼びの衝撃にもようやく慣れが出始めて、薄れた憧憬の代わりに遠慮がちな距離感も狭まった頃、二人の姿は女子寮一階の共同浴場へとたどり着いていた。)

「――――ウェンシア様は運が良いのですね。丁度利用者のいない時間に当たった様です。ここが当寮の共同浴場となります。今いるのは脱衣所で、こちらの魔導器は銀貨の投入で動き出して衣類の洗濯をしてくれます。追加料金を投下すれば、乾燥までしてくれますので、急ぎの際には活用するといいでしょう」

(脱衣場入り口の靴箱に一足の靴すらなかったことにほっとしながらスリッパを脱いで素足を晒し、ぺたぺたと裸足の足音と共に簡単な設備の説明を進めていく。24時間何時でも利用は可能だが、混みあう時間という物があるので、それを避ける様に利用すると良いだろうというアドバイスも添えて。)

ウェンシア > これだけの美貌、凛とした態度など非の打ち所がない彼女を先輩と呼ぶ後輩も沢山いるだろうに…少女ははたと気付いた。あまりにも完璧だから距離を取られているのかもしれない、と。確かに先程、彼女を羨望の眼差しで見ていた女学生達は『イェン様』と呼んでいた。
――場所は既に共同浴場。ここでもまた丁寧に説明をしてくれる彼女。

「…ん、ありがと、イェン先輩。」

あまりにも面白い反応を返してくる彼女が面白く、今までからかい口調で言っていた『先輩』。初めてであるにも関わらずこんな自分に親身に案内してくれ、食事も奢ってくれる彼女に、沢山の感謝を込めてその言葉を紡いだ。そして

「私の事はシアで良いよ。さっきもそう呼んでたでしょ?…先輩はイェン先輩?リールゥ先輩?」

つっけんどんな口調だけれども、感謝の笑顔はそのまま。少々赤い顔をしているのは、『シア』なんて呼ばれたことは無かったから。そして彼女からそう呼ばれている自分を想像してしまったからだ。

イェン > 「っ。……………、では、シア様、と……♡ 私の事はこれまで通り、イェン先輩と呼んでいただければ…っ」

(呼び捨てはハードルが高すぎる。シアちゃんと呼びたかったが、これもまた慣れるまでは身悶えそう。そうした理由で最も無難な選択肢を選んだイェンは、これだけは譲れぬという意思の元、己の呼び方を確定させた。少し蓮っ葉な印象もある少女にとって《シア》という愛称が初めての物だった事を知らずにいたのは、理知的で落ち着いた先輩というイメージを崩したくないイェンにとっては幸運だったのではないだろうか。知らずの内に彼女の初めてを奪っていたと気付いたならきっと、いや、ほぼ間違いなくぷるぷるしてしまっていただろうから。)

「――――……今は誰もいない様ですし、折角ですから中まで案内いたしましょう。シャワーの使い方などは説明しておいた方が良いでしょうし」

(脱衣所での説明を終えたイェンは、僅かばかりの逡巡の後に後輩少女を連れて浴場へと素足を進めた。かららら…っと軽やかな音を響かせ開かれたスライドドアが、ボディーソープの爽香を孕む湯煙で二人を出迎える。エスコートでもするかのように彼女に差し出した手は、万が一にも濡れたタイルに彼女が足を取られぬように。浴場は詰めれば30人は浸かれるだろう広々とした掘風呂を角に置き、他の壁に沿う形でシャワーノズルの伸びる洗い場が設置されていた。安物なれど各種アメニティは一通り揃えられ、毎日多くの生徒が利用している割には清掃も行き届いている。洗い場は浴槽に比べて窮屈であるため、利用者が多くなると隣同士で腕が触れあったり泡が飛んだりするだろうから、混まぬ時間に利用する事を勧めたイェンの助言は的確だったと言えようか。説明と共に黒板前をうろつくベテラン講師の様に、涼やかな声音をタイルの壁に反響させつつ浴場奥へと少女を導く。イェンが入学して間もない頃に工事が入り、設備を一新させた洗い場は、魔道具慣れしている者であっても好奇心を刺激されるつまみやらボタンやらが散見する。慣れてしまえば機能的で使いやすいそれも、知らぬ者にとっては未知以外の何物でもないはずで。)

ウェンシア > 「様?…うん、分かった。――イェン先輩♡」

後輩に敬称をつける辺り、彼女の性格なのだろう。少女はその呼び方に違和感を覚えつつも、初めてつけてもらった愛称に心を躍らせており、それが思い切り甘えたような声での先輩呼びを押し出していた。勿論彼女の反応を見てみたいのもあるのだが、それ上にそう呼べる人が出来た事が嬉しいらしく、かみ締める様に目の前の先輩の名を呼ぶ。

さて、案内された浴場はとても広く、見たことも無い風景だった。一流の宿でも存在するかどうかの設備が整っており、少女の目を奪っていた。差し出される手に違和感無く手を差し出し重ねようとしているのは、今の少女の関心は目の前の彼女よりも浴室にあったからなのかもしれない。こんな広い風呂で足を伸ばしてゆっくりと…なんて考えている少女。

「――あ…」

彼女が差し出してくれた手に指先が触れた時だった。少女は足を滑らせ、浴場の壁側へと体を倒していく。壁に吸い寄せられるように近づく少女の頭。

イェン > 「~~~~~~~っ♡」

(理知的で落ち着いた先輩がまたやられてしまった。記憶の捏造などではない、たしかに感じられるハートの気配。ひとたまりもなくぷるぷるする細身のスウェットが、ぷくっと尖った乳首の陰影を浮かせていた。そんな豊乳に繊手を添えて呼吸を整え、頬の炎上を鎮静させる。うん、落ち着けた。なんて事をしていたのが良くなかったのだろう。ここまでバランスを崩すことなくついて来ていた少女からエスコートの手を離した油断が)

「―――――……シアちゃんっ!」

(濡れたタイルの上での挙動とは思えぬ雷光の踏み込みが、壁に向かって倒れ込む頭部を豊乳に掻き抱く。どっと細腕が奏でたとは思えぬ荒々しい音が壁面に突き立てられ、サァァァァァ…と雨音にも似た異音を頭上に見下ろすイェンが)

「大丈夫ですか、シアちゃん。どこか、ぶつけた場所などありませんか?」

(青林檎の豊乳に埋めていた頭部をそっと開放し、冷淡な美貌に後輩を心配する温かみをたしかに湛えて問いかけた。小雨の音は、そんなイェンの黒髪を濡らすシャワーの温水。ウェンシアかイェン、どちらかの腕が一連の動きの中で偶然シャワーコックを捻ってしまったのだろう。温かな水滴はスウェットを灰色に色濃い染みを広げていく。イェンはそれを気にする様子も見せず、眼下の少女の様子を確認する。片手を壁に押し当てて、降り注ぐ温水から少女を守る傘の様に身を被せ、華奢な背筋を抱くその姿は、つい先程イェンが憧れの念を抱いた壁ドンに近い物があろうか。立場は全くの逆であったが。)

ウェンシア > 頭部への衝撃を覚悟していた少女はぎゅっと顔を顰め、歯を食いしばっていた。しかし痛みが無く、クッションでもあるかのような感触を受けている。それも後頭部ではなく、寧ろ顔。そして自分を濡らす雨のような水。これは恐らく、間違えてシャワーのコックを捻ってしまったと予想がつくが、暖かささえ伝わる感触は何がなんだか分からない。
違和感を感じた少女は今の状況を探るようにゆっくりと目を開いた。そこにはシャワーを頭から被っている彼女。心底心配そうに自分を見詰める彼女。少女は一瞬にして状況を理解し、驚きにも似た表情をあらわにした。同時に感謝の言葉を告げようとするも、どうにも口が動かない。

「あ…ぅ…あの、ごめん、あ、あり…が…と…―――……♡」

きっと、ううん絶対、彼女が自分を引き寄せて守ってくれたのだろう。頭から水を被っていても、そんなものは気にならない位に顔が、体が熱くなる。少女はやっとの事で彼女に感謝の言葉を告げられた。自分の頭の横に伸ばされ、自分を支えてくれている手、心配そうに見詰めてくれる瞳…全て自分自身を救うための行動。少女はその瞳から視線を離す事ができなかった。うっとりと、恩人の瞳を潤んだ瞳で見詰める少女。奥二重の瞼は憂いを帯びているかのようにうっすらと閉じられ、二重になってしまっている。

イェン > 「―――――いいえ、貴女が無事であるなら何よりです」

(あまり素直な性質には見えない少女からの謝罪と感謝の言葉に対してイェンが向けたのは、普段、ついつい表情を抑制してしまう留学生にとっては珍しい力の抜けきった微笑みだった。《華》の同僚がそれを見たなら『誰だお前は偽物かっ!?』なんて失礼な物言いが飛んできただろう代物。そんな年に数回程度しかお目にかかれぬ素敵な表情の裏側で『あれ? これ、もしかしてちゅーしてしまってもいいのでは?』なんて素っ頓狂な思考が過っていようとは相対する彼女も気付けまい。とはいえ、これはイェンのせいだけとは言えぬのではないだろうか。ボーイッシュな少女がこちらを見上げる翠瞳は濡れた光を揺らめかせ、ほんのりとピンクを滲ませる頬と共に完全に乙女の表情となっているのだから。こんな表情を異性に向けたなら、次の瞬間にはがばーっとされているに違いない。実際イェンも危ない所だった。ギリギリの所で理性が勝利を収めたのは、百合性癖の自覚を済ませはしたものの、未だ本番の経験のない生娘の怯懦があればこそ。黒髪からぽたぽたと温水を滴らせつつ、少女の背を抱き寄せていた腕を伸ばしてシャワーコックをきゅっと締める。その際屈めた上体は、ボートネックの襟ぐりから水滴を伝わせる白乳の重力に引かれて形作る砲弾型と、その先端でつんと膨らむ乳首のピンクを至近距離から少女の翠眼に映し込ませた。)

「―――――濡れてしまいましたね。折角ですから、このままお風呂に入ってしまいましょうか? 実際に使用しながら説明した方が早いでしょうし、そうしている間に濡れた衣服を乾かす事も出来るでしょうから」

(少女に覆いかぶさらせていた上体をもとに戻せば、途端、イェンの細身に遮られていた魔導灯の白光が彼女の翠眼に降り注ぐ。濡れた前髪を掻きあげて、脱衣所への扉を見つめる横顔は、目弾きの朱の彩も印象的なまさに水も滴るイケメンの風情を香らせよう。見た目だけは悪くないのだ。)